魔法を教わってから数年…僕はお父様みたいにスクエアどころかトライアングルにもなれずライン止まりのまま、僕の12回目の誕生日がやってきた。
「12歳の誕生日おめでとう…シャルロット。」
お父様を始め、お母様、伯父様、そして僕の従姉妹にあたるイザベラお姉ちゃんが祝福してくれた。
「ありがとう…みんな。」
僕がそう言うとお父様とお母様は鼻血を出しながら涙を流していた…大丈夫かな…?
「ロッテ、ちょっといいかい?」
この荒々しい口調はイザベラお姉ちゃんだ…強くて優しくて尊敬しているお姉ちゃんなんだ。
例えば僕が転んで泣いた時、自分も転んで泣かずに立って僕の方に近づいて
「ロッテ…男の子なら泣くんじゃないよ。こうやって転んだのに女の私ですら泣いていないのに情け無いとは思わないの?」
って言って僕を泣き止ませようとした。僕もこうなりたいな…って初めて思ったんだ。だから僕はすぐに泣くのを止めてイザベラお姉ちゃんのように強くなろうって思ったんだ。だから僕はイザベラお姉ちゃんのことを尊敬している。
「何?イザベラお姉ちゃん。」
僕がそう言ってイザベラお姉ちゃんに近づくとイザベラお姉ちゃんはちょっと恥ずかしげに箱を出した。
「ロッテ…私からの誕生日プレゼントだよ。受け取りな。」
そう言ってイザベラお姉ちゃんは僕に箱を渡すとすぐに去って行った…恥ずかしいのかな?それはともかく箱の中は何が入っているんだろう!楽しみだな~…
「これって…ネックレス?」
イザベラお姉ちゃんが用意したのは割と清楚な感じのネックレスだった。うん…早速つけよう。
「これでいいのかな…」
僕はイザベラお姉ちゃんに感想を聞きたかったけど本人がいないので次のチャンスに聞くことにした。
「ねえ、お父様とお母様が用意してくれた誕生日プレゼントはどんなの?」
僕はお父様とお母様が用意した誕生日プレゼントの中身が気になったから直接聞くことにした。
「「これがシャルロットの誕生日プレゼントだよ」」
そう言って二人が取り出したのは…フリフリのふわふわのドレスだった…
「え…?」
僕は固まってしまった…これまでは杖とか本とかだったのにどうして今回の誕生日プレゼントが女の子が喜ぶようなドレスなのかという疑問とお父様とお母様が手をワキワキさせながら着せようとしているのかという点だ。
「錬金…」
バコン!
するとドレスが爆発してチリとなった…うん。いらなかったからチリとなってよかった。
「シャルロット…少しシャルルと話してくるから俺からの誕生日プレゼントを楽しみにしていろ。」
そう言うと伯父様はお父様を引きずって行った…お父様大丈夫かな?
「そしてお前もだ!」
あ…お母様も連れ去られた。イザベラお姉ちゃんがいない今、話せるのって執事長のペルスランしかいないや。
「ペルスラン…お父様とお母様どうなっちゃうの?」
僕がペルスランにそう聞くとペルスランはちょっと考えて…こう言った。
「少なくともお嬢…いえシャルロット様にドレスを与えることはなくなるでしょう。」
ドレスを与えることはなくなるって二人とも本気だったの?…ん?
「いまお嬢様っていいかけたよね?」
ペルスランが僕のことを女の子としてみていたかどうか判断するためにそう聞いたらペルスランは…
「存じませぬ。そんな過去のことは。それよりもイザベラ様が帰って来ましたよ。」
と言ってイザベラお姉ちゃんの元に誘導した。…はかったな。
「お姉ちゃん…」
僕がそう言って近づくとイザベラお姉ちゃんは僕のことを抱きしめた。
「よしよし…もう大丈夫だよ。私はどんな時もお前の味方だよ。」
イザベラお姉ちゃん…やっぱり優しいや。
「うん…」
僕はそう言ってイザベラお姉ちゃんに抱きついて思い切り甘えた。
ドゴーン!!
あれは…お父様と伯父様?なんで魔法を使って喧嘩しているの?…伯父様は魔法じゃなくてただの爆発だけど…
「真剣だね…こりゃ。ペルスラン!」
イザベラお姉ちゃんはペルスランを呼んだ。
「なんでしょうか?」
ペルスランはすぐにイザベラお姉ちゃんの声に反応した。
「ロッテを安全な場所に避難させな!私は後で行く!」
え…それって…!
