『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今更ですが、スパロボ新作発表やったー!

今回こそはグランゾンの出演があると信じたい!


その76 第五特異点

 

 

 果てしない荒野の道を一台の馬車が進んでいく。荷馬車に揺られて眠る立香と、そんな彼女を自身の膝を枕にしするマシュ、他にもネロとエリザベートが寄り添う様に仮眠を取り、ナイチンゲールとラーマが何やら話をしている。

 

黒ひげ辺りが見たら歓喜しそうな光景を尻目に手綱を引いて馬車を操るロビンに修司が声を駆ける。

 

「悪いなロビンさん、アンタにばかり先導を任せて」

 

「なぁに、お気にしなさんな。馬車の扱いは人並みに自信があるんでね。そう言うアンタも少しは休んだ方がいいんじゃないか?」

 

修司の言葉に返すようにロビンもまた修司に休むように促してくる。どれ程常人離れな体力をしていても、修司も立香と同様に今を生きる人間であることには変わりない。休める時には休んでおいた方が良いとロビンは言う。

 

「勿論、俺もそろそろ寝るつもりだ。ただその前に向こうに着いてからの段取りを今の内に確認しておこうって思ってな」

 

「東西に別れたアメリカとケルト、その片割れであるアメリカを戦力として引き入れる。だったか? こう言っちゃアレだが、今更連中の戦力とか必要か? ケルトの戦力はスカサハの姐さんが半分近く間引いちまったし、それを産み出す母体も……」

 

「………」

 

 そこから先をロビンは口にする事はなかった。分かっているからだ。これ以上戦いに先が続く事は無い事を、それはつい数刻前に敵の総大将本人が口にしていた。次で最後だと、決着を付ける場所だけを告げて、一方的にあの場での戦闘を終わりにした。

 

そして、それがこの特異点に於ける最後の戦いなのだと、修司自身が予期………否、確信を抱いている。

 

しかし、何事にも予期せぬ出来事は起こるモノ、今回アメリカ軍の本拠地に向かうのはその予期せぬ出来事に対する処置、それを進言したのは彼等の頭脳であり指揮官でもあるロマニ=アーキマンだった。

 

『修司君、これから君に待っているのはオケアノスで体験したヘラクレスと同格とされる英雄だ。死闘は免れず、また君の負担も計り知れない。サーヴァントの枠組みから逸脱した彼を倒すには並々ならぬ苦難となるだろう』

 

「───あぁ」

 

『僕がアメリカ軍を必要としたのは、軍の主導者であるエジソンを抑える為と、何より………魔術王ソロモンの介入に対抗する為でもあるんだ』

 

 魔術王ソロモン。人理焼却を企て、実行し、立香と修司の世界を燃やし尽くした元凶。先の特異点にて黒幕の正体が明るみとなった事でカルデアではソロモンの人理修復の旅に於ける介入を懸念していた。恐らくは魔術王もこの状況を見ている筈、負けるわけにはいかない戦いの最中に何らかの魔術的介入が無いとは言い切れない以上、奴に対する対抗策は考えておくべきだろう。

 

『向こうにはカルナに匹敵するアルジュナがいる。ラーマを魔術王に対する切り札にするなら、出来ればカルナを此方に引き入れたい。ただ、その為には修司君に頼るしかないんだけど……』

 

「まぁ、何とかするさ」

 

他にも、ロマニが懸念する事項は存在する。授かりの英雄と称され、実力ではカルナに匹敵するとされるインドの大英雄アルジュナ。彼を抑える為、魔術王に備える為、カルナの力はカルデア一行に対して必要な存在だ。

 

尤も、彼の大英雄との決戦でアルジュナが横槍を入れてくるとは思えないが………ともあれ、戦力は多いに越したことはない。向こうに着けば、修司との戦いに異様に固執しているカルナとの戦いが待っている。度重なる激戦を強いる事になる修司にロマニは申し訳なく思っているが、対する修司は然程気にせず振る舞っている。

 

 そんな時、スカサハが修司の隣にまで近付き腰を下ろしてくる。一瞬試合を申し込まれるのか危惧する修司だが、流石に其処までの図々しさはなく、これまで戦闘狂だった影の女王はいつもよりややしおらしかった。

 

「……済まんな、修司。お主に余計な手間を掛けることになった」

 

「……急にどしたの?」

 

「ふっ、そう警戒するな。流石にこの状況でお主に勝負を挑むことはせんよ。尤も、カルデアに戻ればその限りではないがな」

 

「平常運転でなによりですわ」

 

「茶化すな。話を戻すぞ? 本来、あの馬鹿弟子は私が殺すべきだった。メイヴ何ぞに絆され、その在り方を歪められたのを哀れに思い、殺すべきだった」

 

「………」

 

