『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回は地味回


その31

 

D月γ日

 

 今日は久し振りにグランゾンの整備をした。ここの所碌に相手をしてやれなかったし、今日の午後はずっとグランゾンに付きっきりでいた。

 

グランゾンは多元世界で数々の死線を共に潜り抜けてきた相棒だ。幾ら比較的平和な世界だからといって無碍な扱いをする訳にはいかないだろう。

 

人目に付くのは拙いからオートマトン達も連れて月で整備を行った。基本的なシステムや駆動系の手入れは自分で行ったが、外装の磨きはオートマトン達にやって貰ったおかげで大分作業が捗った。

 

グランゾンも久々に体がピカピカにされたお陰か、心なしか嬉しそうに見える。やはり相棒であるグランゾンには常に万全な状態でいて欲しいから、こういった整備には手を抜きたくない。

 

 そして今日はオートマトン達のお陰で時間が結構余ったから、残りの時間はオートマトン達の整備をする事で時間を潰す事にした。

 

言葉とか出せる機能がないからコミュニケーションは出来ていないが、代わりにこの子達は体全体の動きを使って感情を表現してくる為、ある程度は意志疎通が可能となっている。学園の生徒達と触れ合った事でオートマトンのAIにも変化が起きているようだ。

 

 良い傾向だ。このまま人と接して成長していく我が子達に嬉しさを感じ、そろそろ新しいボディでも作ろうかなと思う。確かグランゾンのアーカイブ内にモームちゃんのデータも入っていた筈だから彼女を参考に人間的なボディも作ってもいいかもしれない。

 

ただ、オートマトン達は意志はあっても人格や自我というものが曖昧な為、モデルとなる性別パターンは男女両方用意した方がいいだろう。自分は一人っ子だった為個人的には一緒にサッカーやキャッチボールが出来るよう男の子を選んで欲しい所だが……まぁ、そこら辺はあの子達の自由意志を尊重すべくノータッチで行こうと思う。

 

 そんな訳で今日は久々にのんびりした一日を過ごす事が出来た。明日は楯無ちゃんにIS操縦のレッスンを受ける予定なので今日は早めに就寝しようと思う。

 

……ただ、月から帰ってきた時簪ちゃんから呆れの溜息をされたのだが、アレは一体どういう意味だったのだろうか? そこら辺がよく分からない為、少しばかりモヤモヤした気分になった。

 

 

 

D月Ω日

 

 今日は楯無ちゃんとのIS操縦訓練、学園最強と謳われる彼女から学べば色々為になるだろうと思い楽しみにしていたら……何故か、模擬戦をする事になった。しかも学園の生徒達も観戦に来ていたし、言われるがまま来た自分は終始ワケワカメな状態でした。

 

普通にISの操縦技術を見せてくれると思っていただけに驚いたが……どうやら食い違いがあったらしい。戸惑いながらも自分は楯無ちゃんとの模擬戦を受ける事になった。

 

結果は敗北。自分としてはまぁまぁ善戦していたと思うし、戦闘中も為になるデータが取れたのでよしという事にしておこう。ガンダニュウム合金のお陰で蒼鴉に傷もないし、楯無ちゃんの機体も壊す事はなくて良かった。

 

しかし、やはりISというのはMSとは感じが違うな。前の時のゴーレム戦とは擬似太陽炉を使用しながらの戦闘だったし、ISとして戦うのは何気に今回が初だった。

 

 しかし、楯無ちゃん強かったなぁ。幾ら此方が武装を殆ど使わなかったとは言え、まさかああも見事にやられるとは思わなかった。楯無ちゃんのIS、“霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)”って言ったっけ? ナノマシンで構成された水で戦闘するとか、中々風情ある戦い方をするよなぁ。

 

負けてしまって悔しい気持ちはあるけれど、シールドエネルギーがゼロになっても別動力である擬似太陽炉の方は無事稼働できたし、これで宇宙環境で問題が発生されたとしても擬似太陽炉で動かせるという事が証明できた訳だ。ここは前向きに受け止めておくとしよう。

 

しかも、楯無ちゃんの操縦技術を間近で見れた事でISの操縦も大分モノにする事ができた。この調子で行けば蒼鴉もISとして完成される日は近いかもしれない。

 

と、ここで終われば実りのある話で終わっていたのだけれど、試合後、何故か自分は楯無ちゃんに問い詰められてしまった。

 

