『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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───一本目。


その91 第六特異点

 

 白亜の城壁より獅子を模した鎧の騎士が姿を現した。荘厳にして偉大、相対しただけでも身がすくむ程の威圧を前に、立香とマシュは立っているだけで精一杯だった。

 

「……エリザベ───いや、修司君。もしかしてアレが」

 

「あぁ、アイツが俺の感じた強くて大きな気配を発していた奴だ。こうして奴を前にしているから分かる。あの騎士、まだ底を見せていないぞ」

 

正門の城壁から姿を見せた獅子の騎士、あれが太陽王の言っていた獅子王であることは間違いないと、修司の話を聞いてダ・ヴィンチは確信する。しかも彼の言うことが本当なら、あの騎士の強さは底知れないという。

 

流石に前の特異点でのヘラクレスやクー・フーリン程ではないと信じたい所だが、彼の声音からしてその可能性は低いようだ。出来れば直接的な戦闘は避けたい所だと、ダ・ヴィンチは声に出さずに肩を落とすが、それに気にかける者はいない。

 

そうして、太陽の騎士──ガウェインと呼ばれる男が何かを言っていると、獅子の騎士は徐に手を掲げ、何かを始めようとしていた。恐らくは、先に聞こえてきた聖抜の儀とやらに関する事なのだろう。立香達は緊張な面持ちのまま、静かに辺りを警戒する。

 

 聖抜の儀。何かの儀式の名称しか分からないそれが、一体何の意味を示しているのだろう。立香も達や難民の人々が戸惑い、疑問に思う中、それは粛々と執り行われた。

 

「───最果てに選ばれるものは限られている。人の根は腐り落ちるもの。故に、私は選び取る。決して穢れない魂。あらゆる悪にも乱れない魂。生まれながらにして不変の、永劫無垢なる人間を」

 

獅子の騎士が言葉を紡いだ瞬間、光が溢れる。難民達の中から数人規模での割合で光が漏れ出していく。夜が昼に代わったり、人の体から光が溢れるなど、摩訶不思議な出来事が連続して起こるものだから、難民達の間でパニックが起こるのは必然の事だった。

 

そんな人々の反応を他所に、聖抜の儀は続いた。それは気の知れた友人であり、愛を近いあった夫婦の片方であり、それは───この過酷な環境で、せめて我が子だけでも救って欲しいと願う、美しき心を持った母親だった。

 

大多数の難民の中から選出される様に光りだす一部の人々、これが聖抜の儀なのかと立香達が疑問に思う中、ダ・ヴィンチの頬には冷たい汗が流れた。

 

「聖抜はなされた。その三名のみを招き入れる。回収するがいい、ガウェイン卿」

 

 そんな、無慈悲な言葉だけを言い残して獅子の騎士は城壁から消えていく。これだけの難民を集めておきながらたったの三人、聖都の規模からしてまだ入れそうな余地はある筈なのに、狭量とも思われる騎士の采配に修司は腕を組んで疑問を静かに口にする。

 

「これだけの人を集めておいて、たったの三人? 少し、狭量が過ぎるんじゃないか? それとも、既に都の中は人で一杯だったりしているのか?」

 

幾ら気で探っても、聖都から感じられる気配は先の獅子の騎士のモノしか感じられない。故に修司には中の様子を感じ取る事は出来ず、内部で何が起きているのかは見当もつかない。やはり、聖都も余裕がないのだろうか。

 

そんな風に考えていた。聖都の連中も必死なのだと、全ては不毛の大地となったこの世界に原因があり、聖都の獅子王も万能ではないのだと、これは彼等にとっても不服な事で、決して本意ではないのだと。そんな風に、修司は自分なりの解釈で騎士達の都合を受け止めようとしていた。

 

故に───。

 

「……皆さん。まことに残念です。ですが、これも人の世を後に繋げるため。王は貴方がたの粛正を望まれました。では────これより、聖罰(・・)を始めます」

 

「────え?」

 

修司がその光景を理解するのに───ほんの僅かだけ、遅れた。

 

 瞬間、修司の視界の端で鮮血が舞った。倒れ伏しているのはこの過酷な世界でも頑張って生き残ろうと誓った、夫が愛する妻だった。どれだけ自分がへこたれようと、気丈に振る舞い、自分を立ち上がらせてくれた気高い女性。

 

その彼女が、全身を甲冑で包んだ騎士の一人、無情に放たれた剣閃が、彼女の体を斬り裂いた。信じられない、そんな顔をして倒れる妻に夫は発狂の叫びを上げる。彼女の内から溢れる臓物を必死にかき集めながら、起きてくれと叫ぶ夫の叫び声により、人々は否応なしに突き付けられた現実を前に目を覚ます。

