『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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スミマセン。メガテン5にハマってて更新が遅れました。

いやぁ、人修羅強すぎ。


その116

 

 

 

 

 人理保障機関カルデア───格納庫内部。魔術王ソロモンとその配下であるレフ=ライノールの画策により、人理焼却が果たされた世界。ごく少数の人類を残して燃え尽きるのを待つその世界で、ある試みを試されようとしていた。

 

マシュ=キリエライト。英霊との融合を目的として魔術師の手によって鋳造されたデザインベイビー、生まれたその瞬間から寿命(テロメア)を設定された彼女の余命は、第六特異点修復時点で限界を迎えつつあった。

 

カルデアの所長代理であるロマニ=アーキマンを筆頭に、多くのサーヴァント───英霊達が彼女の治療を試みたが、何れも延命処置程度で精一杯。自分は大丈夫だと強がるマシュに、表情にこそ出さないものの、皆、俯く事しか出来なかった。

 

そして第六特異点の修復も無事に完了し、いよいよ最後の特異点に向けてカルデアが再始動という所で───それは完成した。

 

 “シャドウボーダー”兼ねてから白河修司の手によって改造を施されてきたカルデアの第2プランである装甲車は、多くの技術者系統のサーヴァント達の協力の下、遂に完成の段階へ踏み切った。

 

GNドライヴという未知の動力を搭載し、改装され、改造されたシャドウボーダー改め───GNボーダーはこの日、早速その真価を発揮する時が来た。

 

『あの………修司さん? 本当に私、横になっているだけで良いのでしょうか?』

 

「うん、問題ないよ。マシュちゃんは事が終わるまでそのままでいいし、手持無沙汰が気になるのなら手元にある端末で遊んでても良いよ。ただ、くれぐれも其処の医務室から出ないようにしてね」

 

カルデアのレイシフトが正しく機能しなかった時に備え、職員全員を乗せてまるごと特異点に挑むことを想定されたボーダーは、最初に発見された時点でかなりの巨大さを誇っており、内部には簡素な食堂だけでなく、医務室まで備わった最新鋭の機体となっている。

 

そんな医務室のベッドに横になっているマシュは、普段と変わらない格好で戸惑う表情を晒していた。以前から修司が格納庫で自分の身体を何とかする為の作業を行っている事は察していて、先日全ての作業工程が終了したのも耳にした。

 

自分の身体を治療するというのだから、きっと大規模な施術が待っているのだと身構えていたマシュだが、普段着のままで構わないと言われ、戸惑うがままやってきたボーダー内の医務室に来てみれば、大人しく寝ているだけで良いと言われた為、マシュの困惑は大きなモノだった。

 

「さて、今回でマシュちゃんの身体を何とかする訳だけど………メディアさん、頼んでいた術の件は──」

 

そんな僅かな不安を抱くマシュを余所に、GNボーダーから離れた位置で最終工程を行っていた修司は、同伴を頼んだキャスターの一人───メディアに声を掛ける。

 

「貴方に頼まれていた内漏れ防止の結界はこの格納庫全体に施しておいたわ。序でに、此処にいる全員に遮断のまじないのオマケもね」

 

「流石ギリシャきっての魔術師、仕事が早い」

 

「誰かさんのお陰でね。でも、あまり期待しないでちょうだい。確かに魔術に関しては一端のモノだと自負しているけれど、坊やの造ったソレは神代から見ても未知数なモノ。GN粒子と言ったかしら? それを完全に防ぐのは保証しかねると、予め言っておくわよ」

 

「その点については既に対策済みさ、既に格納庫に続く隔壁は封鎖されていて、スタッフ達も今は別区画へ避難させて貰っている。他にも色々と細工はさせて貰っているから、多分大丈夫だろ」

 

「それでも私達に対策を依頼する辺り、徹底しているねぇ」

 

 メディアからの指摘に応えていると、格納庫へやって来たダ・ヴィンチが、呆れた様子で修司の隣へとやって来た。

 

「何事にも不測な事態と言うのは付き物だからな。これから行う事を思えば、当然の対応だろう」

 

「そこの凡骨に倣うつもりではないが、これから始まる前人未踏の所業を思えば、彼が慎重になるのも仕方がないだろうな」

 

