『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回、諸事情により一部のサーヴァントの出番が意図的に削られております。

誠に申し訳ありません。


その86

 

 

 

*月α日

 

 新たに発生したという微小特異点を観測し、ロマニとダ・ヴィンチちゃんの勧めで、とある無人島にバカンスする事になった自分達は、取り敢えずこれ迄の疲れを癒す為に、慰安旅行という名目上で遊びにやって来た。

 

此処の所、自分はGNドライヴの製作にカルデアの格納庫に籠りっきりだったから、今回の旅行はそんな自分に対するロマニ達の気配りの部分も合ったのだろう。マシュちゃんの一件以来、あまり話すことがなく、互いに何処か避けていた時もあったから、今回の話は関係改善の為にも必要な事だったのだと思う。

 

 ただ、事前に話があった事もあり、今回レイシフトした所はマジもんの無人島だった為、最初は衣食住の確保の為に色々と忙しかった。水着で。

 

そう、今回のレイシフトはまさかまさかの水着の格好での出発だった。マシュちゃんも普段の鎧姿とは全く別の水着仕様となっており、立香ちゃんも水着の礼装で特異点の調査に乗り出した。

 

最初は露出の多い水着なんかで大丈夫なのかと危惧していたが、そこは万能の天才ダ・ヴィンチちゃんが手掛けた一級品。見栄えと性能の両方を重視したスペシャル礼装なんだとか。まぁ、立香ちゃんが喜んで受け入れているのなら別に良いんだけどね。

 

一応俺の水着も用意してくれたみたいなんだけど、立香ちゃんのとは違って単に破けないだけの礼装らしく、リソースを立香ちゃんに注いでいた為に其処まで拘れなかったとか。

 

いや、全然いいよ? 自分としては頑丈な礼装ってだけで有り難いし、汚れる事以外気にする必要がないから、着心地も含めて個人的には大満足な仕上がりだ。

 

ただ、俺が特異点の調査に乗り出している合間、製作途中のGNドライヴに手を出すなと言ったのに、終始ニマニマ顔をしていたダ・ヴィンチちゃんの顔が今でも気になって仕方がない。本当はこの日記を書いたら寝るつもりだったけど、念の為に見に行った方が良いのかもしれない。

 

 まぁ、そんな風に色々と不安要素はあるものの、取り敢えず調査に協力してくれる他のサーヴァント達と一緒にこの無人島で開拓する事になったのだが……調査をする面子が問題だった。

 

玉藻さん、マリーさん、アルトリアさん、女海賊の二人(アン&メアリー)、スカサハ、マルタさん、清姫ちゃんと、まぁ女子の割合が多いこと。しかも全員がスカサハの手引きで水着仕様となるのだから、皆普段よりはっちゃけてしまっている。いや、水着姿になったのはもう少し後なんだけどね。

 

他にも黒ひげやケルトの三槍、小次郎さんとカルナとかがいたんだけど………黒ひげが、早い段階で再起不能(リタイア)となり、カルデアへ強制送還された。

 

いや、本当なら自分が調べようとしたんだよ? 前の修行で空を自由に飛べるようになったし、丸一日程度なら遠泳しても問題ないから、自分が調べようかと立候補しようとしたんだけど。

 

黒ひげの野郎、まんまと女海賊の口車に乗せられて呆気なく単身で大海原へ出ていきやがった。やめておけと言ったにも関わらず、ご褒美が待っていると丸太に跨がって板一つで大海に出る黒ひげの背中は、何処と無く哀愁が漂っていた気がした。

 

で、その間自分が今度こそ空飛んで島を調べてやろうと思ったのだが、この島、どうやら普通の無人島ではないらしい。カルデアとの通信は途絶えてしまったし、妙にデカイヤドカリとかがウヨウヨいるのだ。しかも凶暴で、カニらしからぬ俊敏さを持っているなど、どう考えても普通の生態系ではない。

 

だからこそ自分が空を飛んで安全な場所を見付けようとしたのだが、この島、想像以上になにもない。火山らしきものがあったりするのが見えたりしたが、思っていた以上に森林で鬱蒼としていた為に、あまりハッキリとしたことは分からなかった。

 

仕方がないので一先ず黒ひげが戻ってくるまで待とう、という結論になり、その日一日は浜辺で見張りを交代しながら黒ひげが来るのを待った。この日の夜、いつもと違う夜空に見惚れていたマシュちゃんと一緒に談笑している立香ちゃんを見てホッコリとしたのは内緒だ。

