面白かったです!
イシュタル・ファミリアとフレイヤ・ファミリア、迷宮都市オラリオでも有数の大手派閥として知られる両陣営の激突から数日の時が流れた。
二大派閥の激突、これにより歓楽街は崩壊しフレイヤ・ファミリアと対立してきたイシュタル・ファミリアも主神が天界へ強制送還された事により壊滅、長きに渡って対立してきた二つの派閥がこの日一つの決着を迎えた。
イシュタル・ファミリアの多くが恩恵を失った事により迷宮都市から離れ、その中である者は別の派閥に吸収され、またある者は別の神に恩恵だけを授かりオラリオをはなれた。
前者は兎も角後者の方、特にそれがイシュタル・ファミリアの戦力の要である団長にその様な扱いは危険だと声高に叫ぶ神は多くいた。イシュタル・ファミリアの団長のLvは5、そんな彼女を恩恵を授けたまま自由にするのは余りにも危険だと。
そんな神々を説得し、擁護をしたのは意外にもイシュタルと対立していたフレイヤだった。彼女には此方に対する敵対意識はない。万が一再び彼女が自分達に牙を向けてきたならその時は自分達が責任を持って処理しよう。神々が集う【神会】で堂々とそう語るフレイヤに他の神々は押し黙るしかなかった。
また、その時の【神会】でのフレイヤは何故かマスクをしていたらしいが、その事を追及できる神はいなかった。
そして、フレイヤとイシュタルの二大派閥の激突、そしてその裏で暗躍していた闇派閥と連中と激闘を繰り広げていたロキ・ファミリア、これにより多くの冒険者達が更なる高みへと至った事により迷宮都市は嘗てない程に盛り上がりを見せていた。
【
【
短い間で途轍もない成長を遂げる凶狼に誰もが問い詰めたくなったが、神々は新たに領域を開拓した【猛者】にそれどころではなくなっていた。
Lv8。これまではLv7こそがこの世界に於ける人類の到達点なのだと神々は半ば諦めていた。ここまでが
その限界を乗り越えて至った新たに伝説を生み出した冒険者の出現に神々が湧かない訳がなかった。【
オッタルなら、ベートなら、多くの冒険者達が、きっと何とかしてくれる。無責任ながら事実その通りであり、多くの神々はこれからの未来に胸を膨らませていた。
これから自分達が待つ未知はきっとワクワクするものなのだと、彼等は決して疑わない。
故に神々はその日を忘れない。未知というのが決して希望に満ちた物ではないという事を、未知というのは希望と絶望の表裏一体であるという事を。
────異端児事件。後にそう呼ばれる騒乱の日、一人の魔王が誕生した。
◇
「Lv7への昇格、おめでとうベート」
「おう」
ロキ・ファミリアの本拠地、黄昏の館に於ける団長フィンの執務室にて、フィン=ディムナとベート=ローガの二人がソファーに座り顔を合わせていた。
「やれやれ、まさかこんなにも速く追い抜かれるとはね。どうだい? 君さえよければ団長の座を譲るけど?」
「アホ抜かせ、俺が団長なんて柄かよ。唯でさえ
「あらら、それは残念。三割位本気だったのに」
肩を竦めるフィン、三割程度とはいえ本気で団長の座を譲るつもりだった彼にベートは目を丸くさせて絶句する。フィン=ディムナという男は冒険者としての経験が長いことから人を見る目は確かなモノ、幾らレベルが上回ったとはいえ上がったばかりのレベルに未だベートは慣れきっておらず、そしてそんなベートを御せぬほどロキ・ファミリアの団長は甘くないし軽くもない。
何より派閥の団長という役職は強さ以上にその人柄を重要視される。中にはイシュタル・ファミリアの様な強さのみを追及した派閥もあるし、ロキ・ファミリアの対となるフレイヤ・ファミリアもその例に漏れないが、多くの派閥は強さ同様に人柄も重きに置いている。
中でもフィン=ディムナは強さだけでなくその頭脳もずば抜けており、直感と経験則からこれまで幾度となくファミリアの窮地を切り開いてきた。そんな彼の後釜を継げる者は今のロキ・ファミリアには存在しない。ベート自身もレベルが上回っただけでフィンを越えた等と微塵も思えていない。
「ったく、下らねぇ冗談を言いにワザワザ俺を呼んだのかよ」
「うーん、完全に冗談って訳でもないんだけどねぇ」
「あぁ?」
「だってベート、あの一件以来少し変わったのだもの」
