オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
さて、オレは今、とある場所にいる。それはアイドル――善砂闇子の野外ライブに来ていた。それはオレが感じた考えが正しいかどうかを確かめるための行動であり、仲間には知らせていない。
もしもコレが外れていたとしたら、ソレは申し訳ないし、疑っている相手に対しても失礼に当たる。第一この予感はオレが考え付いただけであり、確証はどこにもないのだから……。
まぁ、それでも今回の野外ライブ、当日券も比較的取りやすく、難なくライブ会場に入ることが出来ただけに、属性力を集めることを理由としているのならば、理に適っているのではないかと思う。
「さて、鬼が出るか、蛇が出るか……」
因みにオレは出入口近くに陣取っている。理由としては単純だ。もしも外れていたならばすぐに帰れるようにするためである。元々アイドルのコンサートには興味はないので確信を持って違うとわかれば、帰ればいいだけの話だからだ。
さぁ、そんなわけで会場が大盛り上がりしている中、オレはどこか冷めた目をしていたのだが……どうやら悪い予感とは当たるものであった。
上空から何かが善砂闇子のステージに降り立ったのだった!
ステージの骨組みの木枠が弾け飛ぶ中、大スクリーンに映し出されたのは、他でもない三頭狼の怪人だった。
やはり、現れたか……!
「エレメリアンだぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!」
如何に世間がエレメリアンに対してお気楽であろうとも至近距離に怪人が現れれば嫌でも人はパニックを起こす。そこからは皆が阿鼻叫喚の渦になったかのように逃げだすのだった。当然だ。目当てのアイドルも媚びたような声で逃げ出し、見るべきものも守るべきモノもなければ人は即座に逃げの体制に入るのだから。
そうしてこちらに向かってくる人の波から逃げ、隠れられるような場所、スタッフが使っていたテントの裏に走り込む。その間にカフから連絡がやってきた。
『一樹さん!エレメリアン反応です!場所は!』
「アイドルの野外ライブのとこだろう。今そこにいる」
『なんで一樹さんもいるんですか!?』
「たまたま友人に誘われただけだ。ってオレも?」
『はい。総二様もいるようなんです。何か確信めいたものを持っていたようでしたけど……』
「そうか……」
だとするならば、総二も今回の事を考えて行動していたということなのだろうか。ならば、総二も善砂闇子の正体に気付いているということか……。
「って、今は深く考えている場合ではないな……」
そうしてオレはロストドライバーとジョーカーメモリを取り出す。
《Joker!》
「変身!」
《Joker!!》
即座に変身したオレであったが、しかし既にレッドの他にイエローとブルーも来ていた。どおりで喧しいはずだ。
「さて、全員集合できたな」
「ジョーカー!遅いぞ?」
「なに、ちょっとしたことでな。それよりも相手の方を、だ……」
「揃ったようね、ツインテイルズ。アタシも覚悟決めなくちゃ」」
「……なんなんだ、あのキャラ?」
「いや、それがなんでもあれが素みたいでさ……」
まさかのオネェキャラが素なのかよ!?
お兄さん、びっくりなんだけど?!
「さぁ、演出家の真骨頂、見せてあげるわぁ!
そうして、ケルベロスギルディは音もなく分離し、3体に増える。首は1つずつだけれども。
「それじゃただのドックギルディじゃん……」
ブルー、皆思ったけど、それを言っちゃいけないよ。
「お黙り!あなたはオーディションで落第よっ!!」
ケルベロスギルディとの戦闘はそんな言葉で始まったのだった。
オレと、レッド、ブルーが1体ずつと戦い、後方支援的にイエローが攻撃を加えるという理想的な攻撃が可能になっていることから、問題はないと考えていたのだが……。
実際分離したことで弱体化していたのか、幹部級を相手取ってきたオレ達の方が有利にことが進んでいたのだ。しかし!
直線状に並んだ2イエローとブルーを見たケルベロスギルディはオレとの戦闘を放棄し、2人を包囲するように立ったのだった!
それと共にケルベロスギルディの目が大きく見開かれた!
「気をつけろ、2人とも!」
「何か仕出かすぞ!」
すぐさま援護しようとイエローマグナムを取り出し射撃しようとしたが、それを知った最後の1体が視線を逸らしていたレッドを蹴飛ばし、オレにぶち当てることで射撃を強制終了させたのだった!
「くっ!」
「ごめん、ジョーカー!」
そうこうしている間にケルベロスギルディは動く。
2体に挟まれた2人は自然と背中合わせとなり、そのちょうど間を滑るようにしてすり抜けていったのだ。
「奥義!ツインテールの
そして通り抜けたそこには、予想もしていないことになっていたのだった。
「な、なんてことすんのよ!」
「痛いっ……ブルー!無理に動かないでくださいまし!」
2人のツインテールがそれぞれの相手の房とで編み込まれ、固く緊縛されてしまい、うまく動くことが出来なくなっていたのだった!
これじゃあ2人は満足に戦闘行動が出来ないぞ……!
