『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回で導入編は終了。


その2

 

○月□日

 

 IS学園。篠ノ之束氏が開発したマルチフォーム・スーツ、【インフィニット・ストラトス】を扱う女性を育てる為に日本に設立された特別施設。

 

ISを開発した束氏が日本人という事もあり、日本にこの学園を置き、世界中からIS操縦に適性を持った女性が集まるこのIS学園。そんな有名な所に今日、自分は来ることとなった。

 

自分が世話になった公園からでも見れるIS学園。世界中の女性適性者が集まるだけあってその規模は大きく、外観も近未来を思わせる造りとなっていた。

 

公園で待ち合わせていた十蔵さんの案内の下でIS学園に入らせて貰ったのだが、中の方も最新の設備という感じで普通の学校とは違うものだと印象を受けた。

 

 紹介させて貰うと言う十蔵さんの言葉に従いながら学園の敷地内を歩くこと数分、やってきたのは職員室……ではなく、用務員の人が使用しているとされる宿直室だった。

 

普通は夜勤の教員が利用される部屋なのだが、この学園が全寮制な事と教員も多くが寮を利用している事から、この学園の宿直室はあまり使われていないという。

 

そこで行われたのは……十蔵さんとの簡単な面接、しかも面接といっても「君はここで働く気があるかな?」という質問だけだった。

 

質問の答えは勿論肯定の一言、昨日一晩考えて決めていた答えだった為、十蔵さんの質問には即答で答えられた。それが良かったのか十蔵さんはにんまりと笑顔を向け、自分がここIS学園で働く事を許してくれた。

 

 そんな訳で自分はここで働く事になったのだが……正直不安は尽きない。何せ女性にしか扱えないIS専門の学園だ。構成された教員も殆ど女性だと聞く。

 

グランゾンを通してこの学園を調べた時もその事は知っていたのだが、まさか自分がその学園に関わるとは思っても見なかった。

 

また昨日みたいに見ず知らずの女性からカツアゲされたりするのかなぁ……いや、会うなりいきなり銃を突きつけたり殺気を飛ばしてくる顔見知りの女性もいたりするのだから、さほど警戒する必要はないのか?

 

ともあれ、明日から早速自分も仕事に取り掛かるのだ。十蔵さんもフォローするから頑張りましょうと言ってくれてるし、自分も頑張ろうと思う。

 

……ところで、十蔵さんって何時自分を学園長や学園のお偉い方に話を通してくれたのだろうか? 話を聞く限りではそんな事聞いた事ないのだが……もしかして、十蔵さんてば結構凄い人だったりするのかな?

 

────追記。グランゾンはこの世界でも異質な存在なので、人に悟られない為にも今後はワームホールの使用は控えようと思う。

 

 

 

○月▼日

 

 仕事の初日。与えられた部屋で十分な睡眠を取って英気を養った自分は十蔵さんの指示の下、作業着に着替え、早速仕事に取り掛かる事になった。

 

十蔵さんと同じ用務員となった自分の仕事は主に学園の整備だ。

 

整備といっても学園に植えられた草木を管理したり、学園にどこか不具合がないか見回ったり、学園の清潔感を保つためにこまめに掃除をしたりする等々、雑用がメインの仕事だった。

 

その中で大きな仕事に分類されるのが割れた窓の修繕や電気部品の交換、磨耗した部活動品の新たな発注等である。どれも自分にでも出来る仕事ばかりなので十蔵さんの手はそんなに煩わせてはいないと思う。

 

そしてその後、困った事があれば遠慮なく聞いて欲しいという十蔵さんの有り難いお言葉を最後に、自分は学園の清掃を開始した。

 

流石に女子トイレに入るのは抵抗があるのでまずは廊下から。最初は広い廊下を相手に四苦八苦をしながらも、徐々にやり方に慣れ、頑張れば頑張るほど綺麗になっていく学園に少しばかり楽しさを見出してきた頃、彼女と遭遇した。

 

“織斑千冬”このIS学園の教員の一人である彼女は最初こそ自分を不審者かと問い詰めて来たが、自分が新しく入ってきた用務員だと説明すると、それは済まなかったと謝罪し、これから宜しくと挨拶をしてきてくれた。

 

どうやら十蔵さんが事前に他の教員に説明していたらしく、自分の事はすんなりと信用して貰えた。広い校舎だから連絡が行き届いていない所もあるのではないかと内心危惧していたが、どうやらそんな心配は無用らしい。

 