 

 そして次の日。瀕死の状態で浜辺に打ち上げられていた黒ひげから告げられたのは、割りと切羽詰まった情報だった。海から見える星の位置はメチャクチャで、潮の流れも相当きつく、並の船では島から脱出するのは難しいと、嘘偽りなく言われた。

 

ただ、黒ひげはその報告だけで終わることはせず、最期に呪いを吐きながら消えていった。無人島という閉鎖された空間で自分だけが美女美少女とキャッキャウフフ出来ないと、血涙を流しながら悔しがっていた。

 

聖パイに呪いあれー!ってさ、あの時の黒ひげの断末魔は自分もちょっぴり気圧されてしまった。いや、本当は助けるつもりだったんだよ? 自分の気を分け与えれば、少なくとも黒ひげは此処で脱落する事はなかった。

 

ただ、彼を助けようとした際、メアリーが銃口を押し付けながら笑顔で言ってくるんだもの、「余計な事をしたら………分かってますね?」って!

 

こえーよ。お前らそんなに黒ひげが嫌いかよ、アイツ海賊としてならやベー奴だけど、普段は割りと話の通じる面白い奴なんだぞ? 趣味も合うし、俺は割りと話のしやすい奴なんだけどなぁ。

 

 そんな自分の気持ちなど露知らず、黒ひげはリタイア。絶海の孤島で漂流する事となった自分達はこうして無人島でのサバイバルが始まったのだ。

 

まぁ、取り敢えず自分が適当に木々をへし折ってログハウスを四軒程立てたから、少なくとも寝床には困らないけどね。

 

 

 

*月√※日

 

 前回の続きだが、無人島に漂流する事になった自分達はスカサハがルーンで脱出の為の船、その資材を集めたりしながら、無人島でのバカンスをなんだかんだ楽しんでいた。

 

環境を破壊しない程度に島を開拓し、たまたま生息していた家畜になる動物達を自然の法則に反しない程度に繁殖させ、船が完成する頃には島は人間でも住みやすい環境となっていた。

 

しかし、その間にも何かと問題が起きたりした。巨大な猪にディルムッドが死にかけたり、マリーさんが可愛いうり坊達と親しくなったり、そのうり坊達が巨大猪───魔猪に迫害されていたりと、割りと波瀾万丈な日常となっていた。

 

魔猪は自分を含めた最前線で活躍するサーヴァント達が揃っていた事もあって、特に苦戦することなく地に沈める事ができた。ただ、この魔猪はやたらとタフでその癖逃げ足が速い。その癖何度も出てくるのだから、いい加減猪鍋にでもして喰ってやろうかと思った。玉藻さんからは悪食ですわよと窘められたから止めておくが、せめて毛皮位剥いでやろうと思った。

 

 それ以外は小次郎がマルタさんに戦いを挑んだり、スカサハが俺に死合いを申し込んでくる事以外、特になにもなく、平和に俺達の夏は過ぎていった。いや本当、ケルトもそうだが小次郎もしつこくない? なんでそんなに斬りたがるのかなぁ、そんなに斬りたいならヤシの実でも斬ってりゃいいのに。

 

お陰でこの無人島生活でマルタさんと割りと親しくなれた気がした。主に厄介な奴に付きまとわれる苦労人的な意味で。

 

そして、そんなマルタさんにサバイバルの手解きを一通り教えると、お陰でマスターの役に立てたと喜んでくれた。マルタさんも妹弟がいたみたいだから、年下の子の面倒を見るのは得意らしく、立香ちゃんの事も何かと気にかけてくれていたらしい。

 

 玉藻さんや清姫ちゃんも限られた食材で連日ご飯を提供してくれたから、此方も頗る助かっていた。日頃から良妻賢母と自負しているだけあって玉藻さんも手際がいいし、清姫ちゃんも火の扱いはカルナ並みに上手い。その慣れた手付きは生前からくるものなのだろうか?

