『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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皆さんはどんなポテチが好きですか?
自分はサワークリームオニオンが最近のはまりです(笑)


その28 第二特異点

 

 

 ガリアを取り戻し、連合軍の本拠地でもある首都の位置も女神であるステンノからの情報提供により反撃の糸口を見付けた一行は、道中待ち構えていた連合軍の伏兵を撃退し無事に首都ローマへと凱旋することとなった。

 

そこからの展開は早く、連合軍の首都への位置を特定したネロとカルデアの一行は速やかに部隊を編成、後にアサシンである荊軻と飛将軍として名を知られるバーサーカーの呂布、そしてブーディカ達とも合流を果たし、ローマ軍は連合首都へと侵攻を開始した。

 

攻めるのは軍、対抗するのも軍、故に激突は避けられない。押し寄せる槍と矢の雨を掻い潜り、突き立てられる刃を粉砕しながら修司は周囲の連合の兵士達を薙ぎ倒す。

 

「いやぁ、本当に強いね君! お姉さんやる事なくて暇だわ! 最初はちょっと雑兵より強いかなって程度に思ってたけど、うん。普通にヤバイわ! 自分の目利きの無さに自信無くしそう!」

 

「はは、ブーディカさんみたいな人に誉められるのは悪い気はしないな。日頃から鍛練を欠かさずにしてきた甲斐があったってもんさ」

 

「でも、本当に私達のところに来て良かったの? 向こうにはマシュちゃんと立香ちゃんがいるし……正直、此方は損な役割かと思うんだけど……」

 

 連合首都に攻め入る際に、ローマ軍は大きく二つの役割を担う事になった。即ち、首都内部に乗り込む部隊と陽動部隊の二つである。分けられた二つの部隊の内の陽動部隊に修司は自ら進んで志願した。

 

陽動という事はそれだけ多くの敵の注目を集める必要があり、同時に危険度は跳ね上がる。いつ死んでもおかしくない危機的状況、それを自ら進んで挑む修司にブーディカは少しばかり心配になった。

 

白河修司は強い、ガリアでの一件でそれは誰が見ても明らかで、ブーディカから見ても頼もしく思える程に彼は強い。

 

しかし、人間である以上必ず何処かでボロが出る。無理が祟り肝心な所で戦えなくなったとなれば、それは修司にとって拭えない悔いとなってしまう。だから陽動には自分達を任せて少しは自分を顧みて欲しいというのがブーディカの本心だった。

 

特にこの陽動部隊には負担となる部分が幾つもある。絶え間なく襲い来る連合軍の兵士達を相手取るのも最たるモノだが、それ以上に厄介なのが味方の事だ。

 

「◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️ッ!!!」

 

「おぉ! 圧政者の輩達よ! 汝らを抱擁せん!!」

 

雄叫びが聞こえ、連合兵士がダース単位で吹っ飛んでいく。狂戦士である彼等に理性というブレーキ等存在しない、罠があろうが無かろうが、等しく吹き飛ばして蹂躙する。敵としても味方としても厄介極まるモノ、それが狂戦士(バーサーカー)だ。

 

そんな彼等と組むのは貧乏クジである事以外何者でもない、危険でもあり面倒でもある陽動部隊に自ら志願する修司にブーディカ は心配だった。

 

「心配は無用ッスよ、こう見えてペース配分は確りしてるつもりだし、何かあったら直ぐに退きますよ。それに、大変なのはブーディカさんも一緒でしょう?」

 

そう言ってニカッと笑う修司にブーディカは呆れながらも文句を言うことはしなかった。サーヴァントだろうが使い魔だろうが、仲間である以上修司は対等に接する姿勢を決して崩したりはしない。

 

危険なのは自分もブーディカも同じ、ならば遠慮し合うより互いに頼り合った方がよっぽど危険は少なくなるというもの、そんな持論を語る修司に遂に折れる事になったブーディカは「これだから男の子は」と呆れ半分に戦場を駆け抜ける修司の後を追うのだった。

 

 確かにブーディカの言う通り、陽動というのは危険を伴う役割を担っている。絶え間なく襲い来る敵兵士の刃にいつ襲われるか分からない緊張感に長時間晒されるのは誰だってキツいし大変なことだ。

 

だが、修司は知っている。陽動部隊よりも実は実働部隊である立香達の方が危険が一杯な事を。ローマの始祖? 宮廷魔術師であるレフ=ライノール? 違う。それらは脅威であっても恐れではない。

 

エリザベートとネロ、この二人の組み合わせは修司であっても恐怖で震えた。彼女達の声帯には悪魔が宿っている。比喩や誇張ではない、正真正銘彼女達の歌声は壊滅的で破滅的であった。

 

声量も発声も人外のそれであり、おまけに声質も凄まじい。音痴という言葉すら当てはまらない冒涜的な何か、あれをもう一度耳にする位なら修司は単身で全ての特異点に挑む道を選ぶ。そんな修司でも恐れる二人は現在首都内部に向かって乗り込んでいて其処には当然立香とマシュも同伴している。

 

