タバサのTS物語   作:ディア

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第6話

団長から「内政や外交はもういい…」と言われたので僕はいつも通りの北花壇警護騎士団の仕事に戻った…

 

「7号、これからお前の任務を説明するよ…」

そう言って団長が僕の目の前に立つ…それにしても団長の身長高いから少し分けて欲しいな…

「今回の任務は命の危険はほとんどないと言っていいほど危険度はないけど難しい任務だ。引きこもりの貴族の子供を学院に通わせてくれって任務だよ。…なんでこんな任務が北に来るのかわからないけど、そういうことだからこの任務こなして来な!!」

そう言って団長は椅子に座って美味しそうにケーキを食べ始めた…やっぱりこうしてみると可愛いな…

「ほらとっとといきな!!私の食事する姿を見ているんじゃないよ!」

目の保養になったし、とっとと行こう…

 

~某貴族の家~

コンコン!

僕はドアをノックして中に入ると許可を取ろうとするが…

がばっ!

と向こうがドアを開けた

「おお!よく来た…な…?」

最初は勢い良かったけど最後は途切れ途切れに僕に話しかけた…こういうのって竜頭蛇尾っていうんだっけ?

「お前が…北花壇警護騎士団でいいのか?」

そう言って貴族の男性は僕に尋ねてきた。

「そう。」

僕はそう言って肯定した…ちなみにタバサというか7号としての僕は無口で通している。そうしないとオルレアン公などとバレてそう呼ばれたら仕事どころではない…

「ところでお名前はなんでしょうか?」

嫌味全開で貴族がそういくが表情を変えずに僕は簡潔に

「タバサ。」

と答えた…喋ることが出来ないのは辛い。

 

「おいおい…それって犬猫につける名前じゃねえか…」

そうでなければなんだというんだ…この貴族は?暗部が本名言ったらダメだと知らないの?

「それよりも依頼は?」

そんなことはどうでもいいので僕は用件を済ませてあのイザベラお姉ちゃんのケーキを頬張る姿をみたいんだ…

 

「ああ…そういえばそうだった。俺はシークレット・ユーロ。この家の当主だ。依頼内容はうちのアルフレッドを学院に行かせてやってくれ。」

シークレットが自己紹介と依頼内容を同時に言った。

「一つ聞きたいことがある。」

そう言って僕はシークレットに質問をした。

「ん?」

「アルフレッドはどんな性格?」

これを知っているのと知っていないのとでは大違いだ。性格によって対処法を変えなければならない…

「性格が卑屈だな。それが原因で友達も出来ねえ、婚約者もいねえ…できればその性格もなんとか直してやってくれ…でなければあいつは一生あそこに閉じこもったままだ。」

性格が卑屈…なら大丈夫かな?まだまだ改善の余地が大きいしやりやすいほうだ。

「わかった。」

そう言って僕はアルフレッドの部屋へ向かった。

 

「誰だ…?」

そう言ってアルフレッドは素直にドアを開けた…

「…ガリアの北花壇騎士団のタバサ。貴方をが「帰れ!」…どうして?!」

アルフレッドは僕の言葉を遮ってドアを閉めようとするけど僕は必死に抑えた。

「俺なんざよ…あの場所にいるべき人間じゃねえんだ…」

確かに卑屈…だけど卑屈になる理由がわからない…

「それを聞いている。」

僕はそう言って彼に質問した。

「…入れ。」

するとアルフレッドは手を緩めて僕を部屋の中に入れた。

 

「俺はな、学院の奴ら全員に兄貴達と比較されるんだよ…どんなに頑張っても兄貴級と言われ、学院トップになっても兄貴級と言われ続けた。お前にはわかるか!?どんなに頑張っても報われない惨めな気持ちがよ…!!」

…卑屈というよりも比較され続けることに嫌気がさしたってとこだね。

「俺はもうあの学院にいても居場所はありゃしねえ…そういうことだ。わかったら出て行ってくれ。」

「そうはいかない。」

僕はそう言って拒否する。ここで諦めたら任務失敗になりイザベラお姉ちゃんの悲しむ顔を見ることになるからだ。僕はイザベラお姉ちゃんの顔を悲しみで歪ませたくはない。

「俺はお前みたいな女には暴力を振るわないことにしているんだ…」

なんで僕のことを女の子と勘違いするんだ?確かに女の子のような顔をしていて小柄だけどそれでも男の子の雰囲気があるでしょ?!

