使い魔シルフを召喚し…困ったことがあった。
「ベッドが足りない…」
そう…困ったこととはシルフを寝かすためのベッドがない…ということ。これじゃ一緒に寝ることになる…一緒に寝たらキュルケにめちゃくちゃにからかわれるのがわかる。
「ご主人様、私は廊下でも構わないぞ?」
シルフが廊下に出ようとするが…僕は引き止めた。
「そう言う訳にはいかない。」
シルフは韻竜とはいえ見た目は人間だ。廊下で寝かせたら鬼畜扱いされることを予想出来るのは赤子の手を捻るよりも簡単だ。
「それじゃあどうする?」
シルフはそう言って僕に尋ねた…
「シルフはベッドで寝て。」
「ベッドで寝てって…まさか椅子とかで寝るつもりか…」
バサバサ…!
シルフのセリフを遮るかのように手紙が送られてきたので僕はそれを受け取った。
「これは何?」
シルフはその手紙を覗き込んだ。
「これはガリア本国からの手紙。今すぐガリアのプチ・トロワに迎え…だって。」
最近あまり行きたくないんだよね…あそこ。だってあそこ行くたびに変態がどこからともなく現れるし…キュルケも僕が帰ってきた時、ハードになるし…だからと言って行かなければ常識人である2人の負担が増えるだけだから行かなきゃいけない。
「シルフ…竜の形態になれる?」
「一応なれるけど少し離れた場所でやるよ。」
「ん…わかった。」
僕達はガリアへ向かい、翌朝プチ・トロワへ着いた。
~プチ・トロワ~
「そら!」
そう言ってイザベラお姉ちゃんがトーストを僕に向かって回しながら投げた。
「モガッ!」
僕はあえて口でキャッチしてイザベラお姉ちゃんの機嫌をとる…まあ実際は周りにイザベラお姉ちゃんとこういうやりとりをしろって前もって決めているんだよね。これは僕…シャルロット・エレーヌ・オルレアンがガリアの傀儡だと知らせる為でもあるんだよね。
その傀儡を操っているのはイザベラお姉ちゃんの父親である…ジョゼフ伯父様。つまり、シャルル派こと変態派の奴らをまとめてボコすための処置でもある。
「あっはっはっ!いい様だね、7号!フリスビー咥えた犬のようだよ!」
このセリフは僕が考えたものを緩くしたものだ。イザベラお姉ちゃんはあまりにもきつすぎるという理由で妥協してきたのでそうなった。
「…」
僕はトーストを咥えているので喋れない。そのため、黙ったままだ。
「7号…こっちへ来なさい。」
イザベラお姉ちゃんは不機嫌そうに眉を寄せ、手で招いた。その雰囲気は何か悪巧みをする悪女のような雰囲気を出しており、まさしくイメージ通りだった。
イザベラお姉ちゃんの名誉の為に言っておく…顔が悪女の面なのでその様は良く似合っているけどあの変態の100倍は常識人であり、僕の言ったこともある程度はやってくれる優しいお姉ちゃんだ。
「…7号、あんたに任務を渡すわ。」
そう言ってイザベラお姉ちゃんから依頼書を貰い、僕は咥えていたトーストを食べながらそれを見た。
「今回は翼人退治だよ。竜倒して来たあんたには足らないだろうから付け足しておいたよ。感謝しな。」
そう言ってイザベラお姉ちゃんはもう一枚依頼書を僕に渡した。
「さ、これで私の用事は終わりだからとっとと行きな!」
そう言ってイザベラお姉ちゃんは手をシッシッ!とやって僕を追い出した…板についてきたね…その仕草。
~上空~
「翼人退治…それがご主人様の任務かい?」
青い鱗を持った韻竜…シルフがそう言って僕の任務を確認した。
「そう。」
「知っているとは思うが翼人といえば私やエルフと同じ精霊魔法を使うから注意が必要だね。」
精霊魔法…?先住魔法じゃなくて?もしかしたら言い方が違うのかもしれない。エルフとは対峙したことがあるけど相手がサーシャだったから無傷で済んだ…もっとも心が無傷と言えばそうではないけど。