「だが、出来なかった。弟子であるアイツに絆された訳ではない。如何に特殊な方法でカルデアに召喚されても所詮私も一介のサーヴァント、平均化された強さでは聖杯で強化された奴には届かなかった。お陰で私は要らぬ傷を負い、こうしてナイチンゲールの世話になることになった」

 

「そうか」

 

「その上で言わせてもらう。修司、今の馬鹿弟子は強いぞ? 恐らく奴は奴の人生の中で最も脂の乗った時期、嘗て私を殺せるやもと思わせた全盛期。それに………限りなく近い状態になっている」

 

「………確か、クー・フーリンって、けっこう滅茶苦茶な逸話が残ってたよな。剣の一振りで9人切り殺したとか」

 

『他にも寝起きの際は起こしに来た人の頭蓋骨を陥没させたって話もあったね。うん』

 

「白河修司、現代の英雄よ。お前に待つのは嘗ての伝説、その体現者じゃ。甦った伝説を相手に本気で勝てるつもりか?」

 

「勝つさ」

 

  鋭い目で問い詰めてくるスカサハに修司は真っ直ぐに返した。勝つと即答する修司の瞳には並々ならぬ決意が色濃く出ていて、それは来るべき決戦への意気込みが滲み出ている。

 

その言葉と目に安心したスカサハはふっと笑みを溢した。やはり自分の見込みに間違いはなかった。そう頷けるだけの確信を得たスカサハはナイチンゲールに声を掛け、彼女から水の入ったコップを貰い、修司に手渡してくる。

 

「これは?」

 

「ただの水だ。但し、私のルーンが刻まれている。効果は疲労回復、眠くなるが向こうに着く頃には全快しているだろう」

 

「もしかして………立香ちゃんにも?」

 

「いや、アレは素だ」

 

 スカサハに僅かばかりの気遣いを受け取った修司は、立香にも同じことをしたのかと訊ねるが、帰ってきたのは否定の言葉、呆れ混じりに寝ている彼女に視線を向けると、マシュに膝枕をされながら呑気に寝言を口にしている。

 

こんな事態に関わらず呑気に寝ていられる立香にスカサハは呆れながらも微笑んでいる。凡人でありながら精神面では中々に強かな彼女に勇気付けられた修司はスカサハのルーンが刻まれた飲み水を口にすると、落ちるように微睡みの中へと溶けていった。

 

「修司、貴方の行動に間違いはあっても咎はありません。どうか、あまり自分を責めないで」

 

修司が完全に眠りに落ちる瞬間、柔らかい看護師の笑みを見た気がして………その日、修司は夢を見た。

 

此処ではない遠い何処か、炎の大地に囲まれながら、また出会い、戦おうと約束をした───嘗ての誓いを夢見た気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、あの時私に啖呵を切った若造が戻ってくるとは、今更ながらに私の偉大さを理解したという事かね?」

 

 エジソン率いるアメリカ軍の本拠地、乗り込んでそうそう待っていたのは清々しい程のドヤ顔を晒すライオン頭の大統王だった。どうやら修司達が逃げ出してからメンタルの方はエレナの助力もあって無事持ち直し、現在は戦線もアメリカ軍が押し上げ始めているのも合わさってその態度はより増長していた。

 

「あの、やっぱり私達に協力するのは出来ないかな! 向こうは大分戦力は削れているけど、魔術王からの横槍に備えて出来る限りの事はしたいんだけど……」

 

「それは、そっちの都合じゃなくて? 確かに貴方達はアルカトラズに囚われていた同胞達を解放したり、ケルトの戦力を削ったりと大活躍してくれていたみたいだけど、此方からの誘いを断ったのはそっちではなくて?」

 

「それでも此方の頑張りのお陰でそちらは楽できているんだから、少し位聞く耳あってもいいんじゃないかと思うがね」

 

「うむ、そこの緑のアーチャーではないが、此方の奮闘でそちらが楽を出来ているのなら、その者に多少の褒美を取らせるのが良き王の器と言うものだぞ? 余ならそうする」

 

「ていうか、アンタ達言うほど活躍して無いじゃない。戦線を押し上げる切っ掛けを作ったのは此方の訳だし」

 

「そもそもな話、無尽蔵の兵力を持つケルトを相手に有限の資源で挑もうとしている時点で貴方の敗北は確定していたのでは?」

 

「GAFUッ!?」

 

 各サーヴァント達からの正論の応酬にライオン頭の大統王は膝から崩れ落ちる。特にナイチンゲールの突っ込みはエジソン自身も薄々自覚していただけにダメージは大きい。そんな大統王に駆け寄り、大丈夫だと精神の安定をもたらそうとしているエレナの行いは、献身と言うより処方に近かった。

 

「ちょっと、私の友達を精神面で滅多打ちにするのは止めてくれる!? 唯でさえそっちの彼から受けた傷が治っていないんだから!」

 

