『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今更だけど、いべんとの時間軸は気にしない方向で。




その47

 

 

 

Δ月δ日

 

 前回の特異点の修復から早くも1ヶ月、次の特異点へのレイシフトには未だ少しばかりの時間を必要としている今日この頃、相も変わらず自分は李先生やケイローン先生の監修の下、鍛練の毎日を続けていた。

 

流石に一月も時間を掛ければ槍の扱いも多少なりともマシになり、それにともない自身の動きもより洗練され、気の扱いも前より数段上手く扱えるようになれた………気がする。

 

断言できないのは………ここ最近、誰とも組手をしていないから仕方ないが、自分が今どれ程強くなれたのか、未だに計ることが出来ていないからだ。

 

というのも、自分は基本的に界王拳を使うことを禁止にされているのだ。界王拳は使用者に絶大な力を引き出す代わりに、それに見合った反動を肉体を通して返してくる諸刃の剣。カルデアの代表代理兼医療スタッフの統括を担っているロマニはその負担を考え、その結果緊急時以外での界王拳の使用を全面的に禁止にする事となった。

 

………まぁ、形だけの禁止扱いなんだけどね。界王拳を使いこなすには界王拳を使い続ける他ない、熟練度の度合いを高めれば高めるほど使用効率が伸び、倍率もまた高くなっていく。

 

実際、最初こそは三倍界王拳も満足に扱えなかったのに諦めず使い続けた結果、今では一瞬だけとは言え10倍まで使えるようになった。もしこれであの修行場の製作が叶えられれば夢の20倍界王拳も一気に近づけるかもしれない。

 

自分が強くなれば、それだけ立香ちゃんやマシュちゃんの負担も軽くなり、人理修復への道のりもグッと近くなる筈だ。

 

と言っても、所詮は自分の我が儘だ。実際に20倍界王拳を使えるまでに至れるか分からないし、何よりあの修行場を作る際に皆にどう説明したらいいのか未だに考えられていない、下手に相棒を皆の前に公開するとパニックになりそうだし。

 

 ───それに、自分が界王拳を使おうとすると必ずといって良いほどサーヴァント達が絡んでくるんだよなぁ。

 

特にケルト、アイツ等俺が一人で没頭して鍛練したいから邪魔するなといっても、なぁなぁの態度で勝負を挑んでくるのだ。しかも割りとガチめな勝負を。そんなケルトに触発されて他のサーヴァント達も勝負を挑んでくるから、ホントに鍛練に集中出来ない。

 

 そんな自分の最近の楽しみはエミヤの作るご飯を食べながら立香ちゃんや黒ひげ達とアニメの話について盛り上がったりする事である。

 

黒ひげの奴、カルデアに召喚された影響か現代のサブカルチャーにドップリと嵌まり込んでやがる。フィギュアからプラモ、ポスター、更には同人誌に至るまでありとあらゆる日本のアニメ文化に精通しているようになっていた。

 

特にお気に入りなのはTo L◯VEるのヤ◯ちゃんなんだとか、そんな彼にワン◯ースを読んどけよとツッコミしたいのは自分だけではない筈。

 

と、そんなこんなで今日も無事に一日を終えることが出来た。今日は特にこれといった話はなかったが……まぁ、たまにはこんな日もありだろう。

 

 

 

Δ月※日

 

 ………今日、奇妙な特異点が発見されたとロマニとダ・ヴィンチちゃんからそれぞれ連絡が届いた。

 

その特異点はこれ迄の特異点とは異なり、放っておいても消えるだろう(・・・)とされる所謂特異点のなりそこない、だそうだ。

 

規模で言えばジャンヌ=オルタがもたらした贋作騒騒ぎのアレ、危険性も低く無視しても別に問題ないとされていた特異点だが、個人的には特異点の場所に懸念があった。

 

冬木。よりにもよって自分の地元である冬木市が特異点として発見されてしまったのだ。しかも観測を続けた所特異点の年代は十数年程度の前の時代、その話を聞いてどうしても自分にはあの儀式の名前が頭に過ってくる。

 

 ────聖杯戦争。それも、俺が戦った時よりも一つ前の聖杯戦争だ。俺の家族を、故郷を、大事なもの全てを焼き払った最悪の厄災。その舞台が、特異点として再び俺の前に現れたのだ。

 

話を聞いた時、俺は沸き上がる激情を堪えるので必死だった。両親を、親しかった知人友人達を、惨たらしく殺したあの災害を特異点だからと言って見過ごしたくはなかった。

 

 個人的にその聖杯戦争を無視する事はできない、どうすると訊ねてくるロマニへ俺はレイシフトする事を伝えたのだが、それに待ったを掛ける人物がいた。

 

