『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回も日常回。

地味ですみません。


その118

 

 

 

√X月√X日

 

 ケルトのやベー奴(スカサハ)からの試合という名の死闘を乗り切り、GNボーダーの整備とか、相棒の整備とかしているだけでここ最近平穏な時間を過ごせている今日、未だに最後の特異点の座標は特定出来ていない。

 

ロマニやダ・ヴィンチちゃんが言うには、最後の特異点の座標は神代。人類史の中でも最も古い場所に位置する為、今までの様に簡単には進まないらしい。根気のいる作業だから、皆がそれぞれ合間を縫って休みを入れたりして作業効率を底上げしているが、それでもやはり難しい様だ。

 

特異点が見付かるまでの合間、ロマニやスタッフの皆ばかりを働かせては不味いと思い、自分も立香ちゃんマシュちゃんの三人でお菓子を作り、それぞれ皆に振る舞う等の差し入れをする事で、細やかながら支援をしていた。

 

 そんな、それぞれが出来る限りの事をしている中、ローマ皇帝の一人であるネロ陛下が、オリンピアなる運動の祭典を開こうと提案してきたのだ。なんでもここ最近皆がピリピリしている為、息抜きを兼ねて英霊によるオリンピアを見せることで、スタッフ達の英気を養おうという話である。

 

人理修復の旅を初めて数ヶ月、カルデアには既に数多くの英霊達が在籍している。力自慢や速さ自慢、一人一人が一騎当千の兵の英雄達という事で、嘗てオリンピックの語源となったオリンピア開催者として、何とか盛り上げてやろうというネロ陛下。まぁ、勿論これは建前だが。

 

詰まる所、数多く在籍している英霊達の中で自分を目立たせたいという野望(?)全開マシマシでアピールしたいというのだ。

 

因みに、この話を持ってくる時には既に大会は開催準備万端だったという。協力者は………これまたローマ皇帝の方々。神祖であるロムルスさんやカエサルさんを筆頭に全面的に協力したらしい。なんでも、彼女にねだられては断り辛かったのだとか。

 

孫に甘いお祖父ちゃんかな?

 

 ともあれ、たまには息抜きも必要だという事で開催されたネロ陛下主催のオリンピア、後にネロ祭りと呼ばれる催しは開催された。内容はオリンピックというより運動会───前半は陸上をメインにした催しだった。

 

折角の機会、戦い以外に於ける力を出せる場とあって結構なサーヴァント達が参加を表明している。陸上は走るだけじゃなく、槍投げや砲丸投げという種目があるから、色んな英霊達が楽しめる様に工夫も凝らしてあった。

 

そして、各種目別にメダルもキチンと用意されている。参加賞や入賞の賞品も細やかながら用意されているから、サーヴァント達の意気込みも意外と高め。色々と安全面を考慮し、偶然拾った聖杯を使って制限期間を設けて簡易な極少特異点を形成させ、開催の場を造り上げていた。

 

そんな色々とツッコミ所満載なオリンピア。珍しく浮かれる英霊達に混ざって、自分も数種目だけ参加する事となった。これでも自分は陸上の選手だった身、元いた世界では未だ記録を破られていない記録保持者なのである。

 

今回は名だたる英雄達が参加する運動会、部活の時のような加減はせず、一選手として本気で挑むことにした。

 

 で、早速始まった100m走なんだけど………決勝で惜しくも敗退しました。入賞こそ出来たものの、メダルを手に入れる事は出来ませんでした。

 

いや速ぇーよギリシャの韋駄天二人、アタランテの姐さんもそうだけど、アキレウスの奴も尋常じゃなく速かった。特に初速、自分が界王拳を使おうとする頃には、既に彼等がゴールテープを切っていた。食い付いて行けたのは、自分を含めてクー・フーリン位だったな。今後、新たにスピード自慢のサーヴァントが来てくれたら、もう一度挑んでみたいモノである。

 

そして次に自分は1500m走に出場したのだが、此方はアッサリな程に早く片が着いた。先のギリシャ産韋駄天の二人が出ていない事もあってか、長距離走では界王拳も使う必要がない程に快勝する事が出来た。

 

 その後、出場種目を終わらせた自分は会場のあちこちを見て回り、アーチャークラスのサーヴァントはアーチェリーで競ったり、ランサークラスは槍投げ、バーサーカーはハンマー投げなど、皆それぞれ楽しんでいる様子を見ることが出来た。

 

