タバサのTS物語   作:ディア

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第1話

~ガリア~

ここガリアで第二王子であるシャルルはそわそわしていた…というのも兄であるジョゼフは娘しかいない。ここでシャルルの息子が生まれれば王位継承権は自分に寄りやすくなる…そう考えていたがシャルルが息子を待ち望んでいたのはそれだけではなかった。

「おぎゃー!」

ついにシャルルの子供が産まれ…シャルルは顔を緩めた。

「おぎゃー!」

しかしシャルルは二つの産声が聞こえたことに不審に思い、そこを覗くと…双子だった。

 

ガリアでは双子は忌み子とされている。というのも科学的な根拠としては母体が耐えきれず母親を亡くしたり、そうじゃなかったとしても寿命はいくらか縮むという根拠があった。しかし科学的根拠がないガリア…いやハルケギニアでは呪いやその類だと信じられている。それ故にガリアでは双子は忌み子の象徴としていた。

「一人は息子で一人は娘か…娘の方を修道院に預けて身元がばれないようにしろ!」

「手続きをする為に名前は…どうします…?」

「ジョゼット。それがその娘の名前さ。兄さんにちなんで名付けた。」

シャルルはそう言って冷たく娘を見る。

「そしてこの男の子はシャルロット…この子の名前はシャルロット・エレーヌ・オルレアンだ!」

何処からどう聴いても男の名前ではなく女の名前である。

「いい名前ね…」

しかし妻の方は納得してしまった…何処からどう聴いても女の子につける名前であるのに関わらずだ。

 

数日後…シャルルの娘ジョゼットは無事修道院に届けられそこで育つことになった。

「シャルル!お前に息子が産まれたそうだな!」

そこへ機嫌が偶々めちゃくちゃに良く陽気になったジョゼフが話掛けた。

「うん。そうだよ。」

「それで名前は何だ?…俺の考えたルイとかにしたのか?」

「ううん…シャルロットだよ…」

ビシッ!…産まれて初めてジョゼフが凍った瞬間だった。

「いいでしょ?この名前…」

そう言って満足げにシャルルは話す。

「なあ…シャルル…俺の聞き間違いでなければ息子が産まれたって言っていたよな?」

ジョゼフは流石におかしいと思い、シャルルに産まれた赤ん坊が男だと自分の耳で聞こうとした。

「そうだけど?どうかしたの?」

しかし現実は残酷だった。シャルルはあっさりとシャルロットが男だと言った…

「それは女の名前につけるものだぞ…?」

ジョゼフは頭が痛くなった…俺はこんな馬鹿に劣等感を持っていたのかと…ジョゼフが常識人となった瞬間だった。

「でも父さんに話したら『よくやった!シャルル!!これでこの世に未練はない!』っていってめちゃくちゃ喜んでいたよ。」

ジョゼフはますます頭痛くなった…自分の父がこんな馬鹿だとは思いもしなかった。というかそんな父親に認められたら何かが終わる予感がした。

「(シャルル…俺が悪かったなら謝ろう…だから元のシャルルに戻ってくれ!!)」

ジョゼフは本気でそう願った…

 

ジョゼフは心配になったので生まれたてのシャルロットを見に行くと…そこにはフリルのついたピンク色の服を着た赤ん坊がいた。

「…シャルロット。絶対にお前を男に戻してやるからな。」

ジョゼフはシャルロットを見て絶対に男として育てようと決意した。

「あうー!」

シャルロットは喜んだように見えてジョゼフは「お前だけが味方だ」と思った。

 

~その夜~

ジョゼフは自分の寝室のベッドで寝ていた…

「(何だ…暑苦しい?)」

しかしあまりの暑苦しさに耐え切れずジョゼフは起きた。

「zzz…」

そこにいたのは髪の毛の長い女性だった…しかしジョゼフはこの顔を何度も見たことがある…

「まさか…こいつは…」

ジョゼフはそういってよく観察すると。この女性…いや女装した男はシャルルだということに気がついた。

「ぬわぁぁぁぁぁっ!?」

ジョゼフは大声をあげてしまい、シャルルが起きた。幸いというか不幸というべきかサイレントがかけられていて寝室から音が漏れることはなかった。

「ん~うるさいよ…兄様。」

女装したシャルルはまさしく完璧な男の娘だった…その為一瞬ジョゼフは見惚れてしまったが相手がシャルルだとわかると話は別だ。

「黙れこのオカマ!今すぐこの部屋から出て行け!」

ジョゼフがそう言うとシャルルは涙目になり上目遣いをした。

「兄様は僕のこと嫌いなの?」

それはまさしく妹の極みだった…ジョゼフは罪悪感が一気に増したがすぐに相手が弟のシャルルだと思い出した。

「出・て・行・け!」

そういってジョゼフはシャルルを部屋から追い出してベッドに横たわるが…

「(もうこんな弟は嫌だ。絶対にガリアを変えなければならん。)」

弟のホモ&女装癖をノーマルに治すために、別世界では狂王と呼ばれたジョゼフがこの世界ではガリア史上偉大な国王になる方向へ変わったのはこの時かもしれない。


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