『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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その142 第七特異点

 

 

 

 南米の太陽神、ケツァルコアトルの襲来から一夜開け、王の命令の下に門の修繕は滞りなく完遂され、被害にあった兵士達も手の空いていた人々の看病のお陰もあり、全員今朝には無事に元の持ち場に復職を果たすことが出来た。

 

女神の強襲という事件が起こったのにも関わらず、相変わらずウルクの人々の活気は薄れる事はなく、現在はいつもの風景を取り戻していた。

 

それは神代であるという事と、女神の強襲と言うのが割りと頻繁に起きているからという前例があるからという事で、此処でもウルク市民のバイタリティの強さが垣間見えた気がした。

 

 そんな人々が活気に満ちた生活を続ける中、一人だけ憂鬱な顔した人間がウルク南門にて立ち尽くしていた。言わずもがな、件の張本人にして巻き込まれた人物、白河修司である。

 

「あ、シュージだー! ねぇねぇ、女神様からぷろぽーず、されたんでしょ? 結婚するのー?」

 

「こら、あまり込み入った話をするものではないの。すみませんシュージ様」

 

「あ、はははは………いえいえ、お気になさらず」

 

通り掛かった子供に突き付けられる現実、決して直視したくなかった事実を前に、修司は頬を引きつらせた。そんな修司を察した母親が子供をやんわりと叱り付け、修司に何度も頭を下げながらその場を後にする。

 

「いやはや、君もこの一日で随分と有名になったものだね。まぁ、私が噂を流したんだけどね!」

 

「おう花男、お前いつか絶対にシバクからな? 覚悟しとけよ?」

 

 そんな修司を揶揄しながら現れるのは、花の魔術師マーリン。昨日の騒動を面白おかしく脚色し、ウルク市中に広めた元凶である。

 

本来なら拳の一つでもプレゼントしてやりたい所だが、此処最近魔獣との戦いに備えてウルクの市内は少しばかりピリピリとしていた。適度な緊張感は場を引き締めるのに丁度いいが、過度なソレは市民一人一人に無用な圧を与えかねない。

 

心の余裕を失えば戦線は瞬く間に瓦解し、人類は成す術なく全滅するだろう。それを危惧し、対策を取るために女神からの求婚という話題は渡りに船な話だった。

 

名誉な事なのか、それともはた迷惑な事なのか、何れにしても面白い話なのは間違いない。お陰でウルクの市の人々はめっきりその話題に夢中になり、その好奇心は人々の心を僅かに蝕んでいたモノを瞬く間に拭い去ってしまった。

 

そんな人々の様子を知っているからこそ、修司もまた噂が広まる事を由とした。尤も、それはそれとしてマーリンをシバク事は絶対に覆したりしないが。

 

「で、ですが、本当にいいのでしょうか。その、修司さんと女神ケツァルコアトルの婚姻の件は………」

 

「大丈夫さマシュちゃん。奴さんも言ってただろ? 俺が奴の婿になるのはあくまでこの決闘で負けたらの話だ。要は勝てば良いだけの話なのさ。……そう、勝てば良いんだ。────絶対に、勝たなきゃなんねぇ」

 

「おおう、修司さんが嘗てない程に燃えている」

 

 心配そうに訊ねてくるマシュに、修司は大丈夫だと返答する。気丈に振る舞っているが、次の瞬間にはその表情は強張り、その顔は強い決意に満ちていた。

 

まるで第三特異点で復活した大英雄、ヘラクレスと相対した時の様な緊張感。だが、自分の将来に関係している戦いがこの先待っていると思うと、修司の抱く緊張感は無理もないモノだった。

 

何せ、彼の心の中には既に────。

 

『所で、向こうには既に決闘の準備が出来ているっぽいけど、具体的にはどんなリングが建設されているのかな? もしかして、高圧電流が流れている電流デスマッチとか!?』

 

