『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回、独自解釈あり。


その25

I月@日

 

 火星で自分がISの制作を開始してから既に二週間が経過し、もうすぐ約束の1ヶ月が終わろうとしている。

 

自分の作ったISも殆ど完成したと言ってもいいだろう。度重なる試験運用と武装の運用、並びに予備として作った別動力との適合率も安定領域に入っているし、これまで予想外の不手際やトラブルには遭っていない。

 

ただ、追加武装制作と平行していたISコアの解析をしていた最中、自分はある事実と直面したのだ。

 

ISの中枢を担うとされているISコア、それを調べていく内に自分は何やら意志のようなモノと遭遇した。自分とは画面越しで、相手の姿は見えなかったが、確かに自分はコアの内に秘められた意志と遭遇したのだ。

 

モニターに映し出された“あなたはだれ?”という言葉、突然言葉を投げ掛けられた事に驚きながらも、自分はそのまま言葉を交わし、幾度か質問をしながら相手の素性を探った。

 

言葉遣いや態度、性格からして相手は女の子と分かり、しかも彼女はまだ自我が芽生えたばかりの幼子という事まで判明した。

 

何故ISのコアに彼女の様な人格を持った超高性能なAIが搭載されているのか、疑問は尽きなかったが、これらは彼女との対話を重ねていくにつれて幾つか解消する事が出来た。

 

彼女が言うにはどうやらコアの深層部分に住む存在で、自分達がISを起動する際に必要な存在なのだという。彼女達が見定めた者……即ち女性が自分達を扱うに相応しい存在だと認識し、ISを使える様にしているのだとか。ISに選ばれたのが何故女性なのか。自分の抱くその疑問は次の彼女の一言により大いに納得する事が出来た。

 

“男というモノが分からない”一見すれば「なんだそりゃ」と思われるかもしれないが、彼女達の事を考えれば強ち否定的に思えない話だった。

 

ISの中枢を担う最重要機密部品“コア”467という限られた数の中に眠る人格は全て彼女と同じ女性らしく、しかもその全てが男という生き物について理解出来ていないという。

 

故に、自分達の知らない男性よりも自分達と同じ女性の方が理解はし易く、適合もまたし易いのだという。分かり易く砕けた言い方をしてしまえば、要するにISのコアというのは言うなれば女子校なのだ。

 

コアネットワークで形成され、ISという校舎で作られた女子校という乙女の花園、男子禁制を掲げる女子校では当然男性なんて入っていける訳がない。

 

 以前にこちゃんの所の学校に忘れ物を届ける為に一度女子校へ赴いた事があるが……そりゃあもう肩身の狭い思いをしたものだ。物珍しさに常に周りから好奇の視線を受けていたし、金髪の外国人女子生徒からは職質紛いな事もされたし、トドメに学園の理事長さんに事前連絡もせずに自分が来た事で視線だけとはいえ怪しい人間ではないか疑われた事もあった。散々不審者扱いされる中、唯一癒されたのはあの学校で飼育されていたアルパカなのだが……まぁその話は今はどうでも良い事だ。

 

 兎も角、要点だけ纏めれば彼女達はこれまで男性という存在と接点がなかった為に彼女達は男性という生き物を知らない存在として認識し、戸惑い、拒否をし続けてきたのだという。では何故一夏君だけはISに適合出来たのか、自分の次なる質問に彼女はこれまた簡潔に説明した。

 

“お姉さまの適合者の弟さんだから”彼女の言うお姉さまというのは嘗て白騎士事件の際に出てきたISのコアに眠る人格AIの事であり、現在一夏君が駆る白式にも同じコアが適用されているらしいのだ。

 

本来、ISのコアというモノは操縦者が引退、もしくは使用されなくなった時に初期化され、次の持ち主に合わせるよう調整を促すらしいのだが、どうやらその白騎士のコアは完全には初期化されておらず、ある程度残された形で存在しているのだとか。

 

その為に白騎士のコアに眠る人格AIは前の適合者の影響を受け、一夏君の事を良く知る存在の一人として一夏君を容認し、ISに適合する事が出来たのだとか。

 

ISというのは操縦者と一心同体の関係でパートナーの様なものだと山田先生は言っていたっけ。その言葉を信じるならば、白騎士のコアも織斑先生と共にいることで成長し、独自に進化していった事になる。

