『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

222 / 417
済まない。無限列車編を見て堪らずに書いてしまった。

本当に済まない。

多分後一、二話位しか続かないので多目に見てください。


鬼滅の刃編
その1


 

 

 ────その日は雪が降る寒い夜だった。心も体も凍ってしまいそうな冷たい夜、この日私は………怪物を見た。

 

鬼。それは私達鬼殺隊が命を賭して倒さねばならない化生達の名称で、私達姉妹から父と母を奪った化物達。

 

 けれど、そんな鬼と姉である胡蝶カナエは分かり合えるのだと言った。鬼も元は人間、憐れな存在であれど此方が心を開けばきっと分かり合えると、私にだけそんな理想論を語った。

 

姉は、優しい人だ。両親を殺した鬼を許そうとしている。鬼を許すことで未来を生きようとしている………私には 、理解は出来ても到底納得出来ない生き方だった。

 

そんなある日、姉は鬼に襲われた。鬼殺隊の中でも最強とされる柱である姉、そんな姉が雪の中倒れていた。

 

まだ夜明け前の時間、暗闇の中で走る私が次に目にしたのは────強大な力を持っていると思われる鬼が何者かの手によって頚を撥ね飛ばされる瞬間だった。

 

鬼の目には上弦弐と刻まれていた。

 

 鼓動が速くなる。上弦の鬼が容易く屠られる場面もそうだが、格好からして目の前の人間───人間? はどう見ても鬼殺隊の人間ではない。白衣の様な外套を身に纏い、背丈は煉獄さんと同じか少し大きい程度だが、その体格は大きく男性のそれだ。一体どんな輩なのか気になる一方で私は倒れている姉に駆け寄った。

 

幸いな事に姉は気絶をしているだけだった。外傷こそ目立つが、呼吸も確りとしている。無事な姉と灰となって消えていく鬼に安堵するが白衣の輩の顔を見て私は再び凍り付いた。

 

 その人物は仮面で素顔を隠していた。富岡さんが昔付けていたという厄除けの狐の仮面とは違う異質で何処かカラクリ染みた面、その隙間から見える氷よりも冷たい眼に私が全身が硬直した。圧倒的威圧感、鬼とはまるで別次元の怪物に私は一瞬呼吸すら忘れてしまっていた。

 

が、それも束の間。私を見ると仮面の男は一瞬だけ目を点にして次の瞬間にはその冷たい雰囲気を一瞬にして暖かいものに変えていた。

 

「えっと………もしかして、そこの女性と関係のある方? なら安心してくれ、彼女は無事だ。一時はさっきの奴に肺を凍らされてしまったが、それは此方の方で処置しといた。直に目も覚ます」

 

「え、あ………その………」

 

「あぁ、けれどこの寒空だ。雪も降っているし、このままでは君も彼女も風邪を引いてしまう。これを使うといい。擦れば次第に暖かくなる」

 

 そう言いながら男から手渡された白い手のひらに収まるほどの小さな袋を幾つも渡されてきた。半分呆然としていた私は言われた通りに袋を擦ると、次第に熱を帯び始めた袋に目を丸くした。

 

「───あれ? もしかして今ってカイロってまだない時代? やっべ、やっちまったかな」

 

ボソボソと仮面の男は何かを呟いているが、今はそれよりも姉の方に集中したい。だが、今の私には懐疑の言葉よりも口にするべき台詞がある。状況的に見て姉は目の前の仮面の男に命を救われた。それも、上弦の鬼という強大な化物を相手に、戦いに守り、討ち果たしてくれた。

 

「あ、あの、姉を助けて───「貴様、そこで何をしている!」」

 

せめてお礼の一言でも口にしないとバチが当たる。そう思うも、横からやって来たこの町の警羅隊の人達によって阻まれてしまう。

 

「き、貴様、何故刀を持っている!? 廃刀令が敷かれて久しいこのご時世に! しかもそこの女性、服が乱れているではないか!? お、おのれぇぇ不埒な悪漢め! 許さんぞ!」

 

「え」

 