『はいはい。でも、ダ・ヴィンチではないけど確かに気になる所だね。幾ら修司君が神霊にも負けない強さの持ち主でも、相手は一つの神話の代表的な神霊だ。可能な限り情報は欲しいな。という訳でマーリン、君の千里眼で何か見えたりしない?』

 

「うーん、そうしたいのは山々だが、千里眼の多用は厳禁だ。ちょっと他の事に魔力を使っているからね。第一、女神の観察なんかしたら確実に相手にバレる。覗き見をされた女神を何をするか、多くの神話が雄弁に語ってくれている。そうだろう、イシュタル?」

 

「えぇ、殺すわ。全権能を使って、そいつのいる場所に宝具をぶっ放すわ」

 

 物凄くイイ笑顔でそんな事を宣うイシュタルに、マーリンもほらね? と肩を竦めている。女神を怒らせるのはまだ(・・)早いと、そう言って千里眼でケツァルコアトルを調べられないと語るマーリンに、この場でそれ以上追求することはなかった。

 

『………はぁ。千里眼の使用を制限している、なんてコト、もっと早くに言って欲しかったな。どうりでマーリンにしては大人しいと思ってたんだ。キミ、もう自分に出来る手は打った後だったのか』

 

「はは、まぁそれも此方の修司君のお陰で随分と楽できたんだけどね。ともあれ、今の私に出来るのは精々相手に対するちょっとした嫌がらせ程度さ。本格的な戦闘はあまり期待しないでくれると助かる」

 

「─────」

 

既にマーリンは手を打った。それが何に対して、どの様な手段だったのか。暗にそれは語りたくない様子のマーリンに修司は密かに推測を立てる。

 

「じゃあ、やっぱりこのまま正面から挑む感じで良いのかな? あの女神様なら、多分伏兵とか置いてなさそうだし、修司さんとの決着を望んでいるのなら、下手に横槍なんてしない方がいいかもね」

 

『個人的には、正直推奨したくないんだけどね。相手は太陽神ケツァルコアトル、その強さはこれ迄戦ってきた相手の中でも五本の指に入る手練れだ。修司君の消耗を考えると、指令代行としては素直に頷けないな』

 

 本来であれば、ケツァルコアトルは古代メソポタミアとは縁もゆかりもない神性だ。南米に位置する神話体系出身の彼女が、何故あそこまで高い神性と権能を発揮しているのか。既にその事に当たりを付けたロマニは、半ば確信した様子で自身の考えを口にする。

 

『恐らく、ケツァルコアトルが拠点としているエリドゥ市にある“彼女を祭る神殿”が原因だろう。以前修司君が密林の女神達と戦闘した際に強い魔力反応があったからね。恐らく間違いはない筈だ』

 

『神殿を成立させるには象徴となるシンボルが必要だ。ケツァルコアトルが持つとされる宝、翡翠剣マカナか太陽遍歴ピエドラ・デル・ソル。このどちらかなら、神殿の祭壇として成立する。だから───』

 

「シンボルを破壊して神殿を停止させ、ケツァルコアトルの神格を落とす」

 

『その通りだアナ。その後ならケツァルコアトルが相手でも多少の勝機がある。まして、それが修司君が相手ならば………』

 

「あ、じゃあそれは無しで」

 

相手が強大な力を持ち、それでもなんとか出来る手段があるのなら、それを模索するべきだ。その考え自体は修司も賛成できるし、それが今後の為になるというのならそれも吝か出はない。

 

しかし、今回に限って修司は同意しなかった。

 

『───一応、理由は聞かせて貰えるかな?』

 

「勿論、当然理由はあるぜ。それはあのケツァルコアトルが、現時点で誰もが認める最強の女神だからだ。純粋な膂力で言うのなら、ゴルゴーンすら凌駕しているだろうよ」

 

「ふむ。折角相手が強いのだから、それを弱くさせてまで勝つと言うのは戦う者としてフェアではない。という事なのかな?」

 