 

 悲鳴が、白亜の城の前に木霊する。城壁から現れる無数の騎士達、彼等の手には弓矢が握られていて、地に降り立っている騎士達は、全員が剣を抜き放っていて、彼等の狙いは聖都から逃げようとしている───無抵抗の難民達だ。

 

虐殺。その言葉が脳裏を過った時、修司は有無を言わさずに駆けた。後ろでダ・ヴィンチが何かを叫んでいるが、そんな事など知ったことではない。引き絞った腕と、握り締めた拳に力を込めて、修司は逃げ遅れた人に剣を振り下ろそうとしている騎士の横っ面へ、全力の一撃を叩き込んだ。

 

突然の不意打ち、更に言えば修司という規格外の人間からの一撃により、騎士は宙に浮かんで白亜の城壁に叩き付けられる。突然の騎士の吹き飛びとそれを行った奇っ怪なアヒルの怪物、明らかに着ぐるみな化物を前に今度は騎士達の動きが停止した。

 

そんな彼等をエリザベス(白河修司)は見逃さなかった。両手に気のエネルギーを溜め、光弾を放つ。既に放たれていた矢を叩き落とし、その勢いのまま城壁の上に立つ騎士達に叩き込む。

 

 その光景に難民の人々は足を止めた。自分達を殺そうとしている騎士を倒し、自分達を逃がそうとしている白いアヒルの怪物。奇っ怪な姿の癖に騎士達を紙屑のように吹き飛ばすその光景に、人々は奇妙な希望を見出だしていた。

 

「なにをボーッとしている! さっさと逃げ………っ!?」

 

しかし、そんなアヒルの猛攻もその騎士には通らなかった。振り抜かれる刃、空気を裂く轟音、余所見をしていたら掠り傷では済まない一撃を前に、修司は気力を全身に張り巡らせ、両腕を交差させて受け止めた。

 

「───何者です。その面妖な格好で、一体どうやって我々の目から逃れていた」

 

(こいつっ!)

 

それは、場に現れただけで夜を昼に変えた太陽の騎士、凄惨な殺戮の場を築き上げた張本人の一人であるその男は────ガウェイン。円卓の騎士の一人と呼ばれ、アーサー王からの信頼も厚いとされてきた太陽の騎士。

 

「答えられませんか。ならば、強引にでも引き剥がすまで! ヌゥンッ!

 

「っ!」

 

その強大な膂力にモノを言わせて、ガウェインは修司を吹き飛ばす。無表情なアヒルの顔で分からないが、修司の表情は驚きに満ちていた。今の自分の力は界王拳こそは使っていないが、それでも全身を気の力で覆い、通常時よりも強めの膂力となっている。この力でこれ迄修司は多くのサーヴァントや魔物達を退けてきた。

 

そんな自分が、力で押し負けた。これ迄敵対してきたサーヴァントとは一線を画すガウェインの強さ、しかし修司もまた揺るがない。吹き飛んだ体勢を瞬時に立て直し、白亜の壁を足場に着けて、跳躍。弾丸の如く飛び出し、勢いを乗せた蹴りは、剣を盾にして防ごうとするガウェインを、お返しとばかりに防御ごと吹き飛ばす。

 

「くっ、成る程。単身で我々に挑む事はある。しかし、どのような目的かは不明だが、我等の儀を邪魔した以上、無視はできない。名も知らぬ怪物よ、覚悟するがいい」

 

 剣を地に刺して、勢いを押し止めたガウェインは、再び剣を構えて修司へ肉薄する。抜き身の刃で斬りかかっているのに、まるで薄皮一枚も斬れる気がしない。予想以上の怪物を前にガウェインは自らを鼓舞するように吼える。

 

そんな彼に対して、修司の声は何処までも冷たかった。

 

「覚悟、覚悟だと? 自分達は碌に戦う術を持っていない難民達を殺しておきながら、覚悟の是非を問うのかよ? どんだけ面の皮が厚いんだ?」

 

「………!」

 

「お前達にどんな大層な道理があるのかなんて知らないし、今更興味もない。俺が今することは此処にいる難民達を一人でも多く逃がして───テメェ等をぶちのめすだけだ!」

 

「勢いは認めましょう! だが、それだけでは!」

 

