オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
さて、もうすぐ中間テストが迫ってきている中、オレはいつものように学生生活を謳歌しているわけなのだが……。
「テスト明けの連休どうする?」
「オレ、テイルレッド・ジョーカーイベントに行く」
「連休たって、72時間しかねぇじゃねーかよ。レッドたんの撮りためたのを見るの、間に合わねーよ」
「どうすっかな~、ネットで『ジョーカーさんに踏まれ隊』の募集してんだよなぁ。よし、いっちょやってみっか!そしてゆくゆくは……フヒヒ」
と、まぁ、オレのクラスメイトどもは全員欲望が駄々漏れており、とてもではないが人前に晒すことのできるような有様ではなかった。因みに男子連中な?
え?女子連中はって?それはな
「かわいい……」
「きゃわゆい……」
「ぷりちーだわ……」
と、物思いにふける慧理那のことを見て男子とは違ったベクトルの、いや、同じベクトルの欲望を駄々漏らしていたのだった……常識人はおらんのか、常識人は!
「慧理那ちゃん、どうしたの?ため息なんてついて。悩み事?」
と、宮塚さんが疑問に思ったのだろう。そんなことを訊いていた。もしかして前回言っていた相談の事が原因なんだろうか?一向に行動を起こさないから、不思議だったんだが……。
そう思っていたのに、慧理那の口から出てきたのは予想に反した言葉だった。
「はい。実は、親戚の男の子の誕生日に、えろほんを買ってあげることになったのですが……どういうものをあげればいいのか分からなくて……」
その瞬間全員の時間が止まった。それはオレも例外ではなく、慧理那の言った言葉を反芻し、そして頭を机に打ち付けてしまった!
あんのおバカ!やっぱり諦めてなかったのかよ!この間ヒソヒソと話していたのはそういう事かい!チクショウ!もっとちゃんと言い含めておきゃよかった!!
で、オレに遅れてだが、クラスメイト諸兄も把握できたようで、驚きの声が大きく学園に響いたのだった。それはもう学校が揺れるほどに。まぁその気持ちは分からなくもないが。
「慧理那ちゃん!それは止めなきゃだめ!」
「きっと慧理那ちゃんに似て可愛い男の子だと思うけど、エロ本なんて見ていいはずないよ!!」
「年上の人間がしっかり諭してあげないと!!」
よし、女子達よ!言ってやってくれ!きっとオレでは止まりはせんから、頼む!止めてくれ!!
「それは違いますわ」
「男性が思春期に女性の身体に興味を示すのは当然の事。決して罪などではありませんわ。それを周囲が悪いように非難する浅慮こそが、罪なのです」
………言われてみれば……ってそうじゃない!危うく納得しそうになったけど、そうじゃなくてオープンにすることが悪いんだって!それに堂々と言うものじゃなくてだな……と、オレが考えている間にも事態は進んでいく。
何故か全員納得したのか、男子に至っては崩れ落ちる奴までいやがる始末だった。
それはもう、全員が自身のやましいものを許されたが如く、膝まついて、涙を流すその姿は、まさしく懺悔し許された信徒のようであった。
「くうう!俺この先どんなつらいことがあっても胸張って生きていけるぜ!」
「ああ!慧理那様に許してもらえたんだ、他の
と、まぁ、慧理那に許されたのがよっぽど嬉しかったのかそんなことをのたまいだす始末であった。おいおい、他の女子の前でそんなことをいうと……
「ウザッ!」
と、当然のようにゴミを見るような目で見られることは確定的に明らかな事象である。
もう付き合ってられそうにないから、オレは一足先に離脱しよう。そうしよう。ここは猫の尻尾にでも行こう。なんか今日は店を手伝う気にはなれそうもねぇや。
後日聞いた話によると慧理那による最悪の公開処刑(主にどんなエロ本を持っているのかの聴取という性癖の暴露を強要され、空気的にNoとは言えないもので篠塚と斎藤が餌食になったそうな)が行われ、またエロ本に興味を持ったということは瞬く間に学園中に広まったそうだ………とりあえず、トゥアールちゃんにはワサビロシアンルーレット(外れ無し)をやってもらい悶絶してもらいました。
その時の総二と愛香ちゃんの恐ろしいものを見る目は一体何だったんだろうなぁ?