何故全力で戦わなかったのかと、馬鹿にしているのかと激昂する楯無ちゃんに自分は一瞬目を丸くしてしまった。セコンドとして来て貰った簪ちゃんが言うには自分の主要武装である牙鐵(サドンインパクトの事)や重砲(ツインバスターライフルの事)を使わなかった事に対して不満に思っているという。

 

……いや、ね。簪ちゃんのその言葉を聞いた瞬間、何というか申し訳ないと思ったと同時に何言ってんの? みたいな感想が頭を過ぎってしまったよ。

 

だって自分の作るISは宇宙活動を目的にした機体だよ? 巨大デブリの破壊とか、暗礁宙域で活動領域を確保する為のモノとか、自分の作るISの武装はそういうモノだからね? 対ISを想定している代物じゃないからね?

 

大体、ISサイズに性能をダウンさせたとはいえその火力は依然として凄まじいものだ。そんなモノを人に対し使うことなどあるわけないだろう。ゴーレムとか無人機相手なら兎も角。アリーナで重砲とか撃ったら試合処か死傷者が大量に出るわ!

 

……と、この時の楯無ちゃんには言っても素直に信じて貰えなかったので、少し言葉を変えて事情を説明したのだが……何故か逆効果になってしまった。

 

挙げ句の果てには楯無ちゃんてば目に涙を浮かべながらどっか行っちゃったし、ホントどうしよう。簪ちゃんがそれとなくフォローしておくと言ってくれたからその時はその言葉に甘える事にしたけれど……う~ん。俺、何か悪いこと言ったかな?

 

謝ろうにも簪ちゃんから止めた方がいいと止められてしまったし……けれど、流石に女の子を泣かせたまま放置しておくのは流石に拙いよな。でも、理由が分かってないのに謝っても相手に対して失礼だと思うし……う~む、カレンちゃんといいヨーコちゃんといい、年頃の女の子というのは分からないなぁ。

 

織斑先生や山田先生にも事情を話して相談したのだが、何故かそっとしておけの一言しか貰えなかった。ああいうのも青春だと織斑先生はいうけれど、それがその場を凌ぐ為の誤魔化しに聞こえてしまうのは何故なんだろう。

 

兎も角、楯無ちゃんに対しての謝罪は織斑先生や山田先生、簪ちゃんの言う事を参考に少し間を置く事にした。

 

 その間、何もしない訳にもいかないので頭を冷やす事も含めて海底に沈むゴーレムのコアの回収を進める事にした。未だ政府からなんの応答もないけれど、少しは此方も自由に振る舞ってもいいよね。

 

出来ればオーライザー制作の為にもう一個コアが欲しい所だけれど、流石にちょろまかすのは拙いよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───夜。人気の無くなった学園内、暗闇で閉ざされた生徒会室に彼女達はいた。頭を机に伏せたまま顔を上げない生徒会長、今回のISによる模擬戦でその自信の全てを喪失した彼女は横にいる親友にして従者の人物に疑問を投げ掛けた。

 

「……ねぇ、虚」

 

「何ですか? お嬢様」

 

「私って、あの男に勝てたのかな?」

 

生徒会長───更識楯無の言う“あの男”それは今年に入って学園に雇われた単なる用務員……だった男。

 

白河修司。企業で取るべき資格を一人で修得し、誰よりもISに詳しく、篠ノ之束の後継者とも言われるべき世界が注目する第二の男性IS適合者。ふとした切っ掛けで彼と戦う事を決意した彼女は今日、彼とISでの模擬戦を行った。

 

結果は彼女の勝利。その卓越した操縦技術を駆使して蒼い鴉を討ち取る様は誰から見ても楯無の勝利を認めている。事実、彼女は今日の模擬戦で白河修司に勝利した。なのに、当の楯無本人は納得出来ていなかった。

 

自分は奴に勝てたのか。そう訊ねてくる彼女に虚は即答で答えた。

 

「結果的に見れば、あの模擬戦はお嬢様の勝利に思えますが?」

 

「一見すればね。けど、実際は違う。あの模擬戦で終始あしらわれていたのは私の方だった。碌な武装を使用せず、ただのワイヤーアンカーで私を圧倒し、操縦技術の方だってその時は私が勝っても次の瞬間には負けていたわ。今日の試合で勝てたのは殆ど運みたいなモノよ。たまたま放ったクリア・パッションが偶々奴のISに当たっただけ。……ねぇ虚。アイツが例の武装、重砲と牙鐵を使わなかったのは何故だと思う?」

 

「さぁ、存じていませんが……」

 

