オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
あのブッ飛ばされた後、何とか無事に転送で回収されたオレと愛香ちゃんではあったのだが、今回の事は流石に看過できなかったオレはコンソールルームにて愛香ちゃんに正座をさせ、その上に重し(漬物石)を載せていたのだった。
「あのな、愛香ちゃん。君が胸にコンプレックスを持っているのは知ってるがね、アレはないんじゃないかなぁ?」
「は、はい。おっしゃる通りです」
「だよな?だいいち属性玉変換機構で使った属性玉がその名前の通りの効果だったことがあったかなぁ?」
「ありませんでした……」
「だよな?だったら、使ったところで胸が大きくなるなんてことがあるとは普通は思わないよね?」
「はい、その通りです」
「ならなんであんな行動したのかなぁ?お兄さんにはちょっと理解できないなぁ?なぁ、愛香ちゃん?」
「は、はいぃぃぃぃいっ!!」
ふむ、どうやらかなり反省しているようだな………正座は続行だけども。
「愛香ちゃんが納得してくれたところで作戦会議に入ろうか?」
「「イエス、サー!!」」
なんでだろう、総二とトゥアールちゃんがなんか敬礼なんてしてるんだけども。
あと、慧理那がなんかハァハァ言って愛香ちゃんの方を見てるんだけども……。まぁ、いつも通りだし、いいか。
「とりあえず、今回の敵は3体に分離可能で、分離した状態でのダメージは再合体で回復するみたいだな」
「ハァハァ………能力としては厄介ですわね。恐らく分離した状態でも幹部クラスの実力があるのでしょうし、少なくとも1人で1体は相手しなければならない相手になるでしょうから、かなり苦戦を強いられるかもしれませんわ」
流石にこういうことを考えるのは得意な慧理那である。オレの言葉をついで的確な分析をしてくれる。
「あと……多分、ダークグラスパーっていう指揮官がついた後だからさ、偶然ってわけじゃないと思う。ツインテイルズに対してダークグラスパー自身も含めて4対4になるから、それを見越してなのかもしれないしさ」
「そう考えると能力選出の理由づけにもなりますわね。流石ですね、総二君」
「いやぁ……」
まぁ、なんだかんだで総二もオレの隣で特撮を見てきているからなぁ。この程度の事は想像できるんだろう。
と、愛香ちゃんが漬物石をどかして立とうとしているのでそれを視線で制する。そしたらものの見事に止まって座りなおした。
「トゥアールちゃん、やりすぎない程度に愛香ちゃんの脚をつついていいぞ」
「了解です!……ふふふ、許可をいただいたので何の憂いもなく愛香さんに一矢報えますよ……」
「アンタ、後でどうなっても知らないわよ……!」
「後の事より今の方が大事ですからー!!」
「後でコロ……うきゃ!?」
どうやら足をつつくのはいいが超高速で突いていた。イランとこで身体能力を披露してるな、彼女は。
と、オレは何やらせっせと書いている桜川先生が目に映り何を書いているのだろうと、覗き込むと……
――――――婚姻届だった。
一心不乱に1枚1枚書き続けていた。その速度はサインに慣れた有名人の如く、一瞬で1枚1枚を書き上げ、しかし念をしっかりと込めて書き上げていたのだった。
「えっと、桜川先生……?」
「なんだ、観束兄……」
こっちを向いたその顔はどこか幽鬼のようで何かに取りつかれたようだった。元が美人なだけにその顔は恐ろしいものであり、一瞬逃げ出したくなりそうになってしまった。
「何を……してるんです……?」
「ハッ……簡単なことだ、どっかの誰かさんがもらってくれなかったから、次の分の用意をしているだけだ……。あぁ、本来なら、こんな苦労なぞしなくてもよかったというのに……甲斐性のない男だったから、私はまた、コレを書く作業に入ったのさ」
「甲斐性どうこう言っても乗りませんからね。オレの隣は慧理那1人でいっぱいいっぱいですから。あと純粋に貴女は好みのタイプじゃないので」
「くそぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!いいもん!学園の男子にまた配っていくからな!!」
「オレに実害が無けりゃどうぞご自由に。まぁ、答えは目に見えているでしょうけども」
「くそぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
と、また血涙流しなら婚姻届に向き合っていたのだった。
なんか、総二と母さんが話していたけど、関わったらいい事なさそうだから、スルーでいいよな。
なんか話も終わりそうであるし。
この時に参加せずともちゃんと聞いていたら何かしらに気付いたのかもしれないけれど、そんなIFもないのでどうしようもなかったりするな。
で、話に上っていた慧理那はというと
「トゥアールさん、このモニター、わたくしも操作してみてよろしくて?」
「いいですけど、そのYってボタンだけは触らないでくださいね。最高機密なので」
まぁ、耳が赤いところを見るにさっきの話は聞いていたのだろうけども……やべ、オレも恥ずかしくなってきやがった……!
それからはまぁ、いつものようにモニターの操作ミスでトゥアールちゃんの変態行為が白日の下に晒され、それをギルティとした愛香ちゃんに屠られるなんてことがあったが、愛香ちゃんはオレの許可なく立ち上がったので再度漬物石の刑に処したのだった。
あの後、オレ達は解散し、今オレは自室にいる。
今回のエレメリアン、ケルベロスギルディが現れたあそこには何があったのか、あの後、詳しい場所をトゥアールちゃんに教えてもらい検索すると、アイドルのイベントがあったようであった。
その中には当然のように最近人気が急上昇している善砂闇子の名前もあり、彼女が大々的に売り出されていることがよくわかる。
実際ネット上でもバナーにまで出てきているのだからその人気は計り知れない。
しかし……………
「この子、何か引っかかるんだよなぁ……」
どうしてもテレビで見た以前に彼女と会っている気がしてならないのだ。元々アイドルに興味のないオレが研究生っていうのだったか?の頃を知っている訳ではないからして、知っている訳がないはずなのに、だ……。
それにここまで強烈に印象付けられているのだ。街ですれ違ったとかなら覚えているだろうはずなのだ。だが、そういったこともないのが現状なのだ。
一体、どこで………。
そうやって頭を悩ませていると、オレはある事に気付いた。
「そういえば、彼女、自分よりも眼鏡を押してるような……」
普通アイドルと言えば自身を前面に押し出すはずなのに、彼女は眼鏡を押している。実際彼女のファンなんかは伊達眼鏡を付けている者までいる始末らしい。まるで
………テイルレッド……?まさか!
この時オレはドラグギルディとの会話を思い出した。それは属性力を世界に浸透させていくということ。その事と今回の事はまるで同じじゃないか!
どうして今まで気付かなかったんだろうか……!
そう考えると、まさか、彼女は!善砂闇子は!
ダークグラスパー……!イースナか!
………って、善砂闇子→いいすな あんこ→いいすな→いーすな→イースナってなんで気づかなかったんだよ、オレ!!
いや、しかしオレはそのことを知っているはずだ。そうだ、認識攪乱装置か!あれでオレ達の認識を外していたのか!
でも……ホントにそうなのか?もし違っていたら……こうなったら、一度確認するしかない……。彼女のコンサートに乗り込もう!
もう既にパズルのピースは埋まってしまったが、完全にあっているとは限らないのだ。一度確認しよう……1人で。