『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回は、時系列的に有り得ないイベントですが、あまり深く考えないで読んでくださると嬉しいです。




その119

 

 

 

√Z月δ日

 

 ネロ祭りも終わり、GNボーダーの整備点検やサーヴァント達との修行、あとは日頃の報告書をまとめること以外差程やることのない今日、最後の特異点のレイシフトに向けて諸々の調節を行っていると、あるサーヴァントがボーダーの整備中に押し掛けてきたのだ。

 

その英霊の名は沖田総司。新撰組きっての剣の達人であり、同時に病弱で実は少女だった彼女が、自分に病の治療を頼みに来たのだ。何でも常日頃からコフる自分が嫌で、サーヴァントの身になってまで病に侵されたままでは、いざという時にマスターである立香ちゃんを護れない。

 

そう涙目で訴えてくる沖田さんに、正直自分はどうすれば良いか分からなかった。マシュちゃんが短期間の内にイノベイターとして革新した理由も、その生まれから来るもので、普通ならGN粒子が生身の肉体に作用するのに数ヶ月から約一年の時間が必要になってくる。

 

更に言えば、それまでに自分はGNボーダーに付きっきりで面倒を見ていなくてはならないし、その間にいつ最後の特異点の捕捉、解明がされるか分からない。エジソンさんやニコラさん達に任せるのも一つの手ではあるが、GNボーダーを遠隔で操作するには最低でも四、五人のサポーターが必要になってくる。

 

それに、沖田さんは生身の人間ではなく霊体のサーヴァント。どんな影響があるか未知数だし、何より影響されるかどうかすら分からない。個人的に自分としては事ある事に血反吐を吐く沖田さんの体質をなんとかしてやりたいが、先に述べた通り時間的にもリスク的にも簡単に頷く事は出来なかった。

 

 上記の説明をすると、沖田総司さんは酷く落ち込み、肩を落としてトボトボと格納庫を後にした。その途中何度か足を止めて自分をチラ見していたが、最終的にはノッブこと織田信長にドロップキックされ、引き連られる様に去っていった。

 

………前々から思っていたけど、仲良いよね。彼女達。

 

 そんなこんなで格納庫でボーダーの整備をしながら過ごしていたら、何やら何処かで見た事のあるような生物が現れ、銃を乱射してきた。

 

反射的にノブノブ喚く未確認生物をぶちのめし、一通り整備を終えると立香ちゃん達の所へ向かった。其処には茶々と名乗るお面を被った少女がいたので、大阪のおばちゃん張りに用意していた飴玉を渡すと、口に頬張りコロコロさせながら自分達に危機が迫っていると告げてきた。

 

て言うか、茶々ってアレじゃん。一度は戦国統一を果たした豊臣秀吉の側室、ノッブの妹であるお市の方の娘さんで、浅井三姉妹の長女として数奇な運命を辿る女性。なんでそんな女傑が小さな女の子として現界しているのか。

 

 その後、事情説明を受けた自分は取り敢えずぐだぐだ粒子が検知して世界がヤバいという、何ともフワッとした認識で微小特異点へレイシフトを果たすのだった。

 

………我ながら、見直すと酷い内容だな。こんなんで良いのかぐだぐだ組。

 

あ、因みにロマニはノブノブな生物に気絶させられ、今回はダ・ヴィンチちゃんがモニタリングしてくれる流れになりました。

 

此処んところロマニもマトモに寝てなかったからね。仕方ないね。

 

 

 

√Z月α日

 

 そんなこんなで、茶々さんの要請により微少特異点へレイシフトを行った自分達の探索は、ペリィーチなるサーヴァントをぶっ飛ばす所から始まった。この時点でノッブはやる気を失くして帰る気満々だったが、以降の出番もなくなるぞと言う立香ちゃんの良く分からない脅しによって踏み留まった。

 

自分達がレイシフトした先の時代は19世紀中頃の日本、所謂幕末の時代だった。徳川幕府が衰退し、外国の船が訪れた事によって始まる新たな時代の幕開け。

 

坂本龍馬や桂小五郎、日本史の教科書にも載った名だたる有志達が活躍した時代。当然其処には沖田ちゃんが在籍した新撰組の事も忘れちゃいけない。明治維新、文明開化の始まる時代だ。

