『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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もうじきfgo六周年。今年は何が来るのかな?

個人的には言峰神父を押したい。


その80 第五特異点

 

 

 

 ───カルナと修司、二人の傍迷惑な大激闘から一夜明け、立香達カルデアの一行は遂に第五の特異点に於ける最後の戦いの準備が完了した。エジソン、エレナ、カルナが属するアメリカ軍を仲間に加え、ネロとエリザベート、ラーマにロビン、そしてスカサハとナイチンゲールというサーヴァント達を引き連れ、立香とマシュ、修司はケルトの軍勢に最後の決戦に挑む為、奴等の拠点であるワシントンへ向かう事となった。

 

現在、立香達は行軍の最中エジソンが用意した巨大馬車に乗車し、最後のブリーフィングを行っている。用意された馬車にはエジソン特性のスプリングが使用されており、馬車の内部は予想より遥かに快適だった。

 

『皆、恐らくこれがこの特異点での最後の戦いになる。決戦に挑む前に気になる事があるなら挙手して欲しい』

 

「えっと、私達はケルトの軍勢を相手にするんだよね?」

 

「厳密に言えば、魔術王ソロモンの横やりを含めた軍勢、ですが」

 

「ねぇ、昨日からその魔術王ってのが横やりを入れてくるのを前提に話を進めてくるけど、本当にそんな事が起きるの?」

 

「何事も最悪を想定し、慎重になるのは悪いことじゃないわよ? まぁ、あんまり考えすぎるのもアレだけど、予めそのつもりで動くのとそうでないとでは、対応の差が大きくなるのは良くあることよ」

 

『本当なら杞憂であって欲しいし、何事もなければそれでいい。此方は唯でさえ完全復活した大英雄を相手にしなくちゃいけないんだ。最悪の想定なんて、幾らしても足りないくらいだよ』

 

「まぁ、奴さんの相手は俺達の大将達に任せましょうや。それで、どうなんだい? お二方の調子は」

 

「あぁ、あの後飯も随分と食べたし、ナイチンゲールさんからの治療も受けた。エジソンさんから服も貰えたし、体調は万全。いつでも行けるぜ」

 

「此方も支障なし。そこの影の女王のお陰で既に万全以上の力を得た。まさか英霊の霊基(クラス)にすら手が届くとは、ルーンの真髄は凄まじいな」

 

「ハッハ、そうであろうな。我が操るルーンは原始のソレ、加えて当時のお主は宝具を使い果たしていたからな。霊基を書き換えるのにそこまで難しくは無かったよ」

 

「よもや修行時代の俺(・・・・・・)に戻してくれるとはな。感謝する影の女王、これでアルジュナと戦える」

 

 深く被った黒いフードの奥で、不敵に笑みを浮かべるカルナ。アルジュナという宿敵との決戦に武者震いをしている彼に、誰もが最初は戸惑った。こんな奴だっけ? 拳を握り締めてフフフと笑うカルナを一時放置し、改めてロマニは皆に確認する。

 

修司との激闘のお陰で疲弊し、却ってやり易かったと語るスカサハ。サーヴァントのクラスを書き換えるキャスター顔負けの手腕に、昨晩のロマニ達が頭を抱えて悶えたのは記憶に新しい。

 

スカサハによるルーンの力で新たにクラスを変えたカルナ。そんな彼に対し、充分な食料を食べ、適切な治療を受け、満足のいく睡眠時間を確保したことで、修司の消費していた気力と体力も完全に回復していた。

 

そんな満足のいく対応を受けた修司が、唯一不満に思う所があるとするならば………。

 

「なぁ、本当にこの格好でいかなくちゃダメか?」

 

現在の修司の格好は山吹色の胴着ではなく、アメコミのヒーローに変わっていた事。全体的に青のカラーリングで、所々に黄色や赤のラインが刻まれている事や背中に広がる深紅のマントが実にソレっぽく写し出している。

 

「君の礼装は大分破損していたからね。彼方の方は既にマシュ嬢の盾を経由してカルデアに送っておいた。それに君は我等アメリカの希望、つまりは代表だ。代表にはそれに相応しい衣装というものがあるのだよ」

 

「このライオン、本当に懲りてんのかよ。なんかピチピチで落ち着かないし……このマントとか、絶対にいらないだろ」

 

「なに、性能は保証しよう。何よりアメコミヒーローならマントは必須条件! これで君も立派なマー◯ルヒーローだ!!」

 

「色んな所から怒られそうな発言は控えような」

 

「本来なら私が手を加えてやりたかったのだがな。生憎とカルナへの対処で忙しかった。カルデアに戻ったら、改めて私からも一つ礼装を送るとしよう。無論、ケルト式のな」

 

「あっ、結構です」

 

 これ以上のピチピチはいらないと、スカサハからのプレゼントをやんわりと断る。そんな修司達のやり取りを頼もしく思いながら、ロマニは改めて声をかける。

 

