それから、数年後。魔法学院を卒業した僕はアンリエッタと結婚した。
「アンリエッタ皇太子妃様ばんざーい!」
「シャルロット皇太子様ばんざーい!」
僕達を祝う大歓声がその場に響くけれどもそれは次第に遠くなる。何故なら僕達は馬車に乗って移動していたからだ。
アンリエッタの方に向くと白いウエディングドレスに包まれたアンリエッタが可愛らしく、そしていとおしく見えた。
「アン。これから僕の妾がいるから紹介するよ」
アンリエッタは心のどこかでウェールズのことを愛していて、それを打ち消す為に夫になった僕にアンと呼ばせている。
「仲良くやっていけるかしら」
「大丈夫だよ。皆、からかうことはしても意地悪なことはしないから」
「そう……なら楽しそうで何よりだわ。何せ友達がルイズしかいなかったものだから、そのような人達と付き合えるとなると楽しみで楽しみで!」
「もしかして、そのために妾を許したの?」
「ええ。物語では妾と奥方の関係は大体ドス黒いものだけれども、実際の歴史はそのような例は稀で仲良くやっていくことが多かったわよ」
「そうなの?」
「実際には外敵に備えられないから、喧嘩なんてする暇すらもなかったというのがほとんどで後は本当に仲良くしていたのがトリステインの歴史よ」
意外だ。だけど理屈はわかる。僕とイザベラお姉ちゃんが表面上仲悪いということになっている。理由はお互いに対立する立場で仲が悪くないとガリア王家の力が集中し過ぎてしまう。
自分で言うのもなんだけど僕は内政官としても優秀だと思っている。しかしイザベラお姉ちゃんや伯父様は苦手分野にも関わらず僕以上に優秀。僕達三人が力を合わせればガリアはもっと強い力を手に入れることは出来るけどそれ以上に衰退してしまう。貴族がガリア王家に口出し出来ないほどに弱ってしまい、誰も咎めることは出来なくなるからだ。それを防ぐ為の不仲なんだよね。
「ガリアだと兄弟でも喧嘩するのに……」
「さて、まずどのような方がいるか教えて下さらない? 旦那様」
「それは着いてからの楽しみだよ。シルフ!」
「はいはいご主人」
「皆のところに案内して」
「りょーかい!」
シルフが空をひとっ飛びして、オルレアン領の敷地に入る。その屋敷には僕達の妾が待っていた。
「お帰り、私のシャルロット様」
「私の、じゃなく私達のだろ? 小娘」
マチルダがキュルケを挑発して、小突く。それに腹を立てたキュルケがこめかみに青筋を浮かび上がらせ口を開く。
「あらオバサンは嫌だわ。歳を取ると細かいところまで気にするんだから」
そしてキュルケとマチルダがにらみ合い、そして取っ組み合いに発展した。
「このオバひゃんら!」
「ほむひゅめ!」
お互いに口を引っ張り合ってもまだ口喧嘩は止まらない。これくらいで止まるようなら月に一回決闘を申し込むロレーヌを止められるよ。
「……止めなくてもいいのかしら?」
「アレが日常茶飯事だし、本気で喧嘩している訳じゃない。ただのじゃれあい。ちなみにあの赤い髪がキュルケで、緑の髪がマチルダ」
「私にはキュルケとマチルダの取っ組み合いがじゃれあいには見えないけど……」
「まあ巨乳の女神様が止めるから大丈夫だよ」
「ふ、二人ともやめて下さい~!」
マチルダとキュルケの取っ組み合いに割って入って二人を吹っ飛ばしたのはテファ。彼女こそ巨乳の女神様であり、世界一の乳を持つ女性だ。
「ね、大丈夫でしょ」
「あのおっぱいお化けも、ロッテの妾?」
ロッテとは僕のことでアンリエッタがアンと呼ぶなら僕も愛称のロッテを使うようにさせた。
「そうだよ。それだけじゃなく性格も一番穏やかだからアンと一番仲良くなれそうだよ」
「……この敗北感は私だけじゃないはずよ。アンリエッタ」
アンリエッタがテファの顔を見て、ぶつぶつと呟く。誰だって女の子ならあの顔を見て敗北感を感じてしまう。学院でも美少女として有名だったルイズですら「馬鹿でかい乳だけじゃなく顔まで美少女なんて反則よ!」と認めてしまうくらいだ。ちなみにテファの乳を見たサイトが真っ先に揉みに行こうとしてルイズに股関を蹴られたのは記憶に新しい。
