『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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ウマ娘のDVDを借りたいのに悉く借りられてションボリルドルフ。

そりゃエアグルーヴのやる気も下がるってもんさ

え? 違う?


それと、前回の予告と大きく異なってしまってすみません。

上手く纏められなかったんや。


その59 第四特異点

 

 

 

 ────雷が迸る。霧に覆われていたロンドンの街に蒼き蒼雷が凪ぎ払い、周囲の建物を砕きながら一人の男に向かって波打ちながら迫ってくる。

 

その男────白河修司は自身に深紅の炎を纏わせ、頭上へ向けて拳を振り抜いた。瞬間、巻き上がる暴風が荒れ狂う蒼雷を巻き込み、ロンドンの上空へ吹き飛ばす。

 

そして、霧で覆われたロンドンに三度の晴天が姿を見せた。時間帯は既に夜の時刻であり、霧を含めたロンドンの空を覆っていた不純物の全てを吹き飛ばした事で目映い星々の夜空が修司達を照らし出す。

 

「ふははは! 我が雷電を拳の一振りで凪ぎ払うか! なんという凄まじい膂力、本当に人間かね? 実は何れかの神話に属する半神だったり?」

 

「生憎、純度100%の只人だよ俺は。………それはそれとしてニコラさん、どうやってもロンドンを滅ぼさないとダメなのか?」

 

 ニコラ=テスラ。それは神々の神業とされてきた雷を解明し、神から人の手へと繋ぎ渡した星の開拓者の一人。人類の科学技術に大いなる貢献をもたらしたエジソンやライト兄弟に並ぶ偉大なる先人であり、修司が尊敬して止まない人物である。

 

そんな彼と人類の存亡を賭けて戦う事になるなんて思いもしなかった。

 

「うむ。先にも言ったが、今の私はそうあれと望まれて生み出された存在だ。喩え泣いて懇願されようとも、今の私は聞き入れず人理焼却に加担するだろう。誠に遺憾だがね」

 

「───そうか、なら。仕方ないか」

 

「名も知らない青年よ。その反応からして私に何か言いたいことがあるのではないかね? 戦いの手を止める事は出来ないが、話を聞くだけの器量はあるつもりだ」

 

 言いながら、ニコラは更なる雷を修司に向けて撃ち放つ。迸る雷、地を抉り建物を破砕しながら押し寄せる蒼雷の波を修司は両手を交差して受け止める。

 

「修司!」

 

尋常ならざる電流と熱、石造りの道路を溶解させるほどの熱量にバベッジは盾になろうと駆け出すが、拡散する電熱に阻まれ押し戻されてしまう。

 

ならばとバベッジは自らの胸部装甲に熱を入れ始める。白河修司の手によって新たに加えられた武装、これならば電熱も吹き飛ばしてニコラに一撃が叩き込める。

 

 だが、そんな彼を止めたのは他ならぬ修司だった。

 

「バベッジさん。コイツの相手は俺がする。アンタは街に被害が出ないようにしてくれ」

 

「しかし!」

 

「頼む、この人は………俺が絶対に倒すから」

 

「~~っ! えぇい! 仕方のない奴め!」

 

修司に言われ、戦闘の介入よりも戦闘の余波による被害を食い止める事を選んだバベッジは蒸気を噴出し熱を放出し、宙を舞う。修司が施した機構の一つ、蒸気による加速である。電熱に引火し、燃え始めている家屋の鎮火に向かったとされるバベッジを確認して、修司は改めて力を解放する。

 

赤い炎をより滾らせ、受け止めていた蒼雷をはね除ける。戦う者の目となった修司にニコラ=テスラは息を呑んだ。

 

「………ニコラさん」

 

「………何かな?」

 

「俺、貴方の事を尊敬しています。アンタがいたから人類は電気の力を獲得した。貴方が頑張って、踏ん張ってきたから、人類は飛躍的な成長を遂げられた」

 

「…………」

 

「だから、倒すよ。アンタという偉大な男に人類の未来を潰させはしない」

 

 英雄王を除いて、修司が真に尊敬する人物。ニコラ=テスラ、そんな彼を人理焼却の加担者にさせはしない、黒幕達の思い通りにはさせない。何故なら彼は人類の可能性を何処までも信じて疑いはしないのだから。

 

そんな修司の眼差しに天才は笑う。大きく、高らかに。

 

「ハハハハハ! 成る程、では見せてくれ! 君の可能性を、君の輝きを!」

 

 瞬間、ニコラ=テスラは空を飛んだ。電磁の応用、空中に電磁波による力場を造り、あたかも空中に佇んでいる雷電博士に修司も跳躍して追い縋る。

 

しかし、それはニコラ=テスラの罠だった。空へ逃げる自分に街の被害を気にしていた修司なら必ず追ってくるだろうという彼の確信した策略、空中に出れば修司に逃げ場はない。故にニコラ=テスラも自身の宝具を最大出力で放つことが出来た。

 

「神の雷霆は此処にある。さぁ、ご覧にいれよう! 人類神話・雷電降臨!!

