『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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今回もオリジナル回、進まない話にウンザリされるかと思われますが、どうか今暫くお待ちください。

そしてオリジナルキャラ投入、本当、アチコチ手を伸ばしてすみません。


その6

 

 

夜が深くなる時間帯、レティシアさん達の安全の為に彼女等を駅に送り届け、何とか間に合った終電の列車へ乗り込んで列車が街から離れていくのを確認すると、俺はアルさんと一緒に薬品会社の本拠地があるとされる場所へ向かった。

 

向かった先にあるのはパリでも有名なエトワール凱旋門から少し離れた位置にある街並み、エトワール凱旋門を中心に12本の道路が放射線状に広がっており、中でも有名なシャンゼリゼ通りの通路の中にその店はあった。

 

端から見ればなんて事のない普通の薬品店、ショーウィンドウに並べられた薬も一見すれば特に問題無さそうに見えるが、アルさんはスタスタと店の脇に続く路地裏を進んでいく。

 

「こっちよシュージ、着いてきて」

 

アルさんを先頭に進むこと数分、行き着いたのは重ねた年季を思わせる灰色の壁、日々一つないピッシリとした壁が聳えていた。アルさんはここに壁があるとは思わなかったのか、目を丸くさせて首を傾げている。

 

「あ、アレレー? おっかしいなぁ、シエルの話だと確かにここに地下通路への扉があるって……」

 

「シエルさんが?」

 

アルさんの口から出てきたのは以前悪漢を退治していた際に偶々遭遇したカレー好きのシスターさん、どうしてアルさんからシエルさんの名前が出てくるのか不思議だが、今はそれを指摘している場合じゃない、何やら腕を振り上げて「せーの」と掛け声をしている。あからさまな強行突破な姿勢の彼女に俺は直ぐ様待ったを掛けた。

 

「アルさん、アルさんストーップ」

 

「と、なにシュージ、いきなりどしたの?」

 

「どうしたのはこっちの台詞ですよ。アルさん、今何しようとしてました?」

 

「何って……普通に抉じ開けるつもりだけど?」

 

「今深夜、アルさんの力で抉じ開けたらそれだけで近隣住民が驚いて警察に通報されちゃうでしょ」

 

「えー? 人間のケーサツなんて私簡単に振り切れるわよ?」

 

「そう言う問題じゃないからね? それに騒ぎを聞き付けて件の犯人が逃げ出したらどうするんですか、俺達に今求められてあるのは潜入捜査(スニーキングミッション)で、討ち入りじゃないからね?」

 

俺の必死な説得にもアルさんは納得出来ていない……というより、イマイチ理解出来ていない様だ。何と言うか、酷く単純に物事を捉えようとしている。いや、アルさんの身体能力を考えればそれが最も効率的なのだろうけど……。

 

「兎に角、ここは一つ俺に任せて下さい。こう言うのは何か仕掛けがあるのが定石だと本とかで書いてありましたから」

 

「そう? なら任せちゃうけど……フフ、シュージもまだまだお子様ね、本のお話を参考にするなんて意外と可愛いところあるんだから」

 

微妙に小バカにされている気もするが、まぁアルさんが言っている事も分かるので取り敢えず無視をして、俺は壁を調べ始めた。

 

隅から隅まで丹念に、見落としが無いように隈無く調べる。すると右手にうっすらと微かな窪みらしい感触を感じて見てみると、うっすらと針の穴程の小さな窪みが其処にあった。

 

ビッシリと皹すら無い程に整理された壁に僅かな穴、それもこの一ヶ所だけしかない事に疑問を抱いた俺は、後ろで手を組んで鼻唄を歌っているアルさんに訊ねる。

 

「アルさん、何か細い針の様なモノとか持ってたりしません? 何かここに小さな穴がありまして、調べておきたいんですけど……」

 

「針? んー、持ってないけど……あ、これなら良いかな?」

 

