『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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スパロボ30、ガン×ソード続投!
ウレシイ……ウレシイ……。

え? ナイツマ? え? マ?

マジでか。

え? グランゾンは? 出ない? (*´・ω・)ソンナー


その81 第五特異点

 

 

 

「えぇい。次から次へとキリがないな!」

 

「ぼやいても仕方ないわエジソン。今は目の前の相手を倒すことに集中しましょう」

 

 溢れるように押し寄せてくるケルトの群れをエジソン達サーヴァントを筆頭に戦線を維持する。押し寄せてくる暴力の波、第三の特異点以来の対総力戦に立香は広い視野を持つことを心掛けながら、マシュに逐一指示を出す。

 

とはいえ、相手の戦力は第三特異点(オケアノス)で経験した以上に多く、雪崩れ込んでくる危機はあの時の比ではない。命令通りにしか動けない竜牙兵とは異なり、此方は歴戦の猛者であるケルトの戦士達だ。一人一人が油断ならない意思を持つ戦士、死ぬ気で此方の命を取りに来るケルトの戦士達に徐々に立香の精神は磨り減っていく。

 

そんなマスターを守る為にマシュは盾を奮って立香を守護する。そんな後輩の背中に安堵した立香は、気持ちを立て直して眼前の敵を静かに見据える。

 

「ロビンさん、ネロ陛下とエリちゃんのフォローお願い! スカサハ師匠はエジソンさん達の援護を!」

 

「あいよ! ったく、こう言う正面切っての戦いは苦手なんですがねぇ!」

 

「若者が、そう易々と泣き言を口にするモノではないぞ? ほら、良く言うではないか、何事も当たって砕けろと。チャレンジ精神は幾つになっても持つべきではないかな?」

 

「説得力のあるご助言、どうも!」

 

 辟易としながらも突出する二人のフォローに回ってくれるロビンの人のよさに感謝しながら、立香は次の脅威に視線を向ける。ナイチンゲールも狂戦士(バーサーカー)でありながら周囲の皆と上手く連携してくれているし、アメリカ軍の兵士達も援護射撃に徹してくれるから戦況は現在、こちら側に有利に傾いている。

 

今の内にワシントンで戦っている修司が勝利してくれる事を願いながら、立香がマシュと共に前進しようとした時、遥か空から無数の光の矢が立香に降り注いできた。

 

「先輩ッ!!」

 

「っ!?」

 

 突然のマシュの叫びに戸惑いながらも、頭上から降り注いでくる光の矢の雨に気付き、返事を返す余裕もなく、立香はマシュが掲げる盾の下へと避難する。その体勢からマシュの両足の間に挟まる形になるが、それを気にする余裕すら今の二人にはありはしない。

 

途切れる事なく降り注がれる光の雨、その一つ一つが自分を殺す為に放たれた物だと理解した立香は、何度目か分からない死への恐怖を体感した。

 

怖い。でも、ソレ以上に負けたくない自分がいる。恐怖を和らげる為にマシュの脚にしがみつくが、それを臆病者と罵る者はいない。ここは戦場、サーヴァント同士がぶつかり合う常道から駆け離れた特異なる戦場。魔術師としての日は浅く、マスターとしても未熟な立香が、無防備のままで生き残れる程甘い世界ではない。

 

 ふと、光の雨の向こうから、一人の男が此方を見据えていた。その男には見覚えがあった。アルジュナ、マハーバーラタの叙事詩にてカルナと同格の英雄とされる人物。そんな男が弓矢を構えて此方に狙いを定めている。マシュは頭上からの光の矢の対処でソレ処ではない、このままでは狙い撃ちにされると、通信越しでロマニから悲鳴にも似た叫びに漸くマシュが気付いた所で…………光は放たれる。

 

あ、これ死んだ。どこか他人事に思いながら目の前に迫る光の矢を見つめていると、突然、人影が立香の前に立ち塞がった。

 

そして………。

 

「ふっ!」

 

 その人物は、迫る光の矢を全て素手で叩き落としてみせた。黒いフードを深く被り、表情を隠しているその人物は………しかして、不敵に頬を歪ませていた。

 

「済まない。向こうのケルトを片付けている内に少々遅れた。大事ないか、カルデアのマスターよ」

 

「か、カルナさぁん!!」

 

視線だけ此方に向けてきて安否を気遣ってくれる施しの英雄の登場に、生きた心地がしなかった立香は半泣きしながら彼の到着を喜んでいた。既に彼が担当していた方は全て片が着き、今はラーマが後詰めを行っている。

 

自身を助けてくれたカルナの登場に安堵の涙を浮かべながら、立香はカルナの名を叫ぶ。対するカルナは立香の声援を受けながらも、目の前の宿敵に一切視線を逸らさずにいる。

 