「…」
僕は黙って頷き、下を見ると…翼人と村人がドンパチやっているのが見えた。
「行ってくる。」
僕はそう言って飛び降りるとフライの呪文を唱え、地面に着地するとすぐにウインド・ブレイクの魔法を放った。
「お、女の子!?」
…村人からそんな声が聞こえたが無視だ。無視しなければ北花壇警護騎士団はやっていけない。そんなこんなで村人を翼人から守った。
「凄え…翼人と互角に戦ってやがる…」
僕はその声に反応した。普通ならその行為は命取りだがあえて反応したの理由は簡単だ。
シルフや翼人のような先住魔法を使えるほど賢い生き物となれば、僕が作った隙を見て、僕の急所を狙うはず…逆に言えば急所しか狙わないということだ。だが急所というのは数カ所に限られている。その一方で急所を狙われた時の対策は数多くある。
つまり今の僕はどんな攻撃が来るかもわかっていて、対策も整っているということだ。そして僕は杖を握り締め…
「みんな止めて!!」
…ようとしたが途中で翼人の女性と思われる声が割って入った。その声を出したところを見ると長髪の翼人女性が悲しそうに訴えていた。
「アイーシャ様!?」
アイーシャとやらが翼人のボスらしく、僕はそちらに杖を向け魔法を放とうとするが…
「お、お願いです!杖を収めて下さい!」
金髪長髪の人間の青年が僕を止めようと懇願してきた。
「…」
僕は魔力を分散させ、杖を収めた。
「も、もしかしてあんた…お城の騎士様では…!?」
そう言って頰に×の傷がついた金髪の青年が僕にそう尋ねた。
「ガリア花壇騎士、タバサ。」
僕はそう言って自己紹介すると…
「おお!騎士様だ!」
「騎士様が来て下さったぞ!」
「男の娘キタコレ」
…最後のはともかく、村が歓喜に満ちた。
「こら、ヨシア!騎士様から離れろ!そんなに引っ付いて羨ま…じゃない!魔法の邪魔をするとは何事だ!」
そう言って傷の青年は長髪の青年ヨシアを叩くと、すぐに僕へと振り返り笑顔になった。
「ささ、騎士様…早速ですが翼人共の排除をお願いし…」
クキュルルルルゥゥゥ〜
などと僕のお腹から可愛らしい腹の音が聞こえた。
「空腹…」
まあ仕方ないよね…パン一枚だけだったし…食堂くらいの食事の量じゃないとお腹も満足出来ないようだった。
「こ、これは失礼しました!おい!みんな村中の上手いもん持ってこい!」
「おお!」
そして僕の腹ごしらえの為にしばらくの間待たされることになった。
〜おまけ〜
「うへへ…」
などと寝言を言っているのはルイズの使い魔サイトである。
「なんの夢見てんのよ…」
サイトの横にはげっそりとしたルイズがおり、ベッドでねっころがっていた。
…ここで気付いた人もいるだろうが一応解説しよう。…サイトはルイズのベッドで寝ているということだ。「はぁ?どういうこと?」などと思うのは正常だ。…サイトは平賀彩人という男装女子高校生だ。アヤトだと男らしくないので彩の部分を音読みにすることでサイトという男らしい名前になるのだ。
「大きくなれ〜!大きくなれ〜!」
そして何度目になるだろうか…寝ぼけたサイトが後ろからルイズの胸を揉み始めた。
「な、なにすんのよ!」
そう言ってルイズはサイトを退けようとするが…
むにっ
という感触がルイズを襲うのだ。
「なんでこんな男らしい使い魔が私よりも胸が大きいわけ…?!」
ルイズはサイトの嫌味になる胸を見て、何度も何度も押し返すが…
むにっむにっ!
と胸の感触を感じてしまうのでルイズは諦めようとするが…
「大きくなれ〜!」
とサイトが揉み出すのだ。これでは悪循環である。ルイズはサイトが女だからと言ってベッドの中に入れるべきではなかったと後悔するのだった…