『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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異世界おじさんとダンまちのクロスオーバーを考えたけど、SEGAの知識が無いと無理だと分かり断念。




その178

 

 

 

δ月aa日

 

 日々の鍛練も一歩から。そんな訳で今日も今日とで自分は手製の重力室に籠り、午前中は全て自己鍛練に明け暮れた。

 

此処は自分の為だけに用意した自分専用のトレーニング室、時々鍛練好きのサーヴァントが体験しにくるけど、大体は自分だけが扱う代物になっている。

 

最近は超化になれるようになった為、重力による負荷を常に300倍にしており、より肉体の強化に勤しむようになっていた。このまま鍛練を重ねて続けていけば、いずれはあの主人公達のように2や3の様な形態にも変身できるようになるかもしれない。尤も、出来ない可能性の方が高いのだが………。

 

 それと界王拳の方なのだが、此方の方も絶賛鍛練中である。幾ら超化が界王拳より強化効率が良くても、界王拳はこれ迄の自分の切り札とも呼べる技。より強力な強さが身に付いたと言って、過去の技を疎かにする程、自分は薄情ではないつもりだ。

 

と言うか、界王拳は気を操る際にある意味超化になるよりも難しい一面もあり、その性質は個人的には極化に近い印象を持っている。いつかは超界王拳なんて技が使える様になるかもしれないし、どちらの鍛練も欠かさず地道に続けているつもりだ。

 

 さて、午前中は自分の時間に使えた為、此処からは本日のカルデア内部を文面で紹介していこうと思う。先ずは先日召喚されたウルク組、ジャガーマンは専ら二人のエミヤに絡んでいて、どちらも困った様子で対応に追われていた。

 

自分はそんな困った二人の様子を遠巻きにニヤニヤしているだけである。アーチャーのエミヤには止めろと言われているが、端から見ると其処まで嫌がっている様には見えない為、基本的にスルーしている。

 

ケツァルコアトルは…………うん。まぁいつも通りと言えばいつも通りだ。ルチャリブレが大好きだと自負するだけあって、連日肉弾戦が大好きな英霊とルチャってたりしている。昨日なんて、下心丸出しのフェルグスがマットに脳天から沈められていたしね。

 

そんで、問題のイシュタルなんだけど………コイツ、兎に角エルキドゥさんと相性が悪い。いつも互いに険悪な空気を出しているし、顔を合わせる度に頼光さんと酒呑童子並に殺伐とした雰囲気になる。

 

其処に王様………黄金の英雄王も参加しちゃうから、余計に始末に負えない。とは言え、そうなる時は決まってシドゥリさんが止めに入るから、あまり大事になったりは今のうちはしていないけどね。

 

 ただ、イシュタルは兎も角エルキドゥさんには申し訳ないと思っている。彼は英雄王の唯一の友だというし、そんな王との死に別れの原因を作ったイシュタルには腹の底から殺意が沸いてくるのだろう。

 

いつか、その憤りが多少なりとも解消できる様に、イシュタルと全力で戦える場を設けてやりたいんだけど………やっぱまだ無理だろうなぁ。

 

エルキドゥさん、イシュタルを前にしている時以外は本当にイイ人だし、自分の事も気に掛けてくれている。気遣いも出来る事から、個人的にはメディアさんと並ぶ良識人だ。そんな彼はもっと日頃から現世を楽しんで貰いたい。

 

 続いてイシュタルは………カット。コイツ、大抵ろくなことしていないから、普通にカルデアでも劇物扱いされている。て言うか、通路をマアンナで移動すんな。征服王や獅子王ですら、通路を歩く時はちゃんと徒歩なんだぞ。

 

個人的にはイシュタルよりも冥界の女主人こと、エレシュキガルに来て欲しかった。

 

 そんで、復讐の女神ゴルゴーン。コイツは………うん。取り敢えず、例の双子女神が進んで監視してくれる事を約束してくれたので、喜んで彼女達の所に預けて貰っている。

 

ほら、やっぱり姉妹は仲良く揃っているのが在り方としても見栄え的にも美しいよね。アナも姉達に可愛がられていてご満悦していたし、個人的には最も相性の良い組み合わせだと思っている。

 

他意はない。

 

 そして最後に牛若丸、弁慶、レオニダス、茨木童子は以前からカルデアに召喚されている為、あまり語る事はないが、神代の時代にて活躍する自分の姿を見て、彼等は概ね満足していた。

