『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回は日記形式ではないカルデアでの日常回を描いてみました。

ボッチとサーヴァントの絡み、楽しめていただけなら幸いです。


その64

 

 

───とある鬼との逢瀬───

 

 とある山の奥、夜も帳を下ろし魑魅魍魎が跋扈する山中の森にて地面を抉り、木々を吹き飛ばす爆発が巻き起こる。

 

 煙の中から聞こえてくるのは、かんらかんらと、鈴を鳴らした様な嗤い声。盃片手に酒を呑みながら鬼が嗤う。

 

童女のような笑みを浮かべ、鬼が腕を奮う。細くひ弱な子供の腕、しかし内に秘められたその腕力は人一人を粉砕するのに過剰なまでの威力を秘めていた。一度腕を横に凪ぐ、それだけで木々を大地ごと吹き飛ばす鬼の一振り。

 

それを相対している山吹色の胴着を着た男は正面から打ち返した。奮われる鬼の一撃を、同じ腕力で以て凌駕する。一瞬だけ眼を剥いて驚きを露にしながら鬼は吹き飛ぶが、それでもやはり………その顔には恐ろしい程に美しい笑顔が張り付いていた。

 

「ふふふ、あの牛女が気にかけるだけあるわぁ。旦那はんってば、随分と強ぉなっとるさかい。これは敵わんなぁ」

 

吹き飛んで地に倒れ付し、勝てないと思い知り、おどける様に両手を広げ、鬼───酒呑童子は参ったと降参を顕にする。何処までも気紛れで快楽主義的な思想の持ち主、その価値観から人とは決して相容れぬ三大妖怪の一角。当時の彼女を知る者ならば人間妖怪問わずに震え上がらせた鬼の頂点。

 

そんな彼女に参ったと言わせる者、白河修司は怪訝な面持ちで眉を寄せ、不可解そうに首を傾げている。

 

「ったく、シミュレーターに来るなりいきなり襲ってきやがって、一体何のつもりだよ」

 

「小僧や牛女が旦那はんをエライ気にかけていたからなぁ、摘まみ食い程度にするつもりだったんやけど、旦那はんてばえぇ眼をしとるさかい、ついつい興に乗ってしもうたんよ。堪忍な」

 

「お前、絶対悪く思ってないだろ」

 

 偶々シミュレーター室にちょっとした用事があってそこへ入ると、既にシミュレーター内は機能しており、そこはとある山奥を再現した地形となっていた。

 

そこへ酒呑童子が襲ってきてなし崩し的に闘う事になったのだが、幸いな事に酒呑童子に宝具を使う素振りはなく、終始手足や時折剣を使った攻撃しか使ってこなかったから、対処法は比較的軽めに済んだ。

 

しかし、幾ら生半可な奇襲では後れを取るつもりはない修司といえど、今回の不意討ちは肝が冷えた。アサシンクラスで召喚された酒呑童子は殺気をうまい具合に隠している。それ故気付くのが遅くなり、ギリギリで最初の一撃は何とか頬を掠める程度に留まった。

 

もしあの時が修行後の疲労困憊状態だったら、恐らくは頬を掠める程度で済まなかっただろう。それ程までにあの時の酒呑童子の一撃には真剣さと殺意があった。それ以降の立ち合いは殆んど殺気が込められていなかったから、よりそう思えてしまう。

 

「でも、旦那はんもイケずやわぁ。あの牛女に使ったかいなんちゃら、やったっけ? なんでそれを使ぉてくれへんの?」

 

「界王拳だよ。………これから修行する時に温存しておきたかったんだ。幾ら慣れてきたと言っても、あれは短期決戦用の───所謂奥義なんだ。そう簡単に晒す訳にはいかねぇよ」

 

 界王拳を使わずに戦った事を不服そうに頬を膨らませる酒呑童子に修司は肩を落として説明する。元々界王拳は長期戦向きの技ではなく、その消耗の激しさから短期決戦用の奥義として運用している。確かに度重なる激闘や、過酷な環境での修行によってある程度使いこなせるようになっているが、それでも完全にモノにしたとは言い難い。

 

