タバサのTS物語   作:ディア

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第17話

「村一番の料理人に作らせました!ささ、食べてくだせえ!」

そう言って村長らしき男が僕を促すと僕はフォークとナイフをとり、ステーキを食べ、サラダを食べ、スプーンに持ち替えるとスープを飲み、食事は長々と続いた。

 

ちびっこ達からこんな声が聞こえたが僕は心の中で反論した。

「あんなちんちくりんで大丈夫なのかね~?」

僕よりもちんちくりんのお前には言われなくない…

「…」

「おい、どうした?」

「いや綺麗だな~って。」

綺麗ね…多分形式上だけとは言え僕が公爵だからそのマナーが綺麗に見えたのだろう…父であるオルレアン公が牢獄にいる以上は僕が内政をやらなきゃいけないから現在、形式上は僕がオルレアン公爵となっている。

「ばか、あいつは男だぞ?見てみろ…でなきゃあんなに食わないだろ?」

女の子でも食べるときは食べるけどね…

「こら!滅多なことを言うな!」

心の中で反論していると保護者らしき男がそう叱り、僕の反論は終わりを迎えた。

「このハルケギニアでもっとも恐ろしいのは竜ではない…魔法を使える王族や貴族…つまりメイジなんだぞ!あんな年端のいかない子でも…」

一応これでも15なんだけど子供扱いされるって…成長が遅いのかな?まあいいや。僕は杖を持って退治…

「ま、まだまだお代わりもありますよ!」

…退治は明日にしよう。腹は減っては戦は出来ぬというし。

 

数分後…食器の塔が何個も出来上がり、「まだ食うのかよ…」「でもお腹デッカくならないね~…」と呑気な子供の声が聞こえるが気のせいだ。

「あら?ハシバミ草お好きなんですか?」

そう言って村の女性が僕に尋ねてきたので僕は頷いた…これ美味いんだよね。何故みんなが残すのか気がしれない…

「ハシバミ草って苦くてまずいだけじゃん…」

「やっぱり、あのくらい綺麗になるにはあれも食べなきゃダメなのかな?」

…そこの君達、ひそひそ声で話しているけど聞こえているぞ?後でハシバミ草の美味さについてたっぷり教えてあげるから覚悟しておいたほうがいいよ?

 

ダンダンダン!

 

などとアホなことを考えているとドアを叩く音が聞こえた。

「酷いじゃないかご主人様!」

ドアをぶち破ってやってきたのはシルフだった。

「あ…。」

シルフのことすっかり忘れてた。

「あのう…彼は一体?」

村長がそう言って僕にシルフのことを尋ねてきた。

「彼はシルフィールド。訳ありの僕の従者。」

僕はそう言ってハシバミ草をもしゃもしゃと食べ続けた。

「あーっ!!ご主人様だけずるいぞ!」

そう言ってシルフは下品に僕のハシバミ草を横取りして食べた…

「…っ!?」

シルフの顔は元の姿の鱗のように青くなりそして…

「苦い~っ!ご主人様、何食べているの!?」

悲鳴をあげ、僕の目の前でハシバミ草を吐くという勇者様にもほどがあることをしてくれた。

「シルフ…吐いたから後でお仕置き。」

僕は当然許さない…このお馬鹿が悪いんだから。

「理不尽すぎる~っ!?」

などと悲鳴が再び上がった。

 

ドサっ!

…そんな音が聞こえたのでそちらを見てみると×の傷の男がヨシアを縛って僕の目の前に出してきた…

「騎士様…先ほどは弟が大変失礼を…この愚弟を煮るなり焼くなり好きにしてください。」

そう言ってヨシア兄が首を下げる…

 

煮るなり焼くなりするとなれば…

変態の場合…公開R18行為の恥辱まみれの刑。

ムノーブルーの場合…笑って許す。

 

僕の選択肢は決まり、首を横に振った。

「…騎士様の優しさに感謝しろ!本来ならば殺されても文句は言えない無礼なことだ!」

ヨシア兄がそう言ってヨシアの縄を解くとヨシアは少し暗い顔をした。

「お前まさかまたあの翼人と…おい!!まて!!」

…どうやらこの依頼一筋縄では行かなそうだ。

 

そして夜になり、僕とシルフは一緒に寝ることにした…これはノーカウントだよね?

「ほらおいで…僕のタバッ!?」

悪ふざけをしたシルフを杖で思い切り殴るとシルフは頭を抱えてゴロゴロと痛そうに転がった…タフだね。

「…誰?」

…そんなことを考えているとドアの外から気配を感じたので杖を持った。

「ぼ…僕です…騎士様にお話が…」

その気配の持ち主はヨシアだった。

「明日にして。」

しかし話しを聞く気はない。その理由は簡単だ。僕はもうパジャマに着替えて寝る準備をしている。これから寝ようって時に長話をダラダラと話して聞くのは嫌だ。

「お願いです!どうしても今話したいんです!」

…このままだと籠城するという面倒なパターンだ。話しをとっとと終わらせるしかない…

「入って。」

僕はヨシアを部屋の中に入らせた。

 