エルメロイ先生だ。魔術師の中でも人柄に秀でて、教え子達に慕われている時計塔の魔術講師が行くなら自分も同席すると行ってきた。

 

前に一度だけ聞いたが、エルメロイ先生もこの儀式………第四次聖杯戦争に参加していたらしく、今回のレイシフトへの同行もその辺りに起因しているのだろう。

 

立香ちゃんも念の為という事で一緒に行くこととなった。当然、彼女のサーヴァントであるマシュちゃんも。これなら守りも大丈夫と言うことで俺達は改めて特異点となった冬木の地でレイシフトする事になった。

 

 ───そろそろ時間だ。続きは特異点から帰還してから書くとしよう。

 

 

 

 

「くっ、まさかレイシフトして早々に奴とはぐれるとは!」

 

「で、ですがこの冬木という街は修司さんにとっての故郷だと聞いています。土地勘のある彼ならばはぐれた所ですぐに合流できるのでは?」

 

「甘いよマシュ、エルメロイ先生ははぐれた事に危惧しているんじゃない。自分達と離れた事により生まれる修司さんのやらかしを恐れているんだよ」

 

「その通り、流石はマスターだ。奴の事をこの短期間で既に熟知している」

 

「へへへ」

 

「えっと………喜ぶべき事、なんでしょうか?」

 

「キャー!」

 

「今の声は!?」

 

「甲高い男性の声、あっちだ!」

 

「いだだだだだ! 痛い痛い痛い! な、何故僕の気配を察知できた!? 僕の気配遮断のスキルは完璧だった筈!」

 

「そんな殺気丸出しで遮断もクソもあるかよ」

 

「くそ、まさか僕がこんなふざけたコスプレ野郎に遅れを取るなんて!」

 

「フード被ってマスクしたアサ◯ンクリード擬きに言われたくねぇな」

 

「ウギィィィ!? や、止めろ! アームロックは止めロォ!! 折れる、折れるゥゥゥ!」

 

「あぁ、遅かったか……」

 

「第一の被害者……発見です」

 

「修司さん、止めてあげてよぉ!」

 

 

 

 

 

Δ月β日

 

 いやービックリした。まさかレイシフトして早々に皆とはぐれたと思ったら、突然見知らぬ暗殺者に命を狙われてしまった。

 

一応アームロックで動きを封じ、無力化した所で立香ちゃん達と合流できたから良かったモノの、この暗殺者、以前中学の頃に戦った魔術師と似たような技を使うものだからついムキになって対応してしまった。

 

 しかもこの暗殺者、衛宮の義父である衛宮切嗣さんだというから更に驚きだ。彼自身にはそんな記憶はないと言っているが、仮にも友人の父親をアームロックでギリギリまで攻めたのは不味かったと思い、自分は取り敢えず謝罪しておいた。

 

でも、いきなり問答無用で襲ってくる切嗣さんにも悪いと思うよ? そりゃ、クラスがアサシンだから闇討ちしてくるのは当然かも知れないけど、幾ら相手が見知らぬ怪しい人間だからって殺意全開で不意討ちかますのはどうかと思う。そんなんだから変な誤解が生まれるし、返り討ちに遭うんだよ。

 

 と、まぁそんな感じで切嗣さんを半ば無理矢理に引き連れ、特異点の調査を立香ちゃん達に任せることにして、先ず自分は冬木に潜む殺人鬼の排除から向かうことにした。

 

最初は自分が単独で動く事を納得しなかったエルメロイ先生だが、彼は彼でこの特異点でやるべき事がある。自分のは殆んど八つ当たりみたいな事だから今だけは単独で動くことを許して欲しいと懇願すると、先生は何かを察してくれたのか、無理をしないことを条件に単独行動を許してくれた。

 

立香ちゃんにはエルメロイ先生とマシュちゃんがいる。共に守りに秀でた人達、二人がいるなら立香ちゃんも大丈夫だと思い自分は切嗣さんを引き連れてある場所に向かった。

 

 自分が向かったのはとある地下水路。海と山に囲まれた冬木特有の地下施設、その奥にある広々とした空間に………奴等はいた。

 

キャスター、ジル=ド=レェとそのマスター。共に第四次聖杯戦争で無惨な殺戮を繰り返していた最悪の殺人鬼、奴等を見掛けた瞬間に俺は自身の力を解放し、奴の魚みたいな顔に思い切り拳を捩じ込ませ首から上を吹き飛ばしてやった。

 

キャスターを一撃で仕留め、戸惑っているマスターらしき男も股間を蹴りあげて再起不能にしてやると、捕まっていた子供達を解放して警察へと直行した。幸いなことに子供達は眠らされた状態で特に何か細工をされていた様子はない。地下水路にも目だった血痕が無かった事からどうやら惨劇が起こる前に助け出せた様だ。