『それでは、現時刻を以てワシントン攻略作戦を開始する。これがこの特異点の最後の戦いだ。皆、宜しく頼むよ!』

 

「「「「応ッ!」」」

 

ロマニからの激励を最後に、カルデアとの通信は一時途切れる。作戦の開始が伝えられると同時に遠くから聞こえてくる地響きの音、ケルトの軍勢だ。津波の様に押し寄せてくる軍勢を前に修司達も一斉に馬車から降りようとする。

 

と、そんな時だ。馬車から降りようとする修司にナイチンゲールが肩を掴んで呼び止める。

 

「ん? ナイチンゲールさん、どうしたんだ?」

 

「白河修司。これ迄の旅を経て確信しました。貴方は病人です。それもかなり重症の」

 

「え?」

 

「ですが、その病は貴方自身でしか癒せません。悔しいですが、看護師でしかない私には………明確な治療法が提示できない」

 

 呼び止めておきながらいきなりの病人呼ばわり。生まれて以来怪我はしたことはあっても、病気にだけは気を付けてきた修司にとってナイチンゲールの言葉は衝撃だった。

 

一体自分の何処にそんな病が入り込む余地があったのか。カルデアでの医療検査では特に問題はなかった筈なのに、ナイチンゲールにしか分からない症状があったりするのだろうか。

 

「いいえ、貴方の症状は肉体に作用するものではない。貴方の場合は精神、或いは在り方に起因するモノです」

 

「え、えっと……?」

 

 どうしよう。目の前のバーサーカーの言っている事が流石に分からない自分がいる。これ迄は彼女の医療知識に則って話を合わせてきたが、流石に此処まで抽象的な事はなかった。彼女の言いたいことが分からず、またなんて返したらいいか分からない修司にナイチンゲールはソッと彼の頬を手で触れた。

 

「全ての理不尽を赦さず、不条理を由としないその在り方は、いつかきっと貴方自身を追い詰める。どうか、その瀬戸際を見誤らないで」

 

「ナイチンゲールさん………」

 

ナイチンゲールは気付いていた。理不尽を赦さないと語り、不条理を由としない事を絶対としている修司の在り方は純粋に見えてその実………歪んでいる。

 

命を救うことに妥協を赦さない自分と、目の前の生きる修司。自分達は良く似ている、その在り方は鋼のように硬く重い。

 

だからナイチンゲールはせめてもの忠告を残すことにした。目の前の彼がいつか妥協点という救いを見付けられる事を信じて……。

 

「………大丈夫だよ。俺は、そんなに柔じゃないからさ」

 

「修司………」

 

「ありがとうナイチンゲールさん。貴女も、どうかご無事で」

 

 そう言って、修司は跳んで最後の対戦相手が待つ場所へと向かう。ナイチンゲールの言葉、その意味を理解しながら、白河修司は決戦の地へ向かう。

 

瞬く間に消えていく修司を見送りながら、もう自分に出来ることはないと、ナイチンゲールも戦場に向かう。

 

「………それではこれより、最後の治療を開始します」

 

全ての命を殺してでも救う為、押し寄せるケルトの兵隊達を前に、クリミアの天使は修羅と化す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────ワシントンD.C.。暗雲渦巻く空の向こうから、闘争の音が聞こえる。肉が弾けて骨が砕き、生と死が戦場を蹂躙していく音。男………クー・フーリンにとってその音は子守唄にも等しいモノだった。

 

悲鳴と断末魔に彩られた唄、そんな狂った唄の中に一つ、雑音が入り雑じる。耳障りな音、鬱陶しいとも感じられる雑音は、徐々に大きくなっていく。

 

「───失せろ魔術王。貴様の手など必要ない、余計な手出しをすれば、奴の前に貴様を殺すぞ」

 

 一閃。風と音を置き去りにした一振りが耳障りな音を消していく。その一振りで根城にしていたホワイトハウスは砕け散り、次の瞬間には辺りに鋭い音が響いていく。何者かの干渉だったソレは術者の機嫌の様に甲高く鳴り響き、周囲に轟きながら消えていく。

 

「ハッ、まるで餓鬼だな。こんなのが魔術の王というのは笑わせる。先の特異点で余程奴に痛い目に遭わされたと見える」

 

下らないと、干渉してきた魔術王に悪態を吐くクー・フーリンだが、すぐにその意識は切り替わる。奴が来た。背後から近付く強い気配に漸くその時が来たと、猛り狂った凶王が嗤う。

 

「なんだ、取り込み中だったか?」

 

「いや、たった今口煩いクレーマーを黙らせた所だ。お前が気にする必要はない。そういうテメェこそ、随分と毛色の変わった格好をしてるじゃねぇか」

 

 振り返り、目を開くと其処には自身が殺したいと求め続けていた仇敵が立っていた。格好こそはいつもの山吹色の胴着でない事に少々驚いたが………どうでもいい、目の前の男が万全の状態でいる事にクー・フーリンは嘗てない昂りを感じていた。

 

