『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

393 / 417

今回で、第七特異点は終了。




その164 第七特異点

 

 

 

「──────う、ん」

 

 微睡みの意識が浮上し、目を覚ました藤丸立香が目にしたのは、澄んだ青空。流れ往く雲を見送りながら、混乱する意識を落ち着かせ、今が人類悪の一つであるビーストⅡとの決戦のただ中だった事を思い出した立香は勢いよく跳び跳ねる。

 

ティアマトは、ラフムは、一緒に戦っていた皆はどうなったのか、何だかこの短い間に気を失う事が多い気がする事を自覚しながら、立香は隣に寝息を立てているマシュを優しく起こす。

 

「ふみゅ~………先輩? おはようございましゅ……」

 

 取り敢えず、マシュの方は何ともないようだ。やや寝惚けている様子のマシュを尻目に周囲を見渡すと、立香は今自分達のいる場所がウルクであると理解する。

 

いや、それは最早ウルク“跡”と呼べる程に荒廃としていて、荒れた街並みがあの戦いが現実であった事を裏付けてくる。果たしてあの後一体何が起きたのか、立香は自分なりに思考を巡らせていると………。

 

「お、起きたみたいだな」

 

聞き慣れた………あの人の声が聞こえてきた。振り向けば立香の想像通り、上半身が裸の修司が、なんて事ないように佇んでいて。

 

「取り敢えず………お疲れさん」

 

 手を伸ばしてくるハイタッチを促してくる彼に、立香もまた笑顔で応え、伸ばされた修司の掌を、思い切り叩くのだった。

 

『………ビーストⅡの霊基崩壊、完全に確認。三人とも、本当にお疲れ様。特に修司、おめでとう。君の健闘ぶりは歴史にこそ記される事はないけど、僕たちは決して忘れないことを誓うよ』

 

「なんだよロマニ、そう言う割には顔が暗いぜ?」

 

通信機器も回復し、感度良好に通信してくるロマニ。彼の心からの称賛は立香達に今回の戦いの完全勝利を実感させるが、労うその口振りに反して彼の表情は何処か暗かった。

 

『だってさ、君、地球をぶち抜いているんだよ? え? なに? 君って実はマジモンの戦闘民族だったりするの? 出てくる作品(ジャンル)間違えてない?』

 

案に修司を人外認定してくるロマニだが、彼のその言い草にもある程度の理解はされていた。何せ幾らビーストⅡを倒すためとは言え、修司は一度地球を文字通りぶち抜いているのだ。

 

しかもビーストⅡことティアマトが消滅する際、修司の位置情報は宇宙にあるとカルデア側に示されているのだ。他にも、修司の身体から発せられていた白銀の輝きやその力の凄まじさ、仰天過ぎる出来事を多々目撃したロマニは、皮肉な言葉を出すので精一杯だった。

 

「ンな事言われてもなぁ、俺は夢中で戦ってただけだし………」

 

そんなカルデアの司令代理に、修司は呑気な口調で返答する。全てはティアマトという人類悪を倒す為に必要だった事、その際に生じた過程の事を注意されても仕方がない。

 

ロマニもそれが分かっているからこそ、それ以上追及してくる事はなかった。とにもかくにも、今はただビーストⅡという強大な敵を撃ち押せた事を喜んでおこう。

 

「………あの、蒸し返すようで申し訳ないんですけど、あの後冥界はどうなったのでしょうか? それに、皆さんへのご挨拶がまだですし……」

 

「冥界の事なら、心配は要らないわよ」

 

 ティアマト神という元凶を倒せた事で、この特異点は間もなく修正される。その間に心残りが無いようにあの後に起きた出来事の説明を要求するマシュに、ロマニ変わって第三者が答えた。

 

「あ、イシュタル! 良かった。無事だったんだ!」

 

「この私があの程度で死ぬわけないでしょ? こう見えて、しぶとさには自信があるんだから」

 

