『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今期のアニメは面白いのが一杯で嬉しいです。
特にダン持てが個人的にはおすすめ。
ダンまちじゃないですよ? マッスルの方ですからね(笑)


その27

 

 

───世界は朱く包まれていた。砕かれた空、裂かれた大地、まるでこの世の終わりの様なその世界で輝く二つの命を目の当たりにした時、今見ているのは夢なのだと自覚した。

 

その様子を一言で語るなら終末戦争(ハルマゲドン)。世界を終わらす闘争、新たな世界を拓く為に旧き世界を滅ぼす神話の終わり。

 

しかし、その戦いは二つの命によって齎されたモノだと一体誰が信じられる。映画を見ている様な気分になる自分の眼前に映るのは相対する二人の男。

 

一人は銀色の魔人だった。盟友の為に永い時の中を戦い続け、喩え全てを失おうと魂に刻まれた誓いの為に闘争を繰り返してきた次元の将。

 

対するもう一人の男は───ただ、本能のままに戦っていた。大切なモノがあるから、失いたくないものがあるから、そうしたいとただ自身が願ったから、故にその男は戦っていた。

 

その身に眩しい位の命の輝きを纏わせて、互いに拳を奮い、蹴りを放つ。その挙動の一つ一つが大地を穿ち、星を揺さぶり、軈て宇宙すら震わせていく。

 

───場面が切り替わる。

 

そこは現代の街並み、人の営みに溢れ、人の優しさに満ちた人の世界。他人を労り、慈しみ、子供達の笑い声と何気無い会話が織り混ざる日常。

 

しかし、その当たり前の日常の世界は前触れもなく崩壊した。笑い声は悲鳴に変わり、日常は地獄へと変わった。

 

子供の泣き声が聞こえる。母の叫びが聞こえる。父の断末魔が聞こえ、誰かの嘆きが聞こえてくる。その中心にいるのは満身創痍の男とそれを見下ろす狂った慈愛の化身。

 

その怪物は口にする。私の愛を受け入れろと、嘲り、嗤い、全てを蟲以下と断じておきながら全てを受け入れようとする狂った怪物。

 

男は心が折れそうだった。屈した膝は崩れ落ちそうで、握り締めた拳は今にも解けそうな程に……先の光景ではまるで別人なその男に俺もまたここで終わるものだと思った。

 

けど、そうはならなかった。男の心が屈しても、男を信じる少女が男を守ると怪物に吼えたのだ。

 

男は立ち上がる。何とも単純で、淡白で、ありふれた物語。───けれど、その光景は何処までも眩しく見えて。

 

『───君を、守る』

 

その横顔はどうしようもなく────白河修司そのものだった。

 

 

 

────欠けた夢を見た気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───夢、か」

 

目を開ければ見慣れた天井、窓から差し込んでくる朝日の光に朧気な意識が徐々に覚醒していく。何とも不思議な夢だった。自分の夢の筈なのに自分のモノじゃないと断言できる感覚、まるで別の自分の記憶を覗き見た様な感覚、全く心当たりが無いのに何故か修司は不快感と罪悪感を覚えた。

 

身体へ視線を落とすと幾つもの包帯が巻かれており、それのお陰で修司は昨夜起きた出来事を全て思い出す事が出来た。

 

柳洞寺で起きた死闘、佐々木小次郎という伝説の剣豪と果たし合い、そして打ち勝った事実。強敵を打ち倒した達成感よりも自身が生き残った事に修司は安堵した。

 

「───俺、アイツを殺したんだよな」

 

サーヴァントは英霊、過去の影法師を現代に呼び寄せた者達。柳洞寺から去る時に山門を通り抜けたのだが、そこにアサシンの姿は無かった。霊基の核たる部分が破壊されればサーヴァントは程なくして消滅する。ジャンヌやセイバーは仕方がないことだと諭してくれたが、それでも修司は仕方がないと割り切る事は出来なかった。

 

自分はアサシン───佐々木小次郎を殺した。その事実だけは決して覆してはならない事実で、絶対に忘れてはならない現実なのだと受け入れた。

 

思えば、自分は昔から人を殺めていたネルロ某と殺し合いをした時も、状況的に仕方がないとは言え、一つの命を奪った事に変わりはない。その事実は白河修司が覚えておくべき事なのだ。

 

けれど、事実は事実なだけだ。その際に起きた過程に間違いはないし、これ迄自分が行ってきた事に対して何ら落ち度があるとは思えない。開き直るようで申し訳ないが、その事実を修司は自身の罪とは思わなかった。