 

 

 

γ月?日

 

 立香ちゃんの故郷への帰省まであと少し、準備もそろそろ大詰めという所で、ロマニからある相談をされた。

 

と言うのも、その相談の内容が自分の相方であるグランゾンの事で、現在国会にどういう風に説明したらいいのか、絶賛頭を悩ませているらしいのだ。

 

 そう言えば、元いた世界でもグランゾンの事は基本的に秘密にされてきたな。自分的には別に公にしても構わなかったが、もし公表なんてすれば裏表の世界問わず、世界の情勢が混乱するだろうし、その際に起こる経済的被害は計り知れない。

 

下手をすれば、グランゾン対世界。という危険極まりない図式が成立してしまうから、グランゾンの公表はある程度技術革新が進んでからにしろと、王様から厳命を受けたことがある。

 

まぁ、当時から世界の面倒くささは自分も理解していたし、既にその頃からメディアさんには隠蔽の事で多大な迷惑を掛けていたから、その事に付いて異論はなかった。

 

 で、この世界の自分がグランゾンの事を公表していないのであれば、自分も進んで暴露するつもりはない。グランゾンの事は伏せておくことにして、情報漏洩も徹底して欲しいと頼むと、ロマニは安堵した様に息を吐いて了解と承諾をしてくれた。

 

因みにグランゾンとネオと化したグランゾン、それぞれの機体のスペックを報告書に簡潔に纏め、ロマニとダ・ヴィンチちゃんに提出してみたら、何故か顔を手で覆って天井を見上げた後、無言のまま燃やされてしまった。

 

解せぬ。そう不満そうにしていると、久し振りにロマニからガチギレされた。

 

なんでさ。

 

 

 

γ月Δ日

 

 立香ちゃんの故郷への帰省まで、あと数日。世間では今頃は時期的にGWに差し掛かっているであろう今日、相変わらず報告書を書いたり鍛練に励んでいると、唐突にマシュちゃんからカルデア全体通信を入れてきた。

 

何でも、海洋油田基地セラフィックスという施設から、定期連絡が届いたのだとか。

 

セラフィックスに友人がいるスタッフがいれば、管制室に赴いて詳しい話が聞けるらしく、通信期間は半日。次回の定期連絡は3ヶ月後になると言われ、興味が沸いた自分はこれから管制室に向かおうと思う。

 

 何でも、セラフィックスとやらの油田基地は前所長の所有物らしく、その実態はカルデアの別部署………というより、資金源の一つとして数えられているらしい。流石は魔術師、金持ってんなぁー。

 

と、いつまでも日記を書いていても仕方がない。今日の日課は此処までにして、自分も管制室に向かうことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、今回は修司、君の方が早く着いたみたいだね」

 

「よっすドクター、セラフィックスとやらの通信が来たんだって?」

 

 扉を開き、待っていたのは見慣れた白衣の男性。コーヒー片手に佇んでいたロマニは、珍しく先にやって来た修司に、にこやかに微笑んだ。

 

「何でも、セラフィックスはカルデアの資金源を担う施設だって聞いてたけど、向こうは人理焼却による影響は無かったのか?」

 

「多分、そこら辺の事情を含めた定期通信なのだと思うよ。協会から新しい所長が赴任するまでロマニが責任者のままだから、向こうの様子はある程度把握しておく必要があるのさ」

 

 カルデアが人理を修復するまでの間、世界は魔神王によって焼かれたままで、外の世界の住人は自分達が一度消滅した自覚すら持っていなかったのだろう。今回の定期通信は、その辺りの話を詰める為のモノだろうと、ロマニに代わりダ・ヴィンチが簡潔に説明する。

 

やはりそうかと、納得する修司にマシュが歩みより、手にしていた資料を渡す。

 

「修司さん、此方をどうぞ。事前に纏めておいたセラフィックスに関する資料です。先輩には後程私から口頭で説明しますが、修司さんには資料を渡しておいた方が分かりやすいかと思ったので………」

 

 手渡された資料に目を通すと、油田基地であるセラフィックスについて簡潔ながらも纏まった内容が記載されていた。半潜水式のプラットフォームで、従業員の人数は100人以上で昼夜交代制。

 