立香達と一緒に最後まで戦ってくれたサーヴァント。天の女主人ことイシュタルが、冥界への杞憂は必要ないと、断じる勢いで応えてくれた。

 

「本来なら、生きた地上の人間に手を貸したペナルティとして、エレシュキガルには近い内に罰が下されるでしょうけど、今回はもしかしたら比較的軽めに済むかもしれないし」

 

「え? ば、罰って?」

 

「本来、冥界の神は生者に対して個人的な事情で力を貸し与えることは禁忌とされているの。幾らティアマト神を倒す為とは言え、冥界は死した者に残された安住の地。それを侵したら、喩え冥界の女神であっても厳罰は免れないわ」

 

「けれど、この場合はその限りではない。そうでしょ、イシュタル?」

 

「え、う、うそ………」

 

「ケツァルコアトルさん! 生きて、生きていたんですね!」

 

 本来であればエレシュキガルは厳罰に処され、何らかのペナルティを受ける必要が出てくる。不穏に語るイシュタルだが、その不安を払拭する様に新たに二つの気配が近付いてきた。

 

そのうちの一つが、ティアマト神の足止めの際に自ら身を散らしたと思われていた太陽の神、ケツァルコアトル。ジャガーマンに肩を借りながら姿を見せた彼女に、立香とマシュは眼に涙を溜めながら彼女の下へ掛けよった。

 

「いやー、本当に大変だったんだからぁ。ククルんてばお星様になり掛けてるし、あのまま放置してたら黒い泥にフェードインしていたし、私が決死の覚悟でレスキューした後、生き残ったウルクの人達と安全な所に移送して、その後冥界へダイヴ。……誰か、真面目にアタシの事褒めれ」

 

「マジかよジャガ村先生、ちょっと有能すぎない?」

 

自分達がティアマト相手に奮闘していた一方、陰ながら大金星を挙げていたジャガーに、修司は心の底から感心し、褒め称えた。悪側面のある神霊にしては面倒見が良いのは、もしかしたら依り代となっている人物の影響なのかもしれない。

 

「立香、マシュ、そして修司、おめでとう。あなた達の奮闘、遠くからではありますが見させて戴きました。────そして、修司」

 

「うん?」

 

「ありがとう。アナタの存在は私達神々に大きな意味をもたらしてくれました」

 

 未だに宝具の反動によるダメージは重く、片足を引き摺る太陽神。しかし、それでも持ち前のルチャドーラ精神で明るく振る舞い、立香とマシュに抱き付く彼女は、今度は修司へと向き直り、その頭を下げた。

 

「お、おい、いきなりどうした?」

 

「貴方が踏み込んだ領域。それはこれ迄の人類史の中でも誰も到達出来なかった場所、アナタはこの日、人類の進捗を大きく前進させたのよ」

 

修司が至ったとされる新たな可能性。それは山の翁の眼を以てしても捉えられず、黄金の王の見識を以てしても不明とされた未開の領域。人類の歴史を大きく前進させたと豪語するケツァルコアトルに、修司は今一つ理解できなかった。

 

「───ふふ、今は分からなくても大丈夫。だって私にも分からないんだもの。アナタはこれ迄通り、アナタらしく進んでくれればいいわ」

 

「なんか、神様ッポイ事を言うな。………神様だったわ」

 

「そうデース! 私は太陽神ケツァルコアトル! ルチャを愛し、ルチャに生きるルチャドーラ!」

 

「おっと、そろそろアタシ等も退去っぽいニャ。そんじゃ青年少女達、サラダバー! あ、そうそう、カルデアに戻ったら是非とも喚んでね! きっと喚べる筈だから! 具体的に言えばエから始まってヤで終わる三文字名前の人に宜しく言って─────」

 

言いたいことを言って、目の前から“座”へと退去していく神霊達。その賑やかさから最後までらしさを感じた立香達は一緒に戦ってくれた戦友二人に手を振って完全に消える最期まで見送った。