「これは模擬戦であって実戦ではない。障害ではないモノに撃っても意味はない。だそうよ。アイツにとって私との試合は単なるデータ取りの実験でしかなかったのよ」

 

 自分は脅威ですらない。そう間接的に言われた楯無は学園最強のプライドをこれ以上なく打ち砕かれた気分になっていた。

 

今回行われた試合、結果的に見れば楯無の勝利であったが、楯無自身から見ればこの上なく敗北と言えるモノ、ISに乗り始めて日が浅い人間に追い詰められたという事実は今後の更識としての活動に多少なり差し支える事になるだろう。

 

学園最強のプライド、更識家当主としての威厳、今回の模擬戦で色々失ったモノは多いが、その代わりに得るものもまたあった。

 

今後、白河修司の名は世界中に刻まれる事になるだろう。あれほどのISを作り上げ、更にまだ磨き上げようとしている。

 

いつか、世界は彼の下に跪くかもしれない。十年前、篠ノ之束によって世界が平伏したように。

 

そして───。

 

「ですが、そのお陰で簪様と仲直り出来たではありませんか。あの後、彼女に慰められたのでしょう?」

 

「そうなのよ! 簪ちゃんてば私の為に、私の為に! 私を思って慰めてくれたのよ。あの子の手で頭を撫でられちゃって……もう当分この髪は洗わないわ」

 

「…………」

 

「ホント、最初の頃はあの野郎(白河修司)が簪ちゃんと親しくしていたから呪い殺してやろうとも思ったけど、そのお陰か簪ちゃんてば妙に男らしくなっちゃうんだもの、お姉さん簪ちゃんの勇姿を見てもう毎日がドキムネ抜刀斎よ!」

 

やっぱ、もっと徹底的に叩いて貰うべきだった。先程までとは嘘のようにテンションを上げてくる更識楯無に従者の虚は冷めた目で彼女を見下ろしていた。

 

しかし、元気を取り戻した彼女を見て、これはこれで良かったのかもしれない。相変わらず白河修司という人間は分からない事が多いが、今はそれよりも調子を取り戻した主を諫める事から始めようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

D月※日

 

 おっはラッキー! 皆元気にしてるー? 白河教室を始めるよー!

 

……うん、初っ端からハイテンションで非常に気持ちが悪いなコレ、でもこういったテンションでないとやってられないんだよね。

 

結果的に言えば自分は───現在捕まっちゃってますハイ。場所はとある山奥にある廃墟、吹き抜けの天井から綺麗なお月様が見えていますハイ。

 

 事の発端は数時間前、久し振りに手料理をする為に商店街で買い物をしていたのだけれど、その最中突然一台のワンボックスカーが自分の目の前に現れ、中から銃器を突きつけて車に乗れと脅してきたのだ。

 

こうして聞くと、捕まるっていうかまんま拉致だね。確かにこの世界には女性権利団体やら女性主義者なる者達がいるとは知っていたけれど、まさか真っ昼間から人……しかも公衆の面前で実行してくるとは思わなかった。

 

蒼鴉の改修や整備ばかりしていたのでここの所休む暇も無かった自分に十蔵さんから有休を消化する意味も含め、今日は休みを取るよう勧められたのだが……それが見事に裏目に出てしまった。

 

しかも一般人を巻き込んでしまったし。……十蔵さん、気に病んでいるだろうなぁ。あの人も最近疲れているみたいだし、恩人である十蔵さんにはこれからも元気でいてもらいたいから手料理をする為の材料も買い込んだのに、全部パァになってしまった。

 

 巻き込んでしまった五反田君にも申し訳が立たない。一夏君の友人である五反田君は完全に自分の巻き添えになってしまっている。幸い連中は自分にしか痛めつけていないので五反田君は無事な様子だが、いつ連中の八つ当たりに巻き込んでしまうか分かったものじゃない。

 

つーか、女性主義者やら女性権利団体とか知らないが、真っ昼間の公衆の場で銃器を使用してくるとか正気の沙汰じゃないよな。あの場で自分がISを装着して抵抗することを想定していないのか? 他にも大勢の人間が目撃していたし、通報される事も頭に入れてなかったのだろうか?