 警羅隊の人に言われて良く見れば、仮面の男は見るからに怪しく、その手には姉が使用している日輪刀が握られている。夜明け前とはいえ暗闇の時間帯、そんな中女性二人前に抜き身の刀を手にしている仮面の男は………悲しいほどに不審者そのものだった。

 

仮面の男の方も今の自分を客観的に理解出来たのか、自分の手元を見て固まってしまっている。

 

「ち、ちが………違うんですぅぅぅぅ!」

 

 カシャンと日輪刀を落とした仮面の男は誤解だと叫びながら立ち去ってしまった。警羅隊の人達が次々と応援を呼んで後を追ったが、男は鬼殺隊の私から見ても異常な程に健脚で瞬く間に私達の視界から消えていった。

 

その後、保護された私達は無事に鬼殺隊の本拠地に戻る事になるのだが、その途中町の至る所に仮面の男の手配書が貼られているのを見て、私は少しばかりの後悔と複雑な気持ちを抱くことになった。

 

「ん? どうしたのしのぶ? 私の顔に何か付いてる?」

 

「んーん、何でも。それよりも速くお館様にご報告しなくちゃね。上弦の鬼が倒された時の事、詳しくご説明しないと」

 

「そうね。仮面の人にも今度お礼言わなくちゃいけないし」

 

───姉は、昨日の事を覚えてはいなかった。上弦の鬼にやられて倒れた所までは辛うじて覚えているが、それ以降はあまりハッキリと覚えてはいないらしい。

 

微かに覚えているのは自分があの仮面の男に日輪刀を託した事、鬼を倒して欲しいと叫んだらしい事、それ以外は………本当に覚えていないらしい。

 

まぁ無理もない。上弦の鬼、それも弐という化物とやりあったのだ。幾ら柱の姉でも深傷を負っては意識を保っていられる余裕もなかったのだろう。

 

 この後、私達はきっと柱合会議に召集されることになる。上弦の鬼の討伐、それが鬼殺隊とは関わりのない外部の人間によるものだと知られれば、きっと柱の皆も驚く事だろう。

 

一体、あの仮面の男は何者だったのか。分からないことは多々あるが。

 

「あ、ねぇねぇしのぶ。あの簪、私がしてるのと似てる! カナヲへのお土産に買っていきましょ!」

 

「もう、姉さんてば」

 

今は、変わることのない姉の笑顔を失わずに済んだことに安堵しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×月◯日

 

 自分がこの世界に訪れて早数日。この頃の時代の生活にも慣れ、衣服も新調した自分は旅商人を自称し、各地を転々とする生活を続けている。

 

この世界に初めて訪れた時は真っ暗な夜で、しかも目の前に派手目な男が倒れている若い女性に襲っているからすわ性犯罪かと思わい、つい反射的に男を蹴飛ばしてしまった事が始まりだった。

 

 男は当時蒼のカリスマスタイルだった自分の事を頭のおかしいキチ◯イ呼びをしてきたり、変な扇を使って此方に攻撃を仕掛けてくる。明確な殺意を感じ取った自分はやむを得ず応戦するのだが、この男やたらと此方を煽ってくるのだ。

 

やれ人間の癖に馬鹿力だの、肺を凍らせるほどの冷気に晒されて何で生きているだの、挙句の果てには化物呼ばわり、これらをひきつった笑みで言うものだからまぁ本当に腹立つこと。

 

 倒れている女の子に次元力を用いた治癒を施していたから大丈夫だけど、この時は雪が降っていたし、女の子は暫く動けそうにないから早いところこの男をどうにかしたかった。

 

でも幾ら退けと言っても男は聞かなかった。名前は………どう、どう、どうまんだっけ? は、女の子を食べるまでは帰れないと抜かしやがる。

 

しかもこの男、どうやらこう言う事をするのは今回が初めてではないらしい。攻防の最中何人もの女子供を殺しては食ったと自慢気に語るどうまん(暫定)に俺もまたじわじわと殺意を抱き始めていた。

 

 手っ取り早く消してもいいが、町中では流石に相棒を呼んだり出来ないし、かといって本気で技を繰り出す訳には行かない。いっそのことワームホールで遠い海にでも飛ばしてやろうかと思案したとき、後ろから意識を取り戻した女性から声と一本の刀を投げ掛けられた。