 

 ロンドン全土を覆

う雷鳴。彼を中心に雷が円環を描き、その直後に空を裂き、霧を蹴散らして轟いて空間そのものを蹂躙していく。迫り来る轟雷に修司は右手を強く握り締めて真っ正面から受けて立つ。

 

握り締めた拳に更に力を込めて、可動域限界まで腕を伸ばす。空いた左手は照準を合わせように掌の形でニコラ=テスラに向けていた。

 

雷が修司の体を呑み込んでいく。全身に伝わる痺れと痛み、そして熱さ。これが人類を一つの段階へ踏み込ませた男の一撃だと、身を以て知りながら。

 

火拳銃(レッドホーク)!!」

 

 修司は拳を振り抜いた。赤く燃える炎を拳に宿し、自身を呑み込んでいた轟雷ごとニコラ=テスラを撃ち抜いた。炎と衝撃に霊核を貫かれ、一撃で戦闘不能となったニコラ=テスラはそれでも尚笑みを絶やさない。

 

何せ、彼は目撃したのだから。彼自身の語る人類神話、絵空事だと一笑されるその物語を体現したかのような存在と巡り会うことが出来たのだから。

 

「………ありがとう」

 

魔術師に言い様に操られた自分を倒してくれた事、人理焼却を阻んでくれた事、自分に────未来を示してくれた事。本来であればもっと別の形で自分を倒せた筈なのに、敢えて此方の土俵に立ってたたかってくれた修司に万感の思いを込めて、ニコラ=テスラはそう言い残して消えていった。

 

「ありがとう、か。それは、此方の台詞だよ。雷電博士」

 

 いつかカルデアに来てくれたら話をしよう。そんな想いを抱きながら白河修司は消え行く偉大な雷電博士を見送った。

 

「修司さん、無事!?」

 

「あの雷親父、何処へ行きやがった!」

 

 そしてニコラ=テスラの消滅を確認し、修司がロンドンの地へ着地するのと立香達が地上に戻ってくるのは同時だった。

 

周囲を見渡し、地下へ突入する時とは違う霧の晴れたロンドンの街並みにここで戦いがあったと察した立香は近くに佇む修司を見ると、所々焼け焦げてはいるものの、彼の五体満足で元気でいるのを確認すると急ぎ足で駆け寄ってくる。

 

「良かった修司さん、無事だったんだね!」

 

「あぁ、どうにかな。ちょっと痺れるけど……まぁ、見ての通りさ」

 

「おいおい立香、そいつがそこらのサーヴァントに負けるわけが無いってのはお前が一番分かっている事だろう? 心配なんて無用の長物だろうが」

 

「いや、そうかもしれないけどさ、やっぱり心配しちゃうよ」

 

「ですね。其所が先輩の良い所だと、私は思います」

 

 修司がいてニコラ=テスラがいない。戦闘のあった形跡といい、ここで二人が戦い、そして修司が勝利した。モードレッドがその事を察するには状況証拠が揃いすぎていて、自分の獲物が横取りされた気がして反逆の騎士は不服そうに口を尖らせる。

 

「その様子だとお前が勝ったんだろトンチキ野郎。ったく、人の獲物を横取りしやがって」

 

「悪かったな。もう少し早く来てくれたら譲ってやることも出来たんだがな」

 

ぐぬぬと悔しさを露にするモードレッドに修司は肩を竦めて返答する。実際、ニコラ=テスラが地上に出るまでの間、立香達の前には大量のホムンクルスや自動人形が立ち塞がってきて結構な時間を取られたのも事実、地下という限りのある空間で存分に力を奮えなかったモードレッドとしては些か納得のできない決着と言えただろう。

 

「でも、その様子だとそっちも無事に親玉を仕留められたみたいだな」

 

「うん」

 

 修司の言葉に立香は素直に頷いた。地下鉄の更に地下深くに根付いていたマキリ計画の首謀者、マキリ=ゾォルケン。立香達を地下で待ち伏せていた彼は予定調和の如く聖杯の力によって魔神柱となり、彼女達の敵として立ち塞がった。

 

反逆の騎士のモードレッドを筆頭にマシュ、アンデルセンにシェイクスピア、そしてエルメロイⅡ世の五騎のサーヴァントを総動員させて立香達は何とか勝利を得ることが出来た。

 

その後にマキリが最後の足掻きとしてニコラ=テスラを召喚し、ロンドンを破壊させようとしたのがこれ迄の大まかな流れだ。

 

「良くやったなマシュちゃん、そして立香ちゃん。俺抜きでも充分に君達は生き残り、勝利した。胸を張るといい」

 

修司からの心からの称賛に立香は照れ臭そうに頬を掻いた。

 

「えへへ。あ、そうだ。修司さん、ゾォルケンさんから伝言を預かってるんだけど………」

 

「伝言?」

 

「うん。済まなかったって、どういう意味なんだろう?」

 

 それは立香達に破れたゾォルケンが消滅する前に言い遺した最期の言葉、一体何に対しての謝罪なのだろうか。伝言である事から修司に対しての言葉なのは理解できるが、それ以上の深い意味は立香には理解できない。

 