そう言うとアルさんは自身の頭髪から一本の髪の毛を抜き取り、フッとそれに息を吹き掛ける。するとキラキラ輝く金の頭髪が全てを穿つとばかりにピンとなる。それをハイと渡されたので手に取ってみると、普通の髪質とは異なる硬い感触が伝わってきた。

 

「アルさんの髪って、随分頑丈なんだね」

 

「フッフーン、髪は女の命って言うからね」

 

マジか、確かにそう言う話は日本でも結構耳にしているけど、 あれって美しさって意味だけじゃなかったのね。正に頭部を守る命綱というそのものの意味だったとは……女性というのは俺が思っていたよりもずっと強い生き物だったんだな。

 

そんな大事な頭髪を拝借した俺は、アルさんの髪を使って穴の奥へと通す。何回か穿る様にしているとカチャリと音がなり、壁だったモノが奥へ沈むように消え、差し変わるように下へ続く階段が姿を表す。

 

良く作られた仕掛けだな、何て感心しているとアルさんも驚いた様に声を漏らしている。

 

「へー、今時の魔術師ってこんな手段を弄してくるんだ~、時代は進んでるのね~」

 

「アルさん?」

 

「あ、うぅん、何でもない。それよりも凄いじゃないシュージ、一発で仕掛けを解くなんて」

 

「アハハ、昔からこう言う仕掛けというか物を扱うのが得意でしたから。──さ、行きましょう」

 

「オッケー、男の子が活躍したんだもの、今度は私が魅せる番よ~」

 

そう言いって腕をブンブン回しながら地下への階段を進んでいくアルさん、先程何を言ったのか気になる所だが、今はそれを言及する余裕はない。気分良く先行くアルさんに付き従い、俺も地下へ続く階段を降りていく。

 

階段を降り、幾つもの通路を通り、そこそこ本拠地の中心部に近付いて来た頃、今までとは異なり大きな通路に出た自分達を待っていたのは……まぁ、大方予想していた通り、俺がこれまで悪漢だと思っていた麻薬の被害者たちが警備代わりに襲い掛かってきた。

 

「■■■■■ッ!!」

 

叫び、と言うよりも断末魔の様な雄叫びを上げながら襲ってくる被害者達、見れば見るほど人とはかけ離れた様相、これが麻薬に苛まされた人の末路なのか。

 

これまでただの悪漢だと思っていただけに俺の心に躊躇が生まれるが、ここで迷ってしまえば俺の方がやられてしまう。

 

俺は、アルさんに付いていくと決めた。それは別にアルさんに守って貰えるからという甘えから出た言葉ではない。王様に言われて世界を巡り、少なからず彼等と因縁を持ったのは俺だ。だから最後まで関わり通すと決めた。

 

覚悟というにはチッポケなモノだが、それでも一度自身の口から自身の想いとして言葉にしたのだから、ここで退く訳にはいかない。襲ってくる被害者の横っ面に裏拳を叩き込み、師父直伝の突きで並んで押し寄せてくる被害者達を諸とも吹き飛ばす。

 

「おぉ、シュージってばやるじゃん」

 

「そういうアルさんだって」

 

見ればアルさんの方も襲ってくる被害者達を腕の一振りだけで鎧袖一触に吹き飛ばしている。俺の様に術理を用いての技じゃない、腕力だけで並みいる被害者達を吹っ飛ばしているのだ。

 

 

「ん? まぁ、私は特別だからねー、これくらい出来なくちゃお話にならないわよー」

 

カラカラと笑うアルさんは自身を特別だと口にする。そこにどんな意味が込められているのかは俺には分からないが、きっとアルさんはアルさんできっと沢山の経験を積んできたのだろう。俺とそんなに歳も変わらないだろうに、色々すごい人なんだな。

 

そう話している内に被害者達は煙を残して姿を消していた。きっとこの施設の何処かに逃げたのだろう、予想していたよりも規模が大きい施設みたいだし。

 