因みにフェンシングではデオンが無双をしていた。元々細剣が得意だった為なのは分かるが、並み居るセイバー達を相手に完勝していく様は流石に驚きが隠せなかった。特に円卓の騎士の一人であるガウェイン相手にストレート勝ちを奪う瞬間は、今でも鮮明に覚えている。

 

て言うか、ガウェインの聖者の数字って屋内では使えないのな。てっきり時間に依存するスキルだと思っていただけに意外だった。………いや、アルトリアさんの反応を見る限り、多分素で忘れてたな。

 

 しかし、そんなフェンシングで無双していたデオンも円卓最強の前に破れる事となり、優勝はランスロットのモノとなった。何でも彼はマシュ(正確にはマシュの中にいる息子)に格好いい所を見せようとしていたらしいが………うん、取り敢えず応援はしていたよとだけ伝えておいた。

 

いや、応援をしていたのは本当だよ? メッチャ冷めた視線で見下ろしていたけど、応援の方もメッチャ棒読みだったけど、何なら自分がせめて形だけでも応援してやれと言わなければ、一切声を掛ける様子はなかったけど、それでもちゃんと応援はしていたから。

 

………その後は、立香ちゃんと合流するまで自分にベッタリしてたけどね。最近のマシュちゃん、なんか矢鱈と俺に懐いてない? 大丈夫? 俺ランスロットに斬られたりしない?

 

 と、まぁ色々あったけどそんな訳でオリンピアの前半部分の日程は滞りなく進み、余計なトラブルは特になく、参加していた英霊やモニタリングしていたスタッフ達を含め、皆それなりに楽しんでくれた様で何よりだった。

 

明日から後半の部が始まるみたいだし、何が始まるのか楽しみにしておくとしよう。

 

 

 

 

√X月√ω日

 

 ───なんて、そんな風に考えていた時期が、俺にもありました。

 

いや、内容的には大した事はないんだけどね。別に普段からサーヴァント同士の模擬戦とか日常茶飯事だし、それが彼等の糧になるのなら特に此方から言うことはなにもない。

 

でもさ、幾らオリンピアの会場が闘技場(コロッセオ)に似てるからって、本当にバトル形式にしなくても良くない? しかもチーム戦とか。

 

まぁ、安全面に考慮したシステムを施しているみたいだったから別に良いけどさ………本当にその辺りの根回しとか上手いよな、カエサルさん。ダビデと対を為す口先の魔術師と言われるだけあるよ、本当に。

 

で、参加者は前半に参加していたサーヴァントがほぼ全員で、中にはこれ迄大人しく観戦に専念していた王様系のサーヴァント達も何名か参戦し、自分も他の英霊達のやる気が上がるからという理由で参加する事になった。

 

殺る気ですね分かります。

 

そして肝心なチーム分けなのだが、くじ引きにより自分が組んだ相手は王様──英雄王その人だった。

 

 確かに自分の知る王様も祭りや何かしらのイベントには積極的に参加してたし、冷やかし気分で楽しんだりしていた時もあったが、まさかこんな無茶振り感の強い催しにも参加するとは思わなかった。

 

とは言え、別世界の王様といえど、人類最古の英雄王の前で無様な姿は晒せない。初戦から征服王&エルメロイ先生という強力タッグを相手にする事となったが、それでも王様は序盤手を出すことはなかった。

 

征服王の宝具は“王の軍勢”、固有結界からの地平線まで続く彼の臣下という名の盟友達。加えてそれらをほぼ強化していくエルメロイ先生の補助能力、さらに此方の動きを阻害しようと的確に邪魔をしてくるのだから、全く本当に厄介な相手だった。

 

最初こそは出会い頭にかめはめ波で数を減らしたけど、それ以降は一人一人を相手に肉弾戦で相手していった。雑兵と思われていた兵士の一人一人が手強いから時間は掛かるし、エルメロイ先生の妨害工作が要所要所で炸裂するから、まぁイチイチ手間取って仕方がないこと。

 

征服王が自分に負けたら我が軍門に降れ、何て笑顔で言って来るから、此方も笑顔で断ってやった。そんな自分に益々その気になった征服王が更に臣下達を喚び出そうとした時───彼の王が動いた。何処までも広がる砂漠地帯に、あらゆる刀剣が降り注ぐ地獄絵図。これ迄退屈そうにしていた王様が、器用に自分だけを外して大群を消し飛ばしていた。

 

