タバサのTS物語   作:ディア

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最近18時に投稿するのが多いような…まあそんなことは気にせずどうぞ!


第32話

~翌朝~

僕はエルザに絞られげっそりとしていたけどシルフが妙な違和感を感じ取っていたので再び洞窟に向かっていた。

「ふぅん…そのラスカルさんだったけ?あんまり鵜呑みにしない方がいいんじゃないかな?ミノタウルスに移植した云々はともかく、相打ちとかミノタウルスを倒したと伝えるのは向こうにとって行動しやすくする為の口実だと思うよ。私も同じ立場ならそうするでしょうし…」

エルザにそのことを伝えるともっともらしい答えが返ってきた。

「流石に50年も長生きしている吸血鬼は違うね。脳筋馬鹿とは大違いだよ。」

ビキッ!

マチルダが皮肉るとシルフの米神に青筋が入った。

「ほほう…脳筋馬鹿とは誰のことを言っているのかな?怪盗(笑)フーケ。」

ビキッ!!

シルフはマチルダを皮肉り、互いに米神に青筋が入った。

「反応するってことは自覚あるんじゃないか?」

「「…」」

一匹と一人が対峙し今にも決闘になりそうな最悪の雰囲気の中、僕は報告する。

「着いた。」

僕は2人を止めると舌打ちをしながらも喧嘩を止め、全員で洞窟の中へと入り鍾乳洞前まで辿り着いた。

 

「マチルダ。ここを魔法で掘って。」

僕がそう言って土を杖で指すとマチルダは首を傾げながら尋ねた。

「…こんなところを掘ってどうするんだい?」

「掘ればわかる。」

「わかったよ。」

マチルダは魔法で掘り始め次第に白い何かが見えてきた。

「…こいつは…!?」

僕はそれを何度も見てきた。そしてシルフも…同じようにそれを見てきた。

「人間の骨かい!?」

マチルダは流石に予測していなかったようで大声を出してしまった。

「声がデカイ。僕達はラスカルが本当に子供を殺していないか調査しに来たんだからラスカルにバレると面倒なことになる。」

「…すまない。それより何でこんな物が?」

「おそらくだけど…「それは子猿の骨だ。」…」

僕のセリフを遮ったのは先日会ったミノタウルスことラスカル。気配を消して来るなんて相変わらず恐ろしい相手だ。

 

「違う。こいつは人間の子供だ。しかもちょうど成長期に突入した頃のね。」

シルフはそう言って反論すると続けていった。

「私はね、鼻が利くんだ。最初にこの洞窟の奥まで入った時青臭い人間の精○の匂いがしたんだ。それこそご主人よりも幼い子供の臭いがね。」

言っちゃったよ…エルザですらミルクって比喩表現だったのに…

「それは子猿だ!私が埋めたのだから違いない!!」

ラスカルは大声で否定しその様子は滑稽だった。

「その割には随分と必死だな。もしかして図星か?」

シルフ…これ以上挑発しないで…

「黙レエェッ!!」

ラスカルは持っていた斧でシルフに襲いかかるとシルフはそれを受け止めた。勝手に喧嘩しないでよ…このままじゃミノタウルスがシルフに殺られかねない…

『どうするんだ?このままやったらあのラスカルって女死ぬんじゃないか?』

だろうね…その場合少し違反するけど仕方ない。

「シルフ爆裂蹴り!!」

シルフが回し蹴りで吹っ飛ばし、ラスカルが鍾乳洞の壁にぶつかり気絶すると洞窟が崩れ始めた。

「バカシルフ!もっと状況考えて!!」

もしここで洞窟が崩れれば僕達は生き埋めになる。そう思うと僕は怒鳴らずにはいられなかった。

「なぁに安心しろご主人。万が一洞窟が崩れても、私のシルフ風神拳で土を払ってやるさ。」

だめだこりゃ…シルフは当てにならない。…出来そうだけど。

「マチルダ、地下水は錬金で表面だけでも出口まで鉄にして固定化をかけて。エルザは先住魔法でラスカルを保護して。」

仕方なく僕は3人に指示した。この中で人間なのはマチルダしかいないけど…

「ったく…仕方ないね。錬金!私は右側をやるからナイフは左側をやんな!」

マチルダはそう言って地下水に命令すると地下水を持っている僕の左腕が動いた。どうでもいいが地下水のことはマチルダは知っている。

「それじゃ坊主。少し魔力喰うけど我慢しな!錬金!」

地下水は僕の口を使い、錬金の呪文を唱えた。

「もう大丈夫だよ…ラスカルさん。」

エルザはとっくにラスカルを救出しており、おぶっていた。

「全員退避!」

僕がそれだけ言うと四人とラスカルは出口に向かった。

 

ドドドド!!!