フィンの語る“あの一件”というのは間違いなく先の歓楽街での事だ。そこでベートは一人のアマゾネスの少女と出逢い、彼女の優しさに触れた事で立ち直れた。ある者は単純なやつだと笑うだろう、ある者は情けないと侮蔑するだろう。しかしそんな事をする人間はいない、何よりあの夜の出来事を知っているのは自分達を除いてファミリアの幹部達だけだ。
蒼のカリスマという怪物と戦いとは呼べない戦いを経験し、ベート=ローガの牙は砕かれた。しかし、そんな絶望とも呼べる挫折の中から彼は再び立ち上がってみせた。二段階昇格という破格の偉業をぶら下げて。
人類の限界点だった場所への到達、これにより迷宮都市は沸き立ち、団員達も大いに喜んだ。
そして、それ以降ベートの力なきモノに対する態度が比較的軟化したのも彼を慕う者が増えてきた原因の一つとなっている。相変わらず口は悪いが、自らの成長に伸び悩んでいる者達をただ罵倒せず、進んでその者と模擬戦をして成長の糸口を掴ませる切っ掛けを行っているのだ。
元々面倒見が良かったのか、口は悪くとも以前より刺は少なくなり良い兄貴分となりつつあるベートに最近他の団員達も彼を慕うようになってきている。
「他の団員達から中々好評だし、リヴェリアも誉めてたよ? ベートの指導の能力はアイズ達と比べて段違いだって」
「はっ、それはアイツ等が教えるのがド下手くそってだけだろ」
鼻で笑い飛ばすベートにフィンは苦笑いで誤魔化す。アイズやティオネ達は感覚に頼る部分が多い所がある為、教導には向いていない。
ベート=ローガは他者を見下している。しかし逆を言えばそれだけ“弱者をよく見ている”という言葉の裏返しにもなる。誰よりも弱者を見下し、弱い者を見てきたベートだからこそ、その人の欠点と補う方法を熟知していたのかもしれない。
現に、ベートの指導を受けた団員はメキメキとその実力を上げてきている。中にはレベルアップも間近という団員も出てきているし、現在ロキ・ファミリアは飛躍の時を迎えようとしている。
その発端となったベートをフィンだけでなくリヴェリアやガレス、そしてロキも高く評価している。まだまだ粗さは目立つし未熟な点は多々あるが、それでもベート=ローガという男が一つの派閥を預けるに足る人物に育ってきているのもまた事実。
ベート=ローガの復活、その切っ掛けとなったアマゾネスの少女、レナ=タリーには感謝するべきだろう。元はイシュタル・ファミリアの戦闘娼婦だった彼女は現在ロキ・ファミリアの一員として活動している。
そしてレナと同様にベートに想いを抱いているリーネは恋敵として日々ベートを取り合っている。なんて光景も今ではロキ・ファミリアの日常の一つと化している。
あの悪夢のような夜を越えてベートだけでなくロキ・ファミリア全体が良い方向へ向かおうとしている。両手を上げて喜ぶのは流石に控えるが、それでも結果的に言えばベート達の成長の躍進の切欠となってくれた蒼のカリスマにはレナ以上に感謝すべきなのかもしれない。
「もういいだろ。人を持ち上げるだけなんて気持ち悪ぃ真似しやがって、このあと
「あぁ、話に付き合ってくれて済まないね、もう行っていいよ。あと、くれぐれも鍛練場を壊さないようにね」
「当然、軽く捻って来てやんよ」
片手をヒラヒラと揺らし、意気揚々と執務室を後にするベート、去っていく足音が遠ざかっていく彼を確認した後、フィンは先程までとは売って変わって真剣な表情になる。
「結局、聞けなかったな」
フィンにとって訊ねたかった事、Lv7というこれまで人類の限界と定められてきた到達点、そこへ至ったベートにフィンは改めて問いたかった。
『今の君なら、蒼のカリスマに勝てるのか』
二段階昇格という前代未聞の偉業を成し遂げ、今も目覚ましい成長を続けているベートとロキ・ファミリアの団員達、喜ぶべき事だ。受け入れる巾話だ。
だが、それを齎したのは誰だ? レナ? リーネ? それともアイズやティオネ達? いいや違う。
蒼のカリスマだ。かの仮面の魔人の手によって今のロキ・ファミリアの状況は出来上がっている。蒼のカリスマがベートを叩きのめしたから、あの【魔なる者】が自分達と関わったからだ。
思えば、彼とはロキ・ファミリアが窮地に陥った際に悉く姿を現している。50階層での