サーヴァントを相手にしながら技の熟練をこなす。確かにそう言うやり方もあるにはあるが、少なくとも目の前の大妖怪相手に使うつもりはない。あとケルトの女王にも。どう考えても鍛練以上の死合いに付き合わされる事になるのは目に見えている。

 

使うのは10倍界王拳を完全に使いこなせるようになってから、そう断言する修司に酒呑童子は興味を失った様に背を向ける。

 

「そ、ならもう此処には用ないなぁ。その気にならない旦那はんを相手にしてもつまらへんし、今日はお暇させてもらうわ」

 

「そ、そっちから襲ってきておいて………」

 

 一方的に襲ってきたと思ったら、一方的に用無しと断じられた。気紛れと言うには些か理不尽な態度の酒呑童子に修司は頬を引くつらせる。同郷であり敵対者でもあった金時から、酒呑童子という鬼は基本的に気紛れで破滅的思考をしていると事前に警告されているが、その意味を漸く理解した気がする。

 

その後、その場を後にする酒呑童子とは時間をおいて修司もシミュレーター室から出ていくが、後で聞いた話だとここ最近の酒呑童子はシミュレーターを操作しているロマニの背中をジッと見つめていたという。恐らくは彼の動作を真似て装置を弄ったのだろう。

 

今回のシミュレーター室の一件はロマニには寝耳に水な事だった様で、酒呑童子は暫くシミュレーターへの出禁が言い渡される事になった。

 

 因みに、修司のシミュレーターへの用事は広大な空間に様々な外の景色を投射する機能に興味があった為、もう一度肌で体験したかったという。

 

そして、今回の出来事を偶然耳にした頼光公が激怒し、茨木童子と一緒になって酒呑童子をカルデア中追いかけ回す事態になるのは………また別のお話。

 

「……なぁ酒呑、どうしてあの人間をそこまで気にかける? 坂田金時だけではなかったのか?」

 

「なんや茨木、妬いとるのん?」

 

「だって酒呑、ここ最近あの白河の話ばかりするではないか。流石の吾も辟易するぞ」

 

「あはぁ、そやったっけ? 堪忍な。けど、旦那はんも悪いんやよ? なにせ、あのかいなんちゃらを使ぉてる時の旦那はん、血のように紅くて、瑞々しくて……」

 

「とても、美味しそうなんやもん」

 

からからと鈴の様に嗤う幼き姿の大妖怪、酒呑童子はいつか目の当たりにする赤い炎を纏う修司を思い描き、うっとりと眼を細めて妖艶に舌舐めずりをする。

 

「其処にいたか蟲ぃ!!」

 

「げぇ!? 頼光ぅ!?」

 

白河修司と坂田金時が出撃するまであと───数秒。

 

 

 

 

 

 ───王達との歓談───

 

 

 

 日課の鍛練も終わり、食堂へとやって来た修司。晩御飯の時間をやや過ぎた時間帯、人気もサーヴァントの気配も少なくなった食堂へ訪れるとそこで屯っている三人の王と出会した。

 

「おお、シュージではないか。その様子だと今日の鍛練は終わった所か」

 

「征服王、それに王さ………英雄王に始祖さんもか。結構意外な組み合わせだけど、なにしてんの?」

 

「フンッ、ただの談笑よ。最初はそこの始祖との対談だったのにそこの雑種が強引に話に入ってきおったのだ」

 

「まぁそう言うな。異なる時代に我等はそれぞれ一つの時代を築いた王、見識を広める為意見を交わすのも一興だろう?」

 

 カルデアという一つの施設に稀代の王が三人も顔を合わせるのは確かに貴重な体験だろう。征服王イスカンダル、オケアノスを目指して大地を駆けた大王は死後サーヴァントになった後でもその探求心は微塵も翳っている様子はなかった。

 

「まぁ、確かにビッグネームの王が三人も顔を合わせる現場はそうそうないよな。うん、俺が歴史学者だったら卒倒してるかも」

 

「そう言う貴様も、若い頃は世界中を旅していたとマスターから聞いたぞ。どうだ? 晩飯食いながらで構わんから我等と一つ話をしていかぬか?」

 

「え? そりゃあ、征服王から直々のお誘いなら是非もないけど………いいのか?」

 