「らしくないなアルジュナ、授かりの英雄と呼ばれた男が不意打ちとはな」

 

「………この戦争の早期終結を行うには、敵大将の首を狙うのは常、この場合に於ける敵大将とは誰か? エジソン? いいや違う。この場合私達の敵の大将とは、カルデアのマスターを置いて他にない。私を愚かと罵るのは筋違いだ。愚かなのは自身の価値を分かっていない彼女自身だ」

 

「賢明で道理だな。だが浅慮でもある。確かに彼女は愚かかもしれんが、それでも一人の人間として戦う決意と、生き残る覚悟がある。その彼女を侮辱する事はこの俺が許さない」

 

「ならば、どうする?」

 

「決まっている。敵として相対した我が宿敵に一足早いプレゼント(敗北)を贈るのみ。行くぞアルジュナ」

 

「来い、カルナァッ!」

 

 アメリカとケルト、二つの勢力がぶつかり合う戦乱の中でインドの両雄が激突する。当然、その余波は凄まじく……。

 

「ふぎゃぁぁぁぁぁっ!?」

 

「せ、先輩ィィィィッ!!?」

 

「ブフォーウッ!!」

 

大地が抉られる衝撃に巻き込まれた二人と一匹は、戦場の何処かへと吹き飛んでいった。

 

これだからインドは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────荒野の大地に砂塵が舞う。ワシントン州のホワイトハウス跡地から南へ、まるで大陸を縦断する様に広がる砂塵。それを生み出しているのは、たった二人の戦士による闘争から発生しているもの、彼等の戦いは先のカルナと同等以上の規模で拡大していき、その有り様は神話の戦いそのものだった。

 

拳が奮われる。一呼吸の内に目の前の男の両手から繰り出される千を超える打撃の応酬、触れればサーヴァントですら粉砕するであろう暴力の嵐、それを掻い潜り、返しに槍を振り抜くクー・フーリンも、また大英雄として相応しい武を有していた。

 

振り抜かれる死槍、僅かでも触れれば死の呪いによって瞬く間に命を喰らい尽くす魔槍。鋭くも恐ろしい朱色の槍は必死に逃げる男の努力空しく、その胸元を刺貫かれる。

 

しかし、男───修司を貫いたかに見えたソレは陽炎となって消えていく。古典的な手だ。しかし、だからこそ使う場面によって効果覿面な避けの一手となる。

 

「───残像か」

 

「“残像拳”。些か使い古し感のある技だが、乱戦の時には意外と通用する。特に、アンタみたいな手数の多い奴にはな」

 

 気付けば、既に自身が追っていた男は己の少し離れた背後へと回っていた。此処まで互いに容赦なく仕掛けていたと言うのに、互いにほぼ無傷。クー・フーリンは脇腹や頬に僅かな擦り傷が出来ている程度で、修司の方は精々マントに数ヵ所の穴が空いている程度。

 

依然として互いに有効打が打てない状況、しかし見てくれの状況とは異なり、心境的に追い詰められていたのは修司の方だった。修司の奮う拳は確かに強力、打てば大抵のモノは粉砕し、掠っただけでも並のサーヴァントなら致命傷になり得る威力を秘めている。修司の生きてきた人生の中で鍛えられ、培われてきた剛拳。

 

対してクー・フーリンの奮う魔槍は触れた相手に死を送るモノ、相手の強弱に関係なく、触れれば殺す事を決定付けた死の具現。これ迄手合わせをしてきて理解した。目の前の男が突き付けてくる死槍は、直撃すれば自分の気の防御を突破してくると。

 

だから幾百幾千もの魔槍が奮われる度に、修司の精神がゴリゴリと削れたのは言うまでもない。受けても耐えられる拳と、受ければ死は免れない魔槍、どちらが精神に堪えるかは明白だった。

 

そして……。

 

「手数は多いか。いつから俺がテメェに手札を晒したよ」

 

アイルランドの光の御子の力は、魔槍だけに留まらない。

 

「!」

 

「あまり、英雄を舐めるなよ?」

 

 クー・フーリンのその一言により修司の足下から赤いルーン文字が輝き、瞬間に巨大な火柱が修司を呑み込んだ。痛みや熱さよりも純粋に驚いた修司だが、ダメージはない。今更この程度の炎で臆する事はない修司が、構うことなく前進しようとするも。

 

頭上から瓦礫、足下は大地が隆起して修司を呑み込もうと迫ってくる。どちらも此方の足止めを目的としたモノ、そうはさせないと修司が頭上の瓦礫に向けて気弾を放って吹き飛ばし、上空へ向けて跳躍する。

 

そして、それこそがクー・フーリンの狙いだった。

 

「そら、逃げ場はもうないぞ。────くたばれ」

 