王様はただ一言「疾く片付けるぞ」とだけ言い、自分との共同戦線を張ることとなった。以前にも似たような状況はあったが、今回はあの時よりも王様と近い位置にいる気がして、現金な自分は勢い任せて界王拳を使い、一気に征服王とエルメロイ先生のコンビを降した。

 

 その後も太陽王&ニトクリスさんや、騎士王&獅子王という名だたる強敵達を降し、最後に待ち構えていた自称カルデアの歌姫(ネロ&エリザベート)を退け、第一回オリンピア改めネロ祭りは………無事に自分達の勝利となった。

 

優勝賞品は、今回の主催者であるネロ陛下から自画像が刻まれたのメダル、純金製である。無駄に凝ってある品ではあるが正直いらないのだが………まぁ、これも記念という事で貰っておく事にした。

 

次も必ず開催するぞというネロ陛下の言葉を最後に、今回の大会は幕を下ろすのだった。

 

………どうでも良いけれど、今回の催しで妙にスカサハが大人しかったのが個人的に気になった。出場していたのも槍投げだけだし、後半の部に至っては影も形も見当たらなかった。

 

大人しくしている分にはいいのだけれど………なんだろう、嵐の前の嫌な静けさに似ている気がして、少し落ち着かない。反応したらそれはそれで面倒な絡みがありそうなので、取り敢えず今はスルーしておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ白河修司、此度の演目にて貴様が負けたら改めて余の軍門に降らぬか!?」

 

「ハッ、寝言は寝て言えよ征服王。幾らアンタの誘いでもそればっかりは受けられねぇよ!」

 

 迫り来る軍勢、征服王イスカンダルが注ぎ込むのは己が生涯を掛けて拾い集めた何よりも尊ぶ同胞達。苦しむ時も、悲しい時も、如何なる艱難辛苦も笑って乗り越えてきた偉大なる盟友達。そんな、質も量も兼ね備えた軍勢相手に、白河修司はたった一人でその軍勢と渡り合っていた。

 

征服王の臣下は、何れも一騎当千を誇る兵達。そんな物量を圧倒してくる修司の背中を、一人眺める黄金の王。彼の脳裏に浮かぶのは、初めて彼と出会った時の事。

 

滅んだ街の中で、恐怖と絶望に沈むのではなく、正しき怒りで立ち上がり小さくも吼えた少年の姿。あれから幾何の時が流れ、少年だった男の背中は………いつの間にか、大きく成長していた。

 

理不尽、不条理を赦さず、己の可能性という武器で戦い続ける男。

 

今はまだ、見守る事にしよう。いつか自身の臣下が果てなき旅路に出る───その日まで。

 

英雄王は、その時が来るのを確信しながら………一歩足を踏み締めるのだった。

 

 

 




次回は、時系列に矛盾のあるイベントを書くかもしれません。

ご容赦の程、宜しくお願いします。

それでは次回もまた見てボッチノシ



オマケ


「そう言えば修司さんって、サバtubeやってたりするの? エミヤからそれっぽいこと聞いたんだけど……」

「ん? あぁ、それなりにやってるよ。一応チャンネル開設してるし。基本的には料理とか作ったりしているけど、最近は他のチャンネルとコラボしてたりするな」

「へー、例えば?」

「紅閻魔様やエミヤとの料理や節制、家事テク。教授やエルキドゥさんとのフラッシュ暗算勝負。エジソンさん達との発明勝負とか、結構幅広くやってるな」

「おお、なんか凄いね」

「あぁ、でも約一名ほど共演NGの奴がいるんだけど、此処のところ共演要請がしつこくてさ、どうするか対応に悩んでるのよね」

「え、そんな人がいるの? ……因みに、相手は聞いても?」

「イシュタル。アイツ、色々やらかして他のサバtuberから出禁喰らってるのに、垢BANされても関係なしだからなぁ。俺達の間では有名な話よ」

「へ、へぇ~~」

「因みに、一番コラボしてるのは黒髭と信長だな。アイツ等ノリ良いし、ちゃんとコラボ相手の事も考えてる。再生回数では全サーヴァントの中でも五本の指に入ってるんじゃね?」

「……因みに、修司さんのチャンネルは人気あるの?」

「まぁそこそこかな? 一応需要のあるチャンネル目指してるし、機械系弄ってる時は特に視聴者が多いね」

「そ、そうなんだ~」

何だかんだカルデア生活を堪能している修司だった。




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