その後も襲ってくる被害者達を退けたり、殺意の高い仕掛けを回避したり、飽きたといって施設を壊そうとするアルさんを宥めながら進んでいくと、明らかに施設の終着点らしき広々とした空間に出た。

 

その中央には施設の主らしき白衣を来た男が一人佇んでおり、眼鏡の奥から気持ちの悪い視線を向けてきている。

 

「いやはや、この夜分遅くに来客とはね。饗す準備が遅れてしまったよ」

 

「アンタがネルロク=マルケル?」

 

「如何にも、元時計塔に属していたしがない魔術師さ。今は此処で根源に至る為の研究をしている。それで? 我が工房に一体なんのご用かな? 麗しいお嬢さん」

 

「───色々言いたい事があるけど、アンタが世界中に撒いた死徒擬きに変異する薬、アレを何処から持ってきたの?」

 

「その話をするには今から三十年程昔、ある島で行われた実験まで遡る」

 

男は淡々と語った。嘗てアリマゴ島と呼ばれる小さな島で其処では細々ながらも島民達が慎ましやかに生活していたのだという。

 

しかし、ある日島に訪れた外界からの来客の所為で数年後、島はある悲劇に見舞われる事になる。その来客が作っていた薬により、一部の島民は暴徒と化し、薬の被害は爆発的に拡大され更なる規模の拡大を恐れた裏の組織によって島民は駆逐され、アリマゴ島と呼ばれる島は世界地図から姿を消したという。

 

「私は当時、その島民達を排除に赴いた者の一人でね、ノリカタ=エミヤの研究には個人的に興味があったからね。最初は暇潰し程度のモノだったのだよ、しかし研究が進むにつれて楽しくなってきてね、ついついのめり込んでしまったよ。しかし、彼も酔狂な題材を選んだモノだ。吸血衝動を抑えた死徒化とは、お陰でこの研究に難儀したモノだ」

 

「成る程、じゃあ貴方に取って世界中で起きている死徒騒動は単なる実験結果でしかないわけね?」

 

「これでも配慮はしたのだよ? お陰で感染率は著しく低下し、被験者達の自我も僅かだが残るように設定してある。それに、私が薬と称して売っていたのは身寄りのない人間ばかり、社会に貢献できない屑を一掃出来たのだ。寧ろ感謝してほしいくらいだ」

 

男は語る。愉しそうに、愉快に、快活に、まるで思いがけずに価値ある玩具を見付けた子供の様に、邪悪に嘲笑う。

 

アルさんから殺気が滲み出る。今にも飛び掛かりそうなのにそうしないのは、俺と言う子供が隣にいるからなのか。

 

「しかし、お陰で微かだが根源に至る道筋も見えた。通常の肉体なら無理だが、死徒化すれば最低でも時間の問題は解消される。単純な答えだが、割りと使える答案だ。そう言う意味でもノリカタはやはり優秀な男だったようだ。故に残念だよ、協会に封印指定のレッテルを張られなければ私も協力してやったものを」

 

「そう、ならもう思い残す事は無いわね。時間もないし手っ取り早く───シュージ?」

 

気付けば、俺はアルさんより一歩前に出ていた。

 

「ネルロク=マルケル、アンタには容疑が掛けられている」

 

「うん?」

 

「違法麻薬の製法、並びに麻薬の分配、アンタには司法の裁きを受ける義務がある。弁護士も必要なら此方で手配してやろう」

 

「え? ちょ、シュージ?」

 

「ほう? 私に人の法を受けさせると、中々人道的ではないか少年。いや、もしかしたら裏の世界を知らないのかな?」

 

「ご託はいい、裁きを受けるつもりはあるのか?」

 

「勿論、答えはNOだ。更に言えば君達を此処から逃がすつもりもない。君達の手によって被験者達が何人も消されたのは残念だが、二人の様な健康的な検体を手にいられるなら悪くない」