 

曰く、目の前の男は鬼でこれまで多くの人の命を奪ってきた悪鬼だと、その刀を使って頚を撥ねれば倒せるのだと、涙を流し、血反吐を吐きそうな勢いで自分に訴えてきた。

 

 その後、力を使い果たし再び意識を失った女の子にどうまんは宣った。「待っててね、すぐに君を食べてあげるから」と、それを聞いて俺は確信した。あの女の子の叫びは全てが真実でこの男は彼女を殺そうとしている。

 

正直、俺は迷った。幾ら相手が異常性犯罪者とはいえ初対面の相手を殺しに掛かっていいものかと。自分は文字通りこの世界に来たばかりの新参者、無闇に力を振りかざす、無遠慮な真似は憚るべきなのだとも思った。

 

でも、あの可憐な女の子がこんな刀を握って戦っている。必死な様子で自分に訴えてきた。なら、自分がこの戦いに介入する理由は充分にある。

 

 幸い刀剣の類いの扱いは慣れてはいなくとも心得てはいる。刀を両手に握って構える自分にどうまんは口許を歪めて挑発した。

 

確かに俺は防戦一方だった。どうまんが扱う氷の術を捌いてばかりで攻撃をしようとしなかった。それなのにいきなり刀を手にして構える自分が、奴には余程愉快に見えたのだろう。

 

 故に、奴の頚を撥ねるのは簡単だった。奴が瞬きをした瞬間、自分は奴の懐に潜り込み刀を横に一閃に振るっただけ。それだけで全てが終わった。

 

男は自分が斬られたことに気付いてもいなかったらしい。目を丸くし、言葉を失っている奴が徐々に灰になって消えていく様子を見ていると、ふと背後に気配を感じた。

 

 振り返ると、そこにもう一人の女の子が先の女の子を抱えて呆然としていた。顔付きから倒れている方の子の肉親の様だ。多分………妹さんかな? 彼女にお姉さんの無事を伝えて偶然持っていたホッカイロを渡すとタイミング悪く(良く?)警察の人───いや、警羅隊だっけ?────の人達がやってきた。

 

彼等は自分を見るや否や犯罪者と断定、情け容赦なく追っかけてきた。いや、分かるよ? 夜更けに女の子二人を前に刀を手にした仮面の男とか、普通に考えれば一発で通報確実な案件である。誰がどう見てもギルティ、誰でもそうするし俺でもそうする。

 

 故に自分は逃げた。それはもう形振り構わず。アレかな、どうまんという性犯罪者を倒した事で自分はそうなりたくないという強迫観念みたいなのに突き動かされたのかね? 正直言えば、逃げたのは不味かったかも知れない。素直に白状すれば、白い目で見られても罪には課せられないかも知れないし。

 

でも、今になってはそれも無理だろうなぁ。なんか蒼のカリスマの俺、結構世間では有名人らしいし。“刀を振り回す仮面の変態”それがこの世界での蒼のカリスマの認識である。

 

何故だろう。冬の青空が目に染みるや。

 

 

 

α月δ日

 

 今日は、人の暖かさに触れました。

 

この世界の生活にも大分慣れてきた今日この頃、自分はこの日とある家族の方々に助けてもらいました。その人たちは炭を売って生計を成り立たせている人達で子供が多くいる大家族、中でも長男の竈門炭治郎君は凄い確りもので、父を早くに亡くしているのにも関わらず、健気に家族を守る優しい子供だ。

 

奥さんの竈門葵枝さんも、炭治郎君含めた六人の子供達を支えながら懸命に子育てに励んでいる。そんな大家族と知り合えたのは自分が雪山で迷子になっていた所から始まる。

 

 最近では変態仮面騒動も沈静化してきたものの、地方では未だ話題になることが多くあり、居心地の悪さからついつい人里から離れるようになってしまったのだ。

 

そんな自分が何処かの洞窟で大人しく過ごそうかと立ち寄った山に入ると、一人の少年と出会った。それが竈門炭治郎君だったのだ。

 

