『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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なんか、最近涼しくなってきた?




その181 電脳楽土

 

 

 

「………ふむ、成る程。つまりカルデア側との繋がりは現在断たれた状態であり、援軍も望めず、今の自分は孤立無援の状態だと」

 

『えぇ、その通りですとも。因みに言えば、此方に一緒にレイシフトする筈だったアーチャーのエミヤさんも、既にカルデアに退去させています。貴方は状況下の中で、これから128組による生存競争に参加するしかないのです!』

 

 深き海の底、マリアナ海溝にて突如特異点と化した海洋油田基地セラフィックス。何故カルデアが管理する施設組織が特異点と化してしまったのか、その原因の究明と解決の為にカルデアより遣わされた修司だが、気付けば、到着していきなり危機的状況に置かれていた。

 

カルデアとの通信手段は完全に断たれ、残された藤丸立香という戦友の増援も見込めず、更には頼りになるサーヴァントすらいない。完全なる孤立無援。頼れる仲間も、カルデアからの支援も見込めないという嘗てない程の危機的状況、そんな状況に叩き落とされ、さぞや心細い事だろう。

 

さぁ、泣け、喚け、年甲斐もなく動揺し、無様を晒しだせ。そこで手を差し伸べる自分(BB)という存在にすがり付き、存分に依存するがいい。

 

 小悪魔というには悪辣、AIには邪悪過ぎる思考回路。そんな悪意の本質をひた隠しにしながら、BBは改めて訊ねる。

 

『うふふふー、孤立しちゃいましたねー、ボッチになっちゃいましたねー。どうします? 今すぐカルデアに帰っちゃいますかー? ママがいなくて寂しいと、泣いて喚くなら帰還のレイシフトを手伝っても良いですよー?』

 

 嘘である。この娘、自身にすがり付く者がいれば散々煽り散らかした後で相手をポイ捨てする、生粋の嗜虐的趣味(サディスト)である。どれだけ救いを求められた所で手助けするつもりはないし、そもそもそんな権限は自身はない。

 

さぁ、精々面白おかしく動揺して喚き散らすがいい。そんな、期待の籠った目で手を伸ばすBBに対し……。

 

「んじゃ、取り敢えず周囲の探索から始めるか。君、メルトリリスちゃん……だったかな? 改めて聞くけど、俺に協力してくれるかな? 報酬は取り敢えず君の身の安全という事で」

 

「え、あ………はい。その位なら」

 

『──────』

 

 白河修司は、清々しい程に無視を決め込んでいた。傷だらけのメルトリリスと呼ばれる少女に寄り添い、その手を掴む。突然の事に驚くメルトリリスだが、次に起きる現象に、その驚愕の度合いは大きなモノになる。

 

「え、か、からだが……!?」

 

「俺の気を少し分けておいた。どうやら君もサーヴァントみたいだし、効果はより強く現れる。あとは……うん、腹巻き辺りを探してみようか」

 

「腹巻き?」

 

修司の手から流れる淡い光、それをメルトリリスの体を包み込むと、彼女の体の至る所にあった傷跡が塞がり、修復されていく。やはりこの男もマスターなのだろうか。いや、それにしたって戦闘能力は高過ぎる気がする。

 

色々と驚くことばかりで思考が追い付かない。そんなメルトリリスに対し、修司は彼女のお腹が冷えないように腹巻きを見付けるか作ることを決め、彼女を連れて、一先ずこの場から立ち去ろうとした。

 

『ちょっと待って貰ってもいいですかぁ!?』

 

 そんな修司達を、自称上級AIを呼び止める。

 

「なんだよ」

 

『なんだよ、じゃないですよ!! え、何でそんな冷静なんですか? バカなんですか? 状況が呑み込めていないんですか? 私の話を聞いてました?』

 

「いや、ちゃんと聞いてるよ。今の俺の状況は孤立無援、カルデアからの支援も増援も見込めない状態なんだろ?」

 

『そ、そう! その通りですよ! ちゃんと状態把握出来ているんじゃないですか。そんな貴方にはBBちゃんから特別ボーナスを支給───』

 

「いらね」

 

『最後まで話を聞いて!?』

 

「なんだよさっきから、俺はこれからメルトちゃんに腹巻きを用意してやらなきゃいけないの。どうせそれ以上の情報なんて教えるつもりもないだろうし、構ってちゃんの相手はまた今度な」

 

「腹……巻き?」

 

 初恋の女性に良く似た少女とは言え、BBはあくまで良く似た別人でしかない。本人でない以上不必要に相手をしてやるつもりもないし、構う余裕もない。

 

そもそも、ここは既に敵地だ。黒幕も自分と言う異物の出現に勘づいているだろうし、長引けばまた先程のようなエネミーの群れを差し向けてくるかもしれない。特異点の調査と原因の究明、そして特異点の修復を急がねばならない。