「そうじゃない………と言いうと嘘になるな、けれど本当にそれだけじゃないんだ。───もう、皆も薄々気付いているだろうからぶっちゃけるぞ? 正直な話、今回の特異点に於いて本当の戦いはゴルゴーンを倒してからなのだと、俺は確信している」

 

『………………』

 

「マーリン、お前さ、別件に魔力を使っているから千里眼は多用出来ないって言ってたけど、それはお前が以前に言った意識を停止する事が出来ないって言うのと関係あるんだろ?」

 

「……あー、そんな事言ってたかなぁ?」

 

「あ、ごめんマーリン。修司さんにそれ教えたの私だ」

 

「えぇ?」

 

「いやだって、マーリン睡眠とか取れていないみたいだし、ロマニもマーリンの事毛嫌いしているし、王様に至っては仕事量で相談できないし、だったら後は話せるのは修司さんくらいしか思い付かなくて………」

 

「『うぐぅ』」

 

 嘗て北壁にて溢したマーリンの愚痴にも似た現状報告、それを修司にチクっていた事に物申したかったマーリンだが、立香の正論の前で押し黙らされてしまう。ロマニも、マーリンの事を毛嫌いしていたのは事実なので、同じく黙り込んでしまう。

 

「別に、その事自体は俺もなんとも思っちゃいない。王様の指示なら勿論の事、それがお前の判断で、それがウルクの人達を守る事に繋がっているのなら、俺から言える事は何もない」

 

「そ、そうかい?」

 

「けれど、今回の件で確信した。王様はゴルゴーンとの戦いを可能な限り戦力を残した状態で乗り越えたいと考えているんじゃないのか?」

 

これ迄のウルクでの生活で、王が修司を進んで戦場に送り出す事はしなかった。確かに、ギルガメッシュ王は自分達の力で切り抜けると豪語しただけあって、極力余所者である修司達を頼らず、雑用だけを押し付けて様子見をしていた。

 

ウルクの、今を生きる人間達の力だけで三女神という脅威を乗りきってみせる。その意気込みは今も健在なのだろう。しかし、それと同じぐらい自分達を後の脅威に対する保険として温存しておこうと言う意図があったのではないだろうか。

 

自分をゴルゴーンの神殿に自分が先走って突っ込まない様に諌めてきた事も、そう考えれば辻褄は合う気がする。勿論、これは修司の憶測と推測からくる妄言の類いであることは修司自身が充分理解している。

 

しかし、どうも違和感が拭えないのも、また事実。賢王と、花の魔術師マーリンは共に千里眼という特別な眼を持った者達だ。そんな彼等がこの先の未来で何を見たのか、それを理解できるものは限られている。

 

「ゴルゴーンを討った後、更なる戦いが待っているのなら、頼れる味方は少しでも多い方がいい。それが太陽神なら尚更だ」

 

『………それが、君の正面から戦う理由かい?』

 

「あぁ、個人的理由も当然あるけどな」

 

 アレコレ理由や理屈を並べても、結局行き着く結論はそこだ。相手が強い奴ならば、万全なそいつと正面から戦ってみたい。ヘラクレスやクー・フーリン、他にもこれ迄数多くの英傑英霊と戦ってきた修司は、自然とそんな欲求を抱くようになっていた。

 

『………全く、その余計な一言が無ければ僕も素直に頷けたのになぁ。修司君、今のキミ、結構ケルトっぽいの………自覚出来てる?』

 

「流石にそれは言い過ぎじゃね? 訴訟も辞さないぞ?」

 

別に俺は相手を殺すことに拘ってはいない。そう愚痴る修司にロマニは深いため息を吐いて一蹴する。

 

『そういう所だよ。殺す事じゃなく戦い自体に意味を見出だすとか、ケルトよりも戦闘民族だよ』

 

「うぐぅ」

 

『けど、君の言うことも尤もだ。だから………今回は目を瞑るよ。どのみち、戦うのはキミなんだ。だったら僕はそれを応援するだけさ』

 

