タバサのTS物語   作:ディア

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第26話

「それにしても羨ましいわ…このサラサラの髪…」

テファは僕の髪を触ってそう感想を述べた…まあ髪の毛に関しては手入れもしてないしどうでもいい。ただ…その胸後ろから押し付けるのはやめてくれない!?僕の息子が立っちゃうんだよ…女性物の服を着た状態で僕の息子が立つと…どうなるか想像して欲しい。

「あっ…」

テファが僕の股間の変化に気付き、僕の顔を見る…

「えっ?…タバサって男の子?」

僕は顔を赤くしながら首を縦に振った。

「うーん…信じられないわ。だって男の子って言ったら…もっとムキムキになっているはずだよ?」

ムキムキとは言わずとも僕は華奢な身体の中ではパワーはついている。

ただ周りがおかしいだけで僕自身は筋力がないって訳じゃない。

「おうテファの姉貴、飯取ってきたぞ。」

…丁度良く現れたのは超ムキムキマッチョの大男だった。姉貴って言っていたことからテファを慕っていることはわかる…

「トム、おかえり。今日の収穫はどうだった?」

トムは申し訳なさそうな顔をして頭を下げた…

「今日はオーク鬼10体しか取れなかったぜ…姉貴すまんね。」

オーク鬼10体って…絶対に平和ボケした貴族じゃ無理だよ。どんだけワイルドなのさ。

「それだけあれば十分よ。頭を上げなさい。」

テファは僕がドキっとしてしまう位優しい笑顔でトムを許した…

「いつもなら15体位は欲しいんだけどな…ところでそっちの青髪の方は?」

トムがそう言って僕を見るとテファが口を開こうとした。

「タバサ。トリステイン魔法学院に所属している男子生徒。」

変な自己紹介されても困るので僕はそう言った。

「タバサ…そういえばタバサで思い出したんだが村の外でタバサたんを愛する会とかいう連中に遭遇してな…そいつらに追いかけられて背中に傷を負ってオーク鬼10体しか狩れなかった。」

…間違いない。あの馬鹿達だ。止めに行…地下水と予備の杖がない。フーケに盗られた?

 

「でこっちがトム。男の子の中で一番のスレンダーよ。」

スレンダーって…これでも痩せているの!?

「トムだ。まさか俺よりも華奢な男を見るとは思わなかったがスレンダー同士よろしくな。」

スレンダー同士って…明らかに僕が華奢でしょ!?確かに男として見られたいけどそっちの仲間入りもしたくないよ!!

 

「トム、それじゃ皆を連れてその人達を誘導させて。」

「わかったよ。それじゃ行ってくる。」

そう言ってトムは「ヒョァッ!!」などとほざき、窓の外からジャンプして飛んで去った…ドア使いなよ!

「もしかしてテファって男はトムみたいな体格していると思っているの?」

僕はその非常識さに呆れてそう尋ねた…当然といえば当然だけど。

「うん。」

…テファは常識がないだけだ。まだ治療は出来る。あの変態達の二の舞にはさせない。

「あのね言っておくけど世の中には」

「テファ無事かい!?」

僕の台詞を遮ったのはフーケだった。

「あ、おかえり~マチルダ姉さん。」

…なるほど、フーケとマチルダは同一人物だったって事か。それなら納得がいく。

「良かった…」

フーケ…いやマチルダはそう言って僕にセクハラしてくる…

僕はイラッと来たのでマチルダに関節技を決める。

「痛い痛いっ!ギブギブ!!」

マチルダが苦しむが何故か幸せそうな顔をしていた。

数分後…

「大丈夫?マチルダ姉さん…」

テファがそう言って少し幸せそうなマチルダに近寄り、介護する。

「全く…あんたは女にも容赦ないね。」

「自業自得。」

ここであえてマチルダが盗賊フーケだと告げなかったのは、マチルダがフーケだとバレたらテファの悲しむ顔を見ることになるからだ。

「マチルダ…ところで僕の杖は?」

「ん?ああ、これだろ?」

そう言って持ってきたのはオリジナルの方だった。

「…ナイフは?」

「ナイフってこれのこと?」

そう言ってテファが取り出したのは地下水だった。

「それそれ…良かった~…」

僕はそう言って地下水を掴むと声が聞こえた。

 

『いや~酷え目にあったぜ。』

どんな目にあったの?

『そりゃ大変だったぜ?あのハーフエルフの嬢ちゃんの身体乗っとろうとしたら逆に支配されるわ、支配を解く代わりにめっちゃいい笑顔で脅されるわ、そして一番嫌な思い出は俺をオーク鬼の解体専用のナイフとして使うわ…とにかくこの地下水生まれて初めてとも言えるくらい嫌な目にあったんだぜ?』

…ごめん。ところで彼女…テファはハーフエルフなの?

『ん?まあ人間とエルフの血が丁度半分ずつ混ざっていたしな。その代わり嬢ちゃんは先住魔法は使えないし、系統魔法も使えないぜ?』

人間でもエルフでもないと使えないのかな?…でも伯父様やルイズなんかは魔法は無条件で爆発するし、イーヴァルティに出てくるお姫様なんかはどの系統魔法が使えるのか書かれていない…

『…そりゃ妙だな。ちょいと調べた方が良いかもしれねえな。』

そうだね。

 

「タバサ?」

うわっ!?テファ近いって!!そんなエロい身体で誘惑しないでよ!!

