『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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妖精國篇、面白!

妖精騎士ランスロットを見てエクシアを思い浮かべたのは自分だけ?


その72 第五特異点

 大統王エジソンとの交渉が決裂し、次なる目的を各地に散らばるサーヴァント達との合流に定めたカルデア一行は、現在北米大陸の西部に位置する小さな町に滞在していた。

 

その間、襲ってくるケルトに遭遇しては蹴散らし、争っている東西の戦線に武力介入しては蹴散らし、暴走特急と化したナイチンゲールが負傷した兵達を治療したりと、中々な濃い珍道中を繰り広げていた。

 

そんな中、彼等の前に一人のサーヴァントが現れる。自らをジェロニモと名乗り、修司達に自分達と一緒に戦って欲しいと共闘を持ち掛ける。勿論、暴走するエジソンとは違って真っ当な理由で戦う彼を拒絶する理由もなく、一先ず修司達は彼と行動を共にする事を決めた。

 

「しかし、最初にエジソンの拠点から飛んでいったのは驚いた。まさかあんな方法で脱出するとは、此方も余計な手間が省けて非常に助かったよ」

 

「いや、此方こそワザワザそちらから出向いてくれて助かったよ。幾ら俺が気でサーヴァントを探してもここは広大な北米大陸、俺やナイチンゲールさんが大丈夫でも立香ちゃん達の体力が保たないからな」

 

「気、全ての生命体には必ず存在するとされているエネルギーの概念か。私も似たような術を知っているが、ここまで実用的なのは見たことがないな」

 

「まぁ、それなりに修行したからな。それでも、本家本元に比べればまだまださ」

 

 修司の戦闘力を評して称賛するジェロニモだが、本人はまだまだだと謙遜する。他のサーヴァントと比較しても修司の強さは凄まじく、それが未だに成長途中の段階というのだから、今後、更に強くなる彼の事を思うとジェロニモは乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 

「………所で、あの女性の方は放置してていいのか?」

 

話題を変え、アレを指差すジェロニモに修司は「あぁ」とだけ応えた。村から少し離れた荒野、そこには村を襲撃しようとして来たケルトの軍勢が須く朱い槍に貫かれていた。恐怖という感情が欠落しているケルトが逃げ惑い、その後ろから朱槍の雨が降り注ぐ。軽く地獄絵図な光景の中心にはカルデア自慢の槍の女王が君臨していた。

 

「アレは妖怪の類いだ。アンタも気を付けろ、目を合わせたら仕切りに殺し合いを強請ってくる変態、気軽に声を掛けてくるけど無視してくれ」

 

「物凄い良い笑顔で此方に手を振ってくるが?」

 

「無視しろ」

 

 ここ北米大陸に来て、一番修司が辟易としたのがケルトの影の女王ことスカサハの扱いだった。今でこそ特異点修復の旅をしている為にいつもより少しだけ大人しいが、ことある度に死合を申し込んでくるのは変わらず、そんな戦闘民族な彼女に修司は心底疲れていた。

 

ロマニにカルデアへのクーリングオフを要請したが、当然カルデアにそんな機能がある筈もなく、特異点修復まで仕方なく行動を共にすることになった。最近では、カルデアに戻ってから勝負をしてやる事を条件に彼女を露払いの周回マシーンみたいに扱っているが、本人も殺る気に満ち溢れている為に気にしてはいない。

 

寧ろ、カルデアへ戻った後の事を考えると背筋が寒くなるが………この際、修司は考えない事にした。

 

「それより、彼の具合はどうだ? 一応俺の気を分けていたが、あの怪我だ。そう簡単に治るとは思えないが……」

 

 そう言いながら、修司はジェロニモの案内によって家屋の奥へと案内される。そこは彼が組んでいるとされる三騎のサーヴァントの一人、カルナと同じインド神話に出てくる英雄の一人、インド叙事詩“ラーマーヤナ”に出てくる戦士ラーマであった。

 