 

途中、何やら早口で捲し立てるジャガーマンの事を忘れる事にして。

 

「さて、それじゃあ私達は歩きながら話しましょうか。立香も色々と聞きたい事がありそうだし」

 

「あ、うん。なんかドクターから聞き捨てならないことを聞いたんだけど………修司さん、地球をぶち抜いたってどゆこと?」

 

 ケツァルコアトルとジャガーマンという二柱の神霊と別れると、イシュタルに促されるままウルクの市内を歩いていく。その際、ロマニが言っていたとんでもないことを事実を思い出した立香は、改めて修司に訊ねた。

 

「あー、うん。なんかそうらしい」

 

「そ、そうらしいって………」

 

「いや、確かに自覚はあったし、覚えてもいるよ? でも、実際孔は塞がれているんだよなぁ」

 

ティアマトと修司の見舞った最後の攻防、その力比べに打ち勝った修司は、ティアマトを地球の裏側へ物理的に追いやり、地表を超えて宇宙へ弾き飛ばした。

 

自らが開けた孔を通って、最後の一撃を見舞った所までは覚えているのだが………逆を言えばそれだけ。その直後の記憶はあやふやだし、気が付けばウルクの大地に立っていたのだ。

 

恐らくは特異点修復に於ける事象だろうとロマニは推測している。

 

「それは多分、聖杯の影響だろうね」

 

「あ、マーリン! いなくなったと思えば此処にいたんだ!」

 

「チッ、イキテタフォーウ。シブトイフォーウ」

 

「────なぁ、この小動物、絶対人間並みの知能持ってるよな?」

 

 そんな立香達の疑問に答えたのは、焼け残った家具の椅子に腰掛けるマーリンだった。花の魔術師の登場に立香達も沸き立つが、フォウだけは唾を吐き捨てていた。

 

『って言うか、聖杯は君が回収していたのかい?』

 

「まぁね。そこのトンチキ君が聖杯の回収を忘れてたから焦ったけど、地球(ガイア)が幸いにも手をのばしてくれたから、こうして僕が回収できたって訳」

 

「ガイア? どうして自衛隊最高戦力の超軍人が出てくるんだ?」

 

「修司さん、それ多分違うガイア」

 

聖杯を回収出来たのは地球のお蔭。その言葉のニュアンスを今一つ理解できない立香と修司は揃って首を傾げているが、あまり気にする必要はないとマーリンは言う。

 

「簡単に言えば、私達の住んでいる地球は独自の意志を持っていて、地球の願いに呼応した聖杯が君の開けた孔を塞ぎ、私の手に流れてきたという事さ」

 

「ふーん。地球にも意志、ねぇ」

 

「実を言うと、エレシュキガルの厳罰が軽くなるかも、ていう話しも其処から来てるのよね」

 

「え、そうなの?」

 

「個人的な事情で力を貸し与えることは冥界に対する裏切り、けれど今回は人類悪となったティアマト神を倒すのに必要な手段、そして………」

 

そこまで言うと、イシュタルは修司を一瞥し………。

 

「星すらぶち抜く大バカ野郎の出現なんて、予測出来るわけがない。という言い訳があるからね」

 

地球を貫き、自ら住まう惑星に風穴を開ける。そんな事例なんてこれ迄無かったことだから、これ等を含めてエレシュキガルただ一柱に責任を負わせるのは無理がある。よって、エレシュキガルに下される罰は比較的に軽く済むのではないか? と言うのが彼女の見解である。

 

「そっか、それならいいの……かな?」

 

「良いのよ。アンタはただ、あの子の事を憶えてくれれば。それだけで満足だって、言ってたし」

 

(ん?)