「…実は翼人達に危害を加えるのを止めて欲しいんです。」

「それは出来ない。」

僕はあっさりと答えた。

「事情を聞いてください!」

事情を聞くと、ヨシアは翼人は村人の生活費となる木の上に住んでいる…そのため村人は翼人が邪魔になり追い出そうとしている…しかしヨシアは翼人が先に住んでいたから翼人を追い出すのは筋違いと主張した。

「お願いです!どうか…止めてください!」

確かに気持ちはわからないでもない。だけど…それは出来ない。僕は首を横に振った。

「どうして!?騎士様にはお情けはないんですか?!」

「所詮ガリアの駒がギャーギャー騒いだところで無駄だって言っているんだよ…ご主人様は。」

いつの間にか復活したのかシルフが僕の伝えたい言葉に+αしてくれた…

「どういうことですか…?」

「今のご主人様は一介の騎士…つまりいつでも切り捨てられる駒だ。下手に逆らったら首が飛ぶ!…ってことだよ。もしも止めさせたければガリアの王族に文句でも言っとけ。」

…僕もガリア王族の一人なんだけどね?

「ヨシア!」

すると外から翼人…アイーシャが現れたので杖を持った…

「待ってください!彼女は敵じゃない!!」

…なるほど。そういうことか。

 

そして本音が入った事情を聞くと…ヨシアはアイーシャに助けられ、惚れてしまい、互いに両思いだということがわかった。そして2人はその後いちゃいちゃし始めた…こんな感じなのかな?キュルケと僕がいちゃいちゃすると…

「ごめんなさいヨシア。今日はお別れを言いに来たの…」

いちゃいちゃムードから一転、アイーシャがヨシアに別れを告げようとした。

「え…」

「そっちは強力な騎士が派遣されたし、精霊の力を争いには使えない…それならいっそのこと出て行ったほうがいいってなったの。」

「…騎士様!なんとかお城の方に訴えて頂ける訳にはいきませんか!?」

「それは無理。」

そんなことをすれば変態を治す手立ては無くなるし、僕の信頼も無くなる…

「っ…!」

ヨシアは僕に掴み掛かって僕の首を絞めてきた。

「騎士様には心がないのか!?命令でしか動けないならただのガーゴイルと一緒だろ!?」

…こいつは何を言っているんだか。僕はあくまで村の総意でやっているからでしかない。こいつの言うことを聞けばそれこそヨシアのガーゴイルだ。

「ヨシア…何を!」

「この子が死ねば時間は稼げる!」

…王位継承権を持っている僕が死んだら、多分ヨシアどころかガリアにいる翼人、この村…いや領地そのものが滅ぼされかねない。

 

ボウンッ!ドカッ!

 

僕はウインド・ブレイクを放ちヨシアの手から逃れた。

「うっ!」

ヨシアは壁に激突し、呻く…そして僕が一歩近づくと…アイーシャが割りこんだ。

「やめて!彼を殺すなら私からにして!」

アイーシャはヨシアを庇うように抱きつ…閃いた!

「それで行く。」

「…は?」

2人は狐につままれたかのような顔をしていた。

 

〜おまけ〜

「おい、なんか落ちたぞ?色男。」

彩人ことサイトがそう言って金髪の生徒…ギーシュに一枚の紙を渡す…とギーシュは無視した。

「なあ…もしかしてこれ落としたのお前達か?」

サイトは無視されたので隣にいた生徒達に尋ねた。

「いいやそれはギーシュのもんだよな?」

「そんな低レベルの奴を持っているのはギーシュくらいしかいないだろ?」

その言葉がギーシュの無視を止めさせた。

「なんだと!?君達はこれ以上の物を持っているというのかい?!」

そう言ってギーシュはサイトが持っていた紙を奪い取り見せた。

「ギーシュ様…それはなんですか?春画などではありませんよね?」

下級生の女子生徒ケティがそれを見て涙目でギーシュに迫るとギーシュは必死で弁解した。

「ち、違うんだ!ケティ!僕はね、友人に届ける為に持っていただけなんだ!」

ギーシュはそれをしまおうとしたが後ろから何者かに取られ…振り向くと…同級生の女子生徒モンモランシーが鬼のような顔でギーシュを見ていた。

「ギーシュ?ちょっといい?」

そしてモンモランシーは笑い、悪魔のような笑みを浮かべた。

「モンモランシー!それは誤解だ!彼女は」

ギーシュはモンモランシーに弁解しようとしたがモンモランシーのパンチが頭を揺らした。

「この浮気者ぉぉぉっ!」

ガスッ!!

モンモランシーの会心の一撃がギーシュに炸裂!

「ふん!あんたなんかタバサたんに嫌われればいいんだわ!」

そう言ってモンモランシーは立ち去っていった。

「まさかモンモランシーが…タバサたんを愛する会のメンバーだとは思わなかったよ…」

そう言ってギーシュは膝をつくとケティが迫ってきた…

「ところでギーシュ様…もしタバサたんの絵が欲しければ提供しますよ?」

ケティはギーシュに耳打ちするとギーシュはすぐに反応した。

「本当かい!?…あ。」

そしてギーシュは気づいてしまった。ケティの蹴りが目の前に迫ってきていることを…

ゲシッ!

「ウワーン!!」

そしてケティはその場から消えて行った…




今回はおまけというよりか学院の出来事ですね…

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