『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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六周年の新規サーヴァントって。

コヤンスカヤかよぉぉぉっ!?

あ、福袋は未所持だった妖精ランスロとトリ子が来てくれました。

実質アヴァロンガチャで草




その88 第六特異点

 

 

「本当、君には驚かされてばかりだよ」

 

 特異点修復の旅も、今回で六度目。既に慣れた手付きで仕度を整え、今ではすっかり見慣れた山吹色の胴着を身に纏い、管制室に訪れた修司が最初に掛けられたのは………呆れと驚愕、そして感謝の混じった複雑な感情の発露だった。

 

ロマニ=アーキマン。これ迄の旅で誰よりも近い場所で藤丸立香と白河修司を見てきたカルデアの代理所長、眉を下げ、微笑みを浮かべながら声を掛けてくるロマニに修司はキョトンとした表情を晒していた。

 

「え? どうしたん急に? なんか悪いものでも食べた?」

 

「いや食べてないから。全く、どうして君はいつもこう、変な所で察しが悪いんだろう。普段は直感スキルもかくやというレベルで鋭い癖に………」

 

「いや、流石にそれは無茶ぶり過ぎじゃない? 幾ら俺でも、脈絡がなければ推理推察なんて出来ないぞ?」

 

「───マシュの事さ。彼女は本来、デミ・サーヴァントの検体としてその短い生涯を終える筈だった。一生外の世界を見ることなく、永遠に無垢のまま、電池の切れた人形の様に、忽然とその命に幕を下ろす筈だった」

 

 ロマニの口から淡々と語られるのは、嘗てのマシュ=キリエライトの本質。人工的に作られた生命体であるが故に自意識が薄く、赤子の時から育てられた記憶がない故に喜怒哀楽の感情もまた、希薄。

 

ただ、彼女はあるがままを全てを、目に映る全ての光景を受け入れていた。自身の寿命を稼働限界と捉え、命の生死を何処までも客観的に見つめてきた幼き少女。過酷で辛い実験も、そういうものだと受け入れていた。目に映る全ての光景をマシュ=キリエライトはただ純粋に受け止めていた。

 

 そんな彼女の口から聞かされる微かな感情。それは、ロマニ=アーキマンが前所長への直談判でマシュの担当医となって幾分の月日が経過した頃。

 

『私……空を、見てみたいです』

 

それは、マシュが溢した初めての感情だった。欲しいものはないかと訊ねた際に、返ってきた彼女の初めての願望であり、願いでもあった。

 

マシュ=キリエライトの体は、外の環境に対応する事はできない。生まれた時から無菌室の部屋で育てられ、外の環境に彼女が耐えられるだけの免疫力は存在しない。マシュにとって、このカルデアこそが生きる事を許された活動領域なのだ。

 

外の世界を見ることなく、成人し、大人になる事もなく、静かに………それこそ、最初からいなかった様に扱われる人間を模したホムンクルスとは違う人工生命体。それがマシュ=キリエライトの正体だった。

 

けれど、だからこそ、今の彼女には驚かされていた。

 

「でも、君や立香ちゃんと出会ってから、マシュは変わったよ。レイシフトを通じて世界を知り、多くの人と出会って、マシュ=キリエライトは我が儘を言える人になった」

 

 自分の命に終わりが来る。けれど、それでも外の景色を見たいという願いを捨てる事は出来ない。つい先日、マシュ本人からそう言われたとき、ロマニは人知れず泣きそうになっていた。

 

「そして、君が死を待つしかないマシュに新しい選択肢を与えた。喩え君の造るモノが意味を成さなかったとしても、僕はこれまで君のしてくれたモノを決して否定したりしない。………ありがとう、修司君。君と立香ちゃんのお陰でマシュは女の子らしい一面を持てるようになったよ」

 

感慨深くそう口にしたロマニは、修司に向かって頭を下げようとして───。

 

「いや、何言ってんの? お前」

 

「………え?」

 

 呆気に取られていた修司の口から溢れたのは、心の底から“呆れ”の声だった。

 

「なぁに自分は無関係な顔してんだよ。マシュちゃんがああいう風に育ったのは、アンタにだって原因はあるんだぜ?」

 

「ぼ、僕に?」

 

「いいか、子供ってのは周囲の環境に影響されて育つもんだ。確かに本人の元々の素養も重要なのは理解できる。けどな、それを含めて子供は成長していくんだ。俺と立香ちゃんだけじゃない、ロマニやダ・ヴィンチちゃん、今のカルデアにいる全てが、マシュちゃんの成長の糧になってんだよ」