 

憶えてくれればそれでいい。その言葉のニュアンスに何処か引っ掛かりを感じるが、今の自分達に其処まで気を回せる余裕はない。もうじき特異点の修復は本格的に始まり、立香達は直にこの地を後にする。

 

それまでにはアイツと顔を合わせてやろうと、改めてイシュタルが歩くことを促すと、それを知ったマーリンが椅子から立ち上がる。

 

 

「さて、それじゃあ私もそろそろお暇するとするよ」

 

「マーリン、ありがとう」

 

「────フフ、以前の私はそう言った言葉を聞いても何の感情も沸かなかったのに、今は少し違う。私も、多少はマトモになったのかな?」

 

「では、一先ずさようなら。カルデアの諸君、君達に澄み渡る青空があることを………ファンとして、共に戦った仲間として、祈っているよ」

 

 この特異点が修正されれば、マーリンは再びあの塔へ幽閉される事となる。他人の人生を物語(スクロール)としてでしかマトモに認識出来ない夢魔。

 

自分と同じく、それでいて違うやり方で新しい紋様(エンド)を刻み込んだカルデアの一行に、彼なりのエールを送りながら、聖杯をマシュの盾に託してその場から消えていった。

 

そんな彼を先の神二柱の時と同様に最後まで見送ると、遂に立香達は其処へ辿り着く。ウルクを見下ろす高台、ジグラットの屋上─────天の丘である。

 

そこに、彼はいた。

 

「来たか。思っていたより遅かったではないか」

 

「ぎ、ギルガメッシュ王!?」

 

「ど、どうして此方に!? いやそもそも無事だったのですか!?」

 

 目の前の黄金の王は、修司の受けた傷を引き受けて、自らの終焉を望んでいた筈、だから目の前で平然としている事に、立香もマシュも大層驚いていた。

 

「いや、我はちゃんと死んだぞ? 今この場に立っているのは、英霊としての我よ」

 

笑いながら死んだと笑う王に、二人は見るからに肩を落とした。とんだブラックジョークだと憤慨している立香を愉快に笑いながら、人類最古の王は修司へ視線を向ける。

 

「────さて、我の命令通り、やり遂げた様だな」

 

「あぁ、無茶振りを振られるのは昔から慣れているからな。それに応えるのも………な」

 

 思い返すは、ウルクがイシュタルの宝具で崩壊する最中、伸ばした修司の手を振り払った時。

 

『────貴様が勝て』

 

王が下した最期の指令。その内容を完膚なきまでに遂行して見せた修司に、王は不敵に笑みを浮かべた。

 

「本来であれば、英雄王としての我の姿を見せてやるつもりだったがな、その必要はないと思い止まったわ」

 

「え? ど、どうして?」

 

「惚けるな。既にカルデアに居るのだろう? 嘗ての我が」

 

「そ、それは………」

 

「良い。大体の予想はついている。大方、余興と称して遊び呆けているのだろう? 我が事ながら眼に浮かぶ」

 

 本来ならティアマトとの決戦時に参戦するつもりだったとギルガメッシュ王は言う。ただ、修司の戦い振りと強さを目の当たりにし、その必要はないと安堵し、見守る事に専念できた。恐らくは、カルデアに居るもう一人のギルガメッシュ王による采配なのだろう。呆れた様子で修司を見やる王は、深く溜め息を溢した。

 

「────此度の戦いに決着を着けた貴様等には褒美を取らせたいところだが………生憎と、土産になるようなモノはこれしかない」

 

そう言って修司に手渡してるのは、麦酒の注がれた黄金の盃。見るからに未成年である立香では飲めないので、代わりに修司が受け取り、一息に飲み干した。

 

「…………旨いな、これ」

 

「当然よ、我がウルクの名産だからな」

 

「いや、て言うかアンタそれ、普通に聖杯じゃない!?」

 

「ウルクの大杯!? ど、どうしてこれを!?」

 

「言ったであろう、土産になるのはこれしかないと」

 