 

それに、今はまだ感傷に浸っていられる状況じゃない。アサシンは倒して残るサーヴァントは六騎、キャスターは逃がしたし楽観視をするにはまだまだ不安材料が残っている、

 

「……兎に角、身体を洗おう」

 

先ずはシャワーでも浴びてスッキリしよう。変な夢を見た所為か寝汗が酷い、今日は朝練も無かったし、久し振りにゆっくりしよう。そう思って脱衣所に向かうと……。

 

「───どう、なってんだ?」

 

身体は完全に回復していた。アサシンに付けられた傷は完全に無くなり、痕もなく綺麗になっている。昔から新陳代謝が良いのか人よりも回復力が優れているが、今回はそんなレベルの話じゃないし、何より問題はそんな所じゃない。

 

“痕”が増えている。前まで刀傷しかなかったのに今度は腹部に銃創らしき痕が出来ている。

 

そして頭髪も前よりも濃くなっている。黒だった色はより紫色に染まり、誰から見ても違うと分かる程に……まるで、何かに侵略されているかのように。

 

一体、自分はどうなってしまうのか。そんな恐怖を払拭するように修司はシャワーを浴び、努めていつも通りに振る舞う事にした。

 

その後、シドゥリには「イメチェンですか?」程度の認識で済み、却ってジャンヌの方から心配されてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────その後、修司の身体の変化を心配していたジャンヌへの説得をどうにか完了し、修司は無事に学校へ向かう事が出来た。

 

学校では教師に、クラスでは生徒達にと髪を染めた修司に各々反応を示していたが、普段の素行の良さと学業に於ける成績と部活動の活躍により然程強く言いに来る者はおらず、蒔寺達に誂われる事はあってもそれ以上の追求はなく、昼休みの頃には修司の髪についてとやかく聞いてくるものはいなかった。

 

尤も、それ以上に大きな話題があったのも理由の一つかもしれない。柳洞寺の半壊、世間の間ではガス爆発によるモノだと認識されており、聖杯戦争による爪痕だと知るものはいない。柳洞寺の人達に怪我人が出たという話もないし、寺の人間である柳洞一成が学校に来ている事から、本当に人的被害は無いのだろう。

 

とは言え、やらかしたのは紛れもない修司自身である。昨夜は必死であったから然程気にはならなかったが、翌朝のテレビで報道されているのを見て、事の重大さを漸く理解した修司は聖杯戦争の全てを終わらせた後、何らかの形で補填することをこの時誓った。

 

そんな日常と非日常の差に若干の気苦労を覚えながらも、修司は屋上の扉を開ける。いつもは弁当を食べるときにしか訪れない場所、人気が無く静かに過ごしたい人にとって割りと好かれているその場所に……魔術師が一人待っていた。

 

「それで? 何の用だよ遠坂、ワザワザ机の中に手紙を寄越して来るなんて……」

 

「────」

 

屋上のフェンスを握り、外へ視線を向けているのは先日軽くやりあった学友、そして同じ師を持つ八極拳の姉弟子である遠坂凛。振り返って見せる彼女の表情はクラスにいたときとは異なり真剣その物となっている。

 

本当なら接触は最低限のモノにして極力関わろうとはしないつもりでいた、向こうも何かしら仕掛けてくる様子はなかったから静観していたのだが……まさか机の中に手紙を忍ばせるなんてベタな方法で近付いてくるとは思わなかった。

 

「………本当に一人で来たのね」

 

手紙に書かれていた内容は“昼休み一人で屋上に来て”というシンプルなモノ、明らかに罠の気配がするが無視をするとなると後々厄介な事になりそうだ。一応自分の姉弟子なのだから最低限の礼儀として修司はこの呼び掛けに応える事にした。

 

「まぁな。本当なら士郎にも一言声を掛けようと思ったけど、アイツには昨日世話になったしそうそう迷惑を掛ける訳にもいかないからな。それに───」

 

「相手が私一人ならどうとでもなるって? 随分舐めてくれるじゃない」

 

僅かな怒気が凛から滲み出る。ぶつけられる遠坂凛という魔術師からの怒りを受け、気の弱い人間なら腰を抜かすだろう。

 

しかし、そんな彼女の怒りを一身に受けても修司は構えも取らずに平然としている。この数日受けた英霊という埒外の存在達の殺気を受けた事もあり、大抵の気当たりには動じなくなったと言うのもあるが、何より彼女の怒りが本気ではないという事が分かっていた。

 

そんな平然としている修司に毒気を抜かれた様に遠坂は怒気を消す。

 