 

 そんな時代へレイシフトを果たした自分達を待ち受けていたのは………戦車体ノッブ、どう見てもガン◯ンクの格好をしたチビノブ(勝手に命名しました)が突然強襲し、無惨に塵芥となった。

 

いや、仕方ないやん。いきなり爆撃やら腕のマシンガンとか炸裂してきたら、取り敢えず迎撃しなくちゃいけないじゃん。マシュちゃんは立香ちゃんを護らなきゃいけないし、ノッブと沖田ちゃんは動揺して初動が遅れてたし、戦車体チビノブの狙いはサーヴァントと言えど見た目は子供な茶々さんだったし、人数的に自分が前に出るしかなかったんや。

 

まぁ、流石にいきなり気功波を放つのは悪いと思ったよ? 海割っちゃったし、デカイ水飛沫を上げたのも、やり過ぎた感があって申し訳なかったよ? でもあくまでも護る為であって、それ以外の意図は無かったんだよ!

 

そんな自分の言い訳も空しく、茶々さんから怯えた目で見られる様になってしまった。べ、別に傷付いてなんかいないんだからね!

 

 しかし、自分がチビノブ達を相手にしている一方で立香ちゃんが上手く情報を集めてくれたお陰で、面白い話が聞けた。何でもこの時代ではまだ存続していた筈の徳川幕府が倒れ、新たに織田幕府なる政府が新たに立ち上がったのだとか。

 

………うん、訳分かんないね。この突拍子のない情報には自分だけでなく沖田ちゃんやノッブ本人も驚いていたっけ。一時は混乱するも、取り敢えず更なる情報集めの為に京都へやって来た俺達、其処で細かな話を纏めていくと、徳川幕府は維新を待たずにスナック感覚で滅亡。代わりに織田幕府がインスタント感覚で出来たという。うん、やっぱり訳分かんないね。

 

他にもどっかで見た事のある長い紫髪の茶屋娘を見た気がするが……自分を見るや否や速攻で姿を眩ませました。解せぬ。

 

そんなこんなでお汁粉とお団子を味わいながらこれからどうするか思案していると………なんか往来のど真ん中で戦闘が発生。織田幕府と新撰組が争っているという事で乱入すると、其処にはノッブに良く似た別人さんがちびノブやらでかノブやらを率いて、如何にも狂戦士な男性とやりあっていた。

 

一先ずは沖田ちゃんとノッブが乱入したお陰で修羅場は逃れた訳なのだけれど、取り敢えず話を聞きたいという所に………ある選択肢が現れた。

 

即ち、新撰組の屯所か織田幕府の根城か。僅かな熟考の果てに新撰組を選んだ立香ちゃんに対し、自分は織田幕府の所へ一時身を寄せる事になった。あ、茶々さんは立香ちゃんの後をついていくことになりました。最初は如何にもバーサーカーな新撰組の人にビビってたけど、仮にも新撰組が見た目子供な茶々さんを乱暴に扱う筈がないし、向こうには沖田ちゃんもいるので心配はしていない。

 

 そんで、案内された根城に自分は身を寄せる事にしたのだけれど………その際にまたもや問題が発生。何と織田幕府と新撰組でリソース(資源)の取り合いになったのだ。本当は詳しい話を聞きたい所だったのに話の流れで上手く出来ず、自分はこの時初めて立香ちゃん達と敵対する間柄となってしまった。

 

ノッブも最初こそはマスターである立香ちゃんに罪悪感を募らせていたみたいだけど、自分が大いに暴れてしまった所為で資源が丸々こちら側に流れてしまい、ノッブの罪悪感は強風に晒された発泡スチロール並に吹き飛んでしまい、更にノッブの宝具で資源を残さず頂いてしまった。

 

うん、全面的に俺の所為だね。ごめんなさい。人数的に立香ちゃん達が有利かなと思ってかめはめ波乱発したのは流石に反省してます。何処に? 勿論空です。

 

お陰で信勝君(ノッブを演じていた人)から化け物を見る目で見られる様になりました。グスン。

 