「でも、俺としてはこの麦酒の方がよっぽど価値があったよ。成る程、勝利の美酒とは良く言ったモノだ」

 

 ウルクの大杯を土産として持たされる事よりも、飲み干した麦酒の味の方が修司にとって価値は大きかった。この麦酒にはこれ迄過ごしてきたウルクの全てが詰まっている気がして、それだけで修司は嬉しかった。

 

「さて、本来なら此処で終わる所であったが、最後に一つ話しておくべき事があったな。小僧、貴様は以前シドゥリの事で思い悩んでいた時があったな」

 

「…………うん」

 

「その嘆きは確かに正しい。だが、話しはこれだけでは終わらないのだ。知っていたか? シドゥリには遠縁の甥っ子がいたことを」

 

「────え?」

 

「ゴルゴーン討伐の当日、例の化け物が北壁を半壊させた時、貴様は身を呈して北壁から化け物を遠ざけた。お蔭で彼の少年は今日まで生き延びる事が出来た」

 

「───────」

 

「胸を張れ。貴様は確かに、シドゥリの遺志を守り通したのだ」

 

 守りたかった人は、守れない。それが自分の宿命だと、修司は半ば受け入れていた。どれだけ強くなった所で、大事なモノは守れないと。

 

けれど、そうじゃなかった。シドゥリという女性を失っても、喩えその縁が細くても、修司は彼女に連なる確かな意思を───守る事が出来たのだ。

 

 目元から、涙が溢れてくる。大の男が情けないと、どれだけ拭っても、涙が止まる気配はない。そんな、声を圧し殺して泣く修司を、立香達は敢えて触れない事にした。

 

「全く、男が簡単に涙を流すなと言うのに………まぁ、此度の活躍を以てそれも由としよう。────藤丸立香」

 

「は、はい!」

 

「此度のシュメルでの旅路、どうであったか? それなりに長く滞在した筈だと、我は記憶しているが?」

 

泣きじゃくる修司を尻目に、王は立香へと訊ねる。此度の旅はどうだったと、明らかに確信している様子のギルガメッシュ王に対し、立香はマシュと顔を見合せて………。

 

「「楽しかったです!」」

 

「フォーウ!」

 

 大変な事があった。辛いことも、悲しいことが多くあった。けれど、それと同じくらい痛快で、ハチャメチャで、ワクワクした旅でもあって………だから、彼女達がそう応えるのも、必然だった。

 

そんな彼女達の快活な言葉に、王は笑う。

 

「ではさらばだ、カルデアの! 此度の戦い、まさに痛快至極の大勝利! 貴様等の帰還を以て、魔獣戦線は終結とする! 人理焼却、必ずや阻止して見せよ!」

 

「「ハイッ!」」

 

 最後まで不敵の笑みを絶さないまま、黄金の王は消えていった。これで、本当に終わり、長い長いウルクでの旅を終えた立香達、そんな彼等を迎え入れる様に、カルデアからの回収作業が始まった。

 

「それじゃあ、私も行くわ。新しいウルクの王朝が建てられるまで見守るのが、私の最後の役割だしね」

 

「イシュタルもありがとう、貴女のお蔭で色々助かりました」

 

「そう? なら、お返しはカルデアに召喚された後にゆっくりと回収させてもらうわね。………所で、そっちに褐色白髪の弓兵がいたりしない?」

 

「あ、それなら俺がキチンと紹介するから、心配しなくていいよ」

 

 カルデアの厨房から、弓兵の悲痛な叫び声が聞こえた気がしたが、修司は全力で聞こえないフリをした。

 

「さて、それじゃあ立香、マシュ、修司、縁があったらまた会いましょう。その時は、そっちの時代を楽しませて貰うわね」

 

そうして、天の女主人は立香達と別れ、空へと飛翔していく。そんな彼女を見送りながら、立香達はカルデアへと帰還していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「─────終わったか」

 

