~グラン・トロワ~
ブリミル達と別れてから少したったある日晴れた日…伯父様に呼ばれた。
「シャルロット…トリステイン魔法学院に行け。」
いきなり伯父様からそう告げられた。
「何故ですか?」
取り敢えず理由を聞くことにした…そうでなければ訳がわからない…このガリアにも魔法学院はある。
「トリステインの王女…アンリエッタと交換留学をすることになった。ところがイザベラは公務などもあって不可能…そこでお前しか頼れる相手はいなかった。」
まあ確かにイザベラお姉ちゃんはガリアからいなくなったら大変だけど…アンリエッタ王女はもっと大変じゃないの?
「それを言ったらアンリエッタには兄弟姉妹がいないから尚更ダメじゃないのですか?」
僕は疑問に思ったことを口にして伯父様に聞いた。
「アンリエッタは政務に関わることはない…言って見ればお飾りの姫様だ。実際に関わっているのはマザリーニ宰相だけだ。」
トリステイン…こんなので大丈夫なのかな?僕も内政を他の人に任せているけど北花壇騎士団の仕事があるからだけど…少しは関わった方が良いんじゃないの?
「それにアンリエッタはこのガリアの技術を真似ようと考えているのだろう…」
出たよ…伝統にうるさいトリステインお得意の『良いところは吸収する』…簡単に言えばパクリ。
「まあどうせ見たところで真似することは出来るはずもあるまい…いっそのことあの変態達を見せてアンリエッタも変態にさせてやるか。」
…恐ろしすぎる。そんなことをすればアンリエッタの権威は間違いなく落ちる。
「それはジョークだが…お前の留学は決まっている。一週間後にオルレアン領に馬車が迎えに来る…それまでに支度はしておけ。」
目がかなり本気だったな…相当ストレス溜まっていたんだな。
「了解しました。」
僕は今日中にトリステイン魔法学院へと行く準備をした。
~オルレアン領~
「お嬢様!どうかお元気で…!」
性懲りもなくペルスランは僕のことをお嬢様と呼んでいる…
「だから女の子扱いは止めてってば!」
僕はそう怒るけど、ペルスランはまるで小さな少女を見るような目で仕方ないなと言わんばかりに
「失礼いたしました…ではシャルロット様、向こうでもお元気で。」
と言った…屈辱。
「ペルスラン、今度会う時にはお嬢様呼びは止めてね。」
僕は冷静に対処した…うん、これで良いよね。
「はい…善処します。」
ペルスランは笑顔でそう言った。
「善処って何!?」
僕がそう言うとペルスランはその場にはいなかった。
「はぁっ!!」
ペルスランは後ろに回りこんで僕の首を叩いた…また眠気が…
~トリステイン魔法学院~
「タバサ様、そろそろですよ。」
あれからしばらく経って僕は起きた。
「ん…?」
おそらくペルスランが僕を馬車に乗せたのだろう…僕は馬車に乗っていた。
「おはようございます。タバサ様。」
そう言うのは何処かで見たことのあるガリア兵士だった…
「おはよう…」
僕はそれだけ返して起き上がった…
「さ、着きましたよ。」
兵士がそう言って馬車を止めた。そこを出るとトリステイン魔法学院の敷地内に入っていた。
「では失礼します。お荷物の方はすでに運んでありますのでご心配なく。」
仕事早いな…まあ何はともあれ僕の学院生活の始まりだ。アルフレッドの時は監視だったから本を読むことが出来ないからつまらなかったけど今回は違う…たっぷりと時間はある上に図書室も自由に使える。まさに僕にとっては快適な生活の始まりだ。
ドンッ!
「…っ!」
僕は思わず倒れそうになるが杖を使ってバランスをとった。
「おっと…ごめんなさいね。」
ぶつかって来たのはスタイル抜群の赤髪の褐色肌の女生徒だ…しかも背が高い…羨ましい。
「気にしないで。」
僕はそう声をかけた。
「ん?貴方なんで男子生徒の制服を着ているの?」
その生徒は僕のことを女の子扱いした…そんなに女の子らしいかな?とはいえ努力はしたんだよ?ただ体を鍛えても筋肉はつかなかったし、髪の毛を切ってみたけどこの顔のせいで意味がないし…僕の悩みの種である女の子扱いされるのはどうにかならないだろうか?
「僕は男。一応男…大事なことなので二回言った。」
「ふ~ん…私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。ゲルマニアからやってきた留学生よ…そっちは?」
…どうしよう…本名だと絶対に女の子扱いされる。タバサと名乗った方が良いかもしれない。笑われるけど…
「…タバサ。」
僕がそう言うと案の定キュルケは…
「あっはっはっ!そんな犬や猫につける名前があんたの名前!?」
…まあ女の子扱いされるよりかマシか。それから僕は続けて言った…
「ガリアから来た。」
僕はそう言ってもキュルケは大笑いで気付かず…キュルケは放っておいてもう行こう…
「あっはーっはっはっ!!」
…ちょっと下品だよね。デルフ程じゃないけど。
そして入学式が始まった…
「よいさ!」
学院長こと、かつてハルケギニアに名前を轟かせたオールド・オスマンがそう言って二階から身を乗り出し、杖を出してフライを唱え…
「グエッ!!」
…なれなかった。これに会場は大爆笑…呆れた。
その後オスマン氏は毎年恒例と思われる挨拶を終え、生徒達は解散となった。
僕はその時間を図書室で過ごすことにした…うん、いい本が入っているね。
僕はしばらく、図書室の本を読みまくった。
「…おや?君は確か…」
するとメガネをかけて、知的なイメージがありそうだがハゲのせいでそれらを台無しにしている残念な教師が現れた…
「タバサ。ここで本を読んでいる。」
僕はそう名前を告げた。
「いや〜感心感心…最近の貴族はそういう学習意欲がないのですが君のような生徒がいて嬉しい…おっと!これは失礼。私の名前はジャン・コルベール。もしわからないことがあるなら私に聞きなさい。ミスタ。」
…初めて男の子だと認められた。
「わかりました。」
僕はそう言って本の世界に再び入った…うん。いいね。
「ではまたお会いしましょう。」
そう言ってコルベールは図書室にある本を持って立ち去っていった。…まあ、ああ言っているからには研究者なのだろう。少しまとも?な人が増えて良かった。
~おまけ~
キュルケはスタイル抜群で顔もかなり良い方だ。その為、男にモテると言う意味では不自由はしない。だが一人だけ気になった生徒がいた。
「(ん~…あの青髪のちびっ子、どこいったのかしら。)」
何を隠そうタバサのことである。タバサは自分の身体を見てもうんともすんとも言わなかった…そんなことは初めてだった。少なくとも上級生や同級生は自分に告白してくるし、告白していないのはタバサと接していない男子生徒の一部だけだった。
「(本当に男なの…?)」
キュルケはそう疑問に思ってしまう。社交界でも婚約者がいない男性はキュルケに迫って来たし、唯一キュルケが迫っても顔を赤くもしなかったタバサを男として認めなかった。
「これはちょっと調べる必要があるわね…」
キュルケはすぐさま行動に移し、とある場所へと向かった。その際にルイズに出くわし、ギャーギャーわめいていたがガン無視した。