タバサのTS物語   作:ディア

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第20話

「では…詳しく状況を説明していただけますか?」

シルフがそう言って村長に状況を説明させた…

「最初の犠牲者は12歳の少女、それから2ヶ月で9人…内1人は王宮からいらした騎士様です。騎士様を除いて全員若い女性です。」

…なるほど、もう既に団長の手には回っていたのか。

「忌々しい吸血鬼は夜…何処から忍び込み、血を吸い取ります。」

…夜忍び込める方法は色々あるが吸血鬼はメイジでないためアンロックは使えない。似たような魔法を使ったとしてもその騎士が感づいて退治は終了…となれば侵入方法はかなり限られてくる。この村の家を見る限りでは煙突しか侵入方法はない。そうなると僕よりも小柄な者でなければ煙突には入れない…

「そして血を吸われ干からびた姿を家族が発見するのです。」

「…では一つ、聞きたいことがある…」

シルフがそう言って手を挙げた。

「なんでしょうか?」

「グールというものをご存知かな?」

「もちろんです…村の者も知っております。誰かがグールとして手引きをしていると…村の皆はお互いに疑心暗鬼になっております。」

「しかし、グールは…」

シルフがそう言いかけるとドアが開いた。

 

「おじいちゃん…?」

そこを見ると可愛らしい金髪の少女が村長を見ていた。

「彼女は…?」

シルフは村長に少女のことを尋ねた…

「彼女は私の娘…といっても拾い子です。ささ、エルザ。騎士様にご挨拶なさい。」

「エルザ…です…」

少女…もといエルザは未熟ながらも可愛らしい挨拶をした。

「よろしくねエルザちゃん。私は見習い騎士のタバサ。こっちが騎士のシルフィールド様だよ。」

…何度目になるだろうか?笑顔で喋る度に僕の黒歴史がどんどん増えていく。ちなみに僕の表情筋は固まっていたが顔をマッサージをして笑顔を作れるようにした…所詮一時凌ぎでしかないけど。

 

「…村長さん。グールには吸血鬼に噛まれた跡があります。誰がグールかわからない…調査の前に二人の体を調べさせてください。」

「ワシは構いません…ですがエルザは勘弁してくれませんか?」

…あの目線といい、今の言い方といい、どうにも気になるよね。

「例外は許されない。許したらエルザちゃんがグールだってことになって村長さんが吸血鬼ってことになるからね…」

シルフはそうバッサリと切り捨てた。

…あれ?ひょっとして僕がエルザの体を見るの?女装したのが返って仇になっている?

「…」

シルフと目を合わせると目がヤレ!と言っていたので…相手は幼女だと僕は頭でそう暗示をかけながら仕方なく体を調べた。

 

結果から言うとエルザと村長はグールでなかった。となればもう一つの可能性が高いな。

「タバサ、エルザちゃんと一緒に遊んできなさい。」

「えっ!?」

いきなりそんなことを言われ、僕は本心で動揺してしまった。

「見習い騎士たる者子供の一人や二人と遊んでやれなくてどうするの?」

「でも仕事は!?」

「私に任せて。私が今日中に探してみせる!」

「う~…」

「…私もお姉ちゃんと一緒にいたいの?ダメ?」

トドメにエルザから支援が来てしまい僕は敗北した…

「わかりました。シルフィールド様。でも絶対に吸血鬼を探してくださいよ!?」

「大丈夫!」

シルフは笑顔でそういった…本当に大丈夫なんだろうね?

 

「エルザちゃん、何して遊ぶの?」

僕はそう言ってエルザに何をするか尋ねた…これで良いんだよね?