けれどその結果、新撰組の屯所は酷い有り様となっていたので、ノッブの冷やかしついでに自分が責任以て改装する事にしました。ノッブも同情気味だったし、是非もないよね。

 

 で、その後も織田幕府と新撰組の両陣営にそれぞれ分かれて、ノッブも沖田ちゃん達にも損が出ないように上手く立ち回っていると、解析を頼んでいたダ・ヴィンチちゃんから面白い話を耳にした。

 

何でもこの微小特異点は、この特異点だけで完結した不思議な空間らしく、時間的変動が全くない様なのだ。まるで画鋲に挿された画用紙に描かれた風景画の如く、この特異点を生み出した元凶は余程先に進むという事象を嫌悪している様だ。

 

沖田ちゃんもそろそろ限界っぽいし、自分もいい加減本腰になろう。池田屋事件を切っ掛けに信勝が黒幕に繋がっていると確信した自分達は、この特異点に召喚されたサーヴァント達を適当に蹴散らしつつ前進。

 

 

途中で真田丸もといエミヤ丸なんてヘンテコな仮面を付けた赤いアーチャーが、要塞に籠って挑発してきたがグランワームソードで蹴散らし、かめはめ波で蹂躙したりと、日頃の運動不足を解消する勢いで暴れました。お陰で新撰組の副長である土方さんからも新撰組に来ないかとスカウトされました。尤も、既に自分は王様に遣えているので、申し訳ないけど丁重にお断りをさせていただきました。

 

 そんなこんなで事態は進み、今回の特異点の元凶である金色魔太閤こと豊臣秀吉の名を語る魔神柱アンドラスと相対し、一時は茶々さんが魔神柱に取り込まれ掛けたけど、自分の放ったソウルパニッシャーによって魔神柱から茶々さんを解放させ、その後は全員の一斉攻撃で有無を言わさず消滅させた。

 

………そして、これはあの魔神柱が死に際に言った一言から推測したんだけど、どうやらあの魔神柱は先のロンドンでの特異点にて自分がグランゾンを使って屠った柱達の一部だったらしいのだ。

 

ワームスマッシャーで蜂の巣になりながら、命からがら逃げ延び、その果てに力尽きた際に生まれた残留思念。 それが魔神柱アンドラスの正体でこの特異点の元凶だった。

 

うん、これ完全に俺の所為だわ。俺がきっちり始末しておけば、こうはならなかった案件だわ。自分の甘さの所為で皆に迷惑を掛けてしまったし、ノッブの前で信勝君を消滅させてしまった。

 

そう、信勝君は最初にアンドラスの残留思念に取り込まれていた茶々さんの縁から喚ばれた………ある意味魔神柱の眷属とも呼べる存在になってしまっていた。アンドラスを倒したことで現世に留まれる楔を失った信勝君は、笑顔のまま退場。ノッブに後を任せたと言って消滅してしまった。

 

二度も実の弟を死なせてしまったノッブの心情は察するには余りある。本人は気にするなと言っていたけど、これからはそれとなく気に掛けた方が言いかもしれない。

 

 で、元凶を打ち倒しこれでようやく特異点が修復されるのかと思ったのだが、此処でも一つハプニングが発生。何と、新撰組の副長である土方さんまでもが魔神柱の眷属であることが明らかとなったのだ。

 

しかも彼の場合、アンドラスに一方的に喚ばれた存在ではなく、死して自らが英霊となりサーヴァントとして現界した事に気付かないまま彷徨っていた所へアンドラスが顕現する前提となってしまったらしいのだ。

 

信勝君と同じ魔神柱の欠片を埋め込まれた土方さん。しかしその経緯は全く以て事なっており、信勝君が茶々さんから続く信長の縁という前提として召喚された事に対し、土方さんは前提条件としてアンドラスを擬似的に甦らせた元凶の元凶となっていたのだ。

 

この特異点を停止させていた一因も彼の精神性が影響されているのだろう。その後、死ぬわけには行かない。俺がいる限り新撰組は不滅だと吼える土方さん、暴れる彼を正面から止めたのは沖田ちゃんと立香ちゃんだった。

 