「余は構わぬとも。余も征服王も一つの時代(ローマ)を築いてこそあっても、世界を見てきた訳ではない。これも一つの巡り合わせ(ローマ)、現代で世界を見てきたそなたの話、興味はある」

 

「勝手にしろ。我は興味がない」

 

 征服王からの誘いを受けて一瞬迷っていた修司だが、ローマの始祖からも誘われた以上無下には出来ない。英雄王からは素っ気ない態度を取られたが、拒絶されていないのなら是非もないと、厨房で佇む料理長(エミヤ)に夕飯を頼み、出来上がりを待つまで王達と談笑に交わる事になった。

 

ただ、話の内容は古代よりも修司の旅をしていた頃にシフトする。いずれも神秘満ち溢れる古代の王達であるが、それ故に好奇心や探求心は人一倍強く、中でも征服王は修司の当時の話に夢中になって聞いていた。

 

「………で、その頃の俺はそれが魔術だと知らずに当時の魔術師達を殴り倒した訳」

 

「ははぁ、前々から聞いた限りもしかしたらと思っていたがこりゃ予想外だったわ。お主、結構ハチャメチャな旅をしておるのだな」

 

「まぁ、当時から俺の保護者には度々無茶ぶりをされてきたからな。今でこそ笑い話で済んでいるけど、当時は本当に洒落にならなかったんだよなぁ」

 

 エミヤの料理も綺麗に平らげ、片付けを終えた修司は食堂の天井を見上げながら沁々(しみじみ)と当時の事を思い返す。我ながら破天荒な毎日だった。見識を広め、経験を与える為、全ては黄金の王からの試練だったとはいえ、中学に上がったばかりのガキに一人で外国を旅させるとか、今でもよくやったものだと思う。

 

お陰で文化も言葉も字も読めなかった修司は、滞在先の二週間でほぼマスターするようになった。そうせざるを得なかった。お陰でトラブルには頻繁に巻き込まれるし、事件事故にも何度も直面した。その度に自棄になって暴走し、地元マフィアを壊滅し、その際の町の損壊の酷さにマフィア共々警察の厄介になった事もあった。

 

「ブハハハハ! 悪の組織を壊滅させたのに警察の厄介になるとは、お前の旅路は話題が尽きぬな!」

 

「いや笑いすぎだから、確かに端から見れば面白いかもしれないけど、当事者からすれば笑い事じゃないから。もうちっと遠慮して」

 

「ハハハハ、それは悪い悪い。しかし聞けば聞くほど面白い。お主、もしかしたらそう言う星の下に生まれたのやもしれんな」

 

「笑えないからなそれ。………そう言えば、魔術師の話で思ったんだけど、どうして現代の魔術師って高慢ちきな連中が多いんだ?」

 

「と、言うと?」

 

「いやほら、メディアさんって魔術師の中でも最高峰に位置する人でしょ? でもあの人ってその事を鼻に掛けたりしないし、見下したりしないでしょ? なのに現代の魔術師はメディアさんの足下にも達しない連中が多いのに、そういう奴等に限って横柄な態度を取ってくるんだよ。この違いってなんなのかなーって」

 

 旅の話をしていくにつれて必然的に修司の話の内容は魔術師達との繋がりが多くなっていき、軈てそれは魔術師に対するある疑問の話に辿り着く。現代と神代の魔術師を知る修司が思う魔術師に対する疑問、それは現代に生きる魔術師に対する修司の問い掛けだった。

 

「別に現代魔術師の全てがそうだとは思ってねぇよ? 俺の知り合いにだって魔術師はいるけど、大体皆良い奴だし、話が分からない奴はいない。ただ、俺が外国で出会う殆んどの魔術師は皆決まって同じ様な事を言ってくるんだよ」

 

やれ自分の研究の礎になれとか、やれその体を解剖させろとか、唯でさえ人の命を当たり前のように狙ってきて、あまつさえそれを当然の権利だと断じてくるのだ。

 

 

その癖此方が少しでも抵抗すると何故だバカなを繰り返すオブジェと化し、終いには無様に命乞いをしてくる始末。殺す気で来る癖にやり返されると酷く動揺する現代の魔術師達には修司も色んな意味で辟易としていた。

 

「征服王や英雄王の時代にいる魔術師………この場合は神官様か? 当時の人達にそんな奴っていたりした? もしいたりしたら対処法とか教えてもらえたりすると嬉しいんだけど」