この村に訪れて、ジェロニモに案内された修司達が最初に顔を合わせることになった英霊。最初に顔を合わせた時は心臓が半分ほど抉られた致命傷で、今にも死にそうな状態だったが、修司が自身の気を分け与えた事でどうにか持ち直す事に成功した。

 

その後はナイチンゲールが付きっきりで看病する事になり、これ迄の疲れを癒す為に一日だけ此処で休むことになった。

 

アレから数時間、一眠りをした事で体力気力共に回復した修司はジェロニモと共に再びラーマの元へ訪れる事となった。

 

「ラーマ、体の調子はどう───」

 

「なぁ、本当にこれしかないのか? 一応、余もある程度回復してきたぞ? いや、全快には程遠いが、シュウジの治療のお陰で歩く程度には回復した。故に貴女に負担を掛ける必要はないと思うのだが………」

 

「負担ではありませんよ。貴方が生きたいと願うように私も貴方を助けたい。それに昨夜の彼も言っていたではではありませんか、自分の行いは所詮応急処置、本格的な治療には至らないと。であるならば、やはりここは私の出番かと」

 

「くっ、バーサーカーなのに正論が痛い!」

 

「ほら見なさい。やはり痛むのではないですか」

 

「しかも話しを聞かないと来た! だ、誰か! 助けてくれ!」

 

  扉を開き、中で待っているラーマの様子を見に来ると、ナイチンゲールに背負わされている場面に出会した。

 

「お、ナイチンゲールさん。看病お疲れ様です」

 

「来ましたか修司、お疲れ様です。早速ですが彼に治療をお願いします」

 

女性に背負われ、恥ずかしいと暴れるラーマを無視し、修司は彼に手を翳してそこから己の気を分け与える。淡く優しい光がラーマを包むと彼の胸元を覆った包帯に滲む血の流れが止まっていく。

 

「ふむ、やはり何度見ても神秘的な光景だな。修司は気を分け与えたと言うが、私には命そのものを分け与えているようにしか見えん」

 

「それなら俺の寿命が減ってるって事じゃないか。俺は別に疲れたりしてないし、単にエネルギーを分け与えているだけなんじゃないか?」

 

『まぁ、修司君のそれはサーヴァントに対してだけじゃなくて人間にも有効ってのが恐ろしいんだけどね。それはそれとしておはよう、立香ちゃんやマシュもそろそろ来ると思うよ?』

 

「ごめんなさい、遅れました!」

 

「藤丸立香、並びにマシュ=キリエライト。到着しました」

 

「よし、全員揃ったな。では、改めて話を進めよう。目的は先ず、ラーマの回復とケルトの総大将の暗殺だ」

 

 それからは立香とマシュを交えた話し合いは、ラーマの容態の事もあり、三十分足らずに結論に至った。まず、インドの英雄ラーマはケルトのとある大英雄の一撃によって決して治る事のない呪いをその身に受けてしまっている。

 

その呪いを与えたのはクー=フーリン。アイルランドの光の御子にしてケルト神話最強の英雄、カルデアにも同じクー=フーリンがいて、冬木の特異点では一時的とはいえ行動を共にし、心強い仲間であった為、最初に彼の名前を聞いたときは立香もマシュもかなりの衝撃を受けていた。

 

だが、サーヴァントとは基本的に召喚した相手に従う傭兵みたいなもの。その時心強い仲間であったとしても、召喚したものが自分達でない以上、敵対する可能性は充分にあったし、後でロマニからそう言い聞かされてきたから立香もマシュも今は然程気にしてはいないみたいだ。

 

ただ、気になるのはラーマの語るクー=フーリンが闇に堕ちたという言い回しが修司には少し引っ掛かっていた。闇に堕ちたクー=フーリン、その人物について修司は少しばかり心当たりがあった。故に修司は昨夜にロマニへこの事で相談を持ち掛けていたが、余計な先入観で立香達の視野を狭めたくはないと言うことで、この件の話は一先ず保留することとなった。

 

