『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回、あまり話が進みません。

脱線ばかりで申し訳ありません。


その153 第七特異点

 

 

 

「修司さん!」

 

 立香達がエリドゥへ辿り着いたのは、正体不明の神性が爆散した直後だった。天変地異の如く揺れる大地に困惑するも、これ迄の旅路でそう言った事態に慣れていた立香は、差程動揺することなく修司の所へ合流を果たす。

 

広場に残されているのは重軽傷者で呻くウルクの人達と修司、並びに先行していたイシュタルのみ。てっきりラフムで溢れていると思っていただけに、その光景は少しばかり拍子抜けだった。

 

いや、違う。ラフムは恐らく此処にいたのだろう。浚われたウルクの人達らしき亡骸や、怯えた人々の反応から、此処で如何に残酷な惨劇があったのか、今の立香には想像できなかった。

 

ただ、一つだけ言える事は修司がまた無茶をしたと言う事。最初に合流していた時点で、相当なダメージを負っていた筈の修司が、己の負担を顧みずに突出し、エリドゥの広場に集まっているラフム達を打倒した。

 

けれど、それを責める言葉は………立香にはなかった。

 

「修司さん、シドゥリさんは?」

 

「………………」

 

 エリドゥへ訪れた立香達の本来の目的、シドゥリの有無を確認する立香に………修司は、目を伏せる事しか出来なかった。悲しそうに、或いは悔しそうに拳を握り締めて感情を圧し殺している修司に、立香もマシュも何も言葉に出来なかった。

 

「修司さん、取り敢えず休もう?」

 

震える修司の拳を、立香が解すように包み込む。暖かい人の温もりを受けた修司は、気を遣わせてしまった立香に申し訳なく思い。

 

「あぁ、そうだな。少し………休もうか」

 

彼女の優しさに、少しだけ甘える事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうか、謎の神性は倒されたか』

 

「あぁ、なんとかな」

 

「結局、その謎の神性って言うのはなんだったのかしら? イシュタル、貴女は何か心当たりない?」

 

「無いわね。私も神としてそれなりの見聞は積んできたつもりだけど、あんな神性見たことがない。あの禍々しさ、どちらかと言うと悪霊とか怨霊の類いなんじゃないの?」

 

 既にエリドゥに囚われていた人々は解放され、ジャガーマンの護衛のもと、人々はウルクへ続々と避難していった。中には重軽傷者も含まれているが、其処は古代人。並外れたバイタリティは既に現代人を大きく凌駕しており、特に兵士だった者は最低限の応急処置を受けた後、直ぐに動けるようになり、ジャガーマンの手伝いをしながらウルクへと引き返していった。彼等の足ならば二日と掛からずにウルクへ辿り着けるだろう。

 

彼等が無事にエリドゥから離れる事を見届けるまで広場へ留まる事になった一行、その間に起きた出来事をイシュタルが代わりに説明すると、話の話題は例の神性へと移った。

 

『悪霊かぁ、そう言うの聞くとエレシュキガルの事を必然的に連想させるけど………』

 

「無いわね。一度敗けを認めておきながら不意討ち見たいな事をする程、アイツの性根は腐ってないわ。寧ろ、自分の管轄の者が好き勝手暴れていると知ったら、五体投地の勢いで頭を下げるわよ」

 

 修司が倒したとされる神性、そのおぞましさと禍々しさからイシュタルは悪霊や怨霊の類いだと推察するが、かといってエレシュキガルの関係者とは有り得ないと断じてくる。

 

そもそも、エレシュキガルが従えているのは冥界に潜むガルラ霊しかおらず、あの様な化け物は存在しない。

 

「なら、北壁に現れた化物に付いてはどうかしら? ウルクの兵士の皆さんが言うには、ギルタブリルと似ていると聞きましたが?」

 

「確かに伝聞では造形こそは似ているみたいだけど、それはただパッと見ただけで、本質的にはまるで別物よ。何より、あれを魔獣の司令塔と言うには邪悪過ぎるわ」

 

 北壁に現れた化け物も、造形こそシュメル神話の魔獣と似ているが、根本的な部分は全くの別物だと、ケツァルコアトルの問いにイシュタルは答える。

 

