そして…しばらくするともう一つ目の依頼…吸血鬼がいると言われる村、サビエラ村付近に着いた。
「それじゃあそろそろ人間に化けて…と…」
ボンッ!
シルフは人間に化け、いつも通りのむかつくまでのイケメンの顔になった…
「シルフ…何故その顔?」
僕は何故その顔にするのか気になって尋ねてみた。
「ん〜趣味♡」
「…そう。」
僕は呆れてこれだけしか言えず、本を取り出した。
「そう言うご主人様は何読んでいるんだい?」
そう言ってシルフは僕の本の内容を尋ねて来た。
「吸血鬼の生態の報告書。」
「吸血鬼…今回は吸血鬼をやるの?」
「今回はって…翼人退治の時は明らかにやりすぎ。」
「う〜ん…?そうかな?私は少なくとも手加減したつもりなんだけど…」
「僕の魔法を打ち消すどころか打ち負かすのは手加減とは言わない。」
「今度から気をつけま〜す。」
全然反省してない…また何かやらかしそうな気がして僕にも胃薬が必要になりそうだ…イザベラお姉ちゃんの気持ちがよくわかる…
「それよりも今回はどうする?吸血鬼をビビらせてみる?」
「人間に紛れ混んでいる以上は無理。」
「チッチッチ…甘い、甘いよ〜ご主人様。韻竜の鼻は犬ほどじゃないけど生き物の中じゃトップクラスにいいって知ってた?」
「知らない。」
「つまり!吸血鬼の養分である血の匂いも嗅ぎ取ることも出来るから誰が吸血鬼なんて一発でわかる!」
そう言ってシルフは胸を張って僕に主張してきた。
「吸血鬼は人間と見分けがつかない…それをわかって言っている?」
「もちろん!」
「だったらなおさらダメ。」
「何故!?」
「あの村の付近はメイジや傭兵が数多くいる。そんなことをすれば…僕達の立場は危うくなる。こっそりとやるのがいい。」
「わかりましたよ…そこまで言うなら仕方ありませんね。」
そう言ってシルフは納得したので僕は着替えを取り出し、着替えた。
「って…何しているのご主人様!?」
「変装。」
「変装って…それ女子用の制服じゃないの…?」
そう…僕は現在進行形であの変態達が僕のサイズに合わせた女子用制服に着替えている。
「僕だって出来ることなら男子の制服がいい…けど欺くにはこれくらいが丁度良い。」
僕はそう言って長い靴下を履いて着替え終えた…
「ご主人様にはプライドなんてものはないの…?」
シルフが珍しく僕にそう尋ねた。
「プライドなら犬に食べさせた。」
「プライドって食べられるものなの…?」
時々天然入るよね…シルフって。
「あとこれ持って。」
シルフに軍人メイジの象徴である杖剣を渡した。
「え?これは杖剣…?なんで私がこんなものを?」
「私見習い騎士、貴方騎士…OK?」
僕は声を高くし、女の子のように振る舞った。
「…作戦は?」
…やっぱりダメだったか。
「ぼ…私達はダメな騎士を演じる。今回の吸血鬼はメイジを真っ先に殺ると報告がでている。」
実際、うちの騎士も来て3日で殺られているんだよね…
「油断させておいて一気に仕留める…って作戦でいいの?」
シルフはそれに気づき、僕の意図が伝わったようだ。
「ん。」
僕は頷いて歩いて村へと向かった。
「随分と殺風景な村だ…」
シルフの言う通り、吸血鬼の所為なのか随分寂れていた。…オルレアン領?オルレアン領は潤っているからこんな寂れる心配はない。
「おおっ!これはこれは…騎士様、ようこそいらっしゃいました。」
そう言って駆けつけて来たのは1人の老人だった。
「私は村長のアイザックと申します。このようなところへ来て頂きまことに感謝しております。」
その村長の言葉と目はまるで反対の言葉に聞こえた…僕からは「チッ…また来やがったのか…城の連中もご苦労なこった…」と目で言っていた。
「はっはっはっ…ナイスな歓迎ありがとう…」
その目線に理解しているのかいないのかわからないがそう言ってシルフは両袖を捲った。
「私はっ!」
シルフが右腕に力を入れると力こぶがムキムキと出来…
「ガリア騎士団のおぉぉぉっ!!」
今度は左腕に力を入れるとメリメリッ!と音がなり力こぶが出来上がった。
「シィィィルゥゥゥフィィィィールゥゥゥドォォォっ!!!」
そしてシルフはドヤ顔でポーズを取った…確かにアホ丸出しだけど村長がポカンとしているよ…
「ははは…素晴らしい筋肉ですね。」
しばらくすると村長が乾いた笑いを出して、成功した…のかな…?