前日、自ら陽動部隊に志願する修司を最も強い声で反対していた立香とマシュ、自分一人だけ逃げようとする修司を彼女達は必死で猛反対をし、その結果じゃんけんで決める事になった。そう、彼女達も知っているのだ。彼女達の歌声を側で耳にする位なら陽動部隊で敵兵士と戦った方がよっぽど安全なのだと。

 

激しい攻防の末、陽動部隊という枠を無事に勝ち取った修司に立香とマシュは最後まで恨み節を語っていたことは………ブーディカ達は知らなかった。

 

(いっそのこと、敵陣のど真ん中で歌った方が早く決着付きそうだよなぁ。まぁ、その時はこっちの被害もヤバそうだけど)

 

自分だけ陽動部隊(安全地帯)にいる所為かついついそんなゲスい事を考えてしまう。そもそも、あのおぞましい歌でもあの始祖なら受け入れてしまいそうな気がする。

 

そんな時、ふと違和感を感じた。陽動部隊の狂戦士達の部隊が突然別方向に進軍し始めたのだ。見れば彼等の先に魔獣らしき軍勢が見える。恐らくはアレの対処に向かったのだろう。

 

だがタイミングがおかしい、そう不思議に思った時修司の体は必然的に回避の動きを取った。その腕にブーディカを抱え、後ろに跳躍した瞬間いつぞや目にした巨大な土塊が土砂の様に降り注いできた。

 

「今のは……エルメロイの先生か!」

 

「Ⅱ世だ。あまり人の名前を間違えるのは感心しないぞ」

 

 着地し、他より強く感じる気配に目線を向けると、煙草を加えた黒髪ロングのロード・エルメロイⅡ世が修司を見据えていた。

 

「あの魔物、アンタがけしかけたのか。ワザワザ俺達を分断する為に」

 

「然り。と言ってもただの時間稼ぎだがな、サーヴァント相手にあの程度の魔物など取るに足らん。が、アイツの時間稼ぎくらいにはなるだろう」

 

アイツ、そう言われて見るとエルメロイⅡ世の隣には先日一緒にいた赤毛の少年の姿は無かった。恐らく彼は立香の………いや、ネロ皇帝の所へと向かっているのだろう。だがおかしい、それなら何故此処に彼がいるのだろう。ただ時間を稼ぐなら自分達に魔物やら連合兵士を差し向ければそれで済む筈なのに。

 

現に、たった一つの魔物の群れで自分達は分断されてしまっている。それはもう鮮やかな程に、翻弄するだけならエルメロイⅡ世が自ら出てくる必要はない。なのに何故ワザワザ自分の前に出てくるのか、目の前のロードの思惑が今一つ理解できないでいると、エルメロイⅡ世は眼鏡を上げて 煙を吐いた。

 

「なに、アイツが皇帝ネロに話があるように私にもお前に話がしたかっただけだ」

 

「アンタが……俺に?」

 

「あぁ、どういう訳か私にはこうなる前の記憶が保持してある。それも明確にハッキリとな」

 

「………? アンタの記憶」

 

 それは、つまり彼の生前という事に他ならないが………益々分からない。何故彼の生前の記憶が出てくるのか、彼の読めない思惑に修司は眉を寄せると。

 

「いいか、よく聞け白河修司。お前の………いや、私達の世界は(・・・・・)焼却された。この世界の人理焼却に巻き込まれたのだ」

 

「!」

 

「お前の事だ。何となくだがその事に気付いているのだろう? だが認めたくなかった。自分は唯の巻き込まれただけの余所者で、この世界を何とかすれば元の居場所に戻れると、そう安易に目を背けていた。違うか?」

 

その事実は修司も薄々気付いてはいた。この世界が焼却されたと同時に感じた体の奥底からの痛みと衝撃、それは自分がいた世界との繋がりが切れた事の証明だったのではないかと。

 

気付いてはいた。だが、自覚はしていなかった。自分の世界が、これまで積み上げ、成し遂げてきたモノが、ついでとばかりに消されたなんて………そんな事を考えると怒りで頭がどうにかなりそうだった。

 

だからこれ迄自分の世界について深く考えようとはしなかった。向こうには王様がいるから大丈夫、きっとなんとかなっていると。

 

だが、そんな修司の浅はかな考えをエルメロイⅡ世は否定の言葉で両断する。お前の世界は焼却されたと、この世界の人理焼却に巻き込まれ消滅したのだと、一切の遠慮なく言い切った。

 

「自覚しろ。そして受け入れろ。今のままではどうあってもお前は元の場所には戻れない、戻った所で………何もかもが手遅れなのだと。そして!」

 

「───!?」

 

「自らの不手際に嘆いて、此処で果て死ぬがいい!!」

 

 瞬間、修司の頭上から幾本もの巨大な柱が降り注いできた。これも見覚えがある、このままではいけないと修司は腕に抱えたブーディカに短く謝罪をすると、彼女を乱雑に投げ飛ばした。

 

彼女が地面に着地するのとエルメロイⅡ世の宝具が発動するのはほぼ同時だった。全身に襲い来る虚脱感と蝕まれる感覚、気付きながらも目を背けていた修司にエルメロイⅡ世の宝具は些か以上に堪えた。