「これを読んで!」

そう言ってエルザは僕が読みなれている本を渡してきた。

「イーヴァルディの勇者でいいの?」

イーヴァルディの勇者…僕がまだまだ幼い頃、お母様にたくさん聞かせてもらったな…内容をちょっと変えたり、面白くしたりして僕を楽しませた…鼻血のせいで僕の頭は真っ赤になっていた時もあったけどそれでもいい思い出であることには違いない。

「うん!私はパパとママを殺したメイジが嫌いだもん。だからメイジをばったばったと倒すイーヴァルディが好きなの…でもお姉ちゃんのことは違うよ。お姉ちゃんは優しそうな雰囲気があるもの。」

そう言ってエルザはちょこんと僕の膝の上に座った。

「そっか。それじゃ読むよ。」

そう言って本を開こうとするが外で騒ぎが起こった。

「…今のは?」

「マゼンタさんっていう人が吸血鬼って疑われているの…その息子のアレクサンドルさんが必死に弁解しているんだけど皆余所者が怪しいって…」

「…後で読んであげるからちょっと待ってて!止めてくる!」

僕はそう言って騒動の元へと向かった。

 

ナス頭の男とその他大勢が口論しあっていたところを止めたのはシルフだった。

「全く…勝手に解決しようとしちゃ困るんだよ。」

そう言ってシルフは呆れた声を出した。

「な、何おう!?」

そう言ってその他大勢の方の一人が掴みかかった。

「わからないか?愚民共。てめえらは邪魔なんだよ。」

…なんでシルフはこうも過激なんだ?シルフには油断させるという言葉が伝わらないの?

「な、なんでですか!?」

「吸血鬼をなめるな愚民共。仮にもうちの騎士を殺っているんだ。メイジすらも殺すような奴相手にどうするんだ?そこにいる婆さんが吸血鬼だとしたら殺そうとしたところで返り討ちにあうのがオチだ。止めておけ。」

「騎士様…少しよろしいでしょうか?」

するとナス頭のアレクサンドルがシルフに話しかけてきた。

「ん?」

「実はおふくろが騎士様とその従者に会いたいって言ってます。あってくれませんか?」

「…それはどうして?」

「さあ…?理由はわかりませんがとにかく会いたいって。」

シルフは僕の目を見てアイコンタクトを送った。…僕の推測だとエルザか村長が怪しいし、行っても問題はない。そう返すとシルフは軽く頷き口を開いた。

「それでは行きましょう。」

シルフと僕はアレクサンドルの母マゼンタに会いに向かった。

 

「オッセーンだよ!アレクサンドル!」

…なんかハッスルしているお婆さんがアレクサンドルにガラスの玉を投げた。

「イデッ!」

それをアレクサンドルは避ける間も無く顔に当たり倒れた。

「てめえのそのトロトロした性格のせいで疑われるんだよ。このバッ!このバッ!」

そう言ってお婆さんはアレクサンドルを蹴り続けた。

「止めてください!」

僕は流石にそれをスルーする訳にはいかなかったので止めた。

「全く…このバッのせいですまないね。あたしゃ、マゼンタ。そこにいるアレクサンドルの母親だよ。」

本当にアレクサンドルの母親なの…?

「アレクサンドル!お客さんがいるんだ!席外しときな。」

そう言ってマゼンタさんはアレクサンドルを無理矢理追い出し、水晶玉を取り出した。

「あたしは見ての通り占い師だ。」

占い師ならあんな暴力を振るわないと思う…

「占い師ならあんな暴力を振るわないと思う…そう思ったね?騎士様?」

僕と同じ考えをしているとは思わなかったよ…シルフ。

「そんなことを思っていないぞ?」

あれ?シルフがそう思っていないならマゼンタさんは占い師としては優秀ではない…のかな?