 そして、話は戻りラーマの件だ。彼は今クー=フーリンのゲイボルグを受けて瀕死の状態、修司が自身の気を分け与えてどうにか歩ける程度には回復させたが、今のラーマは底抜けたバケツの様なもの。幾らエネルギーの塊である気を分け与えた所で応急処置程度にしかならないし、傷が塞がったり開いたりするラーマに対して現状負担にしかなっていないし、ナイチンゲールの処置も症状を僅かに抑える程度にしかなっていない。

 

そんなラーマを助けるには彼の存在の力をより強固なモノにする他ない。具体的に言えば彼と近しいサーヴァントの力を借りて、呪いとなっている傷口を回復して貰う手段しか残されていない。

 

故に。

 

「先ずは修司。君達はこれからナイチンゲールとラーマと一緒に、西にあるアルカトラズに向かってそこに囚われているシータを救って欲しい。確認するが、彼女は間違いなく其処にいるのだな?」

 

「あぁ、ラーマ君と良く似た気配が西側から感じられる。そして西側にはアルカトラズって監獄島があるというなら、十中八九そこで間違いないだろう」

 

修司はナイチンゲールとラーマと共に、ラーマの妻がいると予想されるアルカトラズへの侵入を試みる事となった。修司の気の感知能力は既に大陸全土を覆っている為、ラーマの妻であるシータの居場所を特定するのに然程時間は掛からなかった。

 

「あぁ、流石はシヴァ神の生まれ代わりだ。その様な芸当まで可能とは、貴殿が味方でいることを、余は志より嬉しく思うぞ」

 

「いや、昨日も言ったけど俺は別に破壊神の生まれ変わりとかじゃないからな? 正真正銘、企業勤めのリーマンだからな?」

 

『うーん。そもそもなんで修司君が破壊神なんだい? いや、確かに修司君は色々と台無しにする天才だけどさ』

 

「何を言う。余はヴィシュヌ神の生まれ変わり。故に分かるのだ。彼から感じられる神気は至極薄いモノであるが、その気質はかの破壊神に良く似ている。ここにパールヴァティ様がいらっしゃれば、きっとより詳しく分かるだろうな」

 

「えぇ……」

 

「恐らく、カルナが貴殿に拘る理由も其処にあるのだろう。加えてケルトの影の女王迄も従えているのだ。それほどの実力者となると、余は破壊神シヴァを於いて他に知らんぞ」

 

「従えているというか、付きまとわれてるんですが?」

 

「アハハ……」

 

 昨夜から修司を出会った当初からシヴァの生まれ変わりだと呼び、自身もヴィシュヌの生まれ変わりであるから、ラーマは修司を兄弟の様に親しく接してきた。当然修司はその事に対してまったくと言って良いほどに心当たりがなく、一方的に親しくするラーマの対応に困っていた。

 

「まぁ、彼が破壊神の生まれ変わりの是非は一先ず横に置くとして、彼等がアルカトラズに潜入している合間に我等は各地に散らばったサーヴァントを集める。ケルトの総大将の暗殺の為に戦力は多いに越したことはないからな」

 

ラーマの呪いを解くには、彼の妻であるシータの力を借りるか、そもそもの原因であるクー=フーリンを倒す他ない。そして、相手が無限に湧き出る戦力を確保している以上、ゲリラ戦には限界がある。

 

そこで、ロマニの助言の元に選ばれたのが………暗殺。正攻法での攻略ではなく、搦め手を使った確殺をジェロニモは選択した。

 

「修司達と同様に長い距離を移動することになる。道中の戦闘を考慮すると、戦力はなるべく多い方が助かるが……修司、本当にいいのか? かの女王の力を借りてしまって……」

 

ジェロニモは今後の暗殺の為に戦力は多めに確保したいと狙っている。それ故に長距離の移動をする必要があるし、距離が長くなるにつれてケルトとの戦闘は考慮しなければならない。

 

 負傷したラーマや、暴走するナイチンゲールを任せるだけじゃなく、カルデアからの最高戦力であるスカサハを借りてしまう己の図々しさに自己嫌悪しながらジェロニモが訊ねると……。

 

「あぁ、全然良いよ。潜入には少人数で挑むのが定石だし、ケルトを相手するにはアイツ程の適任者はいないだろ」

 

