〜夜〜
「(なんでこんな格好しなきゃいけないの?)」
あれからキュルケにフリルのついたメイド服を着せられて「その格好でワイン持ってこないと制服返してあげないわよ」と脅され、仕方なくこんな格好で歩き回っているんだけど…物凄い視線を感じる。
「ウォォォオーっ!!タバサたーん!!」
そしてその視線の先から魔法も発動していないのにデブが服を一瞬でパンツ一丁になり僕に飛びかかり、その顔はニヤついていた。
「ふんっ!」
しかし不意打ち上等の裏の世界に踏み込んだ人間である以上、そんなことに慣れている…
「い…ゲフゥっ!!」
このデブは変なことを言いそうだったので蹴っ飛ばして失神させた。
「自業自得。」
僕はデブの顔を踏みつけた後立ち去った。その後ほとんどの男子生徒と女子生徒が腰を動かしすぎて痛めたみたいだけど僕には関係ないはず…
「ワインは白…だったよね?」
ぶつぶつ言いながら僕はワインを探していた。
「こらぁ〜!しんひん!」
酔っ払った黒髪黒目黄色肌のメイドが僕を指差し、千鳥足で歩み寄った。
「しんひんらしんひんらひくフェットれおとらしくれてらひゃい!(新人は新人らしくベッドで大人しく寝てなさい!)」
呂律が回ってなさ過ぎてもはや何を言っているのかわからない…
「ほれへもやるとゆうならわたひにひゅひあえ!(それでもやると言うなら私に付き合え!)」
メイドはぐびぐびと持っていたワイン瓶の中身を口に含み、僕にキスしてそれを流した。
「んーっ!?」
僕は慌ててメイドを離そうとするがどういう訳か離れず、口に含んだワインを全部僕の口の中に流し込ませて無理やり飲ませた。
「ふぅ…ろーだ!わたひのされは!(ふぅ…どうだ!私の酒は!)」
「うぇ…」
無理やり飲まされたので気分が悪い。その上、視界はブレてメイドが三人に増えた。
「あははは!三人に増えたー!」
僕は意味もなく笑い、酔っ払っていることを自覚した。それにしても僕が一気に酔っ払うなんて相当酒精(アルコール)が強くない?
「ほーか!ほーか!ほれらもらっとろめ!(そうか!そうか!それじゃもっと飲め!)」
ぶちゅーっ♡
メイドが僕の口にワインを注ぎ、だんだんと気持ちよくなってきた。
「お姉ひゃんってろんでもいい?(お姉ちゃんって呼んでいい?)」
よくよく見てみるとこのメイドはイザベラお姉ちゃんとよく似ている。だからそんなことを口走った。
「えーよ!らあわたひのいもーとがでひらひねんにひゃんぱい!(いいよ!じゃあ私の妹が出来た記念に乾杯!)」
「ひゃんぱい!」
その後、心配になったキュルケが泥酔している僕とメイドを見つけ、回収したのは余談だ。
〜翌日〜
「頭痛い…」
あれからガンガン飲みまくり、二日酔いになった僕はキュルケのベッドで寝ていた。
「無理するからよ…」
「そうは言っても僕が飲んだお酒、相当酒精が強かったよ?これでもまだマシだと言えるよ…」
「それはそうとワイン持ってこれなかったからお仕置き決定よ。」
キュルケは僕を押し倒し、腕を掴んだところで…ギィ…と音が聞こえそちらを見た。
「あ、お楽しみの最中でした?」
…そこにはルイズの使い魔のサイトがいた。
「キャァァァァーーッッ!!」
学校中に僕の絹を裂くような悲鳴が響き、窓ガラスなどが割れた。
数分後、僕はパニックから戻り、泣きべそをかきながらもなんとか持ちこたえた。…泣きべそかくのは情けないって思うかもしれないけど実際怖いからね?自分のモノを見て他人が狂気とも言えるほど興奮するのって…
「それで私に何のよう?」
キュルケは泣きべそをかいている僕の事なんか御構い無しにサイトに尋ねた。
「あー実はさ、シエスタ…って言ってもわからないか。とにかく俺と同じ肌のメイドがモット伯ってデブ貴族に取られたんだけど…何とか出来ないか?」
モット伯…王宮に仕える貴族で噂によると平民や下級貴族の女性の足元を見て自分の慰め者にするクズ貴族らしい。しかしガリアの密偵からの情報によると待遇は良く、1人も不満を言わずむしろ大満足しているとの情報だ。
「う〜ん…じゃあこれあげるわ。」
キュルケがそう言って取り出したのは謎の本だった。
「こ、これは!?」
サイトが驚いているあたりものすごい価値のある本なんだろうけど…一体何なの?
「どう?これならモット伯も大満足してシエスタってメイドも取り戻せるわよ。」
「ありがとな!キュルケ!」
サイトは本を閉じて音速の貴公子の如く去っていった…
「キュルケ…いったいどんな本を渡したの?」
「別に気にしなくていいわ。私にはタバサがいるもの。」
「気になる。」
「そんなに気になる?」
僕はそれに頷いた。
「…じゃあこう言ってみて。」
キュルケの唇の風が僕の耳を刺激し、その中身を確認する。
「どう?出来る?」
その中身は僕の精神を抉るものだった。
「やって見る。」
だけど僕の本の欲求はとても強い。よほど偏屈なものでない限りは読む。
「さ、言ってみて。」
そしてキュルケが促し、僕の口が開くのを待つ。
「キュルケお姉ちゃんだーい好き♡」
言った瞬間、僕の顔が真っ赤になり頭は恥ずかしい思いで一杯になり、着ているメイド服のスカートを見るような形で顔を伏せた。…キュルケは「笑いながらキュルケお姉ちゃんだーい好き♡って言ってみて。そうすれば教えてあげるわ。」と言って胸を高鳴らせていた。だから…
「えへ、えへへへ…」
こんな風にキュルケはキュルケでアヘ顔で幸せの頂点へと走って行った。
更に数分後…僕とキュルケは元に戻り、キュルケは口を開いた。
「あの本のことなんだけど…タバサのコスプレをモデルにした春画よ。」
つまり僕をモデルにしたエロ本がモット伯に渡ったって事?
「嘘。」
「嘘じゃないわ。あの本ものすごい人気で品切れ状態なのよ?だからモット伯も喜ぶわ…」
聞きたくない。そして何で僕をモデルとした春画が出回っているの?あっ!?…あの変態達か!!
前に伯父様が「あいつらが妄想でお前の女装した姿を思い描き、獄内でシャルロットの春画を書いていて獄内がイカ臭くて敵わん」って言ってたし。
まあ、そのおかげで清掃業なる業者も生まれてガリアの衛生も良くなったのも事実だけど…嬉しくない。
「そんなことより…行かなくていいの?」
「もう諦めた。」
おそらくフライで追いかけてもサイトは馬なりなんなり使っているだろうし、シルフ達は協力しないのは目に見えている。むしろサイトに協力してそうだ。というかシルフを使ってモット伯の所に行っている。
「じゃあ授業行きましょう。」
「うん…」
制服に着替え、僕達は普通に授業を受けた。