「…あんたは騎士様じゃないだろう?騎士様は…眼鏡の方だろ?違うかい?」

「…いつから知っていた?」

僕はマゼンタさんに問い詰めた。

「何、あたしゃねアレクサンドルがグールとなって以来どうにか出来ないかと必死で足掻いたんだよ。そこに映っていたのはあんた…だからあんた達が来た時に気づいたのさ。」

…僕の周りにはどうしてこうも性格も能力も常識外れな人たちがいるんだろう?あの変態といい、シルフといい…馬鹿げているよ。

「アレクサンドルがグール…?」

シルフは流石にアレクサンドルがグールだとは思わず驚いた声を出した。

「そうさ。非力なあたしじゃアレクサンドルも吸血鬼も殺すことすら出来ない。だからあんた達が来るのを待っていた。」

「じゃあ私が韻竜だということも知っているの?」

「当然。そしてこの村の吸血鬼の正体も知っている。」

「じゃあ教えて。」

僕は騎士としてのタバサらしくそう命令した。

「その代わり条件がある。」

条件?

「吸血鬼の正体と引き換えに…その子を助けてやってくれ。」

「…え?」

「…もう騎士様は気づいているのだろう?村長の娘さんが吸血鬼だというのは。あの子の両親は吸血鬼というだけで殺された…そのせいかあの子は人間不信に陥っている。それを救って欲しい…あたしの望みはそれだけのことなんだよ。」

エルザが人間不信…?とても僕の前ではそうは見えなかったけど…

「ご主人、どうするの?」

シルフがそう言って僕の方に向いた。

「決まっているよ。」

僕はエルザをどうするかを決めた。

 

~おまけ~

その頃、シャルルはと言うと…物の見事に脱獄していた。ガリアの牢獄が決して悪い訳ではない。何時でも脱獄出来るシャルルと今回はいないがオルレアン公夫人が異常なのだ。

「もうすぐ…もうすぐシャルロットに会えるんだ。僕のシャルロットレーダがサビエラ村にいると言っている!」

もはや人間の変態どころか人をやめてしまっておりシャルルはシャルロットレーダなるものの感知スキルを身につけてしまった。

「シャルルゥ〜、貴様を逮捕する!」

しかしどこぞの某警部を思い出させたのはムノーブルーことジョゼフだった。ジョゼフ以外にシャルルを牢獄に連れ戻せるのは皆無である。イザベラやシェフィールド、シャルロットですらも捕まえても牢獄まで連れ戻せない。

 

…エアー○ンが倒せないの替え歌でシャルルを牢獄まで連れていけないとかムノーブルーが倒せないとか頭の中で流れていそうな気がするのは気のせいだろう。

 

「げっ…兄さん!」

「何度言えばわかる!俺はお前の兄などではない!」

「いやいや、その青髭とか声とか正しく兄さんそのものだよ!?」

ちなみに今のジョゼフの格好は青のヘルメットに服、そして白のマントと靴…だいぶタイツよりかマシになったがそれでもセンスはない。

「黙れ!ブルーボンバー!」

ブルーボンバー…ジョゼフがムノーブルーとして最初にシャルルに繰り出した技であり範囲こそ小さいが威力は絶大である。

「わっ!?ちょっと兄さん!不意打ちなんて卑怯だよ!?」

しかし流石はシャルルというべきかそれを難なくよけたが…ジョゼフは不意打ち上等!とでも言いたげに次の予備動作を終了していた。

「ムノーボンバー!」

ムノーボンバー…ブルーボンバーに比べ威力、範囲ともに大きくなり屋外ならブルーボンバーよりも使い勝手が良い。

「げふっ!?」

不意打ちが二連続も続けばシャルルといえど無事ではなかったが…

「おのれ…また逃がしたか!」

シャルルは元々天才の二つ名で知られた人物だ。何回もやられていくうちにうまく逃げる方法を思いつく。ジョゼフはここ最近こうしてシャルルに逃げられぱなっしだった。

「絶対にあれを国外に出すわけにはいかん!」

ジョゼフはシェフィールドが開発したシャルル探知機を使い、シャルルを探し始めた。




元ネタ…
「このバッ!」→ワンピース
某警部、シャルル探知機→ルパン三世

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