 

まぁ、それは今考えても仕方のない事だ。時計も奪われた事から正確な時間は分からないが、空が暗くなっているから結構な時間が過ぎた事なのだろう。それだけ時間が経過しているにも関わらず学園側からの救助が来ていないという事は……恐らくは連中が何らかの手段で自分の情報を隠蔽しているのだろう。

 

色々考えるべき事はあるだろうが、まずは今の状況から脱する事を優先するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの、白河さん、大丈夫ですか?」

 

 暗がりの中にある廃墟、何処ともしれない山奥で手足を縛られ、身動きを封じられている少年こと五反田弾は自分の代わりに痛めつけられた白河修司の事を案じた。

 

10分にも及ぶ女性集団からの一方的な暴行、蹴られ、殴られ、防御する事すら許されない彼はひたすら彼女達の理不尽な暴力を受け続けていた。

 

女性主義者。所謂ISの恩恵を受けて女性こそが至高の存在だと思い込んだ者達。彼女達による蛮行を間近で目撃した弾は情けなくも身動き一つ取ることも出来ず、みすみす連中の人質になってしまっていた。

 

自分の所為で目の前の男に怪我を負わせてしまった。その罪悪感から修司を気遣う弾だが。

 

「えぇ、心配は無用ですよ。幸い手や足で殴られただけですから、然程大した傷ではありません。お気遣い、ありがとうございます」

 

 その本人たる白河修司はケロッとした様子で壁に寄りかかっていた。しかもよく見れば手には日記帳らしきものがあり、どこから出したのかペンを手にスラスラと書き綴っている。

 

というか、いつのまにあの束縛された状態から脱したのだろうか。目の前の男には手錠や荒縄、様々な拘束具で身を固められたというのに、まるでそれがなかったかのようにリラックスした状態で日記を書き続けている。

 

隣には拘束具らしきモノが残骸として落ちている。月の光でそれらを確認した弾はアングリとした様子で目の前の男を見つめていた。

 

 すると、日記を書き続けていた男は徐に立ち上がると、日記を懐にしまい込んで辺りを見渡すと弾へと視線を映した。

 

「さて、そろそろ帰ると致しましょうか。五反田君の御家族も心配している事でしょうし、日付が変わらぬ内に退散するとしましょう」

 

「……え?」

 

突然言われた言葉に弾の思考が固まる。状況が理解出来ていないのか、それともやはり殴られた所為で頭がおかしくなったのか、修司の言葉によって混乱する弾。するとそこへ……一羽の梟が屋根の無い天井から降り立ってきた。

 

『マスター!』

 

「あぁ、アリカちゃん。来てくれましたか」

 

『来てくれましたか。じゃないですよマスター! どうして私をすぐに呼んで下さらなかったのですか! 蒼鴉とマスターの力があればあんな奴ら三秒で挽き肉にできるのに!』

 

「こらこら、あまり物騒な事は言うものではないですよ。それにアナタと蒼鴉は宇宙活動を目的としたISです。無人機相手になら兎も角、人間相手に使うわけにもいかないでしょう。それに向こうはISを装備した者が何人かいるようです。戦闘に陥った時、被害を受けるのは此方の方ですよ」

 

『で、ですけど!』

 

「それよりも、アナタには彼をエスコートして欲しいのです。今外にいる見張りの気配はありません。裏側から通って山を下れば街に続く道へ出る筈です。お願いできますか?」

 

『え!? そ、それは別に構いませんが……マスターはどうするつもりですか?』

 

「私は彼女達に少し用がありますからね。それが終わり次第私も合流しますよ。………ククク」

 

『………あっ、そ、そうですか』

 

含み笑いを浮かべる修司に何を察したのか、梟はそれ以上何も言う事はなく、弾の方へ視線を向けた。

 

『アナタが五反田弾さんですね。これからマスターの指示に従いアナタをエスコートさせていただきます。さ、行きますよ』

 

「え? ちょ、ちょっと!?」

 

目の前の喋る梟に混乱する弾。状況に理解が追い付いていない彼を容赦なしにアリカは引っ張っていく。外見こそ鳥類に過ぎない彼女だが元がISであるだけにその力は強く、何か言っている弾は抵抗出来ずに引き摺られる形で廃墟を後にする。

 

 それから暫くしてやってきた複数の女性達。背後にISを装備させた者達を控えさせた彼女らは下卑た笑みを浮かべて廃墟の中へと押し入ってきた。

 

廃墟にいたのは拘束していた筈の男が部屋の中央で空に浮かぶ月を眺めていた。しかも同じ部屋にいた筈の人質の男がいない事から、女性達はすぐに表情を一変させる。

 

「おいお前! どうやって拘束具から抜け出した!」

 

「赤髪のガキもいないだと!? どうなっている!」

 

