オレ、Jokerになります。[凍結中]   作:fateplanet

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異世界の痴女と転生者なオレ―1

あれから、総二が力尽きて、愛香ちゃんに抱き留められるというイベントがあったが、日が暮れる前に無事にマクシーム宙果から家路についたオレ達。

トゥアールさんの持つ認識攪乱装置のおかげか、周囲にばれることなく、あの場を後にできたのはいいのだが、1番の問題はここからであった。

 

「裏口から…そっとな…。母さん、帰ってきてるようだし」

 

そう、ばれずに実家に入るという蛇の如くなスニーキングミッションが開始されているのである。きっと母さんのことだろうから、今回のことが分かれば面白がって事を起こすのは目に見えている。それに、息子2人が娘2人になっちまうなんて、知られたくもない!!

 

「おっじゃましま~……おぐぅぅっ!」

 

しかし、その意図はトゥアールさんには伝わっていなかったのであろう。すごく自然に声を出して入ろうとしたところを愛香ちゃんの手刀が鳩尾にジャストミートし、見事に空気を全て吐き出されられていた。

黙らせるという面においては効果的ではあるんだろうが、愛香ちゃん、それでは総二を任せられないぞ~。

そんな感じが伝わったのだろう、焦る姿が可愛らしいが、それどころでない事態が待っていた。

 

「あら、総ちゃん~?」

 

台所から母さんの声が響いてくる。どうやら一連の音なんかで気付かれたようだ。

 

「あ、ああ、ただいま!」

 

「おばさん、愛香です!お邪魔します!」

 

「ただいま~」

 

…………なんでお前らはそう不自然な答えの返し方しかできないんだ。お兄さん、残念過ぎて泣きそうだぞ、おい。

幸い母さんは気にしたようではなく、は~い、という答えが返ってきただけであったが。

 

まぁ、母さんの大らかなところがあるから問題なかったか。

そうして、母さんに気付かれないように総二の部屋に侵入をさせているうちに、オレは台所に向かった。

 

「母さん、昼間、どこに行ってたんだよ。店ほっぽって」

 

「うん?あー、家の食材が足りないこと思い出してね。でもいいじゃない。お客さん、あんまり来ないんだし」

 

「いや、それでいいのか、経営者兼マスター」

 

「いやだ、マスターだなんて。私、一ちゃんに師事した覚えはないわよ~?」

 

だったらその嬉しそうな顔をどうにかせんかい。

マスターなんて中二心くすぐるワードだったせいか、かなり嬉しそうにクネクネしてしまっている。

 

観束未春。オレと総二の母親であり、女手一つでオレ達を育ててくれ、また喫茶アドレンシェンツァの経営者兼マスターであり、コーヒーの腕は一級品であるのだが、いかんせん趣味的に始めた喫茶店であるが故にその日の気分で営業時間が変わってくるという困った仕様でもあるのである。

そんな経営で大丈夫なのかと心配になるが色々と何かしらをやっており、資金は万全であり、曰く、オレと総二を大学にやっても問題ないとのことであった。一体どういう錬金術でそうなったのか分からないが、そういうことらしい。世の中には不思議なこともあるものである。

そして忘れちゃいけない要素として、母さんは重度の中二病であったりする。よく思わせぶりな話をしてみたり、何かしらのコスプレなんかをしている姿を目撃してしまうことが多々あった。

中二病が悪いとは言わないが、せめて息子の目の届かない範囲でやっていてほしかったと切に感じる日があったりなかったり……。

 

「とりあえず、紅茶貰っていくからな。あと、総二の部屋にいるからなんかあったら呼んでくれよ?」

 

「はいはーい、了解よ~」

 

ティーカップ3つ(・・)とポットを持ってオレは総二の部屋へと向かった。

さて、どんな話が聞けるのやら、楽しみである。

この時、母さんの目が何かを狙ったような光を携えていることに気付けていたのなら、あの化学反応は起こらなかったのであろうと、後から思ったりしたが、後の祭りであろう。


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