『G』の異世界漂流日記   作:アゴン

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閃の軌跡Ⅳ、未だに完結出来ず。

ネタバレになるので詳しくは言えませんが一つハッキリと言えるのは。

デュバリィちゃん可愛い(確信)



その15

 

 

 

「う、う……ん」

 

肌に刺さる寒さに身を捩るレフィーヤが目を覚ます。何故自分が寝ているのか、覚醒したばかりの朦朧とした意識の中でレフィーヤは自身の身に起きた出来事を思い出す。

 

「そうだ。私は……確かアマゾネスの人に襲われて───」

 

其処まで思い出し、そして目の前で行われている殺し合いを目の当たりにした瞬間、レフィーヤの意識が一気に覚めていき、同時に自分に置かれている状況も思い知らされる。

 

「ティオナさん!?」

 

巨大な船の上、揺れる足場をものともせずに拳を繰り出すティオナ、相手は自分を一撃で気絶させたアマゾネスの女性、どうして彼女達が戦っているのか、自分の置かれた状況を冷静に分析した結果、目の前の光景が自分の所為で行われているのだと察したレフィーヤは申し訳ない気持ちで一杯になった。

 

何とかしたくても今の自分は檻に囲われており、更には首輪まで繋がれてしまっている。頼みの杖も奪われてしまい手を出したくても出せない、自身の無力さに悲観していると、レフィーヤが囲われている檻の隣から声が聞こえてきた。

 

「おや? 目が醒めたかエルフの娘よ。もう少し眠っているのかと思いきや存外タフなんじゃな。流石はロキの所の眷族よな」

 

「貴女は、カーリー・ファミリアの……」

 

「然り。妾がアマゾネスの国であるテルスキュラを統べる女神、カーリーである。悪いことは言わん、今は大人しく籠の鳥として振る舞っておけ、そうすればお主の身の安全は保証しよう」

 

横にある即席の玉座で殺し合っている二人のアマゾネスを愉悦に満ちた表情で笑みを浮かべる女神にレフィーヤは怒り以上の怖気を感じた。彼女の知る女神は自身が所属しているロキ・ファミリアの主神である彼女位で、時折底知れぬモノを感じるが、この女神からはそれとは別の禍々しさを感じられる。

 

これが同じ女神なのか、神々という超越存在を前にレフィーヤは萎縮しそうになるが、懸命に堪えて睨み付ける。そんな彼女の気丈な振る舞いに気を良くしたのか、カーリーの口元が更に愉悦に歪む。

 

「呵呵呵呵、良い眼だ。やはりロキ・ファミリアの………いや、この迷宮都市には粒が多い。よもやここまで楽しませてくれるとは、あの若造と言いまっこと愉快な事じゃ」

 

カーリーの語る若造が誰の事なのかはレフィーヤには分からないが、このままこの女神の思い通りにしてはいけない事だけは理解できた。これだけ大きな船、それも二隻も用意した事で騒ぎは大きくなっていく。そうなれば直に団の皆も駆け付けてきてくれる頃合いだろう、そうなれば自分にもここから抜け出すチャンス()が必ず巡ってくる筈だ。

 

(諦めちゃダメだ! ロキ・ファミリアの一員として、私も出来ることをしなくちゃ!)

 

その眼に闘志を宿らせるレフィーヤだが、次の瞬間状況は大きく揺れ動く事になる。アマゾネス最強の姉妹、その片割れであるバーチェとロキ・ファミリアのアマゾネス姉妹の片割れであるティオナが己の拳を互いの急所にめり込ませ………いや、貫いてしまっている。

 

血反吐をぶちまき地に伏す両者、危険な状態だ。如何に第一級冒険者であるティオナでも一刻も早く治療しなければ命に関わってくる。レフィーヤの絶叫が辺りに木霊する。同じ派閥の仲間を救うべくレフィーヤは檻に手を伸ばして力付くでこじ開けようとするが、檻は特別製の素材で出来ている所為か恐ろしく頑強でレフィーヤの力では抉じ開ける事は敵わなかった。

 

「止めておけ、それはここオラリオで手に入れた稀少な素材で出来た特別製だ。何でもどこぞの冒険者が金銭稼ぎの為に流したモノでな、溶けやすく加工しやすい割りに他の金属と混ぜ合わせて冷やせばバーチェとアルガナの二人がかりでもびくともしない強度を持っている。生半可な力では皹を入れる事すら無理な代物よ」

 

その分、金は掛かったがなと快活に嗤うカーリーだが、その目は笑っていなかった。二人のアマゾネスの死闘、その結末が自分の想定していたモノとはかけ離れていたが故の落胆だった。

 

カーリーが求めるのは殺戮と闘争の果て、互いに互いを喰らいて貪り、殺し合いの死闘の果てに待つ結末を見たいが為にテルスキュラから態々此処まで来たのだ。

 