カルデア本部とは遠く離れた施設ではあるけれど、カルデアを運営する為に必要な資金源の一つ。

 

他にも職員達の具体的な人数から、各施設の位置取り、他にも従業員の生活を支える娯楽施設や、外と隔絶された環境での精神的負担を軽減させるカウンセラーなど、他にも様々な事が記載されている。

 

簡潔且つ分かりやすい丁寧な資料、その作り込みからマシュの手腕に感心した修司は、素直にその手際の良さを称賛した。

 

「うん。分かりやすくて簡単な良い資料だ。ありがとうマシュちゃん、お陰ですんなりと頭に入るよ」

 

「お、お役に立てたてたのなら幸いです……」

 

 身長の差から丁度良い位置にいた為、またもや無意識にマシュの頭を撫でていた事に気付く。年頃の娘にすることではないなと、軽く謝罪をしながら手を退けると、タイミング良く立香がやって来た。

 

「ごめんなさーい! 遅れちゃいましたァ!」

 

「おや、立香ちゃん。君も来たのかい?」

 

「だってカルデアに関係のある施設からの通信でしょ? 私、気になっちゃって!」

 

 カルデアとセラフィックスの繋がりは、深いようで実は脆い。先の人理焼却の際にレフによって引き起こされた爆発の際には、セラフィックスと通信を行っていた通信士の命が奪われている。

 

彼方は海上、此方は雪山。共に外界から隔絶された環境の中で戦ってきた仲間。そんな仲間の片割れとも言えるセラフィックスからの通信は、カルデアのスタッフ達に小さくない朗報となっていた。

 

特に、今回の通信士の女性はセラフィックスの通信士とは五年の付き合いになっている。積もる話もあるのだろう。

 

「そうですね。セラフィックスの通信士は私にとっても得難い知人です。ロマニ所長代理にとってのマギ☆マリと言えば、分かりやすいでしょうか────あ」

 

「うぅ、マギ☆マリィ、どうして、どうしてなんだよぉぉぉ………」

 

 カルデアの通信士にとって、セラフィックスの通信士は画面越しの知人。例えるならロマニが相談する際に使われるネット上のバーチャルアイドルだろう。そう口にする通信士だが、それが禁句だった事を思い出す。

 

見れば、マギ☆マリの正体を知ってしまったロマニが、大粒の涙を流して踞ってしまっている。未だに衝撃が癒えていないのだろう。この時、様子を見に来た花の魔術師が「呼んだかい?」と話に混ざろうとしたが、鬼の形相となったロマニが通路へ追いやった。

 

「では、話を戻しましょう。セラフィックスからの通信、宜しくお願いしますね」

 

「マシュちゃん………」

 

「マシュ、逞しくなっちゃって!」

 

「いやこれ逞しいって言うの?」

 

 嘆くロマニをスルーして、話を進めるマシュ。そんな彼女に確かな成長を感じた修司と立香が感激する一方、通信士は一人つっこんでいた。

 

さて、そろそろおふざけも此処までにして本題に入ろう。立ち直ったロマニがセラフィックスへの通信を繋げる指示を出し、カルデアの外部通信6番をオープン。セラフィックスとの映像通信を開き………。

 

何も、映らなかった。

 

映像は届いている筈。だが、モニターには何も映らない。まさか観測システムのシバに何らかの影響が? 不思議に思った修司がシバを見つめても、何も分かることはなかった。

 

音声も繋がり、現時点でカルデアはセラフィックスと確かに繋がりを持っている。しかし、実際にセラフィックスからの通信は何もない。向こうが時間を間違えたとも思えないし、一体何が起きているのか。

 

或いは機械の故障か? そう、誰もが不思議に思うなか、それは微かに聞こえてきた。

 

「─────け──────み─────と────て────」

 

「通信士、音量を最大限にして拾って!」

 

 微弱ながらの確かな声、ノイズの向こうから聞こえてくる人の声に、ロマニはオペレーターに指示を飛ばす。慣れ親しんだロマニからの指示に戸惑うこともなく実行に移す通信士、聞こえてくる音量を最大限にして、セラフィックスからの通信に耳を傾けた時。

 

『S──O──S──きこえ、ますか────どうか───拾って───』

 

『たす、けて─────たすけて、だれか。みんな────みんな、データに、変換される────』

 

その言葉を最後に、セラフィックスからの通信は途絶えた。

 