「……まぁ、実際その通りなんだし、そう思われても仕方ないか」

 

「何だよ、随分しおらしいな」

 

「うっさい。あぁもアッサリと沈められちゃ認めるしかないでしょ……」

 

思っていたよりも遠坂凛という少女は話の分かる人間だった。事実を事実として受け止め、それでも尚気高くいられる性格。魔術師としての評価は兎も角、一人の人間としてなら修司から見ても遠坂凛は尊敬できる人間だった。

 

「で? 俺を呼び出した用件は何だ? 時間は限られてるんだ。早い所済まそうぜ」

 

とは言え、聖杯戦争に於ける修司と遠坂は所謂敵対関係にある。向こうがそのつもりでいるのなら此方も警戒を怠る訳にはいかない。あの赤い外套の男は見当たらないが、霊体化させて姿を消しているかもしれない。

 

いつ何処から狙われても対応出来るように気を張り続ける。すると、先程までの遠坂の様子が一変し、バツが悪そうに表情を歪ませて……。

 

「そ、その………この間はご免なさい」

 

不意に謝罪の言葉を口にした。

 

「………は?」

 

これには修司も面食らってしまう。何故ここで彼女が謝るのか、理解できない謝罪に修司の頭は軽い混乱常態に陥る。

 

「な、何よ。そんなに意外?」

 

「いや、だって……」

 

「わ、私だって必要なら素直に謝ったりするわよ。意気揚々と制裁するつもりだったのに軽く返り討ちに逢うわ、更に見逃されるわ、魔術師としての私の威厳はボロボロ、こんなのもう笑うしかないじゃない」

 

でも、どんなに現実逃避しても事実が変わることはない。あの後、簡単にのされた凛はアーチャーから事の顛末を聞き、自身の羞恥っぷりに数時間悶えた。

 

このまま修司に対して何もしないのは遠坂家の名折れ、かといって弟弟子でもある修司に頭を下げるのは色々抵抗がある。故に昨日は丸一日を掛けて考える事にしたのだが、それ以上に驚くべき光景を見て、遠坂の考えは改める事となった。

 

「───使い魔を通して、柳洞寺で戦う貴方の姿を見たわ。今も信じられないけど、白河君はアサシンを……サーヴァントを倒す実力がある。今の貴方は他の陣営にとってもダークホースな存在の筈よ。そんな相手に敵視されたままじゃ聖杯戦争に集中する事も出来ない」

 

思っていたより打算的だった謝罪の経緯に修司は唖然となるが、ジャンヌが言うには魔術師は元来効率的で打算的なもの、寧ろその打算的な部分も晒している訳だから、これもある意味遠坂なりの誠意の示し方なのかもしれない。

 

「だから、俺に謝罪してせめて後ろから狙われないようにするって事か………まぁ、別にいいよ。遠坂にも聖杯に懸ける望みもあるだろうし、俺から特に言うつもりもない。けどな」

 

「分かってる。聖杯戦争を続ける以上、何れはアンタとぶつかる事になるって……力を示した以上私ももうアンタを無理に止めようとはしないわ」

 

「そうか」

 

「でも、それはそれとして借りの方はキッチリ返すから、困った事があったら相談して、私で良ければ力になるから」

 

「お、おう」

 

魔術師と言うのはもっと冷酷で残忍な性格をしていると思っていたのに目の前の遠坂からはまるでそんな気がしない、確かに魔術師としての心構えがあるのだろう。聖杯戦争なんて殺し合いに参加する位だから、そう言うのにも耐性はあるのだろう。

 

でも、目の前で笑う遠坂は普通に年相応の女の子だ。借りを返すと言っておきながらその事をまるで不快に受け取っていない。何でこんな少女が魔術師なんかやっているのだと不思議に思える程に遠坂凛の笑みは魅力的だった。

 

「で、話は変わるんだけど修司もあのエセ神父の弟子だったのよね? どんな風に虐められたか教えてくれない?」

 

「………なんか、急にフレンドリーだな。一応俺とお前は敵同士の筈だろ? って言うかエセ神父って、もしかしなくても言峰師父の事を言ってんのか?」

 

「そーよ。アンタは知らないだろうけどあの神父は中々に狸よ。そんな奴の下で自ら鍛えたいなんて物好き、気にならないと言ったら嘘になるわ」

 

「それに、聖杯戦争が行われるのは基本的に夜よ。人目のある場所でいきなりおっ始めるバカはいないわよ」

 

「………なんか、お前に対するイメージ変わったわ」

 