 

気になったのでそれとなく訊ねてみると、なんだか二人は苦笑いを浮かべる始末。聞かれたくない事だったのかな? なんて考えていると、清姫ちゃんがそれとなく教えてくれた。曰く、地獄の紅閻魔様に鍛えられたの事。

 

何故に閻魔? いや、そもそも地獄で料理とか学べるの? 色々と突っ込みたくなる話だが、二人ともそれ以上は話したくないのか、苦笑いを浮かべるだけでクチを硬く閉ざしてしまっていた。なんだか申し訳ないことを聞いてしまったなと、若干後悔した自分は、それとなく謝り、この話は一先ずこれで終わることにした。

 

 そして、マリーさんとアルトリアさんなのだが………マリーさんは兎も角、アルトリアさんが酷かった。何が酷いって、獣一匹狩るのに宝具をブッパしやがったのだ。しかも森のど真ん中で、どや顔しながら!

 

だから、思わず咄嗟に彼女の頭を引っ張叩いてしまった。いやだって、他の動植物が共生している森を獣一匹狩るために宝具ブッパするとか、猪だって壁を前にすると止まったりするのに、思い切りが良すぎるだろう。

 

カルナだって自身が炎を扱うものだから、力を奮う際にメチャクチャ周囲に気を遣ってるんだぞ? 自分もそう、この島に来てからかめはめ波なんて撃ってないし、使う技だって気を纏う時以外殆んど使っていない。

 

だから、もう少し威力を抑えて慎重に行動しろと遠回しに言っても、なんか自慢気に話をするだけであんまり懲りてはいなかった。

 

あまりにも自然を蔑ろにする言い草につい頭に来たものだから………その、柄にもなく、つい説教を垂れ流してしまった。生態系や食物連鎖について、自分なりに分かりやすく説明するが、 アルトリアは「で、でもアグラヴェイン卿は誉めて……」なんて言うものだから。

 

「それ、誉めてるんじゃなくて呆れてるだけだからね」と、懇切丁寧に説明しておいた。するとアルトリアは顔面蒼白になって項垂れ、以降は大人しくなった。

 

流石に言い過ぎたかなぁ? でも、アルトリアだって外見は兎も角中身は歴とした成人した女性だし、なんなら自分よりも年上だ。今回のやらかしは霊基を変えた事への弊害という事で、次からは気を付けようという形で説教は終えた。

 

マリーさんは………うん、普通に見てて癒しになったわ。うり坊達と戯れながら、それでも自分に出来ることを懸命に頑張っている姿は元王妃であることを差し引いても美しく見えた。

 

まぁ、アルトリアさんも立香ちゃんとマシュちゃんの護衛に一役買ってくれてたし、他の皆と同じ様に頑張っていたしね。この日のカレーは彼女にだけ何時もより具を多くよそっておいた。

 

 その後、船が完成して皆で島を脱出し、けれど辿り着いた場所は千年以上経過した元の島だったり、うり坊が喋ったり、元凶である魔猪をぶちのめしたり聖杯を回収して特異点を修復したりと、ワレながらハチャメチャな日々だったけど。

 

この無人島での生活は、総じて悪いものではなかったと思う。うん、きっと………良い思い出になると、俺は思う。

 

 ───因みに、小次郎&スカサハへの対応は自分とマルタさんが手を組んで対処する事になりました。控え目にいって、メチャクチャしんどかったです。

 

その後、カルデアに戻った後も自分とマルタさんの交流は続いたりしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら修司、アナタも休憩?」

 

「そんな所ッスね。マルタさんもトレーニングの帰りですか?」

 

「まぁね。レオニダス王や賢者ケイローン程ではないけど、私の所にも生徒が来たりするもんだから、その対応で必死で……こちとら、そんな柄じゃないってのに」

 

「はは、マルタさんも面倒見がいいッスからね。つい頼りたくなるんじゃないッスか?」

 

「まぁ、頼られる分には構わないけど………て言うか、なんでアンタも体育会系なノリなのよ?」

 

「あぁ、多分これ学生の頃の癖ッスね。俺、高校は陸上やってたから、その名残ッス。マルタさんに似た先輩(OB)もいたし」

 

「ふぅん。ま、良いわ。今日は気分がいいから、奢ってあげる。付き合いなさい」

 

「シャーッス! マルタ先輩、アザーッス!!」

 

「そのノリ止めなさい。ぶちのめすわよ?」

 

「ふぐぐぐ、私も水着の霊基になれたら……!」

 

「何を言ってるのよこの聖女は」

 

 

 

 

 

 

 

*月√δ日

 

 マシュちゃんの容態の回復という名目で始まったGNドライヴの製作、途中で無人島にレイシフトしたりハプニングがあったが、今回の工程でどうにか形になる所までに至った。

 