「………悪いなロマニ、気を揉ませて」

 

『ホントだよ。全てが終わったら、酒の一杯位奢って欲しいモノだよ』

 

 呆れ、本音を言えば不満タラタラなロマニだが、最終的に修司の提案に同意する事となった。どちらにせよ、戦うのは修司本人だ。女神から名指しで指名された以上、既に彼の逃げ場は何処にもない。

 

「まぁ最悪、修司君がケツァルコアトルの婿になるだけだからね! 夫が人類の為に戦うというのなら、妻である彼女も無視は出来ない筈さ! 何せあの熱の入れ具合だ。ベッドの上で口説き文句の一つでも言えば、コロッと此方側に付いてくれるかもしれないよ?」

 

「………あの、マスター? どうして私の耳を塞ぐのです?」

 

「マシュには知らなくていい台詞が飛び出てきたからだよ」

 

「?」

 

「……フォウ君、ちょっとこの花男にキツメのヤキを入れて上げて」

 

「ガッテンフォーウ!!」

 

「ブワッハァ!? その肉球攻撃を止めるんだキャスパリーグ!!」

 

「本当、自業自得ですね」

 

 サラリと度の越えた提案を促してくるマーリンに軽めの殺意を抱きながら、修司は皆と共にケツァルコアトルの待つエリドゥ市へ向かう。

 

絶対に勝たねばならない。悲壮感に満ちた決意を抱きながら、修司は南門から第一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、丸一日の時間を掛けてエリドゥ市へやって来た一行。道中にてウル市に立ち寄り、市民達から近況報告を聞いたりするのだが、やはり彼女達は相変わらず戦うという選択肢を取れずにいた。

 

その事に些かマシュは物申したかったが、修司が憤るマシュを制止させる。頑張れる人間がいれば、頑張れない人間もいるものだ。伊達に人生経験を積んでいない修司は、一応何かあった時に備えていつでも逃げられる準備をしておいて欲しい。と、それだけを告げてウル市を後にした。

 

未だに納得の出来ない様子のマシュ、そんな彼女を諭しながら歩くこと数刻。遂にエリドゥ市へ辿り着いた。

 

 鬱蒼とした密林を抜けると、修司達の前に現れたのは開けた場所、近くに巨大な斧と神殿らしき建築物のある………修司には見覚えのある場所が其処にはあった。

 

ただ一つ記憶と違うのは、巨大な四角形のリングがあるという事。リングと言っても一般的なモノではなく、地面を四角の形をロープで囲っただけのシンプルなモノ。原始的なリング、何処か戦後間もない頃の日本に流行ったとされる拳闘のリングに似た造り。

 

しかし、其処には独特の匂いがあった。これから戦いが始まるという緊張感、生物の闘争本能を刺激する戦いの匂い。そのリングの中央には、太陽神が佇んでいる。

 

「悪い、待たせちまったかな」

 

「ムーチョ、もーまんたいデース。私、デートの日には彼氏より早く待ち合わせ場所に来る質ですので、この程度、遅刻の内には入りませーん!」

 

「そうか。なら、待たせた分はキッチリと相手してやるよ」

 

 互いに軽口を交わしつつ、ロープを手に修司がリングへ降り立つ。この時点で特に呪いや何かしらの制限を掛けられた様子はない、どうやら本当にただの舞台として用意されたモノの様だ。

 

「成る程、其処の可愛らしい娘が人類最後のマスターさんなのですネ?」

 

「あぁ、俺達の頼りになる相方さ。今回彼女は勝負の見届け人だ。決して邪魔はさせないよ、その代わり………」

 

「分かっています。決して手出ししないことを誓いましょう」

 

「助かる」

 

「私が望むのは、貴方との尋常なる勝負。それが果たせるのなら、文句はありまセーン!」

 

そう言うと、ケツァルコアトルから闘気が溢れ、周囲の大気を歪ませていく。まだ間合いに入っていないのに伝わってくる膨大な熱量が、修司の皮膚を突き刺してくる。

 