北壁の化け物とペルシャ湾の神性、この二つの存在に共通するモノとして言葉にし難い禍々しさというものだった。神と呼ぶには邪悪に満ち、怨霊と呼ぶには強大すぎる。

 

『でも、仮にアレが怨霊の集合体だとしても、彼処まで自我と形を形成出来るのかい? いや、そもそも集合体と言うには、あの神性は完成されている』

 

 シュメルに現れた二つの巨大な神性、それらを怨霊の集合体と仮定してロマニは推測するが、それでも魔術的に考えて色々と不明瞭な点が見受けられる。そもそも、怨霊とはこの世に強い恨み辛みを抱いた魂が時間と共に濃縮され、その果てに行き着いた一種の末路だ。

 

時間を掛ければ掛ける程、魂は元の形を忘却し、現世に影響を与える頃には原型を失くしてしまう。それが集合体となるのなら尚更で、彼処まで完全な形となって現れるのは魔術的に難しいのではないかと、ロマニは語る。

 

「そう言えば、修司は何か心当たりがあったみたいだけど………」

 

「──────分からない」

 

そう言えばと、北壁で化け物が現れた際の修司の反応を思い出したケツァルコアトルは修司に訊ねるが、修司は首を横に振って分からないと口にするだけだった。誤魔化しでもなければ嘘を吐いている素振りもなく、あの時沸き上がった嫌悪と怒りに修司自身が戸惑いを感じている様子だった。

 

「────異界の破懐神、だそうだよ」

 

「「「ッ!?」」」

 

 その時、森の奥からキングゥが姿を現した。その後ろには無数のラフムを引き連れ、彼の笑みには薄っぺらな笑みが張り付いている。

 

「キングゥッ!」

 

「ゴルゴーンの最期を看取って以降姿を見せなかったけど………わざわざ兵隊を集めに戻っていた訳ね」

 

「はは、そんな訳ないだろ? 彼等は母さんが無尽蔵に産み出した尖兵、僕の様な完成品とは程遠いけど、だからこそ増産は容易い。君達がたかが十数人の人間を懸命に救っている間に、既に数億というラフムが産み落とされているんだよ?」

 

これ迄と同じ、人類の敵対者であるキングゥは何処までも人間を見下している。既に母は目覚めた。もう人類に勝ち目はないと、自らそう告げてきたキングゥに、立香達は何も言い返せなかった。

 

事実として、ラフムの数は無尽蔵に増えていき、今もペルシャ湾から侵攻を続けている。対してウルクの兵力は数百強、数という点において既に人類に勝ち目はなかった。

 

「おい、キングゥ。お前今、異界の破壊神って言ったか?」

 

 誰もが圧倒的な数の差に内心で戦慄を覚えていた時、修司だけは別の事について思考を巡らせていた。それはキングゥの口から漏れた破壊神という単語、それだけ聞くとインド神話のシヴァを想起させるが、彼の異界というもう一つの言葉が話をややこしくさせている。

 

異界の破壊神とは何か、それを問い詰める修司にキングゥは溜め息を溢しながら口にする。

 

「そんなの僕は知らないし、興味もない。魔術王が頻りに自慢気に語るから、頭の奥でこびりついていただけさ。………あぁでも、幾つか気になる事を言っていたね」

 

「?」

 

「僕は知らないけど、君の相棒とやらとあの化け物は同じ性質なんだって? 君、本当に人類の味方なの?」

 

「っ!」

 

「─────え?」

 

 その言葉にこの場で反応したのは立香とマシュの二人のみ、他の面々はなんの事だと首を傾げるばかりだが、通信の向こうではロマニ達も動揺が広がっている。

 

修司の相棒であるグランゾン。カルデア側も認知しているが、その全容は現代の科学を大きく凌駕する技術(オーバーテクノロジー)の結晶であり、白河修司の相棒である事以外その全てが一切不明とされている謎多き機体。

 

何故修司の相棒であるグランゾンが、先の化け物と似た性質を持っているのか。誰もが疑問を抱くなか、修司だけは何処から納得した面持ちでキングゥを見据えている。

 

「へぇ? その様子だと自覚はしていたみたいだね」

 

「そ、そうなの修司さん!?」

 

「────あぁ、確証はなかったが」

 