 

だから、BBの様な悪戯に時間を消費するだけの構ってちゃんに費やせる時間はないのだと、修司は出来る限り分かりやすく説明すると………。

 

『あ、あーそうですか! そう言いますか! いいですよいいですよ! そんなに人の厚意を無碍にしたいのなら好きにしたら良いじゃないですか! BBちゃんはもう知りませんからね!』

 

「………切ったか。上級AIの割には、情緒が豊か過ぎやしないか?」

 

 ブツンッ、と。一方的に通信を切るBBを一瞥しながら改めて修司はメルトリリスへ向き直る。

 

「さて、改めて自己紹介をしておこうか。俺の名前は白河修司、この特異点を修復するため、カルデアから派遣されたマスターだ」

 

「わ、私はアルターエゴのメルトリリス。よ、宜しくお願いするわ」

 

「よし、なら一先ず場所を移そうか。ここは見通しが良すぎる。他のマスター達に遭遇する前に、まずは安静に出来る場所を探したい」

 

「私の情報は……どうするの?」

 

「君の持つ情報の精査も、その時でいいだろ。触れてみて分かった。君、結構ギリギリな状態だったんだろ? 先ずは安全な場所で君の回復を待つ。話はその後でも遅くはないさ」

 

「……………」

 

「あー、それはそれとして………」

 

「なにかしら?」

 

「君、その格好に対して羞恥心を抱いたりは……」

 

「? 特にないけど?」

 

「あぁ、そう……」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メルトリリスを共に付け、電脳化したセラフィックスを進むこと数分、一先ず体力も回復し、戦闘も一度くらいなら可能というメルトリリスの進言もあって、エネミーやサーヴァントの気配のない場所に辿り着いた修司は、其処で彼女から幾つもの情報を受け取る事になる。

 

先ず、この電脳空間と化したセラフィックスはマリアナ海溝を沈み続け、いずれ底に辿り着いてしまうという事。辿り着いたら最後、この特異点に存在する全てのマスターはデータ化され、死に至る。

 

セラフィックスが完全に海底に沈む迄の猶予は、時間にして約数時間。端から聞けば猶予はもうない事の様に聞こえるが、それはあくまで現実から観測した制限時間であり、電脳化となったセラフィックスはそうではない。

 

現実世界の1分は、此処では100分に相当する。現実世界でセラフィックスが海底に激突する時間は二時間半程度しかないが、此処では10日程の猶予がある。

 

 とは言え、この海洋油田基地は電脳化されるに伴い元の企画より遥かに拡大されており、SE.RA.PHの攻略は並大抵ではない。他のサーヴァント達との戦闘も考慮すれば、より探索の時間は削られる事だろう。

 

「そして、生身の人間である貴方はSE.RA.PHにデータ化され、取り込まれる危険性がある。だから早急に安全に活動できる拠点を探す必要があるのだけれど……」

 

生身の人間が安全地点(セーフティハウス)以外の所にいれば、忽ちデータ化されてSE.RA.PHに取り込まれてしまう。それは生物学的で言う死と変わりなく、その最期を迎えてしまったら、修司は二度とカルデアに帰還する事は出来なくなるだろう。

 

修司の危機感と緊張感を高める為の助言、敢えて相手の恐怖心を煽るような言葉遣いに、メルトリリスは内心で罪悪感を募らせるが……。

 

「────なんともないみたいだけど?」

 

「えぇ………」

 

まるで変化している様子がない。頭の先から爪先まで、全くデータ化されている様子がない。なんだろう、この男は宇宙空間でも死ななかったりするのだろうか? 不思議に首を傾げる修司に、メルトリリスは若干引いた。

 

「しかし、何度聞いても胸糞悪い話だな。いきなり自分達の職場を殺し合いの舞台にされ、強制的にその一員とされる。この聖杯戦争を思い付いた黒幕は、余程暇をもて余していると見える」

 

 BBとメルトリリスの二人から得られた情報を統合すると、この聖杯戦争は128人のマスターによる殺し合いを強制され、優勝した一組が世界崩壊の危機を防げると語っている。

 

……酷い話だ。世界崩壊を阻止する為にと謳っておきながら、何もかもがマスター側に不利な要素が多すぎる。唯でさえ世界を救う為に殺し合いを強要するという矛盾を突き付けておきながら、エネミーという更なる不安要素をばら撒き、トドメにはこの広い領域の何処かにある安全地帯でなければ生存を維持できないというクソ仕様。

 

どこぞのフ◯ムゲーでもあるまいし、一つ一つの要素が鬼畜過ぎる。仮に安全地帯を見付けたとしても、其処に人数的限界値が定められてしまえば、其処で要らぬ争いが生まれる。

 