ただ、織斑先生が言うにはまさか自分より年下の男性が来るとは思ってなかった様で不審者と勘違いしてしまったらしい。

 

まぁ、それはそうだろうなと思う。学校の用務員って自分も年輩の方の軽い仕事ってイメージがあるし、実際若造である自分が掃除用具片手に学園を徘徊していたら、教員としては不審に思えるだろう。

 

織斑先生の謝罪を受け入れ、気にしないで下さいと返し、その後も自分は学園の清掃を続けた。

 

……というか、織斑先生ってやっぱりアレだよね。初代ブリュンヒルデのあの織斑千冬だよね。まさかこの世界の有名人がこの学園で教師をしているとは驚きだ。

 

いや、意外とそうでもないのか? IS操縦者で初代ブリュンヒルデの彼女が後の若者達を育てる為にこの学園で教鞭を執っていると考えれば、別に不思議に思わない。

 

 そしてその後、織斑先生と別れた後も清掃を続け、学園を見回った自分は宿直室へと戻り十蔵さんに仕事完了の旨を伝えた。

 

十蔵さんも自分の仕事を見て特に問題無しと見なしたのか、これからも宜しくとだけ言われ、特に注意される事もなかった。

 

ただ、近い内にIS学園の入学式が行われるので、その時は忙しくなるよと言われたが、自分としてはやりがいのある仕事が出来るのでさほど問題視はしていない。

 

……しかし入学式か~。自分もそんな時期があったなとこの歳になってしみじみ思ってしまう。

 

それにしても織斑先生ってスーツの似合う女性だよな。ザ・出来る女って感じ。

 

シオさんとは少しばかりベクトルが違うが……やはり出来る人ってのは雰囲気からして違うものなのだな。

 

ただ、最初気配を消して近付いてきた時は戸惑った。なんであんなやり方で近付いてきたんだろ? しかもワザワザ見つかりやすい方法で。

 

……もしかして、織斑先生なりの歓迎の挨拶なのかな? 何だか不器用そうな人だったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入学式を間近に控えた頃、浮かれ立つ学園内の生徒達の気を引き締める為、私は日課の学園内の見回りをしていた。

 

気持ちは分かる。ISという兵器を扱う以上日々の訓練や日常でも生徒とは厳しく接していかなければならない。

 

入学式はその数少ない息抜きの日、多少浮かれるのは仕方がないが、それでもIS操縦士を目指す以上一定の自覚は持たせなくてはならない。

 

その意味を込めて学園内の見回りを行っていたのだが……この日、奇妙な輩と出会った。

 

白河修司。廊下で掃除用具を片手に学内を彷徨いていた彼を、私は最初不審者として対処しようかと考えた。

 

IS学園は様々な国の思惑や陰謀が渦巻く厄介な所だ。条約の規定では如何なる干渉も禁じられているとされているが、その裏をかいて様々なちょっかいを出してくる輩も少なくはない。

 

目の前の男もそんな一人かと思った私は、いつでも男を取り押さえられるよう身構えながら近付いた。出来るだけ気配を消し、間合いを詰められる距離まで迫り、一瞬で意識を刈り取ろうとした───その時。

 

『あれ? アナタは……もしかしてここの教員の方ですか?』

 

 ───心臓が、飛び上がった。今は教師として教鞭を取り、実戦とは離れた日々を過ごしてきた私だが、まさかここまであっさりと見つけられるとは思わず、私は内心冷や汗を流した。

 

ついで理解する。その時の私は奴に気取られ、無様に隙を晒していた事に。手練れの相手ならばこの隙を突いて一気に仕掛けてくるかと思われたが……目の前の男からはそんな素振りは見えず、不思議そうに首を傾げてしまうだけだった。

 

 私の気配を気取ったのは単なる偶然か? 得体の知れない男に内心で警戒を強め、少し険のある態度で問い詰めた所……なんと、彼は先日十蔵さんから聞かされていた新しい用務員だと言うではないか。

 

流石に恥ずかしい。どこかの国、或いは企業からの工作員だと思い込んでいた私はすぐさま彼に謝罪した。彼の方も気にしないで下さいと私の謝罪を受け入れてくれた。今時珍しい若者だなと思う一方、私は先ほど私の気配を察知したのはやはり偶然なのではないかと思い悩む。

 

確かに白河は細身の割には鍛えられた体をしている。恐らくその服の下は相当に鍛え込まれた肉体をしているのだろうが……それだけだ。

 