 思えば特異点を修正する旅に於て、修司はあまり積極的に相棒を出そうとはしなかった。その理由としてはこれまでグランゾンを出す程の窮地では無かったことと、グランゾンを出した際に生じる特異点への影響が計り知れなかったこと、大きく分けてこの二つが相棒であるグランゾンを出さなかった理由になるのかもしれない。

 

第一、第二特異点は純粋に危険度の低さから。

 

第三特異点は修司の拘りと、何より出す暇もなかったから。

 

第四特異点では魔術王の介入で初めて相棒を出撃させる事ができ。

 

第五特異点では、第三と同様に出す暇の無さと心の迷いがあったからで、第六特異点では聖都に囚われた人々を考慮したから、グランゾンを出すことが出来なかった。

 

そして神代である古代シュメルの世界。ロマニも言う通り神代はそもそもが不確かな時代であり、其所へレイシフトを行う事自体が難行だとされている。其所へグランゾンという超弩級の存在を遠慮無く出されたら、それこそ第七の特異点を辛うじて成り立たせている土台を破壊しかねない。

 

だからグランゾンは出せない。そう、思っていた。

 

(けれど、違う。多分、そうじゃなかったんだ)

 

 思い返すのは第四特異点の時、久々に呼び出したグランゾンの力は心なしか、いつもより出力を上昇させていた。それは久し振りに力を出せる事だけじゃなく、呼び出された環境に喜んでいたからだ。

 

あの時、自分とグランゾンは特異点のただ中………即ち、魔力の海とも呼べる環境にいた。

 

つまり………。

 

(俺の相棒、グランゾンは………魔力といった霊的力を吸収する特性がある、という事か)

 

 これ迄、根幹としているシステムとは別に(・・・・・・・・・・・・・・・)、グランゾンの動力源となっているのは縮退炉や対消滅エンジンに類するモノかと思っていた。

 

 そもそもグランゾンは自身のブラックボックスを明らかにしたくないのか、修司以外の者に触れさせようとはせず、近付く者全てを昏睡させ、その中には黄金の王も含まれている。

 

長い時間を掛けてスキャナーやシステム面からアクセスしてどうにか引き出したのが、上記に記される動力源に関する二つの情報と、そこから導き出した推察だけだった。

 

これまでは修司に対して絶対的なまでに従順で、修司自身も頼もしい相棒として頼ってきた。しかし、この特異点修復の旅に於て新たに浮かんだグランゾンに対する事実に、動揺はせずとも困惑をしてしまうのは………仕方の無い事だった。

 

 科学技術だけでなく、魔術的な技術も盛り込まれている節のある相棒。別にそれ自体に不服を思うことはないが、それがあの二つの化け物とどう結び付くのが、修司には不思議でならなかった。

 

「それと、こんな事も言っていたな。“黒の叡知”魔術王は黒の叡知とやらに触れ、世界の外側の理を知ったんだとか」

 

「く、黒の………」

 

「叡知?」

 

「何よそれ? ケツァルコアトル、あんた知ってる?」

 

「いえ、私も初耳デース」

 

“黒の叡知”。キングゥから紡がれる新たな単語に一同は戸惑いを顕にするが、不思議と修司にはその言葉に既視感を覚えた。

 

“獣の血”

 

“水の交わり”

 

“風の行き先”

 

“火の文明”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゲッター……ビームッ!!』

 

『ロケット、パーンチ!!』

 

『フィンファンネル、行けぇッ!』

 

 脳裏に浮かぶ情景、それは過去か未来か。

 

『キラァァァァッ!!』

 

『アスラァァァンッ!!』

 

『もっとだ。もっと寄越せ、バルバドス!』

 

 空で、海で、大地で、宇宙で。

 

『俺が、俺達が……ガンダムだ!!』

 

『ヴィルキス、飛べぇッ!』

 

『ダブルバスター、コレダーッ!!』

 

 鋼の巨人達が戦っている。無数に存在する可能性の果て、数多の敵から己の信じる者のために。

 

『イデオンガン、発射ぁッ!』

 

『貫く、奴よりも………速くッ!』

 

『断空ゥ……弾劾剣ッ!!』

 

 そして、それら鋼の巨人達の中に………。

 

『ブラックホールクラスター………発射』

 

 剥き出しの特異点を操る蒼き重力の魔神がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ、う………」

 