 

マシュが彼処までハッキリと自分の意思を言えるようになったのは、立香の様な一般人と先輩後輩の間柄になって、修司という頼れる大人と一緒に旅をしてきたからだと、ロマニは思っていた。

 

けれど、違った。これ迄に関わってきた全てがマシュ=キリエライトの糧になっていたのだ。旅の中での出会いと別れ、恐ろしい敵、頼もしい味方、そしてカルデアでの日常。その全てがマシュの一部であり、彼女の人生に色彩を与えたモノの正体だった。

 

嘗て、偉大なる音楽家は言った。君が世界を作るのではない。世界が、君を造るのだと。

「俺達全員が今のマシュちゃんを生み出す切欠になった。なら、彼女が本当の意味で自分の脚で立って歩けるようになるまで、見守ってやるのが親代わりの務めだろう? 弱気になるなよロマニ=アーキマン」

 

「───あぁ、そうだね。その通りだとも」

 

 そう言って、肩を叩いてくる修司の手が、これ迄の自分を労っている様に感じ────ロマニ=アーキマンの目元は、少しだけ赤くなっていた。

 

それは、立香達が管制室に訪れる30分前の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────と、言うわけで、今回のレイシフトにはこの万能の天才、ダ・ヴィンチちゃんが同行する事となりましたー!」

 

「おー!」

 

「いやいや待て待て待ちなさい。え? どういう事?」

 

 その後、仕度を終えた立香がマシュとダ・ヴィンチと共に管制室に訪れ、今回のレイシフト先の説明を受けていた最中、万能の天才の口から聞かされる台詞に一同は目を見開いていた。

 

唯一立香だけは嬉しそうに手をパチパチと叩いているが、修司とマシュは戸惑うばかりで、ロマニに至っては彼らしからぬ程に動揺していた。

 

「何を言っているんだダ・ヴィンチ! そんな事は許可できないぞ!」

 

「えー? どうして? 英雄王やジャンヌ、他にも結構なサーヴァントがレイシフト先に送られているじゃんか。どうして私はダメなんだい?」

 

「一度特異点にレイシフトしたら、人理定礎を修復するまでカルデアには帰還できない! 君に万が一があったらカルデアはどうなる!?」

 

「ハッハッハ、それこそ無用な心配という奴だよ。いや、本音を言えばエルサレムの造形に興味があるというのが正直な所だが、なに、心配はいらないよ」

 

「そんな能天気な!? どうしてそんな根拠のない自信が───」

 

「根拠のない自信は、天才の最低条件さ。それに、カルデアには人間(君達)がいるだろう? なら、大丈夫さ」

 

 ダ・ヴィンチのロマニを見る目は何処までも強く、自信に満ち溢れていた。彼はカルデアに召喚されたサーヴァントの中でも最も長い間カルデアで働いてきた者、ロマニやカルデアのスタッフ達を誰よりも長い間見続けてきた故の確信。君達なら大丈夫だと、万能の天才が、そう太鼓判を押してくる以上ロマニからこれ以上強く言える事はなかった。

 

「………分かった。君がそこまで言うのなら、僕からはもう何も言わないよ。けれど約束してくれ、立香ちゃん達のサポートに徹し、必ず戻ってくると」

 

「あぁ、分かっているとも。なぁに、此方には無敵の戦闘民族がいるんだ。そうそう簡単に後れは取らないよ」

 

「あ、すみません。俺一応地球人です」

 

「修司さん、そう言うことじゃないと思うよ」

 

修司のツッコミもスルーし、ダ・ヴィンチを含めた一行はコフィンへと向かっていく。そんな彼等を見送りながら、ロマニは改めて今回のレイシフト先の特異点に関する説明を行う。

 

「改めて説明させてもらうけど、今回判明した第六の特異点───時代は十三世紀。場所は《聖地》として知られるエルサレムだ。正確には1273年。第九回十字軍が終了し、エルサレム王国が地上から姿を消した直後の時期になる」

 

「十字軍の終了───西洋諸国がエルサレムから撤退したことは、現代に続く人類史へと多大な影響を与えている。特異点として選ばれるのに充分相応しい時代と言えるだろう。…………ついこの間までならね」

 

 実のところ、第六特異点の予測はアメリカより早くに出来ていた。けれどシバ───カルデア有数の特異点を調査する際に使われる観測結果が、あまりにも安定しなかった。時代証明が一致しない、時には観測そのものが困難な時もあった。