などと、アハハと光のない眼で笑いながら修司は快く承諾する。誰が見ても喜んでいる彼の反応に敢えて突っ込む者はいなかった。

 

 そうして、二手に別れての行動指針は定まり、カルデア一行は一時、それぞれ別の道を歩き出す。東と西、それぞれの目的を果たす為に……。

 

因みに。

 

(計画通り! 悪いな、二人とも)

 

 先にも述べた通り、修司の気の感知能力は北米大陸を覆う程に広くなっている。故に、既に彼は気付いていた。この地に召喚された二人のアイドル()が降臨している事に。

 

後に、その事に気付いた立香からぐるぐるパンチを受ける事になるのだが………それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがアルカトラズか。思っていたよりデカイな」

 

 立香達と別れて数時間、日が落ち始め、夕焼けの光に空が赤く変わり始めた頃。修司達は監獄島アルカトラズ………の、対岸へとやって来た。

 

「ほ、本当に数刻で辿り着いてしまった。我等二人を担いで、よくもあんなに速く走れたモノだ」

 

「本当ならもう少し速く走りたかったけど、西部の連中とかに見付かるの避けたかったし、ラーマ君の怪我を考慮する必要があったから、これが限界だった」

 

 途中途中で点在しているアメリカ西部軍の拠点を回避し、時折ラーマへの治療をしている内に日が暮れてしまった事に対して悔やむ修司だが、ラーマからみて修司の速さは常軌を逸していた。

 

北米大陸の面積は凡そ24,万 km²。日本の約20倍程の広さを誇り、地球上の中で三番目に位置する国土面積を有している。そんな巨大大陸をサーヴァント二体も担いで息一つ乱さない修司にラーマはただ驚き、ナイチンゲールも表情にこそ出していないが、異常な健脚を誇る修司にラーマ同様に驚愕していた。

 

そんな二人に対して、修司はさも当然の様に体を解し、目の前の監獄へ如何にして侵入するか思考を巡らせている。修司にとって大陸間の移動は長年の旅を経験して慣れたもの、人理焼却前の日常で修司が車や新幹線といった乗り物を使っていたのは、偏に経済を回す為に他ならない。

 

更に言えば、修司は20倍の重力をも克服し、以前よりも身体能力は向上している為、前よりも足の速さは上がっている。恐らくその気になれば数日足らずに大陸を横断するのは訳ないだろう。───閑話休題。

 

「ダメだな。アチコチにワイバーンが配置される。島に上陸されたらすぐにバレるな。オマケにケルトの兵士達もわんさかいやがる、ナイチンゲール、ラーマ君の容態は?」

 

「……これ迄の時短的行動により、安定こそしていますが、いつ容態が急変するか分かりません」

 

「よし、なら今すぐアルカトラズを攻略しよう。ただし、戦闘は俺に任せること。ナイチンゲールはラーマ君を護ることだけに集中してくれ」

 

「了解しました」

 

「ま、前々から思っていたが、二人ともやけにウマが合うのだな」

 

 そして、ラーマの容態を考慮してのアルカトラズ攻略は開始された。近くにあった小舟を拝借し、監獄島へと上陸した修司達。待ち構えていた雑兵を蹴散らし、一行はシータの待つ監獄へ向かう。

 

「ダメだ! 数が多すぎる!」

 

「砦の方も門が閉まっているな。ならば……」

 

 どれだけ殴り、蹴飛ばしても、次々と沸いて出てくるケルトとワイバーンの群れ。このまはまでは埒が明かないと修司は白い炎を纏い気を解放する。

 

「道を作る。二人は俺の後ろに!」

 

「了解」

 

「な、なにを……」

 

「魔閃光!!」

 

両手を額に重ね、エネルギーを溜めた瞬間に放たれる魔閃光。修司の両手から放たれた眩い光は射線上にいるケルト、ワイバーンを消滅し、砦を塞いでいた扉を城門ごと吹き飛ばした。

 