二人が死ぬのは仕方がない事、それは互いに死力を尽くしてその果てに生れた結果だ。それならばカーリーも笑って受け入れるが、互いに生き残っているのはどういう了見か。

 

つまる所、カーリーはつまらなく思ったのだ。レベルではバーチェに劣るティオナが何故Lv6のバーチェ相手に引き分けを選んだのか、ティオナの想いと気持ち、そして強さを知りながら(・・・・・)それでもカーリーはつまらないと吐き捨てる。

 

「双方、立て。まだ闘争は終わってはおらぬぞ」

 

「なっ!?」

 

カーリーが見たいのはあくまで二人の闘争、その果てにある。こんなものは自分が見ていた結末じゃない、自分が望んでいた結果ではない、故にカーリーは闘争の続きを促していく。これが神なのか、レフィーヤは己の眷族を平然と殺し合わせる女神に改めて恐れを抱き、同時に彼女の放つ極大の敵意をぶつける。

 

しかし、そんなレフィーヤをカーリーは最早気にも止めなかった。立ち上がるバーチェ、血を流し、フラフラで、今にも倒れそうな程に追い詰められながらも、彼女は立ち上がろうとするティオナに一歩ずつ歩み寄る。

 

「バーチェ、貴女は、本当に、これでいいの? こんな生き方で、本当に、満足なの?」

 

掠れた声でティオナが紡ぐのは問いの言葉だった。これまで自分達は闘う為に生きてきた、殺す為に、生きる為に、モンスターを、家族を、同胞を、幾度となく殺し続けてきた。

 

当然だと、バーチェは口にしたかった。それがアマゾネスとして産まれた自分の宿命なのだと、そこに疑問を挟む余地はない。強さに飢え、強さを求め続けるのがアマゾネスの(サガ)なのだと。

 

それなのに、それなのに、どうして今自分の脳裏には別の光景が浮かんでくるのだ。どうして、物語を読んで聞かせて欲しいと強請るあの頃のティオナと自分を思い出すのだ。

 

「私は………私……は」

 

挑んでくるものは、立ち塞がるものは、皆須らく敵であり、己の命を脅かしてくるモノだ。故に殺せ、闘い、殺し、己の糧にしろ。それこそがアマゾネスの本願であり宿命なのだ。幼い頃からずっと言い聞かされてきた。物心が付く前よりもそう教えられてきた。父も知らず、母も知らない。殺戮と闘争だけが自分達の全てだ。

 

だから、殺す。眼下にいるティオナをバーチェは拳を振り下ろして殺す。その眼に涙を無自覚に滲ませ、慈愛の笑みを浮かべるティオナを殺そうとバーチェは渾身の力を込めて振り抜き───。

 

「───もう、其処までにしておけ」

 

「「!?」」

 

「なん……じゃと?」

 

「────え?」

 

気が付けば、バーチェの手は掴み取られてしまっていた。レフィーヤが戸惑い、ティオナが目を丸くする。カーリーが絶句しバーチェが戸惑う。何の前触れもなく唐突に現れた第三者にその場の誰もが言葉を失った。

 

否、バーチェとカーリーはその人物と面識があった。ヒリュテ姉妹を誘い出す為にレフィーヤを拐う際に現れたその名前以外一切不明な人物。

 

「本来ならもっと早く介入するつもりだったが、一対一(タイマン)の邪魔をするのも無粋と思ってな、勝負が終わるまで敢えて手出しは控えさせて貰った。───けどな」

 

「流石にこれ以上は笑い事じゃ済まなくなる。口約束とは言え一度は交わした約束だ。ロキ・ファミリアの主神、ロキとの約定に従いシュウジ=シラカワ、これより強制介入を執行する」

 

シュウジ=シラカワ。紫の髪を揺らした青年がバーチェではなく、彼女達の主神であるカーリーを睨み付け。

 

「女神カーリー、年貢の納め時だ」

 

「呵呵呵……」

 

その言葉に女神カーリーはこの上なく上機嫌に嗤うのだった。

 

 

 

 

 





Q.どうしてヘスティアには厳しく当たって前回のロキには優しいの?

A.どちらかと言えば寧ろヘスティアという女神と出会ったからこそ、主人公は神相手でも比較的優しく接しられたというのが正しいです。

女神ヘスティアに強く当たるのは一種のツンデレみたいなもの、神も人も違うのだという事を教わったというのに、素直に認められなかったのがこれ迄のヘスティアに対する態度だったと言えます。

ヘスティア「じゃあ!これからは僕にも優しく甘えさせてくれるんだね!?」

ボッチ「ハハハ、抜かしよる」

ヘスティア「ぬかっ!?」



それでは次回もまた見てボッチノシ



某剣姫「あの……私の、出番は?」

多分ない。


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