 

「ふう…危なかったね。」

マチルダはホッと一息つくとエルザにシルフを睨みつける。

「何故私を睨む!?」

訳がわからないと言いたげに反論するが元凶たる本人が言っても説得力皆無。

「…お仕置き。」

当然主人である僕はシルフを〆ることにした。

「何故だぁぁぁっ!?」

シルフの叫びは虚しく山彦となって消えていった。

 

シルフのお仕置きが終わりシルフは気絶するとラスカルが目を覚ました。

「う…ここは?」

ラスカルは頭を振って起き上がるが二日酔いにやられた人間のように頭を抱えてまた横になった。

「ラスカルさん。私達を襲った事は覚えている?」

エルザが尋ねるとラスカルは首を振り「覚えていない…」と答えた後影を落とした。

「…そうか。やはりか。」

ラスカルが呟くのが聞こえそれに僕は反応した。

「やはり?」

ラスカルはぽつりぽつりとこれまで何があったのか説明し始めた。

「…数年前から私はある夢を見続けていた。それは私が少年を腹上死させて死体を貪った夢だ。最初見た時は何の冗談だと思ったよ。そして3年前口元に血が付いているのがわかり、ようやく自分が子供を性的にも物理的にも食べていたことがわかった。それから私は私であろうと必死でいた。」

なるほどね。それがあの骨か…

「それがその姿なの?」

エルザが尋ねるとラスカルは頷いた。

「そうだ。人間の姿でいれば私は私でいられる。そう思っていたが一昨年と去年も理性を失ってしまい犠牲者を出した。」

「そう…」

「恥を忍んで頼みたい。私は私のまま死にたい…どうか私を殺してくれないか?」

「…本当に死んでも後悔しないの?」

エルザが口を開いてそう尋ねるとラスカルは首を振って答えた。

「…未練無くして旅をしていたのだ。今更未練などはない。」

「子供達を殺したんだからその分まで生きようとは思わないの?私だったら何としてでも生きようって思うよ。」

エルザらしいセリフだ…普段は僕をからかっているけど根元は泥臭い戦士なんだよね。

「少女よ…一体何者だ?」

「吸血鬼。そこの騎士様に仕えている騎士様の従者だけどね。」

エルザはそう言って僕のことを指差した。

「グールにしている訳ではなさそうだな…目が生きている。」

「あることを条件に仕えているからね。グールになんかにしたら元も子もないから。」

確かにね…血を吸うにはグールじゃ意味ないしね…昨日はミルクを吸い取られたけど。

「吸血鬼を従わせるとは大したものだ。少年。」

エルザはブルブルと震え…キレた。

「上から目線で言ってないでさっきの言葉取り消したらどうなの?!馬鹿ミノタウルス!」

エルザが狂気に呑まれたかのように怒鳴り、ラスカルの目が丸くなった。

「…私を殺さぬというのか?いつ暴走するかわからぬ亜人を!?」

ラスカルのその瞳は黒く染まり闇に呑まれたかのように歪んでいた。こんな目を見るのも久しぶりだ。

「そう。死んで自分だけ楽になるのは許せない。」

だから僕はそう言った。僕の言葉は遠回しに生きて希望を見つけろって意味だけど伝わるのは数年後くらいだろうね。それにここで殺してもマチルダの為にもならないしね。

「私は反対だよ!こんな奴生かしておいたらとんでもないことになるよ!」

「マチルダお姉ちゃん…ちょっといい?」

エルザはそう言って先住魔法で念話するとマチルダは光悦の笑みを浮かべていた。どうしよう…ものすごくさっきの言葉取り消したくなってきた。

「…いや。ラスカル。あんたは生きな。死んで罪を償うよりも生きて罪を償う方が良い。」

心変わり早っ!?後でエルザに問い詰めるか。

「きゅう…」

シルフは気絶しているので無視。

 

「だがしかし…」

それでもラスカルはここで生きるべきか死ぬべきかを迷っていた。そこで提案した。

「だったら使い魔になったら?」

「使い魔…?そういうことか。使い魔になれば理性は保てる上にこの姿でいても怪しまれない。考えたな。」

「決まりだね。それじゃマチルダやっちゃって。」

「「えっ!?」」

マチルダとラスカルが同時に僕の方に振り向き驚きの声を上げた。ラスカルはともかくマチルダが驚くのことはないでしょ?僕の使い魔はすでにいるんだから…

『相棒も人が悪いね〜!この人垂らしめ!』

地下水うっさい!!




おまけをやろうとしたのですがネタが思いつかなかったのと文字数がかなり多くなってしまうのでまた次回。そしてミノタウルス編は次でラストです。

それにしても文章力が欲しい…

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