「修司さん!?」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 突然脳裏に過る数多の映像(ビジョン)、その情報量の多さから堪らず修司は眩暈を覚える。頭を抑えながらよろける彼に、只事ではないと察した立香とマシュが気遣うが、修司は大丈夫だとある確信を抱きながら改めてキングゥへ向き直る。

 

「成る程、つまり魔術王は黒の叡知とやらに触れた故に、あんな化け物を此処へ召喚する様になったわけだ」

 

「さぁね。僕にはあの怪物が何なのかなんて知らないし、興味もない。ただ、アレはお前を異常なまでに敵視しているみたいだからね。僕達はただ、その憎悪を利用しただけさ」

 

修司の問いにあっけらかんと答えるキングゥだが、彼の言葉に嘘を吐いている様子はなく、修司達もそれを信じる事しかなかった。ただ一つ現時点で言えることは、あの神性を持った怪物は修司を激しく憎悪しており、執拗にその命を狙ってきている。

 

あんな化物に恨みを売った覚えも買った覚えもない修司だが、黙ってやられるつもりもない。襲ってくるのなら、正面から受けて立つしかない。

 

「───さて、そろそろお喋りはおしまいにしよう。君達を此処で殺し、僕達は母さんをウルクへ迎え入れる準備をしなくちゃいけないからね。お前達旧人類はギルガメッシュと共に終わりを迎えるんだよ」

 

 言いたいことも終わり、全てを終わらせようとキングゥは周囲のラフム達に指示を飛ばす。数という圧倒的アドバンテージを以て、押し潰そうと迫るラフム達を前に、修司達は身構える。

 

「さぁ、やれ! 旧人類の時代を終わらせて、新しいヒトの時代を築くんだ!」

 

全ては自分を産んだ母に対して、母の願いを聞き入れたキングゥがその泣き声を止める為に、兄弟達(ラフム)へ命令を下した時。

 

「───────え?」

 

キングゥの胸元から、黒い触手の腕が生えてきた。

 

「キングゥッ!?」

 

「ば、バカな。お前達、一体………何のつもりだ?」

 

 突然の光景に目を見開く立香達だが、誰よりも驚いていたのはキングゥだった。ラフムは自分と同じ神の造り出した泥から生まれた神造の生命体、同じ母から生まれ落ちた自分に、一切の躊躇無く刺し貫いてきたラフム。その口許は強い失望の色を滲ませていて。

 

「オマエハ………ツマラナイ」

 

その言葉には、何処までも悪意が染み込んでいた。

 

「ラフムが………喋った!?」

 

「既に、其処までの知性を得ていたと言うのですか!?」

 

『確かにラフムは互いに共感覚を待っていて、其処から凄まじい速度で学習しているのは推測出来たが、幾らなんでも早すぎる!』

 

 あり得ない速度で人間の言語をマスターしつつあるラフムに立香達は驚きを隠せないが、前例を知っているだけあって、修司とイシュタルは落ち着いた様子だった。

 

「母は言った。人間を知れと、だから我々は人間を調べた。学び、調べ、培った」

 

「素晴らしい! 人間は素晴らしい!」

 

「殺すのが楽しい! 壊すのが楽しい! 泣いて喚く姿が面白い! 人間は、余すこと無く愉しい!」

 

言葉は流暢だが、そこに含まれる悪意は最早泥のようにおぞましかった。言葉を真似ても意志疎通は出来ない、改めてラフムの脅威を目の当たりにした立香はその悪意に負けないように大地を踏み締める。

 

「そして………お前はツマラナイ」

 

「キングゥはツマラナイ。だからもう要らない」

 

「出来損ないは、もう要らない」

 

「僕が、出来損ないだと!? 量産型の分際でッ!!」

 

自身を出来損ないと嘲笑されたキングゥは怒りを顕にするが、彼の内から貫かれた箇所から力が抜けていき、マトモに身動きが取れないでいる。

 

その時、キングゥの貫かれた触手に光が宿る。それは幾度と無く目の当たりにしてきた聖杯の輝き、第七特異点を歪めた聖杯はやはりキングゥに埋め込まれていた。

 

「出来損ないはもう要らない。だから、聖杯は母へ贈る」

 

「じゃあね、キングゥ、バイバイ」

 