ケツァルコアトルは本気だ。如何に神霊として召喚され、その規模と権能が弱体化されたとしても、彼女の内に秘められている闘志は微塵も揺るぎがない。

 

ならば、自分も本気で相手をするまでだ。ケツァルコアトルという偉大なレスラーに対抗する為、修司もまた気を解放する。

 

「さぁ、遂に始まりました無差別級タイトルマッチ! 小難しいルールは一切排除されたこのデスゲーム、制するのは果たしてどちらなのか!? 司会&実況はこの私、ジャガー藤村と───」

 

「解説は私、マーリン・花男と───」

 

「………これ、私もやんなきゃいけないの? えっと、同じく解説の金星の女神イシュタル───」

 

「以上三名でお送りするゼーット!!」

 

「………え? なにやってんのあの人達」

 

 二人の真剣勝負が始まろうとしていたその時、一体何処から用意したのか、司会と実況、解説の札を掲げた席に二柱と一人の夢魔がドヤ顔で座っている。

 

すっかり置いてけぼりの立香とマシュ、取り敢えず修司の応援をしようと声を張り上げようとした時。

 

二つの強大なエネルギーが、リング中央で激突。白河修司にとって、絶対に負けられない戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 






Q.ボッチ、戦闘民族みが高まっていない? どうしたの?

A.切っ掛けは、恐らく第三特異点。復活した大英雄との死闘の果てにリベンジを果たせた事で、闘争の醍醐味を少しばかり理解、堪能できるようになったのかもしれない。

とは言え、相手の命を断つ事までは拘ってはおらず、これからも進んで殺傷しようとは思わない模様。

Q.つまり?

A.戦いは好きだけど、甘くて優しいサイ「つまりは修司もケルトとなると言う事なのだな!」

違います。



それでは次回も、また見てボッチノシ



「お前に素晴らしい提案をしよう。お前も私の弟子(ケルト)にならないか?」

「なんねーよ」







オマケ。もしも、ボッチが時計塔に入学したら? そのいち



「───はぁ、王様の無茶ブリはいつもの事だけど、まさか魔術師を知れ。何て言われるとはなぁ」

「しかも時計塔って、確か魔術師の総本山なんだろ? はぁ、憂鬱だ」

 それは聖杯戦争に乱入し、冬木の戦いを終わらせた後、修司は英雄王ギルガメッシュに命じられ、魔術師達の総本山の時計塔のあるロンドンへとやって来ていた。

これから先、仕事上の関係で魔術師と少なからず接触する事もあるかもしれない。そんな時、連中ならどの様な対応をしてくるのか、今の内に肌で覚えてこいという滅茶苦茶な指示の下、修司は短期留学という形で現地へ赴いてきたのだ。

とは言え、魔術師の生態を少なからず理解している修司は、これからの生活に不安を抱いていた。果たして自分は魔術師達のいやがらせにキレたりしないだろうか。そんな不安を抱きながら次の曲がり角に差し掛かった時。

ドンッと、何かとぶつかった。

「アイッテテテ……」

「あーもうバカフラット、いきなり走り出す奴があるか」

「いやぁ、一般枠から短期の転入生が来るって聞いて、ついテンションが上がっちゃったよ」

「あー、キミ、大丈夫かい?」

「あ、これはどうもすみま───っ!」

 地面に尻餅を付いている細身の少年、自分と同い年の少年に手を差し出し、少年が修司の手を掴み、互いの目が合わさった時………。

電流が走った。それはまるで、捥がれた片翼を見付けたような。一生の親友を見付けたような、恋の始まりのような確信的瞬間。

「き、君の───」

「───君の、」

「「名前は───?」」

白河修司とフラット=エスカルドス。これが、後に世界の裏表の全てを震撼させる二大問題児の出会いである。



「───っ!? なんだ、今、物凄い悪寒が………」

「だ、大丈夫ですか? 師匠」



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