「どうしたんですか、一樹さん。もうなくなったんですか?」
とはオレが来たのを見てのこのみちゃんの一言であった。
「いや、ちょっと今日はいろいろあって疲れたから休む意味も兼ねて来たんだよ」
「何があったんですか……?」
「……このみちゃんにはまだちょっと早い話になるから、話せないなぁ」
流石に小学3年生にエロ本がどうのといった話なんぞ出来るわけがない。
そんな話をした日にゃ、オレは忠道さんに殺されてしまうわ!
「む!子供扱いはしないでください!私だって立派なレディなんですから!」
ちょっと怒りの琴線に触れてしまったようであったが、でもなぁ……。
「う~ん、レディでも話せないなぁ、というよりもレディ相手にはあんまり話す内容じゃないかな?」
むしろレディとして忌避すべき話だとオレは思うなぁ。
「このみ、一樹くんにも色々あるんだよ。あんまり聞いちゃだめだぞ?」
「お父さん!むぅ……」
「ほら、奥でお母さんが呼んでるから行ってきなさい」
「……は~い。いつかちゃんと聞かせてくださいね!一樹さん!」
と、言葉を残して彼女は奥に引っ込んでいったのだった。
「忠道さん、ありがとうございます」
「なに、娘が迷惑をかけたね……………ところで何があったんだい?私としても君がそこまで疲れているのはちょっと気になるからね?」
「そんなに疲れて見えますかね?」
「まぁね。まぁ、普通は気付かないレベルだと思うよ。何か厄介事かい?」
現在進行形で女性化して戦っているという問題があるが、まぁそれには慣れたからそのことじゃないよな。まぁ、今日の出来事が原因なのは目に見えてるけども。
「いえ、実はオレのクラスでのことなんですけどね?」
と、オレは学園での出来事を話したのだが……
「え~と、学生らしくていいんじゃないかな?」
「………忠道さん、いくら何でもその一言では収まりませんよ?」
「いや、しかしそれくらいしか私には言えないんだが……」
「それは分かるんですけどね?でもこれはこのみちゃんには言えないでしょう?」
重々承知してますけど、うちの学園やっぱり変態が多い……。
「確かに、もしもしてたら殴っていたかもしれないよ」
わぁお、かなり恐ろしい発言だぁ……。
「しかし、君の学校でも人気なのだね、ツインテイルズは」
「えぇ、まぁ。なんといっても皆大好きな生徒会長が応援してますから」
きっかけはソレなんだよなぁ、結局のところ。慧理那が応援してたから皆応援してたんだから。気付けばそんな前提はどっかに行って皆自分から好きになっていったみたいだけども。
「このみもツインテールにするんだと言って髪を伸ばし始めたからねぇ。なんでも学校でも多いそうなんだよ」
「まぁ、世界的人気ですからねぇ、ツインテイルズ」
「それほどにも人気なら、うちでもあやかった方がいいかと話していてね?」
「いや、ここ十分繁盛してるじゃないですか」
ここって結構いい豆を取り扱ってるから遠方からも注文がある位なんだし。
「それでも、やっぱり商売だからね。今よりも繁盛したいのさ。このみのこれからのためにもね」
そう言っている忠道さんの顔は、父親の顔だった。
オレも子供が出来たらこんな顔が出来るのかねぇ。
「まぁ、進学していくとお金かかりますしね」
「そうなんだよねぇ。流石にお金がないから行く道を閉ざしたくはないからね」
「うちの母さんも似たようなことを言ってましたよ。やっぱり親ってそういうもんなんですね」
「そういうものさ」
と、他愛もない話をしてオレは今日のショックを和らげてから家に帰ったのだった。
学期末テストを中間テストに訂正しました。