彼には強者特有の覇気がない。自らを強者と自負している者は無意識でもその身に纏う覇気で分かると言うもの。

 

それが彼には存在しない。やはり私の勘違いなのだなと納得しながらも彼とはそれから別れ、私は入学式の準備に追われる事になる。

 

……だが、一つ腑に落ちない点がある。奴は私の事を最初は誰だか分からなかったようなのだ。

 

織斑千冬。不本意ながら世界的に知られる事になった私の顔は最早世界中知らない者はいないとされている。別に自惚れるつもりはないが……それでも、どこか気になってしまう自分がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月β日

 

 IS学園で働く事になってから早数日。入学式を一週間後に控えた今日、個人的に嬉しい事があった。

 

なんと、織斑先生と山田先生からのお誘いで略式ながら自分の歓迎会を開いてくれたのだ。入学式の準備の中忙しいであろうお二人からの誘い、当然自分はこの誘いを受け、近場にあるBARで大人の付き合いをする事となった。

 

店は落ち着いた雰囲気で中も洒落た内装をしており、一人でも来やすい造りとなっていた。実際、ここには織斑先生もよく来ているらしく、休日などは良くここでお酒を堪能しているらしい。

 

私服姿で普段とは雰囲気の違うお二人に内心ドギマギしつつお酒を楽しんでいると、二人から仕事には慣れたのかと定番の質問を投げかけられた。

 

これが大人の社交場なのかと少し焦りながら答えると、山田先生は酔っているのか、朱を帯びた顔付きで可愛いとからかいながら体を寄せてきた。

 

 山田先生───山田麻耶教諭。酔った勢いで自分に体を寄せてくる彼女を織斑先生が宥めつつ歓迎会は粛々と進み、三人ともある程度飲んだ所である話題が浮上した。

 

内容はズバリ、現在の世の浸透している女尊男卑についてである。織斑先生が言うには軍でのIS学園を卒業した操縦者は後に軍に所属し、専用機を持ったその人は通常の軍人よりも高い地位に立っているが、別に皆それを鼻に掛けて慢心している者は少ないとされる。

 

寧ろ、自分が今の地位にいるのはISのお陰だと考える者の方が多く、自身の立場に見合う実力を備えるよう日々精進しているとの事。

 

IS学園はISを徹底して教え込む場所、織斑先生は特にISの扱いに関しては徹底的に厳しく教え込んでいるという。

 

山田先生もそれには同意見の様で、近年はIS操縦者よりも適性のない女性達が増長している傾向が強いと危惧するほどだ。

 

現在は女の方が男よりも優れているという風潮が流行っているが、それは間違いであるという事を教え込むのもIS学園の教師の責務なのだと織斑先生は語る。

 

 ……この間違った風潮を手っ取り早く糾す方法は一つだけある。自分がグランゾンを呼び出し、世界の敵として君臨すれば、世界中の男女は争うのを止め、一つに纏まるだろう。

 

ソレスタルビーイングがやろうとしたこと。“世界共通の敵”を作り出せば、世界は意外と簡単に纏まる。

 

尤も、それを実行するには余りにもリスクが高いし、グランゾンを出せば色々台無しになる気がするのでこの方法は万が一にも取らないが……。

 

 それ以降も織斑先生達の教師故の苦労話を聞いて良い感じに酒が回り始め、そろそろ帰ろうかと席を立った頃に……それは起きた。

 

店内に設置されたテレビ、ありきたりなメロドラマが突然中断され、いきなりニュースキャスターがテレビに映り込んできた。

 

テレビ越しからでも伝わってくる尋常じゃない雰囲気、三人して足を止めてテレビに注目し。

 

『人類初の男性IS適性者発見! その人物の名は織斑一夏!!』

 

テロップと共に映し出される一人の少年。中学を卒業したばかりであろう少年がテレビにデカデカと写し出された時。

 

織斑先生は真顔のまま何もない床でスッ転んだ。

 

どうやら、今年の新入生は一波乱ありそうである。頑張れ、先生!

 

 

 

 

 

 




Qどうして千冬は主人公の強さに気付かなかったの?

A主人公は自身の強さと身体能力に対し殆ど自覚ありません。
精々人よりも動けるって程度です。
この認識の差により主人公の実力が見破れなかったという感じです。



主人公にとっての真の強者達。
不動GEN
ガモン
トレーズ
ガイオウ
大体この人達のせい。


次回はいよいよ原作介入。

サクサクと進めていこうと思います。

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