 

「う、うーむ。どうだったかなぁ? 余はそう言うのには余り詳しくはないからな。英雄王、貴様はどうだ?」

 

「いるわけなかろうそんな戯け者、神官とはその名のとおり神に繋がる者の総称よ。神へと繋ぎ、仰ぎ見る者が神より傲慢でどうする。そうなったら最期、神々に呪われて終いよ」

 

 魔術師の異常なまでの傲慢さ、それを不思議に思っての問い掛けは古の王達の首を傾げさせた。

 

「別にさ、自信を持つのはいいと思うんだよ。武術にせよ魔術にせよ、それはソイツが伸ばしてきた技だからさ、それを誇りに思うこと自体は悪いことではないと思うよ?」

 

武術も魔術も極めるモノだというのは修司も理解できる。出来なかった事が出来るようになる喜びは何物にも勝る劇薬の様なもの、その喜びを糧にして更なる成長へ挑む、それが魔術師と人間にある数少ない共通事項だと修司は思っていた。

 

けれど、それにしたって魔術師の傲慢さは理解できないモノだった。その最たる例となったのが聖杯戦争に参加しようとしていたとされる元メディアのとあるマスターだった。

 

その男は如何にも成金な魔術師だったとメディアは語る。自分を優秀な存在と自負し、莫大な金と労力を使って無駄な手段と無意味な犠牲を払って小さな魔力の塊を自慢気に話す小物。

 

そんな彼の前で術を見せればプライドが傷付いたと激昂し、メディアに手を挙げて令呪で縛ってきたという。

 

突っ込み所が多すぎてワザとやっているのかと言いたくなるくらいにアレな魔術師、普通自分より格上の術者が出来たら低姿勢でないにしろ、それなりに良好な関係を築こうとするモノ。技術も知識も格上な相手に何故そうも上から目線でモノを言えるのか、これが分からない。

 

 魔術師なんて生き物に同調するつもりはないが、もし仮に自分がメディアという格上の魔術師を召喚したなら、聖杯戦争中は絶対に敵対しないし、なんなら弟子入りだってするだろう。傲慢なのもそうだが、魔術師という輩は格上の相手をも虚仮にする傾向……というか、知らない相手には基本的に高圧的な気がする。

 

「…………これは、余の主観であるが、現代の魔術師は神々との繋がりが薄いのではないだろうか」

 

「ロムルスさん?」

 

「ほう? ローマの始祖よ、その根拠はなんだ?」

 

 魔術師という存在に王達と一緒になって首を傾げていると、唐突にローマの始祖ロムルスが語り出す。魔術師の傲慢な理由、それは即ち古に存在していたとされる神々にあるのではないのかと。

 

「魔術とは古き神秘に依存するものが多い、神々も然り。神という導き手があったからこそ、魔術師達はその指針に揺るがぬ自信があった」

 

「ふむ、つまり神々が消えた時代から魔術師達は独学で魔術を学び、研究する必要があった。指針がないから手探りで挑む必要があり、だからこそ自力で達成した己を誇りとしたが、時代が流れるに連れて増長したと?」

 

「えぇ? そんな大層な話かぁ? 以前メディアさんから聞いたアトラムって魔術師は大した魔術師じゃないと断言してたぞ?」

 

始祖ロムルスの言葉を自分なりに解釈するイスカンダル大王に対し、修司はそんな馬鹿なと一蹴する。仮にもローマの始祖相手に友人感覚で接する修司にエミヤは厨房の奥で吹き出した。もしここに他のローマ勢がいたら確実に面倒な事になっていただろう。それでも全く意に介しない辺り、ロムルス王の器は大きいと言えた。

 

「それに、魔術師って奴は家の歴史が浅い奴ほど上から目線な奴が多い気がする。前にエルメロイⅡ世の先生が言ってたけど、前のエルメロイの人は魔術師らしい人であっても無闇に人を見下したり、一般人を巻き込んだりしないと断言していたぞ」

 

「む? そうであったのか。であるならばこれは余の落ち度(ローマ)であるな。済まない(ローマ)

 

「そう気にするほどではないだろうローマの、今のは言葉足らずだったこやつが悪い。ほれ、お前も謝っとけ」

 