まるで、巨大な掌の上で踊らされている様な気分。全ての状況が意図的に産み出された様な錯覚さえ覚えてしまう。有り得ない事だとは分かっている。しかし、それでもフィン=ディムナはつい考えてしまう。
これ迄の出来事は全て蒼のカリスマによる仕組まれた流れなのではないかと。
「まるで、ダンジョンみたいな男だな」
どれだけ思考を巡らせても考えが纏まらない。どんなに予防対策をしてもその上をゆく蒼のカリスマにフィンはダンジョンの未知なる領域に挑む時の様な緊張感を覚えた。
────物語は加速する。人と神、精霊とモンスター、そしてダンジョン。
この世界はこの日、一つの転換期を迎える。人とモンスターとダンジョン、これらの関係性が崩れた時。
「シュウジ=シラカワ、お前に伝えたい事がある」
「何でしょう?」
「ベル=クラネルが異端児と接触した」
「ほう?」
人は、神は、果たしてどの道を選ぶのか。
『さぁ、選ぶがいい』
───その時、白河修司は二つの運命と遭遇する。
「どうしたの? 大丈夫?」
一つ目は祖母を失ったあの日に出会った桜の花が似合う少女。
「ほう? 面白いモノに魅入られているな。小僧、名は?」
二つ目は燃え盛る地獄の中で黄金の王と。
運命という残酷な歯車。組み込まれるか、呑み込まれるか。
「聖杯戦争、それが私達が行う戦争の名前よ」
「修司、もうお前は関わるな。友達が死にに行く様な真似は……させたくない」
それとも───。
「はっ、サーヴァントでなければマスターでも、ましてや魔術師ですらないお前に何が出来るんだぁ? えー? 白河ぁぁっ!」
「見られちゃったなら、仕方ないよね。殺っちゃえバーサーカー」
「修司、蛮勇と勇気は違う。どうか、そこを間違えないでほしい」
「たわけ、足掻くのを止めたモノに未来はない。我を失望させるなよ」
「修司────先輩」
抗うか。
「いきなり出てきて殺す? ふざけたことぬかしてんじゃねぇぞこの変態青タイツがぁぁぁ!!」
「んだと!?」
───男には、
「魔術が使えるのがそんなに上等かよ、自分以外の力に頼るのがそんなに嬉しいかよ、いいぜ、来いよ! そのふざけた幻想ごと、叩き潰してやる!」
「っ、お前ぇぇぇっ!
───男には、
「俺を友達だと言ってくれた奴がいる。そいつの為に何かしてやりたい。そう思うのってそんなに悪い事なのかよ」
「………修司」
───男には、ただ
「よくここまで来た。さぁ、裁定の時だ。雑種!」
「王様。なんで、どうしてアンタが!」
理由などなく、理想もなく、ただ本能のままに突き動かされる彼の行く末の果ては────。
《忘れるな。その名を口にした時、お前はもう戻れなくなる》
「俺がどうなろうと構わない。それで衛宮が、遠坂が、桜ちゃんが、皆が笑っていられるなら、俺は!!」
「なんじゃ、これは……」
「頼む、それ以上進まないでくれ。俺は、お前を殺したくは………」
歪んだ欲望を前に、男は叫ぶ。
「来い………【グランゾン】!!」
重力の底に沈む、魔神を。
Fate/episode B
それは、人間らしく在りたいと願った。
こんな妄想を描く位映画、面白かったです。
それでは次回もまた見てボッチノシ
──追記。
尚、このFate編でのボッチはスパロボ時空のボッチではなくFate時空で産まれ、育ったボッチです。
故にこの主人公は矢澤にことは出会っておらず、衛宮士郎と同じ冬木の災害での生き残りという設定ですので人格も多少異なっております。
但し白河修司である以上因子は確実に持っている為、聖杯戦争に巻き込まれるにつれその力を覚醒させていく。
という話になっていきます。
要するに、Fateによくいる生身の人間が英霊と互角以上に渡り合う例外。が生まれる訳です。
尚、この時空でのエミヤはそんな主人公の監視の意味を込めての召喚だったり。
自分を殺すだけならまだしも友人すらも手にかけなければならない可能性がある為、エミヤは必死に主人公を説得したり、何かと気に掛ける様になる苦労人枠。
他にも主人公の後見人としてAUOと同居していたり、イリヤとは何故か仲良くなったり、この時空では初恋の人である桜には挙動不審になったり、言峰と麻婆仲間になったりと色々な要素を妄想として保管しています。
そしてルート分岐では。
魔人ルート。
リア充ルート。
極意ルート。
の、三つだったりなかったり。
以上、追記という名の痛い裏設定でした(笑)