「おい答えろ! 貴様、一体何をした!」

 

剣呑とした剣幕でまくし立てる女達、今にも手にした銃で発砲しそうな彼女達に白衣を身に纏う男は溜息と共に振り返った。

 

「その前に、幾つか聞かせて頂いても宜しいですか? 何故アナタ達は自分の主義主張をそうまでして押し付けるのです? ISを使えるのがそんなにも凄い事なのですか? ここへ来てから何度か考えた事はあるのですが、どうしてもその答えが分からないのです。知っているのなら教えていただけますか?」

 

「はっ! そんなもの、我々が選ばれた存在だからだろう。ISは男性よりも女性を選んだ! 故に、女性が優遇されるのは当然の事だろう」

 

「選ばれたのはその人個人であって女性そのものではないと思うのですが。……まぁいいでしょう、それで? 何故アナタ達は私を誘拐したのです?」

 

「決まっている。貴様の存在は我々の世界に必要がないからだ。何がISの男女共有化だ。そんなもの、断じて認める訳にはいかない」

 

「つまり自分達には都合が悪いから消す、と。では最後の質問です。───何故関係のない人達を巻き込んだ」

 

 最後の質問で修司の雰囲気が変わる。無機質で機械的、されどその奥で眠るマグマの如き激情に女達は気付く事なく、修司の質問を鼻で笑った。

 

「何度も言わせるな。我々は女だ。最強であるISに選ばれ、世界の舵を握った存在だ。寧ろ我々の道具となり役に立てたのだ。感謝こそされても恨まれる筋合いはない!」

 

「………そうかよ」

 

「言いたい事はそれだけか? なら死ね。お前の存在はこの世界に必要のないモノだ!」

 

 女が手にした銃、それが修司に向けられて銃弾が放たれた。真っ直ぐに伸びた銃弾が修司の額に向けて突き進んだ時────突然暗闇が修司の前に広がり、銃弾を呑み込んだ。

 

「?」

 

目の前の修司に銃弾が命中していない事に女は首を傾げる。外したか? そう思い女は二発、三発と続けて銃弾を放つが、いずれも修司には届かず、暗闇に呑まれる様に消えていった。

 

「な、なんだ? 何が起きている?」

 

「どうした? 私は立っているぞ? さっさとその銃で私を撃ち抜いたらどうだ?」

 

「だ、黙れ!」

 

おかしい。何かがおかしい。間違いなく自分は銃を撃ち、その狙いは確実に修司を狙っていた筈だ。なのに、平然と立っている修司に女は言い知れない恐怖に包まれ、その恐怖を拭い去るように叫んだ。

 

「あ、IS部隊全機かかれ! 空からコイツを蜂の巣にしろぉぉっ!!」

 

女が廃墟から出て行くと同時に命令を実行に移したIS部隊がその手に握られたマシンガンで上空から修司を狙い撃つ。軍用機体として知られる第二世代IS“ラファール”その機体から繰り出される銃器の威力は凄まじく、ものの数秒で廃墟をただの瓦礫の山へと変えてしまった。

 

これでは修司の死体は確認出来まい。既に肉塊となった修司を思い浮かべた女は高笑いを上げながら砂塵の舞い上がる瓦礫の山を指さす。

 

ざまぁみろと、女に逆らうからこんな目に遭うのだと、中傷的な暴言を吐く彼女がみたモノは……。

 

「どうした? 急に笑い声を出して、何か面白い事があったか?」

 

巨大な手に守られた修司の姿がそこにあった。

 

今度こそ、女達の思考は停止する。理解できない現象を前に……。

 

「あぁそうだ。一つあなた方に言い忘れていた事がありました。実は私はこう見えて短気でしてね。喩え相手が女性だろうと必要であるならば……」

 

“グーで殴れる人間なのですよ”

 

満面の笑顔でそう口にする修司、暗闇の奥から這い出る様に現れる巨大なナニカを女性達が目にした時。

 

幾つもの発砲音と断末魔が山奥に木霊するが、その数秒後───何の音もしなくなり、山は夜の静寂に包まれるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q主人公にとって怖い人or敵にしたくない人は?
シュウ=シラカワ
流竜馬
カレン
ヨーコ
ガモン
不動

Q逆に仲良くなれそうなのは?
A本人は色んな人と仲良くなりたいと願っています。
ただしアサキム、テメーはダメだ。


尚、今回は諸事情で殆ど感想の返信ができません。
本当に申し訳ないです。



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