「どうやら、施しの英雄との戦いは調度良いウォーミングアップになったようだな。感じるぜ、今のテメェは以前のテメェとはまるで違う。正真正銘、本気って訳か」

 

「俺は何時だって本気だ。カルナと戦った時だって全力を出したし、舐めて掛かった覚えはない。………ただ」

 

「あぁ?」

 

「今回は………最初からフルパワーでいく。出し惜しみはしねぇ」

 

瞬間、修司の内から膨大な気が放出される。大地と大気を震わせ、天変地異を思わせる脈動を前にクー・フーリンは極上の餌を前にした獣の如く、鋭い犬歯を剥き出しにして嗤う。

 

「行くぞ、10倍界王拳だッ!」

 

そして、修司の気力が最大に高まった反動で大地が陥没し、クー・フーリンの背後にあるホワイトハウスの残骸が周囲の瓦礫ごと吹き飛んでいく。デタラメな闘気、最早気を解放しただけで物理的災害になりつつある修司を前にクー・フーリンは微塵も臆した素振りを見せずに槍を構える。

 

「あぁ、そうだ。コレと戦りたかった! 待った、この時を待っていたぞ! 修司ィッ!」

 

「行くぞクー・フーリン。アンタを倒し、この戦争を終わらせる!」

 

「やって見せろ。その前に───貴様の心臓、貰い受ける!!

 

 槍が迫る。赤く、血の様に朱い死槍を前に……。

 

「デトロイト───SMASHッ!!

 

修司もまた、拳で応える。槍と拳、ぶつかり合う力と力はワシントン中にある建物の残骸を吹き飛ばし、その衝撃は北米大陸全土を震撼させた。

 

第五特異点最後の戦い、北米神話最後の闘争が………始まる。

 

 

 

 

 

 





新装備紹介。

礼装《平和の象徴》

藤丸立香の着用している礼装を参考にエジソンが開発を担当した修司の特性礼装である。
耐久性と防刃、更には防弾性能に優れ、その性能はダ・ヴィンチが舌を巻くほど。
ピッチりとした着心地が慣れてない者にはやや抵抗があるが、慣れてしまえばそこまで気にする事はない。エジソンが修司に送る仲直りの証である。


「エジソンさん。その、悪かったな。アンタも頑張っていたのに、俺………ズカズカとモノ言っちゃって」

「なに、本来の目的を見失い、我を忘れていたのは事実さ。君が気にする必要ない、さぁ、受け取りたまえ。君にはあの大英雄を倒すという大役があるのだからな!」

「あぁ、分かったよエジソンさん。アンタの発明の力を借りて……アイツを倒すよ」

『……………』

『あの、ニコラさん? 隣で露骨に嫌な顔をするの、止めて貰えます?』



それでは次回もまた見てボッチノシ







オマケ

ifこんな第四聖杯戦争は嫌だ。そのいち

「………ねぇ、アイリ、これが本当に触媒になるのかい?」

「大丈夫よ切嗣。アハト翁も仰っていたわ。これはかの円卓の騎士達が用いたテーブル。これを用いればかの偉大な騎士達が召喚される事は間違いないの。貴方の願いに大きく近付く事になるのよ」

「イヤでも、これ円卓というか………ちゃぶ台なんだけど?」

「……………大丈夫よ、問題ないわ」

「いや問題だらけだろ!? なにちゃぶ台って!?」

「で、でも切嗣、このテーブルとっても造りが良さそうに見えない? ほら、近付くと不思議とご飯の良い香りが漂ってくる気がしない?」

「あっ、ホントだ。て、違ぁう! そうじゃない! 何で古のブリテンにちゃぶ台があるのさ!? 喚びだすのは円卓の騎士! コレじゃあ精々波平辺りしか来ないじゃないか! いや知らんけども!!」

「ワシ、あの堀川って奴苦手なんじゃよねぇ。何かサイコパス感が半端なくって……」

「あ、分かる。止めてと言っているのに今度はバレないようにするって返し、いつ聞いてもゾッとするのよねぇ」

「他にもサイコなキャラがいるみたいだけどねあのアニメ……て、ちーがーうーだーろー!? なにサザエさん漫談してるんだよ!? て言うかなにしに来たアハト翁! 帰れ!」

「チェー」

(全く、アイリが退屈だというから日本のサブカルチャーを見せたのが間違いだった! お陰でアインツベルンはオタクの屋敷に早変わりしてしまい、イリヤも魔法少女に嵌まってしまう始末! くそ、僕は最後までシリアスに聖杯戦争を戦い抜くんだからな!!)


頑張れ切嗣、負けるな切嗣。聖杯戦争のシリアスは君に掛かっている!



「モグモグモグ………召喚に応じ……モグモグ、参上しました。パクパク、モッキュモッキュ………サーヴァント……モグモグ、セイバー。ハグハグ…………問おう、ング………ふぅ、貴方が私のマスターか?」

「」

やっぱダメかも。



続………かない!(鋼の意思)




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