『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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ロスストの主人公が狂犬扱いで草。

コイツ、将来ギアス界のエレン=イェーガーとか言われない?

え、もう言われてる?




その169 終局特異点

 

 

 

「ちょっとノッブ、何逃げているんですか!?」

 

  終局特異点、Ⅲの座を司る魔神柱であるフォルネウスを筆頭に無数の魔神柱と相手取っていたカルデアのサーヴァント達。魔術王ソロモンの撃破の為に戦いに挑む立香の為に各地で戦い続けていた彼等だが、その戦場はとある魔神の顕現と同時に一変した。

 

中でも場の空気を敏感に感じ取ったノッブこと織田信長は、目の前の魔神柱を自身の宝具で蜂の巣にすると、踵を返して脱兎の如く逃げ出したのだ。

 

その突然の変わり様に渋々コンビを組んでいた沖田総司は、得意の縮地にて追い掛けて、その首根っこを掴み上げる。

 

「待って、お願い見逃して。今ホントヤバいから、ヤバいのが出てきちゃってるから。魔王たる儂の直感がビンビン叫んでるの、お願いオッキー見逃して、500円上げるから」

 

「誰がオッキーですか。五千円渡されても見逃しませんよ! ったく、私が土方さんだったら士道不覚悟で斬り殺されてますよ? 一体何が起きたって言うんですか?」

 

「おい! 沖田テメェ何してやがる! 敵前逃亡は切腹だぞ!」

 

 ホラもー。遠くから聞こえてくる新撰組副長の雄叫びを耳にしながら、沖田は深くため息を溢す。何で追い掛けた自分が怒鳴られなければならないのか、うんざりした様子で信長と共に戻ろうとすると………突然、自分達が相手にしていた魔神柱達から光の槍が貫き始めた。

 

それは、沖田達が相手にしていたフォルネウスだけでなく。ブネ、ロノウェ、アスタロス、他にも此処観測所と呼ばれる宙域全てに生息している魔神柱達が、悉く内側から貫かれる光の槍によって絶命されていく。

 

断末魔や、悲鳴を上げる間もなく蹂躙されていく。何千万、或いは何億にも匹敵するであろう魔神柱達が瞬く間に撃滅されていく。その光景に沖田だけでなく、土方歳三すらも目を剥いて驚きを顕にしている。

 

敵対し、倒す筈の魔神柱が何者かによって消されていく。その圧倒的とも呼べる光景に、信長はアチャーとその顔を手で覆い。

 

「いかん、もう始まったか」

 

「ノッブ、貴方今起きているこれが何なのか知っているのですか!?」

 

「知らんよ。だが感じ取れるモノはある。連中、何をやったのかは知らんが、よりにもよって逆鱗を踏み抜いたらしい」

 

 訳知り顔で語る信長、彼女もまた目の前の光景に確たる答えを持ってはいないが、第六天魔王と呼ばれた彼女の直感が、これから起きる惨劇を伝えていた。

 

これから起きるのは戦いではない。如何なる反抗も許さぬ─────蹂躙である。

 

しかし、それはあるサーヴァントとは少々意見が違うようで……。

 

「おぉ、オォォォォッ!! 反逆者よ! 神に抗い、神に報復をもたらす汝は、正しく叛逆の化身である!」

 

 圧政の叛逆者スパルタクス、彼の普段以上にハイテンションなその昂りは、これから起きる出来事を如実に現していた。

 

さぁ、神を狩ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしたヴォルクルス、神を僭称しているんだ。………その力、見せてみろよ?』

 

 終局特異点にて、蒼き重力の魔神が顕現する。日輪を背負い、真なる力を解放したその姿は正しく魔神。邪神であるヴォルクルスを圧倒して余りある力を得た修司は、その上で尚更なる挑発を重ねていく。

 

片手間の間に魔神柱を殲滅しながら、おぞましい邪神であるヴォルクルスを見下ろすその顔は、普段の彼とは別の、嘲笑に満ちた冷笑が張り付いていた。

 

