『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

275 / 417
今回は日常回です。

シンエヴァ、観てきました。

色々感想はあるけれど、まずは一言。

碇くん、あの後友人の妹から狙われそうだけど……大丈夫かな?


その46 

 

 

 

 

※月β日

 

 李書文。1864年に中国の河北省滄州市塩山県生まれの武術家であり、八極拳の門派・李氏八極拳の創始者。

 

立香ちゃんに呼ばれた彼は“肉体の全盛期”の頃、即ち年若い姿として召喚され、該当するクラスはランサーとなっていた。

 

師父に影響され彼の事を少なからず知る自分としては李先生がカルデアに来てくれた事を喜ばずにはいられなかった。何せ彼は中国拳法において知らない者はいない程の達人、しかも生まれた年代から神話や伝説上の英雄達とは異なり比較的近代的な人物。

 

本来ならより技の洗練された老齢の頃の自分の方が強い。というのは李先生本人の言だが、個人的にはそうは思わない。

 

何故ならランサーとして召喚された李先生には槍という武具を使ったアドバンテージがある。確かに肩を叩いただけで人を殺したという逸話のある晩年の李先生もバケモンだが、槍一本で神話の英霊達と渡り合えている李先生も充分バケモンだ。

 

 そんな李先生に同じ八極拳を使う一人の武術家として教えを乞うことにした自分だが………実はちょっぴり緊張していた。李先生てば北京から武術を指南してもらおうとやって来た同じ武術家の人を殺害した逸話を持つ人だし、自分もそうなるのではないかと内心ビビっていたが、意外にも李先生はフランクな人で八極拳を師父から教わったと告げると、結構親しげに話をしてくれたのだ。

 

若いくせに大した功夫の練り上げだ。なんて誉められた時はいつになくテンションが上がったし、型の指導を受けた時はマジで感激した。

 

 そして、ある程度指南を受けて改めて組手を申し出ようとしたのだが………やはり、拳よりも槍を得意とする若い頃の李先生では色々と勝手が違うようで、今の自分の技を見てもあまり役には立てないだろうと言ってきた。

 

同じように李先生でもその時代によって武に対する見解は色々と違うようで、肉体的には全盛期であっても技に対する指導は難しいとの事。

 

残念………なんて思わない、何せ相手はあの李書文先生だ。例え技に対する指導ができなくとも、実際に相対して真摯に挑めば見えてくるものは必ずある筈。李先生の都合が許す限りでいいから自分と組手をしてくれとダメ元で言ってみると、李先生は笑って了承してくれた。

 

 師父以来初となる八極拳同士の組手、初回という事もあって自分も李先生と同じ槍を使って一度勝負する事になったのだが。

 

結果は惨敗。いやー、やっぱ強いわ李先生。同じ槍なのに使い手が違うだけでこうも差があるとは………やっぱり、自分も無手だけでなく武器を使った動きも覚えた方がいいんだろうか。

 

昔から苦手なんだよなぁ武器使うの。師父にも言われたけど、自分には武器を扱う才能はあまりないみたいな事を言われたし………自分自身、槍や剣を扱うよりも直接殴った方が速いと思っていた時期もあったし。

 

でも、李先生も仰るように武器を扱えれば体の動きにも影響が出てきて、結果的に洗練される事に繋がると言ってたし、何より苦手な事をそのままにしておくわけにはいかない。

 

これからは槍の指南を李先生から受ける事になり、自分の強化の第一歩を踏み出せた気がする。ケイローン先生も立香ちゃんの指導の合間に様子を見てくれるって言うし、これからが楽しみになってきた。

 

え? ケルトの影の女王も指導指南に長けているだろって? ハハ、冗談はよし子さん。

 

教え子を平然と死地に追いやるのはね、指導とは言わないの。単なる拷問なのよ? 拷問と指導は全く違うってハッキリわかんだね。

 

 

 

 

 

「お、今日もやっていますか李書文先生。どうですか、新しい門下生は」

 

「ギリシャの賢者に言われるのは流石にむず痒いから止めて欲しいが……そうさな、多少の粗さは目立つが、年齢の割に大したモノだ。功夫の具合もそうだが、何より向上心が普通ではない。槍の扱い自体は未だ拙いが、それはあくまで奴自身の苦手意識がそうさせるだけであって、切欠一つですぐに克服できよう」

 

「やはり、そうですか」

 

「恐ろしい奴よ。ギリシャの大英雄を下したというのに、まるで驕った様子は見受けられない。何処までも強くなることを望み、また底知れない才が奴を新たな次元へ押し上げる。全く、末恐ろしい奴だ」

 

「………でも、そんな彼の果てを見てみたいと思う自分がいる、と」

 

「可可可。いやいや、若さとは良いものよ。………所で賢者ケイローン、彼処にいる者についてだが……」

 

「あぁ、彼女の事は気にしないでください。貴方に槍の師としての立場を取られて嫉妬しているだけですから」

 

「………やれやれ、武で女に嫉妬される日が来ようとは、サーヴァントというのは面白いモノだな」

 

「うぅ、何故だ。何故だ修司ぃぃ! 何故槍の指導をワシに受けに来ないのだ! ワシの方がカルデアでは先輩なのにィィィ!」

 

「いやぁ、普通に賢明な判断だろ。誰だってそうするし俺だってそう───(ブスリ)ンアッーーーー!?」

 

(プロト)の俺ェェェェッ!?」

 

 

 

 

※月Ω日

 