「かしこまりました。さ、ここにいては危険です、行きましょう。お嬢様。」
「やだよ!ここでイザベラお姉ちゃんを見捨てる訳にはいかないよ!というかペルスラン、さりげなく僕を女の子扱いしないでよ!?」
「ダメです!イザベラ様のお気持ちわからないのですか!ここにいたらお嬢様も巻き込まれます!」
ペルスランはそう言うと僕を担いでこの場から走り去ろうとした。
「だから女の子扱いしないで~!!」
「お嬢様失礼!」
そう言ってペルスランは僕の首にトンッとあてた…あれ?意識がなくなっていく…
~翌日~
僕の誕生日に起こった乱闘は魔法を失敗して爆発を起こしまくった伯父様が勝ち、無能と言われた伯父様に負けたお父様の二つ名は天才から変態に変わりお母様も牢獄へと入れられた。
ペルスランに僕をお嬢様と呼ぶようにしたのはお父様と聞いたのでそれでいいと思うけど歴史は勝者が語るっていうし伯父様が事実を変えているのかもしれない。そうなると僕は真実が知りたい…
「シャルロット様はいますか?」
そんな時1人の兵士が僕を呼んだ。
「どうしたの?」
「ジョゼフ様がお呼びです。至急風竜にお乗りください。」
そう言って兵士が風竜に乗ると僕も乗るように促した。
「ありがとう…」
僕は杖を持って風竜にのった。
~リュティス~
「来たか…シャルロット。」
伯父様がそう言って僕に近づく。
「なあ…シャルロット…シャルルのことどう思う?」
「お父様のことですか?」
「そうだ…お前に対するシャルルの認識だ。」
お父様の認識…
「優しくて、凄い魔法をいとも簡単に扱えるけどよく鼻血を出す…尊敬するけど残念な人だと思います…」
うん…尊敬はするけど鼻血をよく出すよね。
「やはりか…だが自制してそれだ。奴はお前が生まれた時から変態だ。昨日は氷山の一角を見せただけだ。見ただろう…お前にドレスを渡す時のシャルルの目を…」
そう言って伯父様の目が死に始めた…
「ええ…」
僕もあの時の目は忘れない…真剣で僕にドレスを着せようとする感じだった。
「なんでだろうな…あいつはこれでもかという程、頭はよく、魔法も俺とは違ってキチンと使える…嫌味になる程にな。」
伯父様はその時のことを思い出して目が少し生き始めたと思ったらまた死んだ。
「だがそれが俺の一番の幸せだった時期だと思い知らされたのはシャルルが変態だと知ってからだ!俺はコンプレックスに悩まされた子供の頃が懐かしすぎて涙が血になるぞ!」
そう言って伯父様は本当に血の涙を流した…ひょっとして今まで対立して来たのはそのせい?
「シャルロット…お前もその名前が女につける名前だと気付いているだろう?」
そういえばよく女の子に間違われるのって…名前のせい?
「あいつはな…生まれた当初からお前を性欲の対象にしていたんだ。」
…どういうこと?僕、男の子だよ?
「その年では何を言っているかわからんか?簡単にいえばシャルルはお前に対してエッチなことを考えていたってことだ。」
え…?
「お前の頭が混乱するのは無理もない…俺も初めてシャルルが同性愛だと知った時はショックを受けた。思い切り泣け…今回は許す。」
僕はお父様がそんな目で見ていたなんて…知りたくもなかった!!
「うぁぁぁぁぁぁ!!」
その事実を話した伯父様にトライアングルスペルを唱えて伯父様に攻撃してしまった…
「落ち着け!シャルロット!」
伯父様は暴れる僕を取り押さえた…
しばらくして落ちつくと伯父様は僕の魔法を受けてボロボロになっていた。
「落ち着いたか?」
伯父様が声をかけて来た…
「うん…それとごめんなさい。」
僕はそれしかいうことがなかった。
「…いや許さん。お前には罰を受けて貰う。お前の罰は北花壇警護騎士団に入って貰う。」
そう言って伯父様は僕に命令した…
「北花壇警護騎士団…?」
だけど僕はそんな騎士団は聞いたことはない…騎士団は東、南、西の三つだったはずだ。
「北花壇警護騎士団…わかりやすく言うと暗部だ。お前はそこに入って貰う。お前の任務は団長のイザベラが選ぶ…つまりお前の命をネタにシャルル達をノーマルに戻すという訳だ…しかし万一死なれたら俺としても困る。だからある程度は任務の中で鍛えて貰う。わかったな?」
お父様は僕にエッチなことを望んでいるから死なれたら困る…だからクソ難しい任務を与えたことにして死んだことにしてもらうってことか。その上伯父様は僕の魔法のランクを上げようとしている…寛大すぎる罰だ。
「わかりました…このシャルロット・エレーヌ・オルレアン、北花壇警護騎士団に入団を願います。」
僕はそう言って北花壇警護騎士団に入ることを決意した。
「シャルロット…お前を北花壇警護騎士団7号として認める。本名は俺と団長以外には知られてはならぬ故にタバサと名乗れ。」
「了解しました。」
そしてこの時僕はタバサとなった。