オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
オレとレッドが駆け抜けた先は、野外会場から程よく離れた、草木が鬱蒼と茂る山林だった。
そこにはこちらを待っていたかのように、彼女が立っていた。
どうやら
彼女―――善砂闇子はフリフリの衣装を着ているが、しかしその姿は何かが決定的に違っていた。
そう、彼女からは先ほどまで感じていたアイドルとしての、あれほどの人気を博していた程のオーラを一切感じないのだ。
「雰囲気……違いますか?変身を、解除して、いますから」
「じゃあ、善砂闇子はイースナじゃなくて、ダークグラスパーに変身した状態だったのか!?」
「おいおい、それ、ある意味反則だろ?」
「だって、そうしないと、私、人前で笑えないから」
そんな……それじゃあ寂しすぎるじゃないか……!
「貴女達は、私の正体に気付いていたんですね……」
彼女は何か、ほの暗い感情をその目に宿し、こちらを、特にオレを見る。
「……やっぱり……貴女は、トゥアールさんではないんですね、テイルジョーカー」
「ッ!?」
どうやら正体に気付いたのはオレ達だけではないようであった。ただ、まだ、オレが男であるということはばれていないようではある。
だが、彼女からすればそこはどうでもいいのだろう。きっと彼女はトゥアールちゃんしか眼中にないのだろうから。
「許しません……貴女は、私の純情を弄び、笑っていたんですから―――!!」
『なんか素敵なフレーズですね。一応保存しておきましょう!』
「言ってる場合かっ!?」
そんなこと言ってる場合じゃなく、こっちはガチに戦闘しなくちゃならないじゃないかよ!!
イースナは眼鏡のブリッジを指で押し上げ、深く静かに
「グラス・オン……!!」
テイルギアとよく似たそのキーワードはやはり彼女がトゥアールちゃんの関係者であることを強く物語っているように感じる。
黒い光を纏いその光が晴れたそこにはレッドと似たような鎧を纏う彼女―――ダークグラスパーがいた。
「以前言っていたように、そこの幼女にトゥアールは属性力を託したのだろう……ならばこそ!貴様らのバックにはトゥアールがおるということ!貴様らを倒し、彼女に出会い、わらわと共に来てもらおうぞ!」
「ソイツは無理な相談だな」
「何?」
「あの子は自分から戦うことを選択したんだ!たとえオレ達が負けたとしても軍門につくとは限らないさ」
「そんなもの分かり切っておる!しかしそれでも妾は彼女が欲しいのだ!!」
「だったら!オレ達を倒してからだな!行くぞ、レッド!!」
「了解!!」
剣を構え突っ込むレッドを後方から支援するために、オレはイエローマグナムでダークグラスパーを狙い撃つ。
しかし当然というべきか、彼女その身を翻し、銃弾を避けるとともに切りかかってくるレッドの剣を鎌でいなし、逆に反撃してこようとしてきた!
やらせるかよ!
そこを狙い、オレは銃撃を行う。
彼女は追撃を止め、鎌を回転させ、銃弾をやり過ごす。
流石に、強い!
「どうして君はアルティメギルに与するんだ!!」
「そんなもの、決まっておろう!―――
「なに!?」
「わらわが与する条件はたった1つ、眼鏡属性だけは奪わない事じゃ!」
「それじゃあ、他のはどうなってもいいってのかよ!」
「ふん。構うわけがあるまいて!しかしわらわが最も大切にしている属性力は眼鏡属性に他ならない!事実奴らは一度もその約束を違ったことは無い!!」
「それじゃあ、自分だけがいいってことかよ!」
「いいや!眼鏡を愛する者たちの本望じゃ!」
「もう黙れ、お前」
いい加減うんざりだ。
「なに!?テイルジョーカー、どういう意味じゃ?」
「お前の独りよがりの理想なんて知るか」
1歩1歩前に出ていく。
「独りよがりじゃと……ふん!貴様らもわらわと同じじゃろう!お主らが進めば進むほどツインテールが普及し、最後には!」
「だったら負けなけりゃいいだけだ!」
「何じゃと!?」
「ヒーローってのは、泣いてる誰かを助けるからヒーローなんだ」
「ジョーカー……?」
「自分の世界が真っ白になったことを話していたトゥアールちゃんの顔を見ても同じことがいえんのかよ!」
そうだ!あの時彼女は泣いていたんだ!
あんなにも辛そうにしていたんだ!
「それを……!眼鏡さえあればいいだなんて言ってる奴に渡せるかよ1」
だからこそ、オレはこの言葉を使う!自分の罪と、相手にも罪を数えさせ、向き合うために!!
「ダークグラスパー……さぁ、お前の罪を数えろ!」
「わらわに罪などあるものかぁぁぁぁああああ!!!」
「それがてめぇの限界なんだよ!!」
オレはイエローマグナムではなく、拳を握り、思い切り、振りぬく!
その拳には何故か、マキシマムした時のように炎を纏っていたが、気にしてなど、いられない!
「うおりゃぁぁああ!!」
「なに!?うぐぅぅぅう!!」
その拳はダークグラスパーの防御を貫き、思い切り吹き飛ばしたのだった……。
「お前みたいなやつに、オレ達の仲間は渡さねぇ……!」
『……どうしましょう、なんだか慧理那さんの気持ちが分かってきたんですけど。いえ、私は総二様一筋なんですけどね!』
「なにを言ってんだよ、トゥアール?」
……スルー、しておこう。触れてもいいもんじゃないだろうし、もしもトゥアールちゃんがオレの方に向いてきたら、きっと慧理那が嫉妬しるだろうし。
いや、オレも慧理那一筋のつもりなんだけどね?
「む、むぅ‥…貴様、やりおるな……テイルジョーカー!!」
「別に。ただ、負けられないだけだ」
「ふん……ほう、どうやら、他の色もやってきたようじゃな」
「レッド!」
「ジョーカー!!」
どうやらダークグラスパーの言葉通り、オレ達を追ってきたのだろう。復活したブルーと共にイエローが木々の邪魔などないようにやってきたのだった。
「ふふ……まさか、ここまで力があろうとは思わないんだ……。貴様ら、まとめて葬ってくれようぞ……!」
その言葉と共にダークグラスパーの眼鏡が妖しく発光する。
「
「な!?」
「なんだ、コレは!?」
放たれた光輪が∞を描き、オレ達の周囲を取り巻いていた。
なんなんだよ、コレは!?
「せめてもの情けじゃ……終わることのない幸福に包まれ、消えてゆけ!!」
意識がどんどん沈んでいく……まるで眠るように、意識が沈んでいく。まるでダークグラスパーが放った光に誘われるように、オレ達は意識を失っていき、消えていく。
世界が消え、そして生まれ変わる。
そう感じたころには、もう手遅れだったのかもしれない……。