『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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水着ピックアップ2キター!

十連で爆死したけど、残りの五回分の石で奇跡を狙った結果。

星五オッキーとルーラーのレスラーが来ました。

なんだろう。すり抜けてもらうの、止めてもらっていいですか?



その101 第六特異点

 

 

 

 ────自分は、何をしているのだろう。嘗ての円卓の所業に憤り、獅子王の行いを糾弾し、自身の罪と向き合わなければいけないのに………気付けば、状況は自分を置いて、ドンドン先へと進んでしまっている。

 

円卓の非道な所業、獅子王の非常な決断。それに誰よりも怒り、行動に移すべきだったのに、気付けば自分は傍観者になりつつあった。

 

 藤丸立香やマシュ=キリエライト、白河修司達と共に戦うと決めた筈なのに、自分はいつも出遅れてしまい、円卓との戦いに殆んど介入出来なくなってしまっている。

 

未だ、私は迷いの中なのだろう。自分の犯した罪の重さと、その代償に。情けなく、浅ましく、決意と覚悟を胸に抱いておきながら、今も自分の胸中には葛藤と後悔と自己嫌悪に満たされている。

 

 ────怖い。自分の罪と向き合う事が、罪と向き合い、その果てに支払われる自身への代償とその末路に。

 

そして………獅子王となった嘗ての王と再会するのがとても、とても怖かった。獅子王の前へと辿り着き、そこで顕になる己の罪が明らかとなることが、どれだけ気持ちを固めようとしても、それを考える度に足元から固めた筈の決意が崩れ落ちていく。

 

結局、自分は己の事しか考えられない矮小な者で、そんな自分だから皆に置いていかれるのだろう。

 

ガウェイン卿は、どうあれ王に尽くすと言った。

 

ランスロット卿も、迷いながら王の聖断に従うと言った。

 

モードレッド卿は、獅子王に逆らうこと事態が間違いだと言った。

 

アグラヴェイン卿は、完璧な王に問いは無用と断言した。

 

トリスタン卿も……きっと、彼等と同じ意見なのだろう。彼の行いを聞いて、彼の所業を余すことなく耳にして、自分は漸く嘗ての円卓は消えたのだと痛感した。

 

 そして、そんな彼等を間違っていると糾弾し続ける者達。立香達の叫ぶような言葉に、自分はいつも呆然と立ち尽くすだけだった。

 

こんな自分が、本当に己の責務を真っ当する事ができるのだろうか。何処までも優柔不断で、何処までも自分本意な己が、王を在るべきモノへ還せるのだろうか。

 

「王よ………」

 

集落へ引き返す立香達の背中を見ながら、ベディヴィエールは己の旅の答えを…………未だ見出だせずにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────陽が落ち始め、夜の帳が降りる頃。それは唐突に、突発的に現れた。それは奇跡というには眩しく、罰というには剰りにも美しい光。

 

突然自分達の頭上に照らすように現れた光、膨大な熱量と質量を併せ持つその光は、この特異点に幾度となく降りそそげられ、その度に大地に決して消えない傷跡を刻み込んだ。

 

其は───獅子王の裁き。円卓の、ひいては獅子王に仇なし、弓を引く者として定められた者達に対して、獅子王自らが下す裁定の光。

 

雲の割れ目から這うように現れる光、それはまるで槍の様な形となって、反逆者達に降り注げられる。此度の裁きの標的となっているのは、山の民達が生活する東の村。そこに円卓の騎士達に仇なす者は愚か、戦える者すらいない弱者の村。

 

これまで慎ましく、穏やかに生活を営んできた彼等に対し、下される苛烈な裁きを前に、村人たちはただひたすらに祈ることしか出来なかった。

 

「お母さん、綺麗だねー」

 

「えぇ、そうね。本当に………」

 

 突然空から現れる光になにも知らない少年は目を輝かせ、そんな息子をせめて痛みのないように祈りながら、母親が抱き止めた。

 

間近に迫る絶対的な死を前に、少年が次に目にしたのは───大きな男の背中だった。

 

「波ァァァァァッ!!」

 