力が増した。目の前の怪物を覆う白い炎が勢いを増し、祝福(ギフト)を授かった自分を凌駕しようとしている。驚きと畏怖を抱くガウェインだが、それでも自分の為すべき事を為す為に、太陽の騎士は更なる力を込めた。

 

 その時、修司の目にあるものが入り込んできた。それは、絶対にあってはならないモノであり、絶対に防ぐべき事象だった。離れた所で同じ様に気付いたマシュがロマニとダ・ヴィンチの制止の声を振り切って掛けていくが……残った騎士がそれを許さない。

 

 

行く手を阻まれ、止めてと叫ぶマシュを他所に、その騎士の刃は振り下ろされる。凶刃の先にあるのは───幼き子供、輝く甲冑を身に纏う騎士を格好いいと憧れの眼差しで見つめていた無垢の少年。

 

そんな子供を、母が身を挺して庇った。振り抜かれる刃、無抵抗のまま切り裂かれた母親は我が子を守ろうと自身を盾にして、我が子を抱いて地に倒れる。

 

 その光景を目にした瞬間、修司は目の前のガウェインに目もくれず駆け出した。脇目もふらず、親子を助けようと駆け出す修司の背中は………悲しいほどに無防備だった。

 

剣閃が迸る。戦場の中で敵対者に背を向けるなど愚の骨頂、目の前の敵を倒さずして余分の事に気を逸らす目の前の怪物は、ガウェインにとって格好の的でしかなかった。

 

戦いにおいて、非情に徹する事が常道であり、目の前の敵から目を逸らす事こそが邪道である。そんな、自分に言い訳をして放たれたガウェインの剣筋は、恐ろしいほど正確に、修司の背中を斬り裂いた。

 

痛みが走る。礼装は破かれ、肉も裂かれ、血が流れる感触を感じなから、それでも修司は駆け出していく。両脚に力を込めて、瞬く間に騎士との距離をゼロにした修司は、母親諸とも斬ろうとする騎士に向けて、その鉄拳を振り抜き、騎士の頭部を消し飛ばした。

 

倒れ、消滅する騎士に一瞥すらせずに、修司は着ぐるみの残骸を脱ぎ捨てながら母親の下へ駆け寄り、即座に自身の気を分け与えていく。

 

「修司さん! お願いです! どうか、どうか助けてください! この方達はただ助けて欲しかっただけなんです! 自分じゃなく、自分の子供の為に、救いを求めてきた……ただ、それだけなのに!!」

 

 騎士達を蹴散らしたマシュが立香と共に駆け寄り、涙を流しながら訴えてきている。助けて欲しい、そう叫ぶマシュに修司は応える余裕すらなく、目の前の母親を助ける事に意識を向けていた。

 

「……お母さん?」

 

そんな、混沌とした戦場の中で母親の子供が声を絞り出す。その声は平時となんら変わらず、まるで夢でも見ているかの様な反応。少年は、まだ理解できていないのだ。自分の母親が自身の憧れる騎士によって倒れたという事実に。

 

「───大丈夫だ。お母さんはきっと元気になる。君、将来の夢はなんだい? 今の内に考えておくといい、親にとって子供の夢は親の夢と同然なんだからさ」

 

 その声は、震えていた。自身も背中を裂かれていると言うのに、痛みと感情を圧し殺して修司は少年を安心させるように語りかけるが、立香にはその修司の声は震えているように聞こえ、同時に理解してしまった。

 

白河修司の力は強力だ。内に秘めた気という力は多くのサーヴァントを打ち破り、魔物を、ドラゴンさえも倒して見せただけでなく、人に対して治癒の様な役割を担っていた。

 

強力にして万能。しかし───全能ではない。傷口は既にふさがり、出血も止まっている筈なのに、女性の顔色は………一向に良くならなかった。

 

たとえ傷を癒し、血を止めても、死という事実は覆らない。そんな、当たり前の事実に気付くには、修司という男は強すぎた(・・・・)

 

「あぁ………ルシュド………よかった。わたしの希望………わたしの………人生………」

 

「どうか………健康に………善き毎日が、送れますよう………」

 

「お母さん? 泣いてるの? もう、泣き虫なんだから、そんなぎゅうってされると………苦しいよう?」

 

「あぁ、あぁぁぁぁぁっ!!」

 

 最期に我が子への未来を祈って、母親は事切れた。その事実にマシュは泣き崩れ、立香もまた泣きそうになる。しかし、それでも自分達にはやるべき事があると歯を食い縛り、母親が───文字通り死んでも守って見せた少年を大事に抱き抱える。

 