 一方、北壁にて。ギルガメッシュ王から最期の命令を遣わされていたレオニダス、ラフムとの激闘を制し、遂に最期まで立ち続けてきた守護の英霊は城壁から砦を後にする人々を見守りながら、一人言葉を溢す。

 

「まさか、私が最期まで生き延びるとはな」

 

これ迄、長く険しい戦いの連続だった毎日が、今日を以て終わりを告げる。人類最古の王に喚ばれ、人々を護り続けてきた盾の英雄レオニダス。

 

これから生き延びた人々にはこれ迄以上の苦難が待ち受けているだろう。けれど、レオニダスは確信する。人類の歩みは終わらず、これからも一歩ずつ進んでいくのだと。それが、いつか彼等と出会う縁に繋がるのだと、隻腕の英霊は優しい笑みを浮かべて………消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「よもや、この吾が人の為に戦う事になるとはな」

 

 所変わってエビフ山のとある場所。女神イシュタルの目を掻い潜って、これ迄生き延びた一匹の鬼。自分の事を棚にあげて、下山していく人々を見送りながら、天の邪鬼な小鬼は一人愚痴る。

 

「ふん。まぁ、これも一つの余興と思えば、悪くない日々であったわ。そうであろう? 酒呑」

 

最も、人間の為に戦うなど懲り懲りだと溢しながら、羅生門の鬼もまた消えていく。

 

人も神も、全てが集い戦った魔獣戦線。決して語られる事のない戦いの毎日は、こうして幕を下ろすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────定礎復元───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緊急事態発生(エマージェンシー)緊急事態発生(エマージェンシー)

 

“カルデア外周部 第七から第三までの攻性理論、消滅。不在証明に失敗しました”

 

 それは、最後の戦いの合図、これ迄カルデアの全員が望み、待ち望んでいた瞬間。

 

“館内を形成する疑似霊子の強度に揺らぎが発生。量子記録固定帯に引き寄せられています”

 

“カルデア外周部が2016年に確定するまで、あとマイナス4368時間”

 

“カルデア中心部が、2016年12月31日に確定するまで、あと◼️◼️◼️◼️時間 です”

 

 それは、人類の焼失を望み、実行し、破壊してきた絶対的敵対者からの招待。

 

漸く、此処まで来た。七つの時代を巡り、漸く辿り着けた決戦の舞台。

 

もう、言葉はいらない。もう、遠慮はいらない。持ち得る力を結集させて、挑むのみ。

 

故に、Dr.ロマニは宣言する。

 

「本日を以て、カルデアの全職員の人命は、ロマニ=アーキマンが預かる。─────マスター、藤丸立香。並びに白河修司。そしてマシュ=キリエライト」

 

「これより一日の休息を与える。精神、肉体の状態をベストコンディションに。君達がこの管制室に戻ってきた時、カルデアの最後の作戦を開始する」

 

「向かうべき特異点の名はソロモン。終局特異点、冠位時間神殿ソロモンだ─────!」

 

 

 

 

 

 

 





Q.じぃじはどうしたの?

A.ボッチがティアマト撃破を確認した後、特異点から去りました。

キングハサンはCOOLに去るのだ(cvずんだもん

Q.結局、地球は治ったの?

A.聖杯「私が頑張りました」


次回から、いよいよ最終決戦。どんなハチャメチャが巻き起こるのか、それとなく楽しみにしてくれたら幸いです。

それでは次回も、また見てボッチノシ







“◼️◼️◼️の極意・極”

ランク・◼️◼️

それは、修司が至った可能性の極致。至り続けた先に見いだした新たな境地。

それは己の理を以て相手の理を破界する理であり、己の理を以て創世させる理である。

その極致に果てはなく、その強さに限りはない。天を超え、次元を超え、法則を撃ち破る新たな法則。

神を超え、悪魔をも凌駕し、いずれ◼️◼️へ至る為に。

白河修司の────シンカは終わらない。






▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。