 

そして何らかの強い想いで初期化から逃れた彼女は一夏君の白式のコアに使用され、織斑先生の血を引いた彼を新たな主として認め、今も稼働しているという。

 

これならば何故一夏君が現役時代の織斑先生の単一能力を使用出来るのかもある程度理解する事が出来る。

 

白騎士事件、その当事者である白騎士が織斑先生であった事も驚きだが……今は論ずる所はそこではないので、取り敢えず横に置いておく事にする。

 

で、だ。その一夏君という初めての男性適合者が現れた事により外社会だけでなく他のコアネットワークを通して内側に存在している人格AIまで波紋が広がり、未だ動揺が収まっていないのだという。

 

まぁ気持ちは分かる。幾ら自分達のお姉さまが選んだ人間とはいえ相手は男。人格も若く、未だ自我が幼い彼女達からすればどう対処すればいいか分からないのも頷ける。

 

言うなれば天子ちゃんやナナリーちゃんの体に見ず知らずの野郎が乗る様なモノだ。そんな事中華連邦の紳士達やルルーシュ君が許す筈もないし、勿論自分も許しはしない。そんなの見かけた瞬間速攻縮退砲ブッパである。

 

……まぁ、少々表現は間違っているかもしれないが、大体そんな所だろう。彼女達もそうだが今の世界はまだまだ危うい所もあるし、問題も山積みとなっている。それらが解消するまではもう暫く様子を見た方がいいかもしれない。

 

しかし残念だ。もしコアの解析が上手く行って男性でも扱える様になれば女尊男卑に染まった今の世の中を変える切っ掛けになれたかもしれないのだが……どうやら事はそう上手く運べないようだ。

 

相手が幼い女の子であるならば尚の事慎重に対処しなくてはならない。一応強制的に従える術はないことも無いが、それでは余りにも外道が過ぎるだろう。というか、そんな事をすれば次元の壁を越えて中華連邦の紳士達が殺しに来そうである。

 

彼女達もどうやら完全に否定的ではないみたいだし、もう少し静観してもいいのかもしれない。と、そこでコアとの接続を解除しようとした時、彼女は言った。

 

“自分を、貴方のモノにしてもいいよ”と。

 

……どうやら、彼女は自分の作っているISのコアになってくれるというらしい。しかも、自分に適合する様に調整もしてくれるとの事。

 

素直に有り難いし、これがネットワークの向こうにいるAI達に対して男性も受け入れる切っ掛けにもなりそうだし、嬉しい事には違いないのだが……。

 

彼女が言うと、何だかもの凄く嫌な感じがする。中華連邦的な意味で。

 

 ま、まぁおかげで自分の作るISもおかげで本当の意味で完成する事になるだろうし、彼女もネットワークを通じて他の娘達に男性の事を理解してもらおうとしている。互いに築けた協力関係、彼女の事も含めて今後も大切にしていこうと思う。

 

やっぱり、何事も対話って必要だよね。

 

 

 

I月◇日

 

 約束の1ヶ月まで残り僅か、期限が迫ってきた中、自分の制作するISが遂に完成した。人格AIのA子ちゃん(仮)の協力もあって自分もISを使用する事が可能となり、武装の方もISコアとの適合率が非常に良く、各武装も問題なく使用する事が出来た。

 

お陰で武装の量子変換機能も備わったし、拡張領域も幾分か余裕を残す事も出来た。完成度として問題はないが、ここでもう一つ自分なりの拘りを付け足したいと思う。

 

ISは元々は宇宙開発を目的に作られたモノ、宇宙での作業は困難を極めるだろうし、喩え絶対防御があっても絶対に安全とは言えない環境だ。

 

シールドエネルギーも底をつけば行動に大きく支障を来す。その為に他者と連絡を取り合えるコアネットワークが存在しているのだろうが、それだけでは足りないと思い、自分はISコアとは別に動力パーツを取り付けて緊急時の動力源を付け足す事にした。

 

その動力源となるのがGNドライブ……の、劣化版“擬似太陽炉”こと擬似GNドライブだ。赤い粒子が放出され、ソレスタルビーイングの太陽炉とは似て異なる性質の素粒子。

 