「これ返してくれる?僕のなんだ…テファ。」

『きゃーっ!坊主の物だって!!』

地下水うっさい!

「うんいいよ。どうせ解体にしか使わなかったし。」

清々しいまでに笑顔で答えたテファは僕に地下水を返した。てか本当に解体しか使われなかったんだね…

『酷えだろ?』

でもナイフってのはもともと解体する為に使われる道具だし…あながち間違いじゃないかもね。

『坊主までそんなこと言うか!?こうなったら復讐じゃーっ!!』

僕の抵抗も虚しく、地下水は身体を乗っ取った。

『さてと…坊主とハーフエルフの嬢ちゃんにお仕置きだ!』

やめてぇぇえ!!

 

「マチルダお姉ちゃん…」

地下水が僕の声を色っぽくしてマチルダに近づいた…

「なっ…なっ…!?」

マチルダが顔を真っ赤にして僕にヨロヨロと近づいた。

「マチルダお姉ちゃん…僕の責任は重いよ?」

そう言って地下水はマチルダを縛り付け、動きを止めた。

「なんの真似だい!?タバサ!!」

「マチルダお姉ちゃんが僕にやったことをテファにやるだけのこと…さあ覚悟!!」

そう言って僕の体はテファの胸に飛びかかった…終わった…僕の人生。

「嫌っ!!!」

テファが手を振り回し、ちょうど飛びかかった僕の顎にあたり僕は吹っ飛び、地下水が僕の手から離れた。

『そんなアホな…』

僕自身もそう思う。

 

数分後…僕達は外に出ていた。

 

「さて…地下水さん?タバサの体で何をしていたの?」

テファは僕に地下水を持たせ白状させていた。

「いや~その~俺も戦闘用のナイフとして生まれたからには戦闘に使って欲しいのに解体しか使わせて貰わなかったからつい…」

僕の声で地下水は喋り、言い訳をする。

「ついで済まされるのなら私もつい地下水さんを壊しちゃうことになるかもしれないわ。ふふふ…」

テファの目が笑っていない…しかも僕に迫って言ってきているから尚更怖い。

「今まで会ってきた奴らの中で一番怖えよ…嬢ちゃん。」

ドカッ!!

地下水がそういうとテファは巨大な大木を殴り、折った…僕よりも力あるんじゃないの…?

「反省する?」

「します!!」

テファの質問に地下水は即行で答えた。地下水弱っ!!

『坊主…後で絶対に』

ドンッ!!

「こんなことは?」

僕と地下水の会話を見透かしたかのようにテファは先ほどと同じように木を殴って脅した…

「二度と致しません!!!」

地下水は僕との話を止めてそう答えた。

「それじゃもういいですよ。」

鬼神となったテファはどこにもなく代わりにあったのは妖精のような笑顔をしているテファだった。

『坊主…一番怒らせちゃいけねえのは坊主の使い魔じゃねえ…このお方だ!!』

確かにあの時のテファは翼人退治の時のシルフが可愛く見えるくらい怖かった…

 

~おまけ~

タバサたんを愛する会はトリステインに全員がいる訳ではない。中にはガリアは当然、アルビオンやゲルマニアにもいるのだ。トムが見かけたのはそのアルビオンの会員でしかない…

では学院の生徒達はというと…

「オラオラ!とっとと行かんかい!!」

ビシビシッ!!

グリフォン、風竜…とにかくありとあらゆる空を飛べる手段を使ってアルビオンに向かっていた。

 

「(全く…竜使いの荒い人だ。)」

シルフは幸いにも鞭は入れられてなかったがそれでも無茶をいうのだ。

「早くしないとタバサが~っ!!」

そういって大泣きしているのはキュルケ…タバサがいなくなってからこんな調子である。

「落ち着いて。キュルケお姉ちゃん。」

エルザがキュルケを慰める…見た目的には逆だが年齢的には問題はない。

「おい!空賊だ!!」

ヴィリエがそう言い、指をさし、全員が船を見るとアイコンタクトを送った。

「エアハンマー!」

ヴィリエの一撃が船に入ると風メイジ達もそれに続き、一斉に攻撃した。

「錬金!!」

さらにそれに続き、土メイジ達が自前の紙などを船に被せるように誘導した後、油に錬金をした…

「ファイヤーボール!!」

そして一斉にファイヤーボールが船に襲いかかる…

 

アルビオンの王子ウェールズは焦っていた。アルビオンは現在内戦状態で堂々と王子だと言えば大将である自分の身が危なくなるのはわかっていた。空賊に紛れていれば貴族派である人物達の目を誤魔化せると思ったのが逆に仇となった。まさか集団で竜やグリフィンなどを使いこちらに襲ってくるとは思っていなかったのだ。空賊は襲っても襲われても仕方ない。それだけ空賊は嫌われているのだ。

「(こんなところで死ぬのか…?)」

ウェールズはもはや絶望しか残らず落ちていった。

しかしそれを救ったのはシルフだった。

「(ふっ…墜落死ではなく風竜に食われて死ぬか。なんとも情けない姿だな…)」

ウェールズはシルフが敵だと思い、捕虜の身となったと勘違いして目を瞑り諦めた。


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