 山道をさ迷う俺を何かと勘違いしたのか、必死に家に来てくださいと迫る炭治郎君、俺も最初は遠慮しようとしたのだけど、意外にもこの炭治郎君は頑固かつ強情な子で放っておけませんと半ば強引に彼の家へと招かれてしまった。

 

ご家族の皆さんにも最初は驚かれたが、炭治郎君が奥さんに何か耳打ちをすると、葵枝さんはハッと表情を強張らせ、次の瞬間には滅茶苦茶優しい笑顔を向けられた。

 

 ………なんだろう。凄い勘違いをされている気がする。

 

その後、葵枝さんの家事の手伝いや子供たちの相手をしている内に竈門家に受け入れられた自分は今日、この家の厄介になる事になった。流石に亡くなった旦那さんの部屋で眠るのは憚れたが………かといって子供たちと同じところで眠っては却って子供たちの迷惑になるし、何より禰豆子ちゃんという年頃の女の子もいる。

 

 旦那さんのお布団に入る際は土下座をした自分です。いや、竈門家の人達、優し過ぎィッ!!

 

 

 

α月Ω日

 

 今日はお世話になった竈門の人達に恩を返す為に炭治郎君の仕事を手伝うことになった。

 

炭治郎君のお仕事は炭売り。その始まりは木を切るところから始まる。最初は遠慮していた炭治郎君を大人の理屈で説き伏せ、山へと登った自分達は幾つかの木を切りそれらを炭に変えた。

 

その途中、木を手刀で切り倒していると炭治郎君から凄い顔で見られていた。まぁ、一般の人と比べて鍛えている自分としては出来て当たり前だが、炭治郎君からすれば見慣れないモノの様だ。君も鍛えれば出来るようになるよと言うと、再び炭治郎君は驚きの顔をしてそれが少し面白かったのは内緒。

 

 その後、炭治郎君は炭を売りに下の人里へと向かい自分は此方の方で待機、本当は自分も付いていきたかったけど、余所者の自分がいては却って仕事の邪魔をすると思い、遊んでと迫ってくる子供達の相手をしながら葵枝さんの手伝いをさせてもらっている。

 

そして現在、子供達を寝かし付けて炭治郎君の帰りを待っているのだけど………遅い。辺りはもう真っ暗だし、雪も降っている。葵枝さんは遅くなるときは近所の人に泊めてもらう様に言ってあるから大丈夫だと言っているが───心配だ。

 

葵枝さんの言葉を疑うつもりはないが、もう少し待ってみて来なかったら探しに行ってみようと思う。子供達もそろそろ寝付く頃合いだ。それを見計らって───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、帰ってきたかな?」

 

 遠くから聞こえてきた雪を踏み締める足音に竈門家の長男が帰ってきたんだと思い込んだシュウジは徐に立ち上がる。

 

「あ、修司さん。私が出ますよ」

 

「いえいえ、ここは俺に任せて下さい。葵枝さんは明日も早いのですから、どうか休んでて下さい」

 

日々の家事、子供たちの面倒を見ている葵枝を労ろうとやんわりと断るシュウジはドンドン近くなる気配に合わせて玄関の扉を静かに開ける。

 

 扉の先にいたのは炭治郎………ではなく、この時代では都心位にしか未だ馴染んでいない西洋の服を着た男性が立っていた。

 

帽子で顔は良く見えないが、端正な顔立ちの男。この季節にしてはやたらと薄着だなとシュウジが怪しんだ────瞬間。

 

「邪魔だ」

 

 振り抜いた男の裏拳がシュウジの顔面を捉えた。響き渡る轟音、爆発にも似た衝撃が竈門家の玄関を吹き飛ばす。

 

人一人を殺すには充分過ぎる一撃、余計な手間をと男が顔をしかめて。

 

「なんだお前、強盗か?」

 

「!?!?」

 

 その表情を驚愕に染め上げる。

 

「こんな夜更けに騒ぎを起こすんじゃねぇよ」

 

「き、きさ───」

 

「あっちいってろ」

 

 何かを言い掛ける男を無視して、シュウジは蹴りで男を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 




Q.この時の洋服の男の心境は?
A.サイタマにチョップしたガロウの様な気持ち。

無限列車編、控えめにいって最高でした。

また見に行きたいです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。