緊急用の動力源として使用されるそれは扱い次第では単体で大気圏突破も可能となる。加えて本物の太陽炉とは異なり時間もさほど必要とせず生産性が高い代物だ。

 

ただ、多元世界にいた頃から分かっているがこの擬似太陽炉には危険物質が検出されており、破界事変の頃には人体に有害とされている。再世戦争辺りからはその問題も改善されてきて人体への影響も少なくなってきているとされているが……やはり、人間に対し有毒な事には変わりない。

 

そこで、自分がこの擬似太陽炉に手を加え、あくまで機動動力として使用する事にした。擬似太陽炉の使用中はバスターライフルなどの火器は使用出来なくなるが、変わりにサドンインパクトを始めとした接近戦の武装は変わりなく使えるので、ある程度のカバーは出来るだろう。

 

本当ならスザク君のランスロットに使用されるユグドラシルドライブとかもっと安全性の高い動力源を使用したかったが……アレってサクラダイト鉱石じゃないと精製できないからなぁ。アレって地球産の鉱石だし、今自分がいるのは火星だから精製するのは難しい。

 

GNドライブを搭載した機体が発動させる“あのシステム”に憧れて作った代物だが……やはり今の自分では再現は難しいようで、僅かな合間しか作動させる事が出来なかった。武装や火器管制は再現できても、こういった動力システムはまだまだ見直す点が多いなぁ。

 

 シュウ博士にも参考として見て貰ったが、送られた言葉は“及第点”の一言。武器や機体との連動性は見事だが、やはり自分が懸念した通り動力システム辺りが未熟という指摘を受けた。

 

博士は及第点と言ったが、実際はギリギリ赤点を免れた位だろう。マシンというモノは心臓部分である動力源を完璧に仕上げてこそ初めて安全に動かせるモノ、誰だってエンジンに不具合のある乗り物になんて乗りたくはないだろう。つまりはそういう事である。

 

あの早乙女博士や兜博士もゲッター線や光子力エネルギーという未知のエネルギーを動力源としてあのスーパーロボットを作り上げたのだ。それまでに至る道のりは生半可なものではないだろう。

 

 期限の最終日までまだまだ時間はあるし、ギリギリまで調整を続けていこうと思う。最近はオートマトンも自分の手助けをしてくれているし、A子ちゃん(仮)も協力的だ。最後まで望みを捨てずに頑張ろうと思う。

 

そう言えば、もうすぐIS学園では専用機持ち同士によるタッグマッチ戦が開催される頃だよなぁ。三学年全員が参加する予定みたいだし、当然簪ちゃんも参加するのだろう。

 

そうなればお姉さんである生徒会長とも戦う事もあり得るし……あぁ、やっぱり生で見てみたいなぁ。二人の戦い。

 

山田先生には一応録画を頼んでおいたけど、やはりこういうのは生で観戦したい所である。簪ちゃんも最近専用機の扱いに慣れてきたみたいだけど相手はロシア代表、そう簡単にはいかないだろう。

 

なんて、二人が戦う事を前提に考えているけど、まさかそうそうぶつかる訳ないよね。お姉さんも生徒会長の仕事が忙しいと思うし、運営側として働かなきゃいけないだろうから、こういった催しモノには参加できないだろうけど……期待する位はいいよね。

 

 そして最後に。A子ちゃん(仮)のコアにもちゃんと対策として防衛プログラムを投入する事にした。ファイヤーウォールとウィルスを撃滅するワクチン入り、ISに負荷の掛からないよう思考を巡らせて作った何気に自慢の一品である。

 

A子ちゃん(仮)も気にならないと言っていたし、オートマトンの皆にも念の為に入力しておいた。

 

武装といいISといい、そしてプログラムといい、前々から思っていたけど、自分ってもしかして───物作りに嵌まるタイプだったのかな?

 

 




Q主人公は元の世界でどんな人間関係持ってたの?
Aそんな事よりクロスアンジュ見ようぜ!

クロスアンジュの天使は個人的にヴィヴィアン。
若しくはモモカ。
けれど癒し担当はロザリー。

最近のクロスアンジュが面白すぎて一週間が長く感じる作者でした。(笑)

次回もまた見てボッチノシ

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