「お二人も、これ迄手を貸してくれて……本当にありがとう」

 

次にやって来た発明王と雷電博士。人類の進歩に大いなる一歩をもたらした二人が、修司の肩に手を置き、それぞれ用意されたコンソールの前に座る。

 

「では、人類初めての試みを始めるとしよう。Mr.修司、指揮を頼む」

 

先の二人と同様、コンピューターの父と呼ばれるバベッジが修司にボーダー起動の先導を促す。これ迄長く続いた作業と実験の繰り返し、それが今日で実を結ぶのだと、今更ながら緊張してきた修司は、改めてGNボーダーを見据える。

 

「それでは、GNボーダー起動! 並びにGNドライヴを安定領域まで固定!」

 

「了解。GNボーダー起動、並びにGNドライヴの起動を確認」

 

「二基とも、安定領域を維持………行けるぞ、修司君!」

 

 エジソンが吼える。それに合わせてボーダーから駆動音が鳴り響き、更には翡翠の粒子が噴出してくる。これがGN粒子、人類を変革へ導いて新たなステージへ進ませる進化の光。

 

本来なら数多の使用方法がある可能性の光、今回はそれら全てを一人の少女の為に使用する。

 

「TRANS-AM、始動!」

 

「了解、TRANS-AM!!」

 

遠隔操作により、発動されるGNドライヴの力。黒いボーダーはその全身を緋色に染め上げ、それに伴うように粒子量は爆発的に増加し、格納庫一帯を埋め尽くしていく。

 

メディアの結界は正しく作用しているようだ。極少の粒子が弾かれるのを感じながら、修司はその時が来るのを待つ。緋色の輝きを放ちながら、それでも更に加速していくGNドライヴ。このままでは暴発も有り得るのでは? モニター越しで格納庫の様子を眺めていたロマニが見守るなか───その時は来た。

 

「GNドライヴ、臨界点に到達!」

 

「今だ!」

 

 二人の先達者に促され、修司は手元に有ったスイッチに指を置く。それはGNドライヴに施された最後の枷を解放する為の鍵、マシュ=キリエライトの肉体を遺伝子レベルで変革させる為の最後の安全装置。

 

それを今、解放させた。

 

「TRANS-AM・BURST!!」

 

瞬間、これ迄暴風となっていた粒子は更に勢いを増し、カルデアの全体を包み込んでいく。それはまるで意思を持つように暖かで、その光にカルデアの人々はマシュ=キリエライトという一人の少女の心に触れた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

√※月√Ω日

 

 これ迄、幾度となく試行錯誤を繰り返し、失敗と成功の果てに今日、その日を迎えた。自分が元いた世界でも開発し、製造を行っていたGNドライヴ。それを搭載してカスタマイズしたシャドウボーダー改めGNボーダーが遂に今日、完成の時を迎えた。

 

内装とか外側(ガワ)の装甲部分はまだ手付かずだから、厳密には完成とは呼べないかもしれないが、目的であるマシュちゃんの身体の治療を行う為の水準には届いているし、動力としては正しく稼働しているから、一応完成と呼ぶことにした。

 

 そして、同時に今日はそんなマシュちゃんの治療日でもある。完成初日から最大稼働を強いらせるのはどうかとエルメロイ先生から指摘されたが、勿論既にその事は踏まえている。

 

何せ細かい設定や調節の合間に既に何度かGNドライヴは起動させてあるし、TRANS-AMシステムだって秘密裏に行ってきている。このシステムの事を知っているのは自分を除けばごく一部のキャスターのサーヴァント達だけ、事前に慣らされたGNドライヴは、いつでも最大のパフォーマンスが出来る様にしておいたのである。

 

GNドライヴの本領発揮とも言えるTRANS-AMシステム。そして、そこから更にGN粒子を大量に生成するTRANS-AM・BURST、本来なら意識領域を拡張させ、人類の相互理解を促すGN粒子を今回はマシュちゃんの人体修復に全てを注ぎ込む事にした。

 

 結果としてGNボーダーの全ての稼働、それ自体は問題なく完了した。大量に生成されたGN粒子はカルデア全体を包み込んではいたが、マシュちゃん以外の人に影響を与える訳にもいかない為、先にも述べた通り、キャスター組の人達に頼み込み、カルデアの職員一人一人に魔術による特殊な防御膜を施して貰った。