エジソンさんやテスラさん、バベッジさん等、多くの先達者の皆の協力のお陰で、GNドライヴの一つが完成した。これで半分、一個が完成出来た以上もう一つが完成するのはそう遠い話じゃない。後は二つのGNドライヴが同率の稼働領域を同調、両立の調整をしながら補助機である《オーライザー》を完成させるだけである。

 

しかし、果たして資材は足りるのか。いや、GNドライヴをもう一つ作る分にはギリ足りる。問題は、二つのGNドライヴを臨界値まで高めてくれるオーライザーの分の資材だ。

 

 不味い、計算が狂ったか? 此処まで来ておいて計画が頓挫するのはどうしても避けたい。設計も完璧だし、製作過程も何も問題はない。多くの英霊やスタッフの皆の力を借りて完成しようというのに、こんなつまらない結果で終わるのは自分としては何としても避けたい事だ。

 

何か、何かないか……別に一から作らなくてもいい、せめてGNドライヴを二つ載せて、それでも余裕がありそうな乗せるものとか無いものか………。

 

いや、あった。そう言えばGNドライヴを造っている最中、ずっと格納庫で埃被っていた黒いボディーがナイスな車体が、眠っていた!!

 

こ、これしかない。二つのGNドライヴを搭載させても尚、耐えられそうな装甲車! シャドウボーダー、君に決めた!!

 

 善は急げ、しかし急がば回れともいう。カルデア所長代理であるロマニ=アーキマン、彼への交渉を考えながら、一先ず今日は休むとしよう。

 

ここへ来てまさかのシャドウボーダーへの改造計画。あのゴツい装甲車をどういじってGNドライヴ二つを搭載するのか、考えただけでもワクワクするっ!

 

おっと、いけないいけない。GNドライヴの製造はあくまでマシュちゃんを助ける為のモノ、遊び半分ではなく、キッチリとした大人として、確りとした態度で挑まなくでは。

 

 ………シャドウボーダーって、幾らで買い取れるかなぁ。

 

 

 

 

 




Q.シャドウボーダーって買い取れるの?

A.ロマニ「いや知らないよ!? いきなりなに!? 今度は何をしようとしてるの!?」

Q.どうして、いつもアルトリアを虐めるの?

A.ちゃうねん。虐めるつもりはないねん。ただ主人公ならこう言うだろうなって思いながら書いていると、自然とこうなっちゃうんです。

ごめんなさい。

Q.GNドライヴを造る際、直流と交流で揉めなかったの?

A.どちらも必要だから揉めなかった。揉める必要がなかった。ただ、シャドウボーダーに搭載する際は一波乱あるかもしれない。

それでは次回もまた見てボッチノシ




おまけ

こんな◼️◼️の◼️はイヤだ。


「あ、またお前此方に来たんだ♪ どんだけ暇なんだよ、お前」

「うっせ、俺も知らねぇよ俺がどうしてここに来ているかなんて。………まぁ、お前も元気そうで良かったよ。◼️◼️◼️◼️は? アイツもここにいるんだろ?」

「───うん。お母様も、ここの家は気に入っているみたいだからさ、アタシも時々来てるんだよ? ここは、お父様とお母様の思い出の場所なんだって」

「ふぅん。………て、ちょっと待って? 誰がお父様だって?」

「誰って、アンタしかいないじゃない。お母様言ってたよ? 私の伴侶となるのは彼しかいないって」

「は、はぁっ!?」

「いや、なんでアンタが驚いているのよ? アンタだってそのつもりでお母様の◼️◼️の◼️に付き合ってたんでしょ? 一緒にモースと戦ったって聞いたし、厄災だってはね除けたって、お母様、とても楽しそうに話してたわよ?」

「ま、マジで?」

「それにメリ───ランスロットだってお父様が助けたんじゃない。一方的に拾い上げておいて後は放置って、流石にアタシもどうかと思うわよ?」

「いや、彼女はただ泥の中にいるのが気の毒だから手を貸しただけで、それ以外は特になにも───」

「あーもう! グダグダうるせぇなぁ! ほら、さっさと行くわよ! お母様も待っているんだから! 久し振りに………皆で一緒にご飯でも食べようよ。あれから私、勉強したんだから!」

「………はいはい、分かりましたよ。お姫様」



深い深い森の奥、誰も知らない小さな箱庭。ここには女王も魔女もなく、あるのはただの少女たち。

覗き見は此処まで、家族みんなでどうか一時の幸せと安らぎを。




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