少年は、既に意識を失っていた。騎士に切られる前に殴られていた少年は、既に意識を繋ぎ止めるだけで精一杯だった。母の死を理解できずに意識を失った少年は、立香に抱き抱えられる。

 

「マシュ、立って。私達にはまだ、やらなきゃいけない事があるでしょ?」

 

「先輩………はい。マシュ=キリエライト、戦闘を続行します」

 

既に戦線は包囲されつつある。倒された粛正騎士達は白亜の城より続々と投入され、数の暴力となって立香達を押し潰そうとする。そうなる前に自分達もここから離れるべきだと、マスターである立香は決断する。

 

立香は立ち上がり、マシュも立ち上がった。だが、修司だけは、亡くなった母親の亡骸を静かに見下ろしていた。

 

「修司さん?」

 

 揺さぶられるのは、嘗ての記憶。炎と血の海で目にした幼き頃の自身の記憶。

 

『生きて、あなただけでも!』

 

『生きるんだ。お前だけでも!』

 

嘗て、自分の為に全てを投げ出した両親。あの二人もきっと、この母親と同じ気持ちだったのだろう。たとえ、時代が変わっても、国とそこに住まう人々の価値観が違っても、根底にある人の善性は変わらないのだと、不謹慎ながらそう思っていた。

 

故に、だからこそ………。

 

「立香ちゃん、マシュちゃん、難民の人達の事、任せてもいいかな? 殿は………俺が務めるからさ」

 

「修司くん、君は………」

 

「ダ・ヴィンチちゃんも、二人のフォローを頼む。万能の天才なんだ。これくらい、やってみせるだろ?」

 

もう、この男は止められない。憎悪ではなく、正しき怒りによって戦う修司を前に如何に万能の天才だろうと、止める言葉は見付からなかった。

 

「修司君、あの円卓の騎士ガウェインは、恐らく何らかの祝福を受けている。恐らくそれは彼の特性、“聖者の数字”に関係がある───」

 

「ダ・ヴィンチちゃん」

 

「っ!」

 

「俺は、大丈夫だから」

 

そういって、笑顔を向けてくる修司に、ダ・ヴィンチは今度こそ言葉を失った。今の修司はどうしようもなくキレている(・・・・・)、それを心配させないように振る舞っているからこそ、ダ・ヴィンチには彼の怒りの程が理解できてしまっていた。

 

「分かった。なら、出来るだけ早く合流してくれたまえよ? 君達のサポートをするための私だ。あまり、ヤキモキさせないでくれよ?」

 

 それだけを言い残し、先に逃げ延びた立香達を追い、ダ・ヴィンチもその場を後にする。残されたのは手負いとなった修司と、無尽蔵の粛正騎士達だけ、既に連中の狙いは修司に定まっている。圧倒的物量の前に、修司はただ平静を保ったまま、それらを睨み付けていた。

 

「自らを囮にして、仲間を逃がす。その心意気は認めましょう。しかし、貴方の選択は愚かだ。逃げるというのなら貴方ではなく、彼女達こそ囮にするべきだった」

 

「……………」

 

「ここであなたが死に絶えれば、それは彼女達の死も同義。我々は、王の決定から逃げ延びる者達を、決して許しはしないのだから」

 

前に立つのは、太陽の騎士。聖罰という役割を任され、役割を与えられた円卓の騎士。堂々たる物言いのガウェインに対し、修司はただ静かに見詰めていた。

 

「残念です。山吹色の戦士よ、トリスタン卿の報告がなければ、その強さは我々、ひいては王にとって、決して無視は出来なかったでしょうから」

 

「………なぁ?」

 

「?」

 

「お前、なにやってんの?」

 

「なに?」

 

「無抵抗の人間を殺して、子供を殴って、母親を殺して、覚悟? え? お前達にとっての覚悟って、大量虐殺の免罪符かなにかなの?」

 

「……………」

 

「それが覚悟っていうのなら、俺はそんなものいらねぇ。俺が今この場で抱くのは、テメェ等をここでブチのめすという───気持ちだけだ!!