「そして、私の隣にいぃぃるぅぅのはぁぁっ!!」
シルフはまだ暑苦しく演技をしてビシィッ!と僕のことを指差した。
「見習い騎士のぉぉぉっタバヴァァァァサァァァ!!」
もういいや…シルフも頑張って演技しているし、僕も演技しよう…
「見習い騎士のタバサですっ!よろしくお願いしますっ!」
あれから頑張って表情筋を柔らかくして笑顔を作れるようにして僕は極上のスマイルを村長にくれてやった。
「…はっ!?すみません。ボケッとしてしまいまして。お名前はタバサ様ですね…」
そう言って村長は僕のことを確認した。
「はいっ!」
僕の演技上のイメージはこうだ…明るくて背伸びしている女の子…というイメージだ。そんな女の子はまず騎士としてはダメ…とまではいかないけど騎士には向いていない。騎士は最低限のコミュニケーション能力があればいい。
「おお…ここではなんですし、私の家に案内しましょう…タバサ様のお荷物をお持ちしましょうか?」
「大丈夫ですっ!」
僕は頰を膨らませてそう言った。
「これは失礼。それでは参りましょう。」
村長が歩くとその隙を見たシルフが僕に近づいてきた。
「ご主人様…気づいているとは思うけど…」
シルフはチラリと窓を見た。
「うん…かなり疑われているね。」
窓の視線は僕達を監視していた。
〜おまけ〜
「ちょっとサイト!あんた何やっているのよ!」
ルイズがサイトに掴みかかり、その顔は激怒のあまり真っ赤だ。
「見てわからないのかい?愛しいルイズちゃん。」
「ちゃん付けするな!私はあんたのご主人様なのよ!?あんたが傷ついたら私が疑われるわ!」
「安心しな、もう決着はついてある。」
「は?どういうことよ?」
「いずれわかるさ…」
サイトはそう言って手を合わせた。
「やめろ、何をするっ!」
するとギーシュの悲鳴が聞こえ、ルイズは悲鳴の方向へと駆けつけた。そこで見たものとは覆面と仮面を被った生徒達がギーシュを貼り付けていた。
「さて…ギーシュお前はやってはいけないことをしてしまった。」
「タバサたんを愛する会の会員規則第17条、二股をしてはいけない(タバサたんを除く)を破った為、百叩きの刑の執行をする!」
「やめ…ぎゃーっ!!」
「なにこれ…?」
ルイズはそれを見て呆れてしまった…それもそのはず、ルイズはジョゼフ同様にハルケギニアの中ではまだ常識人な方でその感覚が理解出来なかった。
「いや〜俺も驚いたんだけどさ、ギーシュはタバサたんを愛する会に所属していて俺はその規則を会員にチクってやったのさ。」
「そんなものあったの…?」
「俺はタバサって奴がどんな奴か知らないけど多いに利用させて貰ったって訳だ。」
「あ、あんたねぇ…」
貴族を利用すると聞いてルイズのこめかみはピクピクと動いていた。
「おっと!それじゃトドメ刺して来るわ!」
そしてサイトはどっから持ち出したのか不明だがメイドインオルレアンの鉄パイプを持ちギーシュに近づいてトドメを刺そうとした…がギーシュは百叩きの刑から逃れ、杖を持った。
「おっと!」
ギーシュはすぐさまワルキューレを作ってサイトの攻撃を免れた。
「いけ!ワルキューレ!」
そしてワルキューレがサイトに襲いかかり決闘が始まった。
ここで補足。
タバサを演技させたのは…まあ、あれです。表面上だけとはいえ可愛らしい姿を見せたいという気持ちで作りました。そのため批判はあるとは思いますがご許しください。
ではまた次回。