更に言えば、人は外界と隔絶された空間に長時間押し込められてしまうと、精神に異常をきたすという話もある。その辺りの話も加味すれば、この特異点に起きた悲劇がどの様なモノであるかは想像に難しくない。

 

更に言えば、現実の世界との時間差の差異は100倍近い。………どうやら、この特異点は自分が思っていた程に業が深そうだ。

 

 まだ犯人像の有無は特定出来ないが、その地獄をもたらした存在(モノ)はかなりの性悪だと修司は確信する。

 

「………どのみち、先ずは安全地帯とやらを探すしかないな。もしかすると、其処に生存者がいるかもしれない」

 

「そうですね。その方向性に同意します」

 

どのみち、今は前に向かうしかない。メルトリリスの気を感じた際の不調の原因も気になるし、早い所安全地帯を見付けようと、道中現れるエネミー達を蹴散らしながら進むと……。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️ーッ!!」

 

「あぁ、クリスティーヌ、クリスティーヌッ! どうか私の愛を聞き届いておくれ!」

 

「くッ、こんのっ!」

 

 前方からサーヴァントが二騎、誰かと戦っている。状況からして二対一、当然ながら一の女剣士の方が追い込まれていて、戦況は圧倒的に女剣士の不利。

 

「メルトちゃん、ごめん!」

 

「え? キャッ!?」

 

このままでは不味いと、生身の人間(・・・・・)である彼女を助けるべく、修司はメルトリリスを抱えて地を蹴った。

 

 メルトリリスを抱えていた為に音を置き去りにする程度の速さしか出せないが、それでも彼等の戦いに横槍を入れるには充分な速さであり、次にメルトリリスが瞬きをする頃には、既に相手の間合いに入っていた。

 

血斧王エイリーク。その目からは既に理性は消え失せ、暴れる暴風と化した怪物。そんな理性なき怪物の一振を修司は文字通り足で一蹴し、エイリークの顔に叩き込む。

 

360°にねじ回り、首を破壊し尽くされたエイリークは地に倒れ伏す。その間、修司はファントムの方へ向き直り………。

 

「ホゥアタァッ!!」

 

空いた片腕で、無数の打撃をファントムに浴びせる。仮面を砕かれ、血反吐を撒き散らしながら倒れる二騎の英霊は同時に地面へと倒れ伏し、塵となって消えていく。

 

これが、黒幕に良い様に操られた英霊の末路か。この特異点に喚び出された不運な二人に黙祷を捧げつつ、襲われていた女剣士振り向こうとした時。

 

 あろうことか、女剣士の方が襲い掛かってきたではないか。両の手に握られた二振りの刀剣、それらが目の前で振り下ろされるのを認識した瞬間、修司は腕に気を纏わせてこれを防ぐ。

 

防ぐこと、それ自体は簡単だった。動きも緩慢だし、初動も拙い。なにより振り下ろされた一撃には殺気がない。一体なんのつもりだと、問い詰めようとしたその時。

 

「やっぱり、やっぱりお師匠様だッ!」

 

「お前、まさか………武蔵か!?」

 

 目の前の人間が嘗て鬼ヶ島で遭遇したヤンチャな小娘の武蔵だと分かると、成長し、大きくなった武蔵ははにかんだ笑みを浮かべ。

 

「逢いたかった。逢いたかったよお師匠ーッ!」

 

目尻に涙を浮かべ、思い切り抱き付いてきた。

 

「いや、私がいるんですけど?」

 

 間に挟まれたメルトリリスは、顔に当たる柔らかい二つの感触に、無性に腹が立ったという。

 

 

 

 

 





最近、ONE PIECEのネタばかり思い浮かぶ。

これが劇場版症候群かっ!?

それでは次回もまた見てボッチノシ







オマケ。

『グリッドマン、お前はこの俺が殺してやるッ!』

『修司、相手は強敵だ。ここは………』

「あぁ、出し惜しみはしない。皆!」

『りょ、了解! アクセスコード、グリッドマンキャリバー!』

『私も行こう。アクセスコード、バトルトラクトマックス!』

『……あー、うん。もういいや。アクセスコード、バスターボラー』

『ねぇ、これ俺達の行く意味ある? はぁ……。アクセスコード、スカイヴィッター』

『「超合体超人、フルパワーグリッドマンッ!!」』

『お、俺は、それでも俺は負けないッ!!』

『ならば行くぞ! フルパワーチャージッ!』

「プラス、10倍界王拳のォぉッ!!」

『「フルパワー、フィニッシュだぁぁぁッ!!」』

『う、うわぁぁぁぁぁッ!?!?』









「す、済まない。済まないアカネ。俺は、俺は………!」

「あー、うん。流石に責められないや」

「帰ったら、暖かいお風呂に入ってご飯でも食べよう。今夜は、私特性の甘口のエビチリだぞぉ」

「「わーい」」




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