そして、修司の方も特に変わった様子を見せる事なく、「そうか」とだけ言ってそれ以上この伝言に触れる事はなかった。

 

『ともあれ、元凶も倒した事だし残るは聖杯を回収するだけだ。皆、手間かかるけどあと少し頑張ろう!』

 

「あー? また地下に潜るのかよ。俺嫌なんだけどォ?」

 

「良いからキリキリ働け猪騎士、お前は突き進むことだけに特化した騎士なんだろう? 怠けた猪なんぞ、唯の的になるだけだぞ?」

 

「おっとアンデルセン殿、それは言い過ぎですぞ。反逆の騎士モードレッド卿は仮にも円卓に連なる騎士の一人ですからな。猪では些か雅に欠けると言うもの、ここは一つ“鉄砲玉”で手を打たれては如何かな?」

 

「よーし、テメェら其所に直れ。二人仲良く頚を刎ねてカラスの餌にしてやるからよぉ」

 

「わー! モーさん、ストップ、ストーップ!」

 

 ギャーギャーと騒ぐモードレッド達に仕方ないなと修司は苦笑う。ともあれ、これで今回の特異点も終わり、後は聖杯を回収するだけ、という事で。

 

「そこの人、アンタもサンキューな」

 

「え?」

 

「っ!?」

 

修司は唐突に背後へ振り返り、路地裏に続く建物の影へと声を掛ける。誰かいるのかと戸惑う立香達、すると観念したのか狐の耳と尻尾を生やしたサーヴァントと思われる女性が現れた。

 

「あ、アハハハ。バレちゃいましたか」

 

『サーヴァントの反応が突然現れた!? ど、どういう事だい!? 此方の策敵を潜り抜けるなんて!』

 

『恐らくは魔術とは別系統の術による気配遮断の類いのスキルなのだろうね。しかもかなりの使い手と見た』

 

「修司さん、あの人知り合い?」

 

「俺がニコラ=テスラと戦っている間、街に被害が出ないようにフォローしてくれた人だよ。彼の電撃の範囲は結構あったからバベッジさんだけじゃあ負担を掛けすぎたからな。彼女の手助けは正直助かった、尤も女性とは思わなかったけど」

 

「それにしたって感知能力高過ぎませんかアナタ。しかし、近年稀に見ぬイケ魂なのに全く惹かれないのはどういう事なのでしょうか? いえ、私はご主人様一筋なので惹かれる事はありえませんが」

 

 なにやらぶつぶつと呟いている狐耳の女性、その風体からクラスはキャスターである事は何となく理解できて、恐らくは霧によって喚ばれたはぐれサーヴァントなのだろう。

 

召喚されて間もないのに自己の判断で街を守ることを選択した彼女に立香はこれ迄と同様に対等の相手として接近した。

 

「街の人達を守ってくれて、ありがとうございます。私は藤丸立香、アナタは………キャスターの人、でいいんですよね?」

 

「おやおや、これはご丁寧に。はい、私キャスターの玉藻と申す者でしがない呪術師でございます。むむ、この御方もご立派なイケ魂の持ち主。女性であるのが惜しまれますねぇ」

 

「?」

 

立香の偽りのない態度に心を赦したのか、差し出された手を玉藻は迷いなく掴み、柔らかく握った。それを切っ掛けに和気藹々と語り出す彼女達を尻目に修司はふと空を見上げると、渦巻き始めた空模様に眉を寄せる。

 

そしてそれに気付いたのは修司だけでなく、アンデルセンもまた不可解な現象を前に表情を強張らせている。

 

「おい、何か来るぞ」

 

「アンデルセン殿?」

 

 アンデルセンが察知したのは何か、それを追求する間もなく………それは現れた。吹き荒ぶ暴風、空を暗雲で覆い尽くし、雷が巻き起こる中で荒馬の嘶きが響き渡った。

 

嵐の中に佇む一騎、それは大きな黒い槍を携え、修司達を見下ろしている。

 

黒い荒馬、黒い槍、そして身に纏う黒い鎧。何もかもを黒に染め上げたその騎士、兜が開き相貌が明らかになると、その顔付きに立香達は戦慄した。

 

「ウソ、あれって……」

 

「信じられません。ですが、確かに面影があります!」

 

「あぁ、間違いない。アレはアーサー王の成体(・・)、聖剣の呪縛から解放された騎士王の姿だ!」

 

「父上!」

 

 吹き荒れる魔力の嵐、その中心に佇む嵐の王に立香達は驚く一方で。

 

「よし、取り敢えず(アレ)、折ろうか」

 

凄まじい敵意と殺意が騎士王の成体から向けられる中、修司だけはポキポキを拳を鳴らし、エルメロイⅡ世は全力で聞かなかったフリをした。

 

 

 

 

 






大変! ボッチの狙いが騎士王(オルタ)の槍にロックオンされたわ!

お願い、逃げ切って騎士王! ここで負けたら黒幕の出番まで間が持たないわ! 大丈夫、ここを切り抜けたら原作通りの展開になるんだから!

次回、聖槍死す。

デュエルスタンバイ!




まぁ、ウソ予告なんですがね。

それでは次回もまた見てボッチノシ

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