「うっ、確かに今のは俺の説明不足だったな。悪いロムルス王、魔術師に対する偏見で言葉を濁らせた」

 

「ウム。しかし……フフ、余は少し安心したぞ。人の善性を体現するソナタにもその様な感情があるのだな」

 

「ど、どういう事?」

 

「人として上を向き、人として高みを目指すそなたを余は眩しく思えた。しかし、強すぎる善性は時に人を人の枠組みから外してしまう。正しくあろうとするのは良い、だが正しさだけ(・・)では人は生きられぬ。強さだけではない、弱さもまた人の在り方なのだ」

 

 優しい眼差しを向け、諭すように言葉を紡ぐロムルスに修司は彼の言わんとしている事を言葉ではなく、心で理解した気がした。

 

魔術師も人間も同じ、強弱であることが悪ではなく、悪性も含めて人なのだと、改めて諭された気がした。魔術師の事を口汚く罵るつもりはなかったが、過去の経験からつい偏見混じりにモノを言ったのも事実、ロムルス王の言葉を胸に刻み、修司は改めて彼の王に頭を下げた。

 

「ごめん。いや、この場合はありがとうか。そうだよな、魔術師だって人なんだ。悪い奴もいれば良い奴もいる。清濁合わせてこそ人は人でいられるんだな」

 

「ほほう、まるで悟りを得たような物言いだな。なんだ、これを機に覚者でも目指すか?」

 

「まさか、俺のやることは今もこれからも代わりないよ。自分の出来ることを全力でやり通すだけさ。ただ、魔術師も人間も大して違いはないって事を改めて理解しただけ」

 

 黄金の王からの揶揄も修司は笑って受け流す。

 

「んじゃ、俺はそろそろ行くよ。王様達もあんまり遅くまで呑んでるなよ」

 

「おう、お前の旅の話は中々面白かったぞ。また何かあったら聞かせてくれ」

 

「お休み、良き夢を」

 

「フンッ」

 

偉大なる王達から話をし、有意義な時間を過ごせたと満足そうに修司は自室へと戻っていく。そんな彼を見えなくなるまで見送った王達は一斉に英雄王へと振り返った。

 

「おい英雄王、お前さんいつまで本当の事を黙っておくつもりだ。あんな良い臣下を弄ぶのは流石にどうかと思うぞ」

 

「それも汝の(ローマ)である事は理解できるが、些か(ローマ)が過ぎるのではないか?」

 

「戯け、アレが弄ばれるタマか。いいか、散々言っているが、我は今回の召喚に応じたのはあくまでバカンス、つまりは遊びに来ただけなのだ。人理修復? そんなもの、アイツ一人その気になれば一息に片付けられよう。それをしないのは、偏にアイツが人の感性を捨てずにいるからだ」

 

「………それは、例の魔神とやらか」

 

「詳しくは語らん。意味がないし語る理由もない、どちらにせよ奴がここにいる以上結末は決まっている。我はただその過程を遠くから面白おかしく愉悦する(見守る)だけよ」

 

「………あ、聖女だ」

 

「とう!」

 

ドヤ顔で語る英雄王に若干の苛立ちを覚えた征服王はいもしない聖女を口にする。その瞬間黄金の王は懐にしまってあったハデスの兜を取り出し、気配と一緒に姿を消した。恐らくは彼も自室へと逃げ込んだのだろう。

 

「最近、あやつの努力の方向性が頗る間違っている様な気もするが……余の気のせいかなぁ」

 

「………それも、またローマである」

 

 偉大なる人類最古の王、ギルガメッシュ。今宵も極上の愉悦を得るために意味のない努力を続けるのだった。

 

「よし、ならば呑み直すか。おーいエミヤの、此方に酒の追加を頼む」

 

「帰りたまえ」

 

カルデアの食堂、そこは料理長が守護する絶対領域。そこに反する者達は喩え王であっても許しはしない。

 

 

 

 

 




と言うわけで、今回は酒呑童子とボッチ、三人の王様とボッチの絡みを書いてみました。

好評だったら他のサーヴァントとの絡みも書いてみたいと思いますので、宜しくお願いいたします。


それでは次回もまた見てボッチノシ


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