空を飛び、微かな光を纏う男が放つ蒼白い閃光は、押し寄せる獅子王の裁きの光を呑み込み、成層圏を超えて大気圏外へと押し上げる。空が、世界が白い光に包まれ、少年はその眩しさに目を閉じる。

 

軈て光は収まり、少年の瞼が開かれると、其処にはいつも通りの世界が広がっていた。まるで夢を見ていた様な、そんな錯覚さえ覚えてしまう程に、先の光景は衝撃的だった。

 

けれど、夢でない事は少年にも分かっていた。何故なら──。

 

「何とか、ギリギリ間に合ったか」

 

空を覆う光を、更なる極光で消滅させたトンチキ戦士が、目の前にいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうにか間に合ったか、良かった」

 

 円卓の騎士達を退け、山の民達を護れたと安堵したのも束の間、突然東の村方面から感じ取れる巨大な力を感じて急行すると、戦略兵器のエネルギーが落とされる場面に遭遇。

 

当然、この様な度が過ぎる蛮行を修司が許す筈もなく、それまで満身創痍の円卓の騎士を抱えていた修司だが、村の適当な場所に捨て置き、全力のかめはめ波を放った。

 

結果、獅子王の裁きと呼ばれる戦略兵器を退けた上で滅させ、東の村の人々の人命を守る事ができた。しかし、あまり悠長に構えてはいられない。以前逃がしたモードレッド辺りが密告したのかは知らないが、獅子王にこの村の居場所を知られた以上、村人達はもう此処にはいられないだろう。少なくとも、獅子王を何とかしない限りは。

 

「あ、あの……貴方は先日の、円卓の騎士を撃退してくれた方……ですよね? その、助けて下さって、ありがとうございます」

 

「どういたしまして。と、言いたい所だけど、ちょっと不味いことになった」

 

「それは、獅子王にこの村の場所を知られた事ですね。確かにそれは由々しき事態ではありますが………なに、心配召されるな。我々は山の民、山に居場所を置き、山と共に生きていく者。であるならば、逃げる場所の一つや二つ用意していますとも。あなた様はどうか、獅子王との戦いに集中して下さいませ」

 

 修司に歩み寄る初老の男性、その口振りはついさっきまで死地にいたとは思えない程に穏やかで、落ち着いていた。そしてどうやら現在の特異点の情勢にも詳しいらしく、修司が獅子王と戦うつもりでいることを見抜いていたようだ。

 

自分達の事は自分達でどうにかする。そう目で語る男性に、修司は申し訳なく思うと同時に、頼もしく思えた。ならば自分はこのまま立香達に合流しようかと、彼女達の気を探り始めると………。

 

「バカな。獅子王が、我等の王が、この村に裁きを落とそうとしたのか。戦えるものなど殆んどいないこの村に………」

 

地面に項垂れ、伏している円卓の騎士────湖の騎士と呼ばれるランスロットが、信じられないといった様子で呟いていた。

 

「……なんで、お前が意外そうにしてんだよ。お前達の上司の仕業だろ? アレ」

 

「───知らなかった。私が命じられたのは、山の民を守護する戦力を削ること。貴殿やアーラシュ=カマンガーを切り捨てる事、ただそれしか命じておらず、それが完了次第即座に離脱しろ。と」

 

 どうやら、嘘は吐いていないらしい。全身の骨を砕かれ、自慢の宝剣を砕かれたランスロットからは、最早戦意らしい戦意は感じられず、修司の問いにも条件反射の様に答えるだけだった。

 

そして、騎士王が最も敬愛していたとされる湖の騎士ですらも、獅子王の思惑を理解できなかったのだと、修司は今のランスロットの状態を見て確信し、その確信は別の疑惑へと繋がっていく。

 

これ迄、獅子王は騎士王の変異したモノだと話の流れで認識していた。カルデアにいる騎士王は食事する時はアレだが、それ以外の平時では常に騎士達の模倣になるべきだと振る舞っている。

 

そんな彼女から聞いたことがある。円卓の騎士の一人、ランスロット。彼の事は今でも信頼している騎士の一人だと、そして同時に円卓を囲んでいた頃の自分達は確かに互いを信頼していたと。

 

そんな騎士王の成れの果てが獅子王だと言うのなら、獅子王は剰りにも騎士王とかけ離れているのでは無いだろうか? それこそ、別人と呼ばれる程に。

 

(もしかして………獅子王は騎士王の別の要因で形成された別人格?)