明らかに対城宝具以上の火力をポンポン放つ修司に、常識あるラーマは唖然とするが、いつまでも呆けて入られない。ナイチンゲールに背負わされ、何も出来ないラーマではあるが、復活した際は改めて自分も活躍しようと心に誓った。

 

 そして、修司がナイチンゲールとラーマの二人を護りながらケルト達を蹴散らし、アルカトラズ内部へ突入すると、不思議なことに中には誰もいなかった。明らかに罠の気配がするが、今はそれよりもラーマの治療を優先したい。

 

急いでシータの気配を探ると、ラーマに似た気の持ち主が地下から感じられた。急いで気配を感じた方角へ向かうと、其処には地下に続く階段があり、三人は迷わず下へ降りると幾つもの牢が設置されており、その中にラーマに良く似た女の子が地べたに横になっていた。

 

「よし、いたな。ラーマ君、彼女がシータちゃんで間違いないか?」

 

「あぁ、あぁ、シータだ。余の愛する………大好きな、シータだ」

 

「そのお声は………ラーマ様? 嘘、本当に?」

 

 呆然となっているシータを他所に、修司は己の腕力にモノを言わせて牢を抉じ開ける。対サーヴァント用に作られ、 触れたら即死級の電流が流れるが……気を纏っている修司には通用しなかった。精々、強めの電流程度にしか感じない。

 

「シータちゃん、俺達は君に助けて欲しくて此処に来た。君の力でラーマ君を治すことは出来るかい?」

 

「え? そ、その気配は……シヴァ神様? な、何故破壊神がここに……」

 

「君もか。いや、今はそんな事はどうでもいい。彼を治し、救ってあげくれ。俺や彼女も出来る限りの事はしてきたが、現状焼け石に水の状態なんだ」

 

 混乱するシータに修司は簡潔に状況を説明し、シータもナイチンゲールに手厚く横にされるラーマを見て事の深刻さを理解する。愛する夫の現状を見て、心優しい少女は目尻に涙を溜めながら強く頷いた。

 

「えぇ、えぇ、解りました。彼の事はどうか私に任せて下さい。必ずや、彼を万全な状態に戻して見せます」

 

「頼む。ナイチンゲールは………」

 

「私はここに残ります。喩えオカルトチックな治療法でも、私に出来ることはあるはずだから」

 

「助かりますナイチンゲールさん。では初めに清潔な水を、彼の傷口を洗ってください」

 

「了解です」

 

テキパキとラーマの治療を始める二人に安心した修二は地上で待っている気配に意識を向ける。気配の強さから言ってサーヴァント、それも二体がアルカトラズの中央広場に陣取っている。

 

ラーマの治療はまだ始まったばかり、向こうは此方の出方を待っているつもりのようだが、いつ気が変わって襲ってくるかも分からない。ならば、ここは自分が出ていく所だろうと、修司はナイチンゲールに外の空気を吸ってくると言い残し、一人広場へとやって来る。

 

 ………案の定、其処には二人のサーヴァントが笑みを浮かべて待ち構えていた。一人は褐色肌と至る所に付けられた傷跡が逞しい巌の様な男と、快活な笑みを浮かべている割には尋常じゃない殺意を抱いている───掘削機の様な剣を担いだ細目の男がいた。

 

「おお、来た来た。話に聞いた通りスゲェのが来たな。こりゃあ、退屈な看守の真似事も捨てたもんじゃねぇな」

 

「うむ。俺もこの眼で見るまで信じられなかったが、大した奴よ。クーが一目置くのも頷ける」

 

「…………」

 

二人とも、笑ってこそいるが隙がない。口振りから察するにケルト側のサーヴァントで間違いないであろう二人に、修司は声を掛けた。

 

「一応聞くが………あんた達、どうしてさっきは仕掛けてこなかった。あの時の俺は二人を守りながらだったから、幾らでも隙を突けた筈だ」

 

「あん? 何を言うかと思えば……」

 

「確かに、我等はお前達から見れば野蛮な侵略者だろうよ。だが、あくまで我等はサーヴァント。主に戦いを命じられてはいるが、やり方までは口出しされていないからな」

 

「だから、ラーマが万全になるまで手を出さないと?」

 