「幻滅した? 理想の女の子じゃなくて」

 

「いや、寧ろ好印象だよ。魔術師としてどうかは知らないけど、筋を通そうとするお前の人間性は個人的に好ましい」

 

結局の所、遠坂凛が聖杯戦争の参加者である以上修司と彼女が何れ闘い合う間柄である事に変わりはない。けれど、少なくとも今はその時ではない。今自分の顔を下から見上げてくるのは何処にでもいる普通の女の子、姉弟子として、一人の女の子として対話を望んでいる。

 

それを拒むほど修司は器量の狭い男ではないし、何より修司自身も興味があった。姉弟子である遠坂が何を以て師父である言峰をエセ神父と呼ぶのか。

 

今日の昼休みは楽しく過ごせそうだ。と、そう思った時──。

 

───地震が起きた。足場がぐらつき、学校全体が震えるような衝撃に修司と遠坂の二人は表情を強張らせる。

 

「な、なんだ? 何が起きた?」

 

「これって……結界!? 嘘でしょ、学校には人が大勢いるのよ!?」

 

戸惑う修司だが、それ以上に遠坂は激昂していた。平日の昼間から行われた学校全体を包み込むほどの巨大な結界。空には結界内部の人間を監視するような目玉が顕れ、周囲の世界が血のように朱色に浸透していく。

 

尋常ならない事態に修司と遠坂は同時に校舎内部へ戻る。其処に意思の疎通は存在しない、二人の姉弟弟子はこの時言葉を交わすこと無く事態の収拾の為の同盟を組むこととなった。

 

「うっ、く………」

 

「士郎!」

 

「衛宮君、無事!?」

 

「修司、遠坂、これは……一体?」

 

屋上から引き返して階段を下りると、足下が覚束ない様子の士郎が廊下の角から姿を表した。どうやら過度な立ち眩みをしているようだ。そんな彼を少しでも休ませようと近付き座らせようとするが、それよりも早く遠坂の口からアドバイスの言葉が紡がれる。

 

「衛宮君、魔力を内から出すように意識を向けなさい。この結界は魂喰いのモノ、野放しにしていると取り返しの付かない事になるわよ!」

 

“魂喰い”その言葉を聞いて思い出すのはライダーに襲われる美綴の姿、あれが魂喰いと言うのなら今回の規模はアレとは比較にならない事を意味している。

 

学校の教師、生徒問わずに全ての魂を喰らおうとするその悪逆さ、当然見過ごす訳には行かない。

 

「遠坂、アーチャーは?」

 

「ダメ、繋がらない。くそ、魂喰いだけじゃなく連絡手段も断ってくるなんて!」

 

「俺の方は大丈夫だ。今ルーラーがこっちに向かってくるってさ」

 

念話で通じなければ携帯で連絡すればいいじゃない。そう言わんばかりに科学の力を用いて外にいるルーラーと連絡を取った修司に遠坂は何とも言えない表情を浮かべている。

 

「士郎、セイバーさんは今お前の家にいるのか?」

 

「た、多分……」

 

「なら一応連絡いれとけ、十回鳴らしても出なかったらルーラーさんと合流したと判断しよう。あの二人の事だから、きっと数分後には駆け付けてくれるさ」

 

些か楽観的な気もするが、状況や情報が定かでない以上慌てても仕方がない。何年にも渡って海外を旅してきた修司にとって想定外の事態と言うのは慣れきっている。尤も、命懸けの状況に出会す事自体稀なのだが……。

 

「あぁ、ありがとう修司。でも、それは大丈夫だ。俺にはまだ令呪が残されているからな」

 

令呪。それは魔術師であるマスターがサーヴァントに使用できる絶対命令権、その手に刻まれた三画の刻印はその一つ一つが膨大な魔力を秘めた魔術の結晶。その力を以てすれば魔法の真似事すら可能とされており、その力は聖杯戦争に於いて切り札とも言える。

 

「令呪を以て命じる。───来てくれ、セイバー!