「僕は男。」

だから思い切り言ってやった…

「…嘘だろ?」

アルフレッドはそう言って僕に聞く…よっぽど女の子らしく見えたんだ…そのことにショックを受けるけど負けるものか。

「嘘じゃない。」

僕はアルフレッドに真顔でそう言った。

 

「で…学院に一回行けばいいんだろ?それでお前は帰れ。」

アルフレッドはとんでもない発言をした…そんなことを僕の目の前で言っていいのかと思った。

「いや…その卑屈な性格も治すように言われた。」

僕はアルフレッドにそう言った。

「なんだと…俺のどこが卑屈なんだよ!?」

当然アルフレッドは動揺した…アルフレッドは本気でその評価が正しいと思っていたんだ…

「じゃあ貴方は誰?」

僕がそう言うとアルフレッドは少し戸惑った。

「あ、アルフレッド・ユーロ…」

そう言ってアルフレッドは答えるが実際には違う…

「…少なくとも今の貴方はアルフレッドでもなければ貴方の兄達でもない。もし本当に貴方が貴方でありたいなら学院に通って自分の居場所を見つけるべきだと思う。」

「ちっ!これ以上言っても聞かねんだろ!?明日学院に一回だけ行ってやるとも!」

そう言ってアルフレッドは学院へ行く準備をした。

 

〜翌日〜

「全く面倒なことを…」

そう言ってアルフレッドは馬車を用いて学院に向かった…

「やっとアルフレッドの奴学院に行く気になったか…」

そう言って当主シークレットは頷く…

「まだ僕が居るからそうしているだけ。」

実際はそうだ。僕がいなくなった途端ああいうのは学院に通わなくなる。

「まあ確かにな…あいつが自分に自信が持てないのはわかっただろう?どうしても優秀な軍人の兄達と比較されるんだ。俺も出来る限りのことはやったんだが…返ってあいつを傷つけただけに終わってしまった…だからもう一度頼む!あいつを、アルフレッドを…精神的に強くしてやってくれ!」

この当主熱いよな…お父様もこんな感じだったら良かったのに。いや良くないか…もし熱かったら変態が感染する可能性は高まっていたかもしれないから熱くないだけマシだったのかもしれない。

「元からその気。馬を貸して欲しい。」

僕はそう言って馬を借りてアルフレッドを追いかけた。イザベラお姉ちゃん…今回の任務は結構うまく行きそうだから待ってて!!

 

~おまけ~

ジュリオ・チェザーレことジュリオは非常に憂鬱だった…というのも自分の上司であるヴィットーリオ・セレヴァレに虚無の候補であるジョゼット…つまりシャルロットの双子の妹に接触して友好度をあげて来いとの命令だった。当然最初はその命令に歓喜した。しかし最近は違う…その理由は…

「竜のお兄様…大好き♡」

このセリフだけならジュリオにとってどれだけ良かっただろうか…こう言っているからには何かないはずがないのだ。ジョゼットはジュリオの息子を蹴った。

「ひぐっ!!」

当然ジュリオは自身の息子を蹴られて縮こまってしまう…

 

これ以上はあまりに過激な表現が多くてよろしくない表現があるのでジョゼットとジュリオのセリフは省略させて貰う。

 

ジョゼットは変態達…シャルルとオルレアン公腐人の変態の部分だけを抜き取ったかのような女の子だった。

 

シャルロットとは真逆で変態の遺伝子がありすぎるジョゼットはジュリオの偽りの笑顔ではなく泣き顔が好きだった。早い話超ドSだった…更に周りがジョゼットを止めるどころか感染していた…もう修道院とは言わず臭道院と言っていいだろう。

 

しかもジュリオが反撃に出てもジョゼットの上目遣いがジュリオに炸裂してジュリオに罪悪感を抱かせ、結局元通りになってしまう…

 

かつてこの修道院のガキ大将だったジュリオはいい年こいてみっともなく涙をボロボロと流し、ジョゼットと別れようとしたが…そうはいかなかった。

「それじゃ、また来てね?竜のお兄様♡」

そしてこの笑顔でジュリオをここに来させるのである。今、ジュリオはヴィットーリオの命令だと思ってここに来ているようだが実際にはDV夫から離れられない妻の状態となっていた。

 

頑張れジュリオ!ガリアには変態が二人もいてもっと大変な人がいるから安心しろ!!


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