「まぁ、その方が楽しそうだからな。折角第二の人生として喚ばれたんだ。楽しまなくちゃ損だろ?」

 

 何処までも戦闘狂な思考回路の二人に辟易とするが、今の状況に限り、修司には嬉しい誤算だった。

 

此処は広く、敵しか存在しない監獄島。要のラーマ達は地下にいて、未だに出てくる様子はない。つまり、この特異点にやって来て漸く本来の力で戦える場が出来たのだ。

 

「良いぜ、今回ばかりはあんた達の流儀に乗ってやる」

 

「おっ、遂にやる気になってくれたか! 待ちわびたぜ!」

 

「おっと、横取りは見過ごせんなベオウルフ。ここは先のジャンケン通り、俺に譲るべきだ」

 

「そうは言うがフェルグスの旦那、アレを前に我慢しろって言うのは野暮だぜ。ここは一つ、若輩の俺にだなぁ」

 

「………二人だ」

 

「「あ?」」

 

「ごちゃごちゃ語るのも面倒だ。二人まとめて………掛かってこい」

 

 ケルトと北欧の英雄を相手に修司は不敵に笑みを浮かべる。初めて口にした強気な言葉、過酷な修行を経て、若干いつもよりテンションが高めになっている修司は、歴然の英雄を相手に手でチョイチョイと挑発する。

 

そんな修司を前にフェルグス=マック=ロイとベオウルフは、先程よりも深い笑みを浮かべ、雄叫びと共に修司へ襲い掛かった。

 

それから少しして、監獄島アルカトラズから青白く輝くゴン太ビームが成層圏に向かって放たれ、北米大陸を照らすのだった。

 

 

 

 

 

 

 




カルナ「戦ったのか? 俺以外の奴と」


Q.ボッチって………もしかして素で月とか壊せたりする?

A.禁則事項です

Q.もしもボッチが妖精國担当になったら?

A.ランスロットにトランザムシステムを搭載したり、ガウェインに斬艦刀造ったりしてそう。
トリスタン? 多分お尻を真っ赤にしているかと……。


それでは次回もまたみてボッチノシ





ifもしもボッチがブリテンにいたら? そのに

「ここに、王の証である剣が刺さっているんですね。それを抜けば、誰もが王に認められると。そうですよね、ケイ兄さん」

「あぁ、けれど誰も抜けやしないさ。抜けない剣なんて飾り物以下でしかない。まったく、迷惑な話だ」

(あぁ、けれど。それで誰かが救われるのなら。私が剣を抜き、王になることで、誰かの救いになるのなら………それはきっと、間違いではない筈………)

「ケイ兄さん、ちょっと私、行ってきますね」スタスタ

「なっ、おい待て!」




「やーめーろーよー! それはお前の為に用意した剣じゃないんだぞぉ! 然るべき王の為に用意した選定の剣なんだぞぉ!」

「知るかよ。抜いたら好きに使っていいと言ったのはテメェだろ。てかいい加減足に引っ付くな。歩きづらいだろ」

「土台ごと引き抜くなんて誰が予想出来るんだよぉ! その土台も拳で砕いちゃうし、返せよぉ、お前に剣なんて必要ないだろうー!?」

「いい鉄使ってるみたいだから、溶かして鍬にするわ。隣のローン爺さんも新しい鍬欲しがってたし、これで畑の耕しも少しは楽になるだろ」

「や、やめろぉ! 折角の剣を農具に変えようとするなぁぁぁっ!!」

「わー、シュージの兄ちゃんまぁたやらかしてらぁ」

「あんまりマーリンを虐めるなよぉ? この間もウーサー王を泣かせたばかりなんだからよ」

「わぁーってるよ。あ、そこの穴後で塞ぎに来るから、子供達を近付かせないでくれ。危ないからな」

「「はーい」」

「…………………」

「………アルトリア、帰ったら美味い飯を作ってやるから、帰るぞ」

「わぁい」(白目)

その後、ブリテンに新たな農家王が誕生したとかしないとか。

続……かない!(鋼の意思)



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