 李先生に槍の指導を受け、武器を扱った体術を一通りこなし終えて午前の鍛練は終了、午後に備えて身支度と昼食を戴こうと食堂に向かおうとしていたら、突然カルデア中に警報が鳴り響いた。

 

何事かと思いロマニ達のいる管制室に向かおうとしたのだが、途中で珍妙な生物と遭遇。ノブノブと鳴くゆるキャラみたいな生命体がそこら中に蔓延っていた。

 

一見すれば可愛らしく見えなくもないゆるキャラだが、その性質は獰猛な獣。自分と目が合うとノブノブなゆるキャラは一体何処から出したのか、刀や鉄砲を持ち出して襲ってきたのだ。

 

突然の強襲に驚いたが、相手はサーヴァントですらない何処かの使い魔。外見に騙され先手を取られたとしても、たかが刃物や鉄砲にやられるほど自分は落ちぶれてはいない。

 

可愛らしい外見と言えど、敵意を持って襲ってくるなら容赦はしない。襲ってくるノブノブなゆるキャラ達に拳を叩き込むと、ゆるキャラ達は霧散して消えていく。一体カルデアに何が起きているのか、原因を究明する為に改めて管制室へ急いだ。

 

 管制室に辿り着くと既にレイシフトの準備がされていた。というより、既にレイシフトはされた後だった。何でも人理焼却の影響か、妙な別の異空間とも呼べる特異点に繋がってしまい、そこからあのノブノブと鳴く生き物がやって来たらしいのだ。

 

このままではカルデアはあの珍妙な生物に埋め尽くされてしまうという、フワフワしながら割りと深刻な事態に自分も現地へ向かう事になった。

 

立香ちゃんとマシュちゃんの二人に合流して原因の究明を急ぐべく、自分もレイシフトをした。

 

で、そのレイシフト先に辿り着いたのはいいんだけど………なんか、目の前で寺が燃え盛っていた。しかも向こうではやたら高笑いをしている長い黒髪の少女がバカスカと鉄砲を撃ちまくっていた。

 

デザイン的にあのノブノブなゆるキャラの元締めだろう、そう判断した自分は即座にかめはめ波をブッパした。勿論、立香ちゃんとマシュちゃんには当たらないように気を付けての一撃である。

 

その後、もう一体同じ個体のサーヴァントがいたので次いでに岩斬両斬波(チョップ)(弱)で無力化しておいた。すると、やはりあの黒髪ロングが元凶だったらしく、特異点の修復はすぐさま始まった。まさかの秒での解決、これなら午後の鍛練にも間に合うだろうと安心した自分を何故かドン引いた様子の立香ちゃん達の視線が突き刺さって痛かった。

 

 そしてこれは後から聞いた話だが、あの黒髪ロングの女の子、実は織田信長で、二人の傍らにいた女剣士は新撰組の沖田総司なのだという。

 

────日本でも有数の戦国大名が女の子とか………マジか、この様子だと上杉景虎とかも実は女の子だった。みたいな事にならないよな?

 

 

 

 

「しかし、羨ましいのう。よもや摩訶不思議アドベンチャーの代名詞を放てる者がいるとは、流石のワシも驚きを隠せんわ」

 

「まぁ、それなりに鍛えたからな。切欠は姉弟子の助言のおかげだけど、ここまで自在に撃てるのに結構苦労したんだぜ?」

 

「うぅむ、ワシもいつか手から波を出してみたいモノじゃのう。名付けて“ノブノブ波”! どうじゃ、良くね? これ良くね?」

 

「いや知らねぇよ、て言うかそう簡単に出せて堪るか」

 

「ぬわっはっはっは! 今に見ているがいい白河修司、両手からビームを出せるのがお主だけの専売特許になると思うなよ!」

 

「いや、別に専売特許にしているつもりは……え? もしかしてマジでめざすつもりなの?」

 

「うむ、いつかお主との親子かめはめ波が出来る日を楽しみにしておるぞ!」

 

「誰が親だ誰が」

 

 

 

 ───後に、とある夏のハワイにて二人のかめはめ波(必殺技)が一柱の邪神を退ける事になろうとは、この時誰も予想だに出来ていなかった。

 

出来てたまるか。

 

 

 

 

 





次回は他のサーヴァントの絡みとか書いてみたいですね。
アンデルセンとかアストルフォとか。

それでは次回もまた見てボッチノシ






修司の友人のor知人。

衛宮士郎。

修司の親友の一人であり世界を渡り歩く正義の味方、誰かの為に自身を擲つ自己犠牲の精神は未だに根付いているが、行動を起こす前に友人達に一言相談をしたり、助けを求めるなど正史とは異なる成長を遂げている。

また、彼自身も修司や慎二と同じ財団“U.L.K.”に所属している為、彼が動くときは友人二人も動くとされている。

最初は基本的に内戦や紛争地域での戦場に活躍の場として赴いていたが、修司の行ったとある方法にて世界から戦争の火種が激減し、現在は難民キャンプにて復興の手伝いや炊き出し、医療設備の設置など持ち前の技能を活かして多岐に渡る活躍をしている。

そんな彼の振る舞いを黄金の王は相変わらず偽善と切って捨てているが、最近では彼が助けた子供達の中には様々な分野で活躍できる能力を持った子供達が財団が立ち上げた学校にてメキメキと頭角を現してきた為、頭ごなしに否定出来なくなってきている。

可能な限りの命を救いたい。そんな借り物の理想を抱き続ける衛宮士郎は、今日も困っている人達の為にその力を奮い続けている。

「助けが入る時は遠慮なく声を掛けるからな、頼りにしてるぜ、親友」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。