槍を握る手に力が満ちる。己の獲物に最大限の魔力を注ぎ込み、その余波でクー・フーリン周辺の大地は陥没し、空間すらも歪ませる力を一点に集中させる。

 

突き穿つ───死翔の槍(ゲイ───ボルク)ッ!!」

 

そして、文字通りの必殺の一撃は放たれた。サーヴァントであった頃から避ける度に相手に襲い掛かり、如何なる防御防壁も貫いてきたクー・フーリンの一刺。それはサーヴァントの枠組みを越え、伝承そのもの(・・・・・・)の威力となり、修司を殺そうと食らいつく。

 

避けるのも防ぐのも不可能。であるならば、迎え撃つしかない。面に強い手刀(エクスカリバー)では点のゲイボルクが相手では力不足、ならば渾身を込めての拳骨(スマッシュ)しかないと、迫る朱色の死に拳を振り上げる。

 

力を溜め、気を込め、そして───。

 

TEXAS──SMASH(テキサス───スマッシュ)ッ!!」

 

放たれた拳は朱色の魔槍と激突し、衝撃で天と地が砕け散る。大陸を覆っていた雲を吹き飛ばし、北米大陸上空に穴が開く。拮抗する力、己の皮膚を突き破って侵入しようとする呪いの槍に───修司は更なる力を解放し。

 

瞬間、光が周囲を呑み込み、北米大陸の一部が吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………仕留め損ねたか」

 

 巨大隕石が落下した。そう思わせる程の衝撃。しかし大地は大して砕けてはおらず、陥没してなければ、融解もしてはいない。全てはあの白河修司という男の仕業だろうと確信しながら、それでも仕留められなかった事実にクー・フーリンは舌を打つ。

 

そして、クー・フーリンの疑念は確信へと変わる。ボロボロとなった礼装、体の至る所から酷い火傷を負っている修司にクー・フーリンは彼の人の良さに呆れ果てていた。本来であれば圧し勝てていたであろう力のぶつけ合い、それをわざと相殺へと持ち込んだのは他ならぬ修司の選択だった。

 

あのままでは地上が無事ではすまない。力の衝突の弊害で地上へのダメージを懸念した修司は、打ち勝つことを放棄し、自身にもダメージの通る相殺を選んでおり、それは彼の拳から流れる痛々しい傷跡がその証となっている。

 

 修司は、自ら呪いの槍を受けることを選択した。それが自身の命を脅かす事を意味していても、それでも修司はこの時代の人々が生きていける配慮を選んでいた。

 

それを、クー・フーリンは無駄な事だと嘆息する。下らない戦いの幕引き、もうじき終わる戦いに光の御子が失意の溜め息を吐いた時、それは起こる。

 

力が衰えていない。全身を呪いの槍によって蝕まれ、常時耐え難い苦痛に苛んでいる筈の修司が、依然と紅い炎を纏って空で此方を睨んでいる。

 

「おい、なに終わった気でいるんだよ。ケルトの戦士ってのは、終わってもいない戦いに背を向けるのかよ」

 

 戦いは終わらない。終わらせない。そう強く瞳に顕れている修司にクー・フーリンは歓喜に口元を歪める。

 

「あぁ、最高だよ。テメェは!」

 

砕けた槍を手元に復元し、再び構えを取る。激闘は──更なる段階へ進みつつあった。

 

そして───。

 

『………いや、あの………修司君? 君、空………飛んでない?』

 

 200倍の重力の修行を経て、白河修司は遂に飛行能力を獲得する。

 

 

 




Q.人って空を飛べるの?

A.200倍の重力を克服したら出来るかもしれない(尚、出来るとはいっていない)

それでは次回もまた見てボッチノシ



オマケ

ifこんな第四次聖杯戦争は嫌だ そのに

「わー、ここが日本ですか」

「ふふ、セイバーは日本に興味があるの?」

「はい。日本は食に対して世界トップレベルの拘りがあると、シュージさんは言ってましたから、生前から気にはなってたんです」

「シュージ。ブリテンの農家王ね。戦乱で疲弊したブリテンの大地を神秘無しに復活させた傑物、魔術界隈にある一説では彼は日本から流れ着いた異邦人だと語られているけれど、もしかして事実だったりするのかしら?」

「さぁ、どうなんでしょう? 彼は自分の事はあまり語りませんでしたし、私達も彼の所業……いや、偉業に驚いていたばかりでしたので、然程気にしてはいませんでしたし」

「そ、そうなんだ。………所でセイバー、今夜は何が食べたい? アインツベルンの資金援助があるから、遠慮せずに頼んでいいわよ?」

「取り敢えず丼モノで」

その後………。

「………誰も来ない」

人気のない倉庫置き場に、一人のケルトの戦士が途方に暮れていたとかいなかったとか。



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