『オォ、オォォォ、オォォォォッ!!』

 

『神ヲ愚弄スル痴レ者ガァッ!!』

 

そんな修司の挑発に、激昂した邪神が吼える。下等で、愚かで、憐れで、惨めな人間。己にとって贄でしかない人間に見下されるのは、彼等にとってこの上無い屈辱だった。

 

故に、周囲への被害を微塵も省みず、邪神は攻撃を開始する。天へ伸ばした尾から不可思議な方位陣が展開され、其処から無数の緋色の光弾を放ち、修司の操る魔神────ネオ・グランゾンへ殺到していく。

 

天を埋め尽くす光、三体の邪神から放たれる光弾はグランゾンの逃げ場を失くし、周囲の地形を穿ちながら降り注ぐ。並みのサーヴァント処か、トップクラスのサーヴァントですら防ぐことは難しい暴力の渦、その理不尽さは確かに第七特異点のティアマトを連想させた。

 

─────が、届かない。周囲の地形を鑑みずに放たれたヴォルクルスの攻撃は、ネオ・グランゾンが纏う空間すら歪ませる歪曲フィールドにより、その一切が届かなかった。

 

日輪を背負った蒼き魔神、その三体とも無傷である光景にヴォルクルスは人間のように息を呑んだ。そんな見るからに狼狽している邪神とは対照的に、ネオ・グランゾンの担い手である修司は、いっそ落胆した様子で眉を寄せていた。

 

『────こんなものか』

 

『ッ!?』

 

落胆、或いは失望にすら似た感情の吐露。嘲笑ですらない一言は、邪神のプライドを酷く傷付けた。

 

『◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!』

 

 言葉にならない叫びが、(ソラ)に木霊する。それに合わせて地中から無数の亡霊が涌き出て来て、先の焼き増しの様にグランゾンへ押し寄せてくる。

 

『それは、もう見た』

 

既に見慣れた攻撃を受けるのも、時間の無駄だ。つまらない口振りを隠そうとすらせず、グランゾンはワームホールから一振の武骨な大剣(グランワームソード)を取り出し、ヴォルクルスの一体に向けて投擲する。

 

攻撃ばかり気にして、防御を失念していた邪神は投擲された大剣に直撃し、後ろに下がってしまう。元より連携と言う言葉を知らないヴォルクルスのそれは、これ迄英霊との戦いで僅かな隙を突いてきた修司にとって緩慢でしかなく………。

 

『そら、今度はこっちの番だぞ』

 

当然ながら、それを逃す道理など有りはしなかった。

 

 投擲し、ヴォルクルスの肉体を抉って地に突き刺さった大剣を手に、グランゾンは勢いを乗せたまま横凪に一閃させる。振り抜かれたその一刀はヴォルクルスの胸部にある髑髏の目を切り裂き、更にはその威力に耐えきれず吹き飛んでいく。

 

更なる追撃、それを阻もうとする残る二体の邪神が後を追うが、上空に佇む同じく残った二体のグランゾンが、光の槍を放って歩みを止められる。同じ邪神からの援護を受けられなくなったヴォルクルスは、自力でこの窮地から脱しようと試みるが……既に、何もかもが遅かった。

 

『させねぇよ』

 

 一閃。再び振り抜かれた一撃、今度は袈裟斬りされ、邪神の片翼を触手ごと斬り飛ばしていく。

 

『そら、次だ』

 

次いで一閃。放り投げる勢い、或いは叩き付ける勢いで振り抜かれたその一刀は、下半身の鰐の顎を抉っていく。大剣自体の重さに加え、亜音速すら越えたスピードも重ね合わさった事もあり、重力で造られた剣はグランゾンの手から離れ────

 

『そらそら、まだまだいくぞォッ!』

 

────る事なく、再び振り抜いて邪神の肉体を切り裂いていく。

 