 

士郎が叫ぶと同時に彼の手の甲にある令呪が輝き、次の瞬間光と風が吹き荒れ、鎧を身に纏うセイバーが顕れる。瞬間移動、マスターとサーヴァントとの物理的距離を一瞬にして零にしてしまう。初めて目にした魔術らしい魔術に修司は不謹慎だと思いながらも内心ドキドキしていた。

 

「シロウ、状況は?」

 

「見ての通りだ。サーヴァントの結界に閉じ込められた。状況の打開に力を貸してくれ」

 

士郎の要請にセイバーは二の句も言わずに頷いた。聖杯戦争という闘いに加担している彼女だが、無関係な人間を巻き込むのは彼女も是としてはいない。

 

士郎と遠坂、修司という三人が揃っているのも事態を収めようとするが故の事なのだろうと判断したセイバーは二人にも視線を向けて共闘の意を示す。

 

「本来なら私もアーチャーを呼び出した方がいいのだろうけど……」

 

「いや、アーチャーは外で待機させた方がいい。この騒ぎの下手人が校内にいるとは限らない。弓兵というからにはアイツは目がいいんだろ? 下手に合流させずに外で怪しい動きをする奴がいないか見張らせた方がいい」

 

「その間にルーラーも合流して、セイバー、ルーラー、アーチャーの包囲網を形成させるって訳か………成る程、合理的だわ」

 

「じゃあ、急いで行動しよう。こうしている間にも皆が危ない!」

 

即興の同盟、即興の作戦。何れも稚拙で穴の多い作戦だが、それでも今は行動するしかない。各クラスの容態を診て、まだ息のあることに安堵した修司達は下手人を探しだそうと挟み撃ちの形で学校を探索し始めた。

 

「くそ、何処にいるんだよ。学校に結界を仕掛けた下手人は!」

 

姿を現さない魔術師に修司は早くも焦り始めていた。まだ事が起きて数分も経ってはいないのに、自分以外の人間の命が掛かっているという異常事態に修司の思考はいつしか混乱していた。

 

こうなったら外に救援を求めるか。神秘の秘匿とか魔術師のルールとか後で騒がれるかもしれないが知った事じゃない。人命第一だと、修司は携帯を開いて119番を押そうとするが……。

 

「圏外……だと? さっきまで普通に連絡出来たのに!?」

 

携帯に記されているのは通信不能を示した圏外の二文字が表示されている。先程まで普通に使えたのに使えなくなった文明の利器、一体何故だと混乱する修司の耳朶に届いて来たのは……。

 

「それはライダーの結界を少しばかり強めたからさぁ。久し振りだねぇ修司」

 

「慎二………」

 

士郎と並ぶもう一人の友人、間桐慎二が修司の前に姿を晒した。

 

「桜………ちゃん」

 

その腕に身動きを封じられた間桐桜を抱えて………。

 

 

 




Q.現在のボッチの身体能力はどれくらい?
A.空中移動、二段ジャンプ等が可能となり、駆けっこに磨きが掛かった程度です。

※尚、比較対象は出さないものとする。


if修司のいるカルデアWithマイルーム。

アキレウスの場合。

「ヘラクレスを殺した男……ねぇ。いやはや驚いた。現代にまだ一角の戦士がいたんだな!」

「しかも走りも得意と来た! いいねぇいいねぇ昂るぜ! なぁ、今度俺と一勝負してくれよ! アンタとなら存分に楽しめそうだ」

「あ? そう言うのはケルト勢で間に合ってる? 良いじゃねぇか、歴戦の英雄に一目置かれてるんだ! 楽しまなきゃ損だぜ?」

「あ、おい! 逃げんなよ! って、速ェ!?」

「面白ぇ! どっちが速いか先ずはそこから始めようか!」

「………ウチのバカ弟子がすいません」



ケイローン先生の場合。

「ヘラクレス……我が弟子を殺した現代の英雄。成る程、確かに凄まじいですね。見ただけでも貴方がどれだけの戦士なのかが分かります」

「しかも伸び代はまだまだ果てがないときている。もし宜しかったら、一度私の教室に訪れて見ませんか? 貴方の潜在能力、きっと開花させて見せます」

「え? それよりもアキレウスとか肉体言語系サーヴァントを何とかしてくれ? 毎回相手をしてもリベンジとか申し込まれてキリがない?」

「あー、それは何と言うか……御愁傷様です」



キングプロテアの場合。

「修司さん……嫌いじゃないんですよ? 優しいし、私に窮屈させないようあれこれ考えてくれているし、とても優しい人なのは私にも分かります」

「ただ……その、怖い人でもあるんですよね。以前殺生院って人と一緒にいるのを見た時なんですけど」

「その時のあの人、滅茶苦茶怖かったんです。今にも殺生院さんを殺しちゃいそうで、私ハラハラしました」

「普段はとても優しい人だから余計に怖くて………ちょっと、近寄りがたいです」


「オーイ、修司さんまた凹んでるよー」

「修司さんが泣いてる!」

「この人でなし!」

「………最近、妙なのが流行ってきたな」



次回、衝撃。


それでは次回もまた診てボッチノシ

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