 

 古来より、聖剣魔剣の類いは所有者に少なからず人格に影響を及ぼしていると聞く。アーサー王のエクスカリバー然り、バルムンクやグラム然り。特に顕著に挙げられるのは、村正が造りし殀刀村正なんて最たる例だと思われる。

 

殀刀に魅入られ、辻斬り人切りに落ちぶれる物語は修司も一度くらい聞いたことがある。もし仮に獅子王がそれに似た状態というのなら、それはもしかして───。

 

「………もしかしてアルトリアは、もうアルトリアじゃなくなっていたりする、のか?」

 

「………なん………だと………?」

 

獅子王への仮説を自分なりに推測して見立てた呟きは、ランスロットの耳にも届いてしまったらしい。信じられないと、けれど心当たりが幾つもあるらしいランスロットは、項垂れたままそれ以上語る事はなかった。

 

 さて、このままコイツをこのまま放置する訳にもいかないし、そろそろ皆に合流しようかと言う時、修司は再び巨大な力の奔流を感じ取った。

 

「おいおいマジか、連射できるのかよアレ!?」

 

暗雲広がる向こうの空から、巨大な光の槍が落ちてくる。方角と距離から落下地点を予測した修司は、其所が山の民の集落であると知り、急いで現場へ向かおうとする。

 

しかし、粛清騎士達と円卓の騎士二人を相手に立ち回り、且つ先の獅子王の裁きへ放ったかめはめ波で、修司の気力は底を着いていた。修司の纏っていた光は突如として霧散し、襲い来る凄まじい虚脱感に修司は膝を折って地に倒れ伏す。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

近くにいた村人が近寄り、肩を貸す。界王拳の時のような激痛はないが、空腹感とも違う虚脱感により、修司はもう指一本動かす事が出来なかった。

 

(マジかよ!? 此処にきて、電池切れか!?)

 

プルプルと震える両足、動けと修司は手で叩くが、振り下ろす腕にすら力が宿っていなかった。このままでは集落にあの光の槍が落ちてしまう、そうなる前に何とかしなくては……!

 

最後の手段として修司は相棒(グランゾン)を喚ぼうとした時、それは現れた。地上から立ち上る光、修司の放つかめはめ波とは違う、淡く、儚い小さな光。

 

しかし、その蒼い一筋の光が獅子王の裁きに触れた瞬間───奇跡がおきた。解き、霧散していく光の槍。幻想的で、神秘的な光景を前にふと、修司は感じ取った。気の消失、向こうの集落で誰かの命が尽きたのだと。

 

そして────。

 

『あとは、任せたぜ』

 

陽気で兄貴分な彼の声が聞こえた気がした。

 

「アーラシュ………さん」

 

 軈て光の矢は、獅子王の裁きを貫いて空の彼方へ消えていく。遥か空へ描く軌跡は───まるで。

 

立ち上る流星の様だった。

 

 

 

 

 




実はアーラシュニキの生存はギリギリまで考えてました。

すまねぇ、すまねぇ。



今回のお話まとめ。

流星一条(ステラ)ァッ!!

以上。

次回から、某探偵のいる彼処へ向かう予定。

それでは次回もまた見てボッチノシ。




オマケ

とある夏のイベントにて。

「さぁ、マスターも私の妹になるのです! 彼のように!」

「オレ、オトウト、オネエチャン、ダイスキ」

「キャッ、もう弟君てば、正直者なんだから♪」

「しゅ、修司さーん!?」

「え? て言うか、アイツも敵側にいるの?」

「これは………非常にヤバイのでは?」

 その後、英雄王と賢王、並びに初代山の翁による決死の説得(物理)により、どうにか正気を取り戻した模様。

尚、今回のイベント最大の激闘であったと、後に藤丸立香は語る。




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