 

「───そうかよ」

 

「だから、まずは大人しくしてもらおうか」

 

にやけた顔を更に歪めて、男は懐から一丁の銃を取り出す。迷わず撃ちだされる銃弾は迷いなく俺の方へ飛んでくるが───遅い。

 

「噴ッ!!」

 

「───ッ!?」

 

飛来する銃弾よりも速く踏み込み、奴との距離をゼロにする。師父直伝の震脚からのダッシュ、足場になった床は砕け、その手応えに比例して奴の懐へ瞬時に潜り込む。

 

驚く男へ視線を向けること無く拳を叩き込む、震脚によって生まれたエネルギーをそのまま捩じ込み、男は壁へとその体を叩き込ませる。人工的に作られたコンクリート製と思われる外壁をぶち破り、男の姿が見えなくなる。

 

「いや、実は安心していたんだ。お前が大人しく法の裁きを受けるなら俺達じゃあもう手出し出来なくなる」

 

尤も、俺にはそれが出来る程の権利はないから、一般的な法的処置を準備してやる事は出来ないかも知れない、まぁ、王様に頼めば用意してくれるかもしれないが、流石にこんな雑事に王様を巻き込むのは憚れる。俺はあの人の臣下であって寄生虫ではないのだ。

 

それに、お陰で自分にも出来ることができた。後ろで呆けているアルさんには悪いけど、此処から先の修羅場は俺が仕切らせて貰う。

 

先程から体の内側から荒れ狂う様に沸き上がってくる感情、そうだ、今俺は怒っているのだ。あの日以来、思い出す事の無かった炎の如き燃え上がる───人間にとって忘れ難き感情。

 

目の前にいるのは何も知らず、他者を、社会的弱者を、自分の都合だけで利用する“吐き気すら覚える邪悪”。向こうが罪を償わないと言うのなら、此方も怒りで以て叩き潰すまで。

 

裏の世界? 知るか、相手が力業で来るのなら、此方も力で捩じ伏せるのみ。誰も奴を裁けないと言うのなら、今この場にいる俺が裁くまで。他者が俺を傲慢と蔑み、糾弾するならすれば良い、だが、今の俺は言葉では止まらない。

 

後ろを見ればやれやれと肩を竦めながら笑みを浮かべるアルさん、あの様子からどうやら止めるつもりは無いようだ。彼女の様な出来た大人に逢えて、本当に良かった。

 

立ち上がり、血反吐を吐きながら此方を睨むネルロ某、悪意に満ちたその相貌を俺は真っ直ぐ受け止め、宣言する。

 

「来いよ外道、テメェはこの白河修司が直々にぶちのめす」

 

 

 




Q.なんかこのアルさん、色々性格違くない?
A.型月世界と異なり、彼女の性格も色々違う。と、思ってくだされば幸いです。

Q.ノリカタって?
A.衛宮切嗣の父、今回出てきたオリ敵は彼の研究を再利用とした模様。


遂にFGO第二部の新情報が公開されましたね。それに伴い、本作主人公のステータスをゲーム風に自分なりに書いてみました。


【果てしないシンカ】白河修司

属性:中立・善

HP:14560

ATK:15680

DEF:9570

リーダースキル:中立並びに混沌の善属性のNP30、ATK&HP&DEFを150%UPさせる。

必殺技:【怒りの鉄拳】敵単体に超絶特大ダメージ、また、攻撃前に無敵貫通&ATKUPを付与させる。

パッシブスキル:【ボッチ・EX】味方が一人撃墜される度にATK&DEFを50%UPさせ、敵の攻撃を超高確率で回避or反撃する。

リンクスキル:ボッチ戦士、臨戦態勢、驚異的なスピードetc。


見たいな(笑)


未だに話を進められない稚拙な作者ですが、今後とも宜しくお願いします。


それでは次回もまた見てボッチノシ


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