一度手元から離れた筈の大剣が、何故手元にあるのか。その種明かしは非常に単純なものだった。何処までも加速し、振り抜く勢いも加速的に加算される中で振り抜かれた大剣は、如何にネオ・グランゾンでも制御が難しい。

 

握り続けるのが難しいのなら、回収するスピードを上げればいい。手元から離れるのと同時にワームホールで回収すれば、即座にグランゾンの手の内へ戻り、次の攻撃へ移行できる。そうすれば常に全力の一撃が繰り出せる。

 

そして、修司の悪知恵はそれに留まることはなく、気付けばグランゾンの両手には各々大剣が握り締められていた。

 

一振から二振り、二振りから更に三振りへ、二体のヴォルクルスを足止めしている二体のネオ・グランゾンから借り受けた大剣により、実質三本の大剣を扱うようになっていた。

 

 これは昔、当時の修司が技に於いて決して敵わないとされてきたとある剣豪から着想を得た奥義。彼の様に一振で三つの斬撃を繰り出すことは叶わないが、この限られた状況では少しだけその領域に近付く事が出来る。

 

つまり、技で再現するのではなく、物理的に剣を増やすことで修司は彼の剣豪の真似事をグランゾン越しに出来るようにしたのだ。

 

 目にも止まらぬ早業と、ゴリ押しの力業。その二つを兼ね備えた乱舞は、邪神ヴォルクルスの再生速度を上回り……。

 

『───ほらよ、オマケだ』

 

『────ア────』

 

無数の斬撃によって細切れにされ、トドメに全方位からのワームスマッシャーを一身に受けた邪神の一体は、断末魔の声を上げることさえ赦されず消滅した。

 

『………次』

 

 燃え滓の如く散っていく邪神を一瞥もせずに、修司は次の獲物を見る。相変わらず呑気に召喚された場所で陣取っているヴォルクルスだが、同位存在が一方的に処断された場面を目の当たりにした所為か、その圧力はナリを潜めている。

 

『どうしたヴォルクルス、お仲間がやられた事がそんなに意外か? 割りと繊細なんだな』

 

と、呆れと侮蔑の混じった嘲笑に、邪神は再び勢いを取り戻す。分かりやすい反応に修司は笑みを浮かべるが、既にこの戦いの終りは見えている。

 

 立香達が魔術王の所へ向かっている以上、自分も早いところ駆け付けなければいけない。こんな前座に時間を掛けていられないと、修司は次元の力を応用して喚び出した二体の自分達に目を向ける。

 

彼等も同じ思いなのか、返ってくるのは肯定の二文字。声や姿は確認できないが、二体のグランゾンから頷くのを確認すると、修司は残るヴォルクルス達に向けて最後の一撃をプレゼントする。

 

『────さて、そろそろ終りにしようか』

 

 瞬間、ネオ・グランゾンの身体から光が発せられ、直上に向けてゆっくりと浮遊していく。これ迄の勢いとは異なり、緩やかに上昇していく蒼き魔神を見て………とある大海賊は声を張り上げる。

 

「面舵逃げろォーーッ!!」

 

星の開拓者であるフランシス=ドレイクのその叫びを発端に、多くのサーヴァントが退避を始める。あるものは戦車で、ある者は綺麗なフォームでダッシュし、またある者は魔術で転移していく。

 

そんな判断の早い英霊達に感心しながら、修司はカルデアに連絡を入れる。

 

『ね、ねぇ修司君? 君、一体何をするつもりなの? 何を仕出かすつもりなの? あ、別に教えなくてもいいようん。聞いた瞬間、僕の胃が死に絶えそう』

 

『ちょっと超新星爆発を起こして、銀河ごとコイツらを消滅させてくるね』

 

『──────ファーーッ!?』

 

『うわぁ! ロマニ室長代理が倒れたぁ!?』

 

『ちょ、泡吹いてる! 衛生兵、衛生兵ーッ!!』

 

 奇声を発し、泡吹いて倒れるロマニを尻目にしながら修司はグランゾンの力を解放させる。目の前の、自分と何らかの因縁のある邪神を完全に消滅させる為に、蒼き重力の魔神は遂にそれを発動させる。

