僕はアルフレッドを追いかけて学院へと着き、こっそりとアルフレッドを観察したがアルフレッドは別にトラブルも起こしていないし、勉強、魔法においても何ら問題はなかった。
あの教師が出てくるまでは…
「おい、アルフレッド!」
そいつは教師であるにもかかわらずかなり口調が荒く、服装も決していい趣味とは呼べないような感じだった。
「なんでしょうか?」
アルフレッドは表情こそ変えなかったがそいつを見て嫌そうな雰囲気を出した…僕もあんな奴が教師だったらそうする。
「そういえば何日ぶりの登校?」
教師はその雰囲気をガン無視して嫌味全開でアルフレッドにそう聞いた…
「1ヶ月ぶりです…」
アルフレッドがそう答えると教師は新しいオモチャを見つけた子供のような顔をした。
「ほほ~う…つまり君のお兄さん達が頑張っているにもかかわらず、君は1ヶ月間学院をサボっていたの?それともお兄さん達が死んだって話なら謝るけど、そうなの?そうなの?ねえねえ!」
ウザい…第三者の僕から見てもあいつのボール蹴り飛ばして去勢させたいくらいウザい…だからといって飛び出す訳にはいかない。
「いえ、僕が学院をサボっていました…」
…まあ普通ならそう言うよね。だけどそれを言ったら加速するだけなんだよね。
「いや~良かった良かった…」
あれ?加速しなかった?
「君のひねくれた性格がねじりにねじってくれて本当に助かったよ。なあそうだろ!?皆。」
…僕はこんな教師のボールの一つや二つが無くなっても問題ないと思った。なんのボールかは察して欲しい。
「ええ、そうです。」
1人の生徒が賛同すると周りも賛同し始めた…あの教師を首にさせた方が話は早いね。
僕はそう思い、この学院の学院長の元へとやってきたが
「何?ミスタ・アールを辞めさせろと?部外者風情が首を突っ込むでないわ!」
と言われ更には
「それに部外者じゃないにしても無理じゃ。ミスタ・アールの家からは大量の寄付金がある…辞めさせたら私の首が飛ぶ。」
と言われた。自分の身分を可愛がっている馬鹿ばかりだ。
あの教師は辞職させるしかない。かと言って僕の本当の身分を明かせば厄介なことになるし、お金もそんなには使えない…あれしかないか。
僕はドアのところまで歩いてドアを開ける直前で立ち止まった。
「そういえば…学院長は孫がいましたよね…?お元気ですか?」
こんなこともあろうかと学院長のことを調べておいて良かった…下準備がものを言うしね。
「…?まあいたって普通だが…」
学院長はそう言って何が言いたいのかわからず首を傾げ、僕に尋ねようとするが僕は有無を言わず遮る。
「そう…それならいい。最近は不慮の事故が増えているから注意したほうが良い…事故というのはいつ起こるかわからないから…」
僕の選んだ手段はいたってシンプルなものだ。学院長に軽い脅しをかける。
「なっ…!?」
学院長が目を丸くして絶句する…
「ここの教師とて同じこと…特にあの教師は不慮の事故に巻き込まれる可能性が高いから警告した。」
僕はそれだけいうと学院長室から出て行った。だいぶ焦っていたし、これで辞めさせなかったら実際にやるだけ。どこからどう見ても勧善懲悪ではなくチンピラを食い物にする極道だがガリア公認の暗部なので問題はない…と思う。多分…
そして授業が終わり夜になった。ちなみにここは学寮があるのでアルフレッドも夜になったら学寮へと向かうはずだけど何故か学院外へと出た。
「それで俺をつけて楽しかったか?」
アルフレッドが僕に気付いてそう話しかけてきた。
「…いつから気がついたの?」
「そりゃお前が学院長室に入ったところだよ。」
そういえばアルフレッドは学年成績トップになっているなんて話しもしていたし魔法のランクも相当高いはずだから僕を探知するのは不可能ではないのかもしれない。
「…そう。」
でも止めなかったということは僕のことはある程度は信頼しているということだ…
「それで何をしていたんだ?」
アルフレッドは僕にそう尋ねた。
「秘密。」
当然あんなことを言うわけにはいかないのでそういった。
「秘密って…学院長室で何を話していたんだ?今日の授業ほとんど自習になったから何かしたんだろ?」
「秘密。」
そんなことになっていたとは知らなかったけど言うわけにもいかない。