ちなみにルイズとサイトについてどうなったかというと、ルイズは大人のオモチャを作り出し、それを販売している。サイトはウェールズと仲良くなって相談役になったらしい。ルイズとサイトの立場が逆なんじゃないかと思ったけど、サイトの名前で大人のオモチャを販売しても効果が薄い、ウェールズの相談役にルイズがいるとアルビオン王家やヴァリエール公爵に取っても不都合だから名前を互いに貸している。おかげでルイズのストレスはマッハ。サイトはアルビオンの救世主扱いされる有り様だ。
「ところであそこにいるのは、イザベラ姫よね?」
アンリエッタの指差した方へ向くとそこにはメイド姿のイザベラお姉ちゃんがいた。
「お呼びでしょうか? 皇太子様、皇太子妃様」
瞬速で僕達の元に駆けつけ、イザベラお姉ちゃんが本物のメイドのように頭を下げる。
「何をやってるの?イザベラお姉ちゃん……」
「いやですわ皇太子様。メイドの私はエリザベス。イザベラ姫とは全くの別人です」
「こらエリザベスさん。ここしっかり拭いて下さい!」
かつて学院にいた黒髪黄色肌のメイドがイザベラお姉ちゃんを叱る。
「おや、メイド長にしかられてしまいましたので失礼しますよ」
そそくさとその場を逃げるイザベラお姉ちゃんと入れ替わるようにメイド長と呼ばれたメイドが僕達の元にやってくる。
「すみません。皇太子様、皇太子妃様。あのエリザベスはもうわかっているとは思いますがイザベラ姫様です。イザベラ姫様が皇太子様の様子を時折観察するためにあのようにメイドに変装しています」
「別にメイドでなくとも……」
僕がそう呟くとメイドが耳元で囁いた。
「後、皇太子様のメイド姿を見たいとか」
確かに時々メイドになってメイドの仕事をしているけどあれは調査であって趣味じゃないんだよ! それよりもイザベラお姉ちゃん、遂に吹っ切れたんだ……
「それでは失礼します。皇太子様、皇太子妃様」
「良いメイド長ですわね。彼女」
メイドが立ち去るとアンリエッタが笑みを浮かべていた。
「ところでロッテ、妾はそれだけ?」
「いやいやあの二人は妾じゃないよ。もう一人はアンも知っているあの子だよ」
「お兄ちゃん!」
エルザが僕に抱きついて僕の胸板を擦り、幸悦な表情になる。エルザは事前に彼女が吸血鬼で保護するために学院に通っていた時に紹介した。本当はテファも紹介したかったんだけどテファはマチルダが過保護なこともあって紹介できなかった。
「えへへ~っ♥️」
「まあ、幼い女の子にお兄ちゃんと呼ばせるなんて不潔ですわ、フケツ!」
「アン、棒読みで言わなくても……もう知っているとは思うけど妾の一人エルザだよ」
「冗談よ、ロッテ……よろしくお願いいたしますわエルザ」
「よろしくねアンお姉ちゃん!」
「やっぱりこのお姉ちゃん呼びは良いですわね……」
「妾の中で一番年寄りなのはエルザだけどね」
「あ゛?」
エルザがアンリエッタに見られないように睨み付けるその様はまさしく吸血鬼のそれだった。
「ロッテ、エルザは年長者でも私達よりも幼い女の子よ」
「お姉ちゃん大好き!」
今度はアンリエッタに抱きついてアンリエッタについている2つの桃を揺らす。冥福と言えるくらいに成長してしまった僕は、キュルケ達に汚れてしまったんだなと思うようになっていた。
「なんにせよこれでシャルロットファミリー集合したわね」
「そうね。さあシャルロット」
「坊や」
「シャルロットさん」
「お兄ちゃん」
皆で一斉に僕に問いかけながら僕の手足をつかんだ。
「貴方のミルク下さいな」
この後、めちゃくちゃ搾られた。
~ハーレムEND完~
納得出来ないという方もいらっしゃると思いますが誰が何と言おうと一応完結です。
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