「ただの三つ編みじゃないわ、アタシの力を込めて編んでいるから簡単には解けないわよ!けれどあなたたちツインテールの戦士が自分で自分のツインテールを斬るなんて出来ないでしょお?!アタシの勝ちね!!」
その様を見てレッドはなんか興奮してきてて戦力にならないようになりかけたが、オレ以外の3人の声を聴いて正気に戻ったようでどうにかケルベロスギルディの方に向き直ったのだった。
「これで形勢逆転、3対4じゃなくて、3対3、いーえ、2ね!!」
3体のケルベロスギルディがオレ達に襲い掛かってくる!オレには1体でレッドに2体が襲い掛かっていた。くそ!スペック的にオレの方が弱いことが分かってんのかよ!
「ジョーカーちゃん、あなたはまだまだツインテール属性が弱いわね。折角だし、三つ編みにしない?!」
「お断りだな!もともと器用な方じゃないから、これだけで精いっぱいなんだよ!」
「あら、残念!でもきっと似合うわよ?」
「知るか!」
攻防をしながらもそんな風に軽口を叩けるレベルではあるがついていけるレベル。やはり分離で弱体化しているからなのだろう。
向こうではブルーとイエローがなんとかレッドを援護しているが、それも三つ編みのおかげか、うまく出来ていないようであった。
「第一、お前らはツインテールが1番じゃないのか?」
「……そう、それがアタシが一線を引いた理由よ!」
「何?」
一線を引いた?これだけ厄介であるというのに?
「本来、ツインテールを最もとするエレメリアンであるアタシたちは他の髪型を属性力として生まれた存在が禁忌なのよ。実際ツインテールと双璧をなす髪型の属性力のエレメリアンは存在自体を危険視されて封印されたそうだし……」
「封印?穏やかじゃないな」
「えぇ、そうね。だからこそ、アタシは戦うことを止めたのよ!アタシには心の支えがないのよ!」
その言葉と共に再び攻撃に苛烈さが舞い戻る。くそ!防ぐだけで精いっぱいだぞ!
まさにケルベロスギルディの攻撃は苛烈の一言だった。正確に急所を狙っての攻撃であり、防ぐのはコースで分かるのだが、それ以上に手数が多すぎるのだ。なるほど、この手数の多さならば一瞬で2人の髪を編み込むことだって可能だろう!
「ジョーカー!弱点が分かりました!敵を一点に集めて下さいまし!」
「とはいってもなぁ!」
これだけ苛烈ならば、どうしようも……っ!
「つぁ!!」
「うわぁあああ!!」
「レッド!」
「ジョーカー!!」
オレとレッドは吹き飛ばされ、逆にオレ達が1点に集められてしまったのだった……。ど、どうすればいい!
「「「これで、終わりよぉぉぉぉぉおお!!」」」
そう言って3体のケルベロスギルディが迫ってきたその時、イエローとブルーが前に出て、それぞれが属性玉変換機構を携えた、左腕を突き出していた!
「2人とも!?」
「逃げろ!」
しかし、ブルーは何かを観念したように呟く。
「え、
《
どうしても貧乳属性は言いたくないのか、珍しくナビゲートボイスが後を続け、そしてその属性玉の能力が発動したのだった。
それは一瞬でオレ達を護る巨大な光膜だった!
しかも相当固いのか、ケルベロスギルディの侵入を一切許していなかったのだ!
「「「強力な鉄壁の防御膜だわっ!押し切れないぃぃぃぃぃいいっ!!」」」
「……すごーい、つかえるー」
「あぁ、ブルーが白目で見せられない顔になってる!?」
そこまでショックだったのかい、ブルー!?
「属性玉――――――
そうしてブルーに続いてイエローがはきはきと元気よく発動を宣言したのだった。
そうして光膜に弾力が生まれてくる。
「名付けて!ほらブルー、せーの!!」
「「リフレクション・バースト!」」
そうしてケルベロスギルディは吹き飛ばされる!しかも3体すべてが同じ方向に吹き飛ばされるというオマケ付きで。
まさしく今が好機だ!全員が己の武器を構え、叫ぶ!
「「「
「コイツで決めるぜ」
オレはイエローマグナムにジョーカーメモリを装填する。
《Joker!!MaximumDrive》
「グランドブレイザ―――――――――ッ!!」
「エクゼキュートウェー―――――――ブ!!」
「ヴォルティックジャッジメント―――ッ!!」
「ジョーカーヴォルテクスバースト―――!!」
発動した全員の攻撃は寸分の狂いなく3体のケルベロスギルディを貫き、そして1体に戻り、力なく地に付していた。
「やった……!」
どうにか勝ちを拾うことが出来た……。
「素敵よ、あなたたち……」
最後の力を振り絞ったのだろう、満身創痍なのに立ち上がり、こちらを見つめてくるケルベロスギルディ。
「でもね、1つだけ、覚えて、おいて……消えゆく属性を憂う者もいるって……」
その言葉を最後にケルベロスギルディは光の粒子となって、消え去り、彼の生きた証であった、三つ編み属性の属性玉だけが残ったのだった。
その後はなんか心にダメージを負った様子のブルーがいたが、それよりも留意するべき点があることをオレは思い出す。
オレが今回、ここに来たのは、何よりもあのことを確認するためじゃないのか!
もし仮説があっているならば、彼女はオレ達の戦いを見ていたのではないだろうか!ならば!!
「「スマン!ブルー頼んだ!!」」
「え、お2人ともどちらへ!?」
同じように考えていた、レッドともにオレ達は駆け出したのだった。