 

「ならば、その決意ごと塵となるがいい!!」

 

 魔力が膨れ上がる。獅子王の祝福によって“不夜”の加護を受けている。これにより生来のモノである“聖者の数字”も常時発動状態となり、並外れた耐久能力を有するようになっている。

 

生半可な攻撃では掠り傷にもならない。跳ね上がる力の波動に修司は真っ向から受けて立つ事を決めた。

 

そして、彼が振るうのはもう一振りの星の聖剣。嘗ての騎士王が持つ約束された勝利の剣の姉妹剣。

 

「この剣は太陽の映し身。もう一振りの星の聖剣! あらゆる不浄を清める焔の陽炎!」

 

転輪する───勝利の剣(エクスカリバー───ガラティーン)!!」

 

「どっちが不浄なんだか………」

 

迫り来る炎の津波。大地を灼き、大気すら炎上させる炎の大海を前に、修司は静かに吐き捨てる。

 

もう、修司は聖都の連中のことは考えない。どれだけ思考を割いても無駄でしかないと、彼らを見て思ってしまったから。

 

如何なる理由があっても、修司は円卓を許しはしない。やめて欲しいと、許して欲しいと言うのなら、それは連中が殺してきた人々に対して言うべきだ。

 

 ───力を解放する。白から赤へ、修司の気力の炎が天を貫いていく。血のごとく赤い炎、その奥から淡く輝く光にガウェインと、その光景を隠れて見ている騎士(・・・・・・・・・)は、まさかと絶句した。

 

嘘だ。あり得ない。だってそれは、自分達が希望を見出だしてきた………星の輝き。

 

「エクス───カリバー!!」

 

 

 聖者の数字。それは言うなれば太陽の騎士ガウェインの全能力値を三倍にするという代物、全ての力が三倍となったガウェインは、確かに脅威と言えるだろう。

 

それに対して、四倍の界王拳で迎え撃つことにした修司は、四倍のエクスカリバーの力で迫り来る炎の津波を両断した。霧散していく炎の陽炎、自身の宝具を打ち破ったモノが、よりにもよって聖剣を模した技。ガウェインの心の衝撃は想像以上に強烈なモノだった。

 

「なぜ、何故貴様に、星の聖剣の真似事が!?」

 

「それを、お前にいう必要はあるか?」

 

「っ!?」

 

 既に、修司はガウェインの間合いへと踏み込んでいた。なんという速さ、円卓の騎士でも捉えきれない速さに戸惑いながらもガウェインが選択したのは、自身の剣を盾にしての防御の体勢だった。

 

既に一度は己の聖剣が、修司の一撃を防いでいることはガウェインも熟知している。兎に角今は体勢を整えねば、混乱する思考の中であっても冷静に対処するガウェインに対し……。

 

「いいぜ、俺もテメェの命なんて興味はねぇ。俺がぶち壊したいのは、最初からソレだ」

 

拳を握る。力を込め、気を込める。白河修司が奪うのは、敵対者の命ではない。彼等が支えとし、王に捧げると誓ったある意味に於いてもう一つの自分の映し身。騎士にとって命と同義にあたるもの。

 

聖剣。防御に構えたガラティーンは振り抜かれた修司の拳によって粉砕され、顔面へと直撃。ガウェインは遥か彼方、聖都の中央に聳え立つ塔の頂上部分へ激突する。

 

「受け取れよ獅子王、これが俺からの───宣戦布告だ」

 

 パンパンと手を叩き、埃を振り払いながら、修司は塔の頂上を睨み付ける。

 

そんな修司に呼応するかのように、玉座に座る獅子王も静かに修司を見下ろしていた。

 

 

 

 

 

 




Q.ボッチ、どれくらいおこなの?

A.滅尽滅相♪の、一歩手前。ぶっちゃけ、グランゾンを出していないかそうでないかの違いでしかない。

尚、本人は直接ブチ殺すより、彼等の誇りとする聖剣を一本残さずへし折るつもりの模様。

それでは次回もまた見てボッチノシ



オマケ


ちょっと未来のマイルーム。


某女王の場合。

「白河修司? ええ、覚えていますとも。彼も、嘗ては私が頼った最強の騎士。本人は覚えてはいませんが、その強さには私も………彼女も、大変世話になりました」

「ですが、私は支配を由とし、あの男は自由を愛しました。自由に飛び回る鷹を、私はついぞ、手に入れる事は叶いませんでした」

「ですが………フフ、ここはカルデア、外界と隔絶された空間は私にとって絶好の檻となります。覚悟しなさい。私をフッた以上、私は地の果て………いや、因果の果てまでも追いかけるつもりですので。ふふ、フフフ……」

「小さくなっていようとそうでなかろうと、彼が私の夫である事実は変わりません。ええ、変わりませんとも」

「へっくしょん! やっべ、風邪引いたか?」

「ねぇ、君大丈夫? なんかモルガンがパンケーキの魔女と結託しているみたいだけど?」

「え、マジで?」

「ていうか、オベロンが普通に気遣っている件について」



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