「今の沖田さんの新撰組は、ここだよ」 そう自分の隣が沖田ちゃんの居場所だと口にする立香ちゃん、彼女のその一言によりこれ迄土方さんと戦うのを躊躇っていた沖田ちゃんは腹を括り、土方さんと戦うことを決心した。

 

自分? いや、流石に一騎討ちの状態で横槍するのは流石に駄目でしょ。二人の気持ちを無下にする気もしたし、この時の自分は大人しく応援だけに留まる事にしました。

 

 その後、無事に土方さんに勝利した立香ちゃんと沖田ちゃん、消滅する間際まで新撰組であることを止めなかった土方さんと、何かしらのやりとりをしているのを見届けた後、自分達は特異点から帰還。無事にカルデアに戻ることが出来た。茶々さんと一緒に。

 

それで、この茶々さんなんだけど、妙に立香ちゃんの事を気に掛けるんだよね。ダ・ヴィンチちゃんが言うには、子供を気に掛ける母親みたいなものだとか。

 

頼光さんやブーディカさんといい、なんか母性の強い女性サーヴァントが増えてる気がするのは………自分だけかね?

 

 あと、余談だが自分は茶々さんとは余り顔を合わせて無いんだよね。いやね、なんか知んないけど顔を合わせ辛いのよ。一回通路でバッタリと蜂合わせてから、何故か説教されたし。なんだよ、頑張りすぎって。

 

頑張ってるのは俺だけじゃないんだから、別に気にする必要はないと思うんだけど………まぁ、暫くは大人しくするかね。勿論、次の特異点が判明次第、即行動を起こすけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、立香といいお前といい、もっと自分を大事にするし! 言うこと利かない子はお尻ファイヤーするんだからね!」

 

「いや燃やすなよこえーよ。て言うか、何で俺にまで気に掛けるんだよ。立香ちゃんは兎も角として、俺は成人した男だ。自分の事くらい自分でやるよ」

 

「そうやって頼光ちゃんとかブーディカちゃんの気遣いを無視してきたんでしょ! そういうの、茶々良くないと思う! 人の好意は素直に受けとるべきだし!」

 

「はいはい。わーったよ、ナイチンゲールさんを呼ばれるのも嫌だし、今日は大人しく休むとするよ」

 

「ふっふーん。それでいいし。後でお汁粉持ってくるから、立香達も交ぜて一緒に食べるし!」

 

「おう、んじゃ楽しみに待ってるよ」

 

 自室へと続く通路、大人しく休むと口にした修司の背中を茶々はその背中が見えなくなるまで見送った。

 

「本当、此処は頑張りすぎる子が多すぎるし、二人とももう少し休むことを覚えた方がいいと思うな」

 

人理が焼却され、帰る家も世界ごと失った人達。そんな辛く過酷な環境の中でそれでも彼等は未来を取り戻す為に戦い続けている。

 

正気の沙汰じゃない。少なくとも、茶々は戦い続ける二人を前にそう思った。家族を失い、帰る家を失くし、それでも泣き言を口にしないで頑張り続ける立香。

 

そんな彼女と未だ幼いマシュ、そしてカルデアの全てを守る為に日々を修練に費やす修司。

 

二人とも、頑張りすぎだ。特に修司は自身が成人しているからと言って、率先して働き過ぎているきらいがある。幾ら体が丈夫だと言っても、休む時は必要だ。

 

それに、彼女は知っている。知ってしまっている。白河修司が幼い頃に両親を失い、天涯孤独の身の上である事を。カルデアのデータベースを悪戯心で覗いた時、ほぼ偶然閲覧してしまっていた。

 

母の愛を知らず、父の強さを知らずに育った男。勝手な解釈かもしれない、余計なお世話かも知れない。

 

けれど………。

 

「そんなの、寂しすぎるではないか」

 

理不尽を許さぬと吼え続ける一匹の狼。その心の傷を癒すため、茶々は余計なお節介だと理解しつつも、立香達のいる食堂へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 





実際、茶々さんなら現在の主人公達を見たらぶちギレると思う。母的な意味で。

あくまで個人的な見解ですので、解釈が違っても許してね。

そろそろ最後の特異点も書くつもりですので、もう暫くお待ちください。

それでは次回もまた見てボッチノシ


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