「はあ…仕方ねえ。まあ明日になればわかるだろうな。それじゃ俺はもう寝るから寮に戻るぞ…」
「ん…」
さて…この間に色々と準備しないと。ふっふっふ…
~翌日~
「いい朝…」
お日様の光を浴びて今日は気持ち良く朝を迎えることが出来た…
「いい朝、じゃねえーっ!!」
アルフレッドがそう僕に突っ込み、頭を殴った…
「痛い…」
僕は恨めしい思いをアルフレッドに向けるがアルフレッドは怒っていた。
「タバサ、てめえだろ…この手紙!」
そう言って取り出したのは『大切なものを奪います。by土くれのフーケ』と書かれていた手紙だった。
「それが何?」
土くれのフーケ…それは盗賊の名前でなんでも盗んだ後は『○○を頂戴いたしました。土くれのフーケ』と書くことで有名な盗賊だ。貴族をバカにしているとしか思えないので逆に今回はそれを利用させてもらった。
「惚けるな!お前が書いたんだろうが!!」
まあそう思うのは無理ないよね…フーケの手段とは違うし、僕くらいしかそんなことは出来ない…
「それで?」
「あ?!」
「それでアルフレッドになんのデメリットがあるの?」
僕はそう尋ねた…
「…確かにねえわな。」
普通ならアルフレッドが疑われてもおかしくないけど僕は学院長の家に脅迫状…もとい手紙を書いて送った。その内容はもしもアルフレッドについている護衛のタバサ(つまり僕)に敵対することがあればガリア北花壇警護騎士団に敵対するということを警告してやった。あながち間違いでもないんだけどね。
「それよりも学院はもう一人でいける?」
「…まあな。もうあの教師もいなくなったし、他の生徒たちもそれに同乗しなくなったし…いい気分だ。」
「なら良かった。」
そう言って僕はユーロの領主のシークレットに一人で行かせたことを報告してプチ・トロワへと向かった。
~プチ・トロワ~
「7号…ご苦労。」
団長がそう言って僕を褒める…褒めていないように見えるけど実際には目が褒めているからそう解釈した。
「次の任務についてはまた手紙で報告するから休んでおきな!」
団長はそう言ってパンの耳を食べる…なんでパンの耳?
「私がパンの耳食っちゃいけないのかい?」
団長は僕の心を読んだかのようにそう言った…
「心読まないでよ…」
僕は思わずそう言ってしまった…
「この世に理不尽は結構あるのさ。」
そう言って団長…いやイザベラお姉ちゃんはまたパンの耳を食べた…かわいいな。
「…ほら、とっととこんなところにいないで休みな!」
イザベラお姉ちゃんの食べる姿見たかったけれどこれ以上いると嫌われそうだし、行こう…
~おまけ~
牢獄にて…二人の変態ことシャルルとオルレアン公腐人がとうとう暴れ出した。
「ウホッいい男。」
そう言っては牢獄にいる男達を狩るシャルル。
「はあはあ…これはこれで…!」
そして息を荒くしながらもその現場を見て何かを書いているオルレアン公腐人。
牢獄はまさに地獄だった。ちなみに牢獄にいる女性陣は既に変態達の犠牲となってしまった。合掌…
「はーっはっはっ!今日もお前達の企みもおしまいだ。」
そして現れたのは全身青色タイツの青髭、青髪、青づくしの男だった。
「そ、その声は兄さん!?」
シャルルは男達を捨てて喜ぶが…
「いや、俺の名前はムノー戦隊のムノーブルーだ!」
などと抜かすジョゼフだった…とうとうストレスに耐えられずにジョゼフははっちゃっけてしまったのだ。常識人だった頃は何処へやら…
するとジョゼフ…いやムノーブルーは杖を構えた。
「待ってよ!この牢獄にいる人たちがどうなってもいいの!?」
当然シャルルは爆発を受けたくないのでそう説得するが女装姿だと全く意味がないぞ。
「正義の為なら多少の犠牲も止むを得ん!それにこいつらは元々悪いことをしたからここに入っているから問題なしだ!」
などと抜かすムノーブルーだった…もはや常識人の欠片もない。
「という訳でブルーボンバー!」
そしてシャルルとオルレアン公腐人共々数十名を懲らしめた。
「正義は勝つ!」
そしてムノーブルーは高笑いをして帰っていった。どっちが悪党だかわからない瞬間だった。
なおその話は本となり、劇場化されハルケギニア中で大ヒットし、自称ムノー戦隊のムノーピンクやムノーイエロー、ムノーブラックと名乗る者が出没したり、ガリア王国が潤ったのは余談である