 

 警察へ無事に送り届け、泡を吹いて気絶している殺人鬼を簀巻きにして別の交番へ送り届けると、自分は今度は間桐邸へ向かった。

 

途中、なんか死にそうになっている男性を見つけ、彼がバーサーカーのマスターだと知った自分は彼に簡単な事情を説明し、彼に協力する事となった。

 

間桐の家に向かった自分はこの家の長男だという男性に簡単な訳を説明し、生活に必要なモノだけを持って家から出てもらう事になった。その後、家の奥にいた少女を救出すると間桐の家をクンッして破壊。家に住まう蟲諸とも叩き潰してやった。

 

 その後、少女をバーサーカーのマスターに引き渡すと、彼に俺の気を分けてある程度にまで回復させ、長男の人の手も借りて彼女と共に街から離れた病院へ入院させる事になった。既に彼のサーヴァントは自分と戦い、消滅している。

 

残る聖杯戦争の参加者は五人。………いや、ランサーのマスターもエルメロイ先生の説得により自国へ帰ったと言っていたから、あと四人にまで減っている。

 

残るはランサーとアサシン、そしてライダーとセイバーだ。エルメロイ先生は切嗣さんを見た瞬間どういう事かと狼狽えていたのが気になったけど、その辺りは実際に聖杯戦争に参加した人にしか分からない事があるのだろう。取り敢えず細かいイレギュラーな事には彼に任せる事にしよう。

 

 で、その切嗣さんだが………まぁ拗らせていますこと。自分のやる事なす事全てにケチを付けてダメ出ししてくるわ、無駄な事だと煽ってくるわ、正直何度その減らず口を物理的に黙らせてやろうかと思った事か。

 

そりゃあ、今自分達のいる特異点は修復したら全て無かった事にされる胡蝶の夢みたいな世界だよ? 元凶となるモノを解決し、原因となっている聖杯を回収したら全てが終わり消えていく。

 

この特異点で本来起こるべきだった過去を変えた所で、それが世界に対して影響が出ることは殆んどない。自分のやっている事は見るに耐えない自己満足に過ぎないと切嗣さんは吐き捨てた。

 

だから自分も吐き捨てた。それがどうしたと、ここで過去を変えたつもりでも未来を変える事には繋がらないし、過去に起きた出来事は覆らない。そんなのは分かっているし、そもそもその為に自分達は人理修復を行っているのだ。

 

 自分がやっているのはあくまで自分の気持ちに決着を付ける為、自己満足の為だ。あの時今の自分がいたらという、取るに足らない幻想を証明する為だ。

 

それを切嗣さんは馬鹿馬鹿しいと一蹴する。そう、馬鹿馬鹿しい話だ。彼の言っていることは間違ってないし、きっと正しいのだろう。

 

けれど、正しいだけの理屈なんて自分は求めていないし、何より未来に関係ない話だとしてもそれを今起きている惨劇を放置していい理由にはならない。そう自分が口にすると、切嗣さんは分かりやすい程に苛立ちを露にしていた。

 

 そんな彼に今度は俺が訊ねた。どうして切嗣さんはサーヴァントになったのかと、何を求めて死んだ後も戦う道を選んだのかと。返ってきたのはやっぱり“正義の味方”だった。

 

なんというか、切嗣さんといい以前の士郎といい、どうして正義の味方を目指す奴って変な所で頑固なんだろう? 頑なになる所、絶対間違ってるだろ。

 

切嗣さんの言う正義の味方は間違っている。そもそも正義の味方は一人で活動するモノではないし、したとしても録な結果に繋がらない。切嗣さんは誰かを助けるというのは誰かを助けない事なんだと言うけれど、それはアンタ一人で活動しているからだと返しておいた。

 

なんで人を助けるのに個人でやる必要があるのかなぁ、救助隊の人達だって一人の人間を助けるのに複数人でやっているのに、どうして人命救助のプロでもない切嗣さんが一人で出来ると思ったのか、これが分からない。

 

誰かを助けたいのなら、先ずは自分が助けを求めるべきだ。この人を助けたいから手を貸してくれと、声を大にして叫ぶべきだった。

 

そりゃあ、切嗣さんが過去に何があったのかなんて自分には分からないよ? どれだけ辛く、しんどい時があったのかなんて分からないけど、だからといって人を信じるのを止めたら本末転倒ではないかと自分は思う。

 

人助けというのは、人を信じる所から始まる。誰かを助けたい癖に誰にも心を開いていない切嗣さんが正義の味方を目指しても、そりゃ無理があるというモノだ。

 