 

色々と無理を聞いて貰ったキャスターの皆さんには、本当に感謝しても仕切れない。特にメディアさん、彼女には元の世界でも色々と面倒見て貰ったから、本当に申し訳ない気持ちで一杯である。

 

今度、何かしらの形で恩返しを出来たらなと、強く思うのだった。

 

 それで、今回の当事者であるマシュちゃんだが、身体が少し軽くなった気がするだけで、特にこれといった変化は感じないと言っていた。

 

別に、目に見えて人体に影響が出る訳じゃないし、変化が表面化するのはこれからだ。後日ロマニにはマシュちゃんのカルテを見せて貰う許可を貰い、彼女の変化について事細かに説明をさせて貰うつもりだ。

 

この世界に来て初めて行ったGNドライヴによる治療実験、是非とも上手く行っていて欲しいものである。

 

 ………因みに、今回の稼働試験に於いて、自分には防御魔術を一切施されてないんだけど、アレどういう意味なんだろ? メディアさんとか「坊やには必要ないでしょ?」てやんわり拒否られたし。

 

そんで、皆がGN粒子を魔術の力で弾いてる中、俺だけモロに受けたんだけど、元の世界で記録された現象が全く起きなかったの。他者との意識が繋がる不思議な感覚とか、個人的に凄く気になっていたんだけど………ソレっぽい事一切起きなかったんですけど。

 

いや、きっとあれだ。皆が防御魔術でGN粒子を弾いているから、意識を繋げる先が無いから無反応で終わったんだ。

 

そうだ。きっとそうに違いない。

 

 

 

√X月Ω日

 

 GN粒子をマシュちゃんが大量に浴びてから数日、定期検診を受けたマシュちゃんは結構興奮気味で立香ちゃんの所へ走っていった。あの様子だと、あの実験の効果が上手く働いてくれたのだろう。

 

定められていた寿命からの脱出。ロマニから提出されたマシュちゃんの遺伝子カルテを読ませて貰い、改めて成功したのだと実感した。本音を言えば小躍りでもしたい所だが、大人としてグッと堪え、今は静かに彼女の再誕を喜ぶことにしよう。

 

短命を宿命付けられ、ボロボロだったマシュちゃんが元気を取り戻した事に、ロマニは静かに涙を流しながら礼を口にし、更には頭を下げてきた。感謝を言われるのは嬉しいが、問題はまだ多く残されている。

 

一時は死を確約されたマシュちゃんだが、近い内に細胞が劣化し、死の縁を彷徨うことになるのか分からない。今後も定期的に検診は受けさせるべきだし、仮に自分の予想どおりの実験になったとしても、憂慮すべき事は多々ある。

 

GN粒子は人に変革をもたらすもの、自分のいた世界と違い、そこら辺の法的配慮が施されていない。技術革新こそその兆しはカルデアの資料室で確認できたが、具体的なモノはまだ発表されていない。

 

 ともあれ、今後マシュちゃんの身体に異変があったら、その都度皆を集めて話し合いの場をすぐに設ける用意は常に意識しておいた方がいいだろう。いつになく真剣にそう口にする自分に、ロマニは目をパチクリしていた。

 

「普段からそのくらい慎重ならいいのに」とか、割かし失礼な事を言っていたが、まぁ別にいいだろう。今後、マシュちゃんの身体がどうなるのか未知数だが、経過は慎重に看ていくつもりだとロマニも言っていたし、取り敢えず今はそれで良いだろう。

 

そんなこんなで今後のマシュちゃんに対する対応を明確にさせ、今日は解散という所に………立香ちゃんが慌ただしい様子で医務室に駆け込んできた。

 

曰く「マシュの目が光ったぁっ!!」とか。

 

え? 症状でるの、早くない?

 

 

 

 

 

 

 




マシュ、変革の巻。

次回もまた日常回になる模様。退屈かもしれませんが、引き続き楽しみにして下さると幸いです。

それでは次回もまた見てボッチノシ


Q.どうしてボッチはGN粒子の影響を受けなかったの?

A.G「私が防いだが、それがなにか?」





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