「あ? 俺?」

 

「自覚なしかい」

 

ウガーッと吼えながら修司を糾弾するエレナだが、そもそも修司の目にはエジソンを映してはいなかった。大統王の相手をするのは立香達だと事前に打ち合わせをしていた為、彼の関心はエジソンの隣で静かに佇んでいる一人の英雄に向けられていた。

 

手痛い現実に打ちのめされているエジソンを横を通り、修司は白髪の青年の前へと歩みを進める。

 

「………なぁ、一つ聞いてもいいか?」

 

「───なんだ?」

 

「俺は、本当にアンタと戦う約束をしていたのか?」

 

 最初にこの特異点で出会った時、この英雄は修司との再会を喜んでいた。約束の時だと、あの時果たせなかった約束を今こそ果たす時だと、目の前の大英雄は嬉々としてそう口にしていた。

 

正直、今でも修司は目の前の男とその様な約束を交わした記憶はない。だが、その約束を違えてはいけない気がした。自分は、この大英雄と決着を付けるべきだ。ケルトの大英雄であるクー・フーリンの前に、インドの大英雄………カルナとの尋常なる決着を。

 

「あぁ、何度でも言おう。白河修司、俺はお前と戦う約束を交わした。お前は覚えていないかも知れないが、俺は覚えている。一方的に聞こえるかもしれないが、俺はお前と───心行くまで戦いたい」

 

シャランと鈴のような音を鳴らし、カルナは手にした錫杖を修司へと突き付ける。鋭い目だ。何もかもを見透しそうな眼をしておきながら、その奥には太陽のごとき炎が渦巻いている。厄介な奴に目を付けられたものだと、それでも自分で蒔いた事だと受け入れながら、修司は分かったと頷いた。

 

「あぁ、分かったよ。アンタとの約束、果たさせてもらうよ。約束………だもんな」

 

「感謝する」

 

 こうして、クー・フーリンとの決戦の前の前哨戦が幕を開ける。北米神話大戦。後に第五の特異点での呼び名、そうなる前の───前日譚である。

 

 

 

 

 




ボッチ「約束は、守るべきだもんな」

カルナ「トロピカルヤッホーイ!」

スカサハ「グヌヌ……」

尚、アルジュナに知れたら大変な事になる模様(笑)


それでは次回もまた見てボッチノシ



おまけ

ifボッチがブリテンにいたら そのご

「……なぁシュージよ。お前さん、嫁を娶ろうとは思わんのか?」

「なんだよケイさん。藪から棒に」

「聞いたぜ、ローマの皇帝を軍団ごと追い払った後、色んな所から見合いの話があるみたいじゃねぇか。皆、アンタの強さと頭の良さに惹かれて、その血を自分達の一族に取り込もうと必死になってるみたいじゃねぇか」

「あぁ、その関連はアッ君にまとめて処分して貰ったからすっかり忘れてたわ」

「マジか、あのモルガンもアンタに求婚してきたって噂を耳にしたんだが………」

「モルガン? あぁ、以前迷子になっていた人ね。そういやこの間も来たな。なんか城を建てるなら何処がいい? 見たいな事を聞いてきたから、城よりも胡椒が欲しいと返したら、それっきりだな」

「……因みに、ギネヴィア姫とかは?」

「ラン君に紹介しておいた。姫とか紹介されても困るし、話し合わせられる自信ないし、だったら紳士的なラン君かガウェイン君辺りを紹介した方が彼女の為かな~って」

「………なぁ、何でアンタは一人身に拘るんだ? まさか男色の気があるとか?」

「ンな分けないでしょ、単にこのブリテンに住まう女性関係は地雷臭が凄いから敬遠してるだけ」

「じ、じらい?」

「見えない爆弾を抱えているって意味さ。言っちゃあ悪いけど、この時代の女性って結構おっかないイメージがあるからさ」

「………なんだろう、反論できない自分がいる」

「だろ? アッ君もその辺りに関しては賢明だって同意してくれたし、当分は独身貴族を堪能するよ」

「なら、ウチの妹なんてどうだ? 見てくれは悪くないし、剣の腕も立つ。最近はアンタの役に立ちたいと言って農業関係の勉強もし始めた。悪い話じゃないと思うが?」

「や、遠慮します」

「な、なんで?」

「だって、彼女って地雷臭がヤバイんだもん。付き合ったら最期、諸々の厄介ごとが舞い込んできそうな気がして。主に魔術師関連で」

「……………」

「シュージ卿、ちょっと宜しいですかー?」

「あ、ベディ君が呼んでる。じゃあ俺行くわ。ケイさんもあんまり無理すんなよー」

「あ、あぁ。………そっか。アルトリア、地雷なのか」

 その後、胡椒生産の目処が立ち、ブリテンの食文化は益々発展したとか。



つづ………かない!


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