 

それは燃え尽きた赤い大地の赤色だけが返ってくる事ではなく、観測の光そのものが消えてしまうということ。つまり───第六の特異点はカルデアスの表面に存在せず、その部分だけすっぽりと空洞になりつつあるということ。

 

嘗てない状況、ロマニ曰く第六特異点は人理の流れから外れようとしているとの事。これ迄のレイシフト先は『その時代』を乱そうとするソロモンの聖杯との戦いだった。

 

今回は第六の特異点そのものが、『あってはならない』歴史になりつつある。これを放置すれば、仮にソロモンの人理焼却を解決できても、人類史は多大な被害を被る事になる。故にその特殊な事例から第六特異点の人理定礎評価はEX(規格外)と認定、これ迄の旅とは何もかもが異なるモノだと、ロマニは語る。

 

今回もカルデアからの支援は少なく、また危険度は極めて高い。ダ・ヴィンチや修司という仲間がいても、それでも楽観視出来ない。それが、EXと評価された特異点である。

 

「EXか、やっぱりメチャクチャ強い奴がわんさかいたりするのかな?」

 

「修司さん、もしかしてワクワクしてる?」

 

「………実は、少しだけ」

 

「うわぁ、やっぱり戦闘民族じゃないですかヤダー!」

 

「どんな郷土料理があるのでしょう? 楽しみですね!」

 

「フォウフォーウ!」

 

「君達ねぇ……」

 

そんな話を聞いても普段と変わらない修司達に、ロマニはすっかり毒気を抜かれた様子で苦笑いを浮かべる。

 

「アッハハ! 頼もしい限りじゃないか! さて、お喋りは此処までにして、そろそろ現地へ向かうとしよう。六度目の聖杯探索(グランドオーダー)、張り切って行こうじゃないか!」

 

「今回もソロモンからの横槍もあるかもしれない。皆、油断せずに落ち着いていこう。」

 

「「はいっ!」」

 

 ロマニとダ・ヴィンチの言葉に元気に返す二人を見て、修司はもう、自分から言えることはないなと確信する。これ迄の旅を経て成長した二人、きっとこれからも彼女達の旅路は続いていくのだろう。

 

ならば、自分はその道を切り開こう。その為には先ず、この特異点を早急に攻略し、カルデアへ戻った後、GNドライヴを搭載したシャドウボーダーの最後の調整に移行するだけだ。

 

二つのGNドライヴと、それを両立、同調させるシャドウボーダー。そして………GNドライヴを完全に解放させる“あのシステム”の構築。

 

マシュ=キリエライトを助ける。その道程まで後わずか、エジソン達に自分がいない合間の調整を任せ、修司は立香達と共にエルサレムへと向かう。

 

しかし、立香達は知らなかった。レイシフト先で待つ嘗てない惨劇に。

 

そして、立香達は知らなかった。本気で激昂した頼もしき隣人(修司)の恐ろしさを。

 

 

 

 

 

 

 




今回から始まる第六特異点。

ボッチは、一体なにに激昂すると言うんだー!?(超絶棒読み)

それでは次回もまた見てボッチノシ





オマケ
こんな失意の庭は嫌だ。

「あぁ、まだ君ここにいたの? いい加減最後のマスターじゃないんだから、大人しく自室に籠ってなよ」

「もう君が頑張る必要はないんだ。既に君は唯一無二のマスターではなく、代替えのその他でしかない。身の程を弁えて、大人しくしてなさい」

 皆、勝手な事ばかり言う。これまで私に無理強いしてきたくせに、今になってそんな事ばかり言う。

私の代わりはいる? なら、なんでもっと早くそう言ってくれなかったの? どうしてそう、皆勝手なの?

私だって、頑張ってきた。凡人なりに頑張って、必死に努力して、今日まで足掻いてきた。

なのに、もう私は入らないって言うの? それならそれなら………!

「ひゃっはー! ならもう修司さんのハチャメチャに巻き込まれなくて済むんだー! ヤッター! マシュ、おっきーの所でスマブラしよー! 私ホムラ&ヒカリね!」

「「「え?」」」

「あ、今後、修司さんと一緒に作戦行動する時は皆カドックに言ってね! じゃあ、これから私は皆と楽しくスマブラしてるからー!」

失意の庭「いや、あの………その………」

失意の庭「ご、ごめんなさい……」

失意の庭「この人間………たくまし過ぎない?」




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