 そこまで言うと、切嗣さんは酷く落ち込んでしまっていた。具体的に言えば体育座りをしていじけてしまっていた。いじける位なら最初から認めれば良かったのに、なんて言うとロマニから止めてやれと通信越しから止められてしまった。

 

なんか通信越しでエミヤの啜り泣く声と王様の笑い声が聞こえてきた気がしたけど………気の所為だろう。

 

 そんなこんなで自分が立香ちゃん達と合流する為に大聖杯の所へ向かうと、なんかデカイ図体のライダーとエルメロイ先生、マシュちゃんが戦ってた。

 

何でも自分達というイレギュラーな存在が出てきた事で聖杯戦争の戦力バランスが崩壊し、それが面白くないので立香ちゃん達と敵対する道を選んだのだとか。

 

流石というかなんというか、これがあの美少年であるアレキサンダー君の成長した姿と言うから驚きだ。というか、骨格からして違くない? なんであの少年が彼処までの巨漢になるんだよ。彼を見ていると人体の神秘を目の当たりにした気になる。

 

 ともあれ、そんな二人の戦いに手を出すのもアレなので、協力関係となっているセイバー陣営の二人と主が戦線離脱する中一緒に戦う事を約束してくれたランサーと一緒に観戦する事にした。

 

そして結果は辛くもエルメロイ先生達の勝利となった。如何に征服王イスカンダルと言えど、サーヴァント二騎と立香ちゃん相手に単機では勝つことは難し勝ったようだ。

 

宝具も魔力が足りなかった様で使えなかったみたいだし、端からみれば勝敗を決めたのはライダーのマスター、即ち昔のエルメロイ先生にあると見えただろうし、実際にその通りなのかもしれない。

 

悔しそうに自分の力の無さを痛感する昔の先生、きっとこの挫折をバネに奮起し、時計塔でロード呼ばれる様になり多くの生徒達に慕われるようになるのだろう。そう思えば自分は人の歴史の瞬間に立ち会えたという希少な体験をする事になったと言える。

 

 その後は現れた蟲野郎(臓硯)と大聖杯から現れたユスティーツアを自分が速攻でぶちのめし聖杯を回収し、この特異点は修復される事になった。

 

………本当は大聖杯の中の奴も自分が相手してやりたかったのだが、それは切嗣さんに譲る事にした。本来彼は奴を相手にする為に喚ばれたサーヴァントみたいだし、流石に人の仕事まで奪うのは気が引ける。

 

必ず勝つ事を条件に特異点から帰還する事になった自分達は皆に別れを告げてこうして冬木市を後にすることとなった。

 

 ………現地の協力者、アイリスフィールさんを連れて。

 

え、こう言うのありなの?

 

あ、それと特異点での王様は自分が立香ちゃんと合流したのを見て早々に聖杯戦争から手を引いてくれたらしいのだ。その証拠にワザワザマスターとの契約を切り、魔力不足で消滅するまで現世を楽しむと言っていたから、きっと今頃何処かの高い展望台の上で高笑いをしているのだろう。

 

 結果的に言えば今回の特異点は割りと満足な顛末と言えるだろう、個人的にもスッキリしたし。

 

大聖杯を破壊できなかったのは少し物足りなかったけど……まぁ、それは未来の自分に任せる事にしよう。

 

 

 

 

「ほう、お前があの英雄王の臣下か! うむ、良い面構えをしておる! しかもあのヘラクレスを倒したと言うではないか! 日本にはマスラオなる戦士がいると聞いたことがあるが、成る程、これなら納得というものだ!」

 

「お褒めの言葉どうも」

 

「しかし悔しいのぅ、我が臣下達も傑物足り得た豪の者達ばかりだが、ヘラクレスを倒したという伝説を築き上げた奴はいなかった。本当に生まれた時代を間違えた男よのぉ」

 

「そんな褒めても、起き攻めの手は緩めねぇよ、ほれ」

 

「ぬぉ!? 余のスネークがピンクの悪魔にぃ!?」

 

「いい加減キャラ変えたら? パターンが分かりやすくて動きが読めちゃってるんだけど」

 

「ぬぅ、ならぬ! 余のスネークが10の勝利を飾るまで絶対に退かぬ! 媚びぬ! 顧みぬ!」

 

「おーい誰だぁ、征服王に北斗◯拳見せた奴」

 

 

 

 

 





ウマ娘最終回、控えめにいって最高でした。

アプリの方で爆死したけど、それが許せる位には最高でした。

それでは次回もまた見てボッチノシ






Q.もしもボッチがウマ娘の世界に来たら?

A.一緒にトレーニングしてくれるコーチになりそう(白目


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