 

………だが。

 

「どうした! こんなものか貴様の怒りは!? 時計塔に横槍を入れられた時の貴様はこの程度でどうにかなるタマだったか!?」

 

「それとも何か、貴様の信じる王の臣下はこの程度の障害に打ちのめされる程に軟弱か!」

 

「────!」

 

「貴様の王は、嘗ての私の信じる王を殺した。貴様が真に英雄王の臣下であるというのなら、その在り方を今此処で示して見せろ!!」

 

 こうして、誰よりも自分を信じている人からそんな風に言われたら……地に膝を着ける訳にもいかない。

 

修司の内にある怒りが消えていく。代わりに沸き起こるのは紅く、血の様に赤い深紅の炎。

 

瞬間、宝具である柱と天蓋が吹き飛んだ。その衝撃は辺りを蹂躙し、周囲の兵士達を敵味方関係なく吹き飛ばしていく。

 

砂塵の中から現れる修司にエルメロイⅡ世は息を呑み、そして笑った。そうだ。これが奴だと、自分の知る何処までも理不尽な白河修司なのだと、冷や汗を流しながら笑みを浮かべた。

 

「……ありがとな。エルメロイさん、アンタのお陰で漸く自覚できたよ。俺は巻き込まれただけの人間じゃない、正真正銘の当事者だって………だから」

 

“そこをどけ”

 

 一言、それどその言葉には強い意志の籠った一言だった。これで修司は本当の意味で人類最後のマスターとなった。これで少しはあの胸くそ悪い宮廷魔術師に報いる事が出来たと、エルメロイ………否、ウェイバー=ベルベットはほくそ笑む。

 

だが、それはそれとして………。

 

「退いて欲しいなら───退かしてみせろ!!」

 

エルメロイⅡ世が扇を奮う。吹き荒れる暴風を、襲い来る土塊の波を───その全てを修司は瞬きの内に粉砕して見せた。

 

「!?」

 

 見えなかった。気付けば元の状態となっていた修司が既に自身の懐に潜り込んでいて、既にその右拳には圧縮された気のエネルギーが集約されている。あぁ、痛そうだなぁ。なんて呑気に考える彼が次に耳にしたのは。

 

「────ありがとうな、エルメロイさん。アンタは確かに大した先生だよ」

 

小さく、それでいて確かに聞こえてきた礼の言葉にエルメロイⅡ世は呆れながらも笑って見せた。

 

「ふん、敵に礼を言うバカがどこにいる」

 

「ギャラクティカ───マグナム!!」

 

振り上げられた右のストレートは確かに彼を捉え、ロード・エルメロイⅡ世は空高く舞い上がり、光となって消えていった。

 

サーヴァントを一撃で倒して見せた修司に唖然となるのも束の間、続々と押し寄せてくる魔物の群れ、気付けば連合軍の兵士達は戦意を失くして敗走し、残されているのは自分達だけとなっていた。

 

「ブーディカさん」

 

「ん、どうしたの?」

 

「ここ、任せても良いですか?」

 

 振り向き、此処を任せたいと口にする修司の目は何処か吹っ切れたモノとなっていた。恐らくは次の自分の目的を決めたのだろう、此処へ来て初めて我が儘を口にする彼にブーディカは呆れながらも笑顔を浮かべて……。

 

「いいよ、行ってきな。でも、負けるんじゃないよ」

 

そう言って送り出すブーディカに修司もまたサムズアップで応え、砦を守る壁を難なく飛び越え、砦内部へと侵入する。

 

そんな修司の背中をブーディカは慈愛に満ちた目で見送り続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、砦の中を進むこと数分、途中で待ち受けていた魔物を瞬で片付けた修司が辿り着いた先には………。

 

「なっ、貴様、一体何処からゴンバッ!?

 

 偶々目の前にいたレフ=ライノールの顔面に今度は蹴りを叩き込んだ。

 

 

 

 

 




次回、魔神柱。(嘘)

ボッチ「本当の魔神がどんなものか………教えてやろうか?」



あとニ、三話で第二特異点を終わらせたい。

それでは次回もまた見てボッチノシ






修司の知人or友人その3

アルさん。

修司がフランスで初めて魔術師と戦った時に出会った女性。金髪で紅い瞳が特徴的な美人さん、修司が高校卒業後も外国に出張する度に時々出会って、その都度世間話に花を咲かせている。

修司の相棒ことグランゾンの存在を知る者の一人で、掌に乗せてもらったりしている。

尚、とあるイベントで彼女と修司はビーチバレーで勝負をする事になるのだが、その時ついはしゃいでしまい本気を出してしまい修司もこれに応えてしまう。

その時、落ちてくる月とかめはめ波の激突に巻き込まれたカレー好きのシスターと眼鏡を掛けた青年は二度と巻き込まれるものかと固く誓ったという。

因みに、勝負の結果は僅差で修司の勝利となる。お互いに健闘を称え合う二人の周囲にはでかいクレーターが幾つも出来上がっていたという。








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