「セラフィックスからの通信、途絶えました! 応答ありません!」

 

「ダ・ヴィンチ、カルデアスの使用を許可する。シバを使い、急いで2017年のセラフィックスを観測してくれ!」

 

「もうやってるよ!」

 

 セラフィックスからの通信が途絶えた事をきっかけに、慌ただしくなっていく管制室。助けを求めてきた向こうの様子から、尋常でない事態であることを察したロマニは、ダ・ヴィンチを始めとしたカルデアスタッフに急いでセラフィックスの観測を確認するように指示を出す。

 

火事か、或いは別の異常事態か。原因は分からずともセラフィックスの存在の有無は確認できる。カルデアスならばその程度の状況把握くらい造作も無い筈、スタッフ一同もそう確信していただけに……。

 

「こ、これは!?」

 

「観測できたのなら報告を。見たままで良い、憶測や推測はその後にするとしよう」

 

「あ、はい。……ですが、その、無いんです! カルデアスから観測された結果、セラフィックスそのものが見えないんです!」

 

「基地は移動式ですから近隣の海域もサーチしましたが、セラフィックスは何処にも存在しないのです!」

 

 信じがたい報告にその場の全員があ然となるが、彼等はこれ迄の特異点を巡る旅路の中で、何度も支えとなったベテラン。その報告に偽りがないのは分かっている。

 

その後も、ロマニは指示を続けた。観測できるであろうあらゆる可能性の模索を、そしてセラフィックスの特異点化という最悪の事態を。しかし、返ってくる返答は全て適合なし。何もないという事実が返ってくるだけだった。

 

なら、あの通信は一体何だったのか。そんな時、顔を青ざめた通信士から衝撃的な事実を告げられる。

 

「ロマニ所長代理、確認が遅れて申し訳ありません。先程のセラフィックスからの通信なんですが……」

 

「なにか、分かったのかい?」

 

「いいえ、あの通信先の存在証明は依然として成り立っていません。あの通信は、我々が観測できない領域から送られたもの、そうとしか判断出来ませんでした」

 

青ざめながらも、伝えるべき事を正直に伝えるべき通信士は、確かに職務に殉じる佳き人なのだろう。しかし、先程まで繋がっていたのがセラフィックスではなく、カルデアスでも観測できない未知の領域だと知ると、その場にいる全員の表情が強張る。

 

一体、カルデアは何処と繋がってしまったのか、誰もが不安を抱くなか………。

 

『あー、テステス。マイクの感度はバッチリですか? バッチリ? ちゃんとカルデアに届いてます?』

 

『無料アプリに盗聴アプリを仕込まれて、プライベートを丸裸にされたぐらいバッチリ?』

 

 聞こえてきたのは、女性の声。先程までの微かな救命要請(SOS)とは異なる、ハキハキとした少女の声。

 

………と言うか、その声に修司は懐かしさを覚え、同時に嫌な予感を感じた。

 

『宜しい。パーフェクトです。さて、可愛くて情けないちっぽけな人類の皆さーん! いっきますよー!』

 

“BBーチャンネルーー!”

 

 暗転される視界、次に映し出される小悪魔チックなテロップ、ニュース番組を模したデカデカな映像が、モニター一杯に映し出され………。

 

『人類の皆サーン、相変わらずお間抜けな顔を晒していますかー?』

 

改造したレオタードみたいな衣服を身に纏い、堂々とその肢体を晒す嘗ての後輩に似た誰かを前にして。

 

「………ちょっと、エミヤの奴連れてくるわ」

 

白河修司は、速攻で食堂へと向かった。

 

 





次回、電脳楽土seraph。


溺れる夢が、始まる。




ボッチの必殺技紹介。

その一、ペガサス流星拳。

とある聖闘士の少年の技を模した秒間百発の拳の弾幕。
並の相手ならこれだけで充分完封できるが、手強い相手には牽制にもなる使い勝手の良い技。

最近ではこれを真似るインドの大英雄が目撃されているとか。

「………カルナ、貴様何をしている?」

「アルジュナか。なんでも、この動きはペガサス座を模しているらしい。この技を放つには最初はこの舞が必要なのだと、修司から教わった」

「えぇ……」

 その後、奇妙な舞を続ける白と黒の英雄がいたとかいなかったとか。


それでは次回もまたみてボッチノシ


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