 

『────相転移出力、最大限。縮退圧、増大』

 

日輪が、輝きを放つ。修司の言霊が進むにつれて、日輪の輝きは強く増していき、一つの亜空間が広がっていく。それは修司の操るグランゾンだけではなく、他の二体の機体も同様に日輪を輝かせ、その力を解放させていく。

 

瞬く間に広がっていく波紋は、英霊達を除いた全てを呑み込んでいく。二体のヴォルクルスも、特異点である時間神殿そのものが、グランゾンの開く門の奥へと呑み込まれ………消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付けば、其処は見知らぬ所だった。特異点でもなければ地球上でもない、彼等の見知らぬ別の世界。世界の裏側とも違う……全く未知の別世界であり。

 

そこは、無数の魔神柱と二体の邪神が終る世界だった。

 

 嵐が吹き荒れる。空には稲妻が走り、天が赤子の様に泣きじゃくっている。何もかもが暗闇に包まれた世界で────奴等はいた。

 

二体のヴォルクルスを囲む三体の魔神。

 

『重力崩壊臨界点、突破………』

 

 魔神の胸部が開き、三つの球体が各々顕になる。同時に重力の変動値は加速的に変化していき、一つの終末に向けて収束されていく。

 

『特に思い入れはないが、これで………お別れだ』

 

圧縮されていく。時間が、空間が、あらゆる事象が、魔神の下へと集い、圧縮され、凝縮されていく。恒星の8倍分に相当とされるそのエネルギーは、三体の魔神の各々の手の中へと集い………そして。

 

『お前達の存在を、この宇宙から抹消してやろう』

 

それは完成する。

 

 瞬間、暗雲は吹き飛び、光が魔神柱と邪神に注がれる。それは幻想的であり、神秘的で、悲しい程に美しく。

 

『────眠れ、永久に』

 

笑ってしまう程に、絶望的だった。

 

魔神柱◼️◼️◼️◼️は嗤った。こんなの、勝てるわけがない。

 

魔神柱◼️◼️◼️は泣いた。自分達は、何もかもが間違えていた。

 

魔神柱◼️◼️◼️◼️◼️◼️は憤った。何故奴と関わった。

 

とある魔神柱達を逃がした◼️◼️◼️◼️◼️◼️は目を逸らした。せめて、安らかに逝きたいと。

 

自分達は、喧嘩を売るべき相手を間違えた。既に魔術王との繋がりは断たれ、あらゆる希望を砕かれた彼等が最後に目にしたのは………。

 

『縮退砲………発射!』

 

 落とされる三つの破界の雫。弾け、爆縮し、解放される光に呑み込まれながら………邪神とその取り巻き達は、とある宇宙から完全に消滅するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「漸く、辿り着いた」

 

 一方、修司が天地開闢の光で有象無象を撃滅している頃、光る門を通り、不可思議な路を突き進んできた立香達は遂に其処へ辿り着いた。

 

穏やかな空間、後ろの門の外側では英霊達が奮起しているとは思えない静けさ。いっそ穏やかとも言えるその玉座にて………彼の王は鎮座している。

 

第4の特異点以降、直接相対するのはこれで二度目。人理焼却の元凶、魔術王ソロモンを前に藤丸立香は真っ直ぐ見据える。目を合わされただけで呪い殺せそうな魔術の王に、一切臆する事なく見据える。

 

そんな彼女を一瞥し、王は口を開く。

 

「ようこそ、カルデアの諸君。歓迎しよう」

 

 その顔に、飛びきりの邪悪さと悪意を滲ませて、遂に彼女達は決戦の舞台へ辿り着いた。

 

 

 

 

 

 





Q,これ、逃げ延びた魔神柱いるの?

A,勘の良い一部の魔神柱が逃がしてくれました。
尚、それが良かったのか悪かったのかは別のお話。

次回、色彩~黄金の炎~

それでは次回もまた見てボッチノシ



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