 ブンッと、放り投げられたキングゥは放物線を描きながら地に落ちる。呻き声を漏らしながら立ち上がると、キングゥはそのまま森の中へと消えていった。

 

「逃げた! 出来損ないが逃げた!」

 

「狩りだ! 狩りだ!」

 

「面白い! 面白────」

 

負傷し、聖杯の力を失ったキングゥは、そのまま放っておいても消えるだろう。しかし、ラフムは逃げるキングゥを追って始末しようと後を追う。其処にはただ命を弄ぶ悪辣しかなく、その悪趣味さに思わず修司は気弾を放ち、ラフムの行軍を遮った。

 

「修司さんッ!」

 

「此処は俺が何とかする。立香ちゃん達は聖杯の回収を!」

 

 既に、エリドゥには多くのラフムが侵攻している。先に逃げたウルクの人々を逃がす為にも、誰かが此処で時間を稼がなくてはならない。

 

故に、残された選択肢は必然と立香達に委ねられる事になる。修司の言葉の意図を理解した立香は聖杯を回収しようと動き出すが───。

 

『聖杯を取り込んだラフムの形状が変化している! これは………翼か!?』

 

「させるかっての!」

 

 聖杯を取り込み、そのエネルギーで自らを空を飛べるように改造していくラフムは、翼を使って空へと飛翔する。当然イシュタルや修司がそれを阻もうとするが………。

 

『じ、時空震を感知! これは、北壁とペルシャ湾と同じ反応だ!』

 

空から三度、空間の裂け目が顕れる。其処から顕れるのは二体の怪物、地を這う化け物と空に浮かぶ髑髏が、立香達の前に立ち塞がった。

 

突然の出現に戦く立香達だが、此処で立ち止まる訳にはいかない。ケツァルコアトルが呼んだ翼竜に跨がり、ハイスピードでラフムの後を追おうとする。

 

二体の化け物がそれをさせないと動き出すが、当然ながら修司が阻んだ。近くのラフムを複数体ほど投げ飛ばして注意を逸らした隙に、立香達はその場から離脱していく。

 

「行けぇッ!」

 

 修司の言葉に背中を押され、立香達はイシュタルを先頭にラフムを追う。暗雲立ち込めるペルシャ湾、その先で待つ人類悪。果たしてこの特異点は本当に終末を迎えるしかないのか。

 

「まぁ、そんな事は今考えても分かりはしねぇか」

 

『愚カナシラカワノ一族ヨ、滅ビヨ』

 

『我ガ啓蒙二染マラヌ愚者ヨ、死ネ』

 

向けられる邪悪な視線、相変わらずこの化け物達には嫌悪感しか抱かないが、それでも修司は不敵な笑みを崩さない。

 

「上等だ。調度サンドバッグが欲しかった所だ。ラフム共々……塵芥にしてやる」

 

既に終末の時は来た。世界最後の日を迎えつつあるこの時、修司は己のやるべき行いに全力で挑むことを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────搭乗者のシンカへの兆しを確認。

 

───────“シラカワシステム”へ原初へ至るロックを段階的に解除する申請を送信。

 

 

 

 

 

 

 

 

─────受諾、完了。

 

 

 

 

 

 





Q.大丈夫これ、ボッチ変なことになってない?

A.既に変だから無問題(笑)


それでは次回もまた見てボッチ。





オマケ。

Apocrypha+1


「さて、どうにか目的地まで辿り着けたみたいだが……もう始まってるか」

「修司、俺は……みんなの所へ向かいたい。勝手な事を言うようで申し訳ないが」

「あぁ、早く行ってあげな。俺は俺で聖杯の情報を集めておくからさ」

「済まない。どうか気を付けて!」

「おーう。………さて、此処まで何も仕掛けて来なかったと言うことは、ジーク君を見逃してくれたと思っても良いのかな?」

「アレは元々、我々ユグドミレニアの所有物よ。一時は気の迷いで逃がしてやったものの、戻ってきた以上最早逃がしはしない。そして、我が領土に土足で侵入する不埒者よ、我が槍に断罪される覚悟は良いな?」

「生憎と、俺にはやらなきゃいけない事があってな。悪いが押し通るぜ」

「良い啖呵だ。であれば………死ぬが良い!」

 広大な戦場に、黒い槍と白い炎が激突した。



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