オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
わたくしの家は、自慢ではありませんが、とても大きく、そして厳しい家でもありました。
しかし、わたくしの代ではそれもある程度抑えられてきていました。
理由は家を継いだお母様にあります。
ある1つの家訓を除き煩わしいものをなるべく取り払ってくれたのです。
以前、その理由を訊いたところ、こう応えられました。
『学園の先輩から、取り払うことで気分が良いことを教えてもらったからですよ』
そう、言っておりましたわ。その話を聴いて素晴らしい先輩もいるのだと思い、そのような人間になりたいとも感じましたわ。
しかし、わたくしは1つだけ、納得できていない家訓がありました。
それはツインテールであることです。
子供の頃はなにも思いませんでした。実際、子供にはよく似合っていますし、お母様と一緒の髪型というのも嬉しかったですから。
しかし、成長していくにつれ、ツインテールであることが煩わしく思うようになってきたのです。
それというのもわたくしの成長があまり大きくなかったことが原因なのです。
たとえツインテールであろうとも周囲の子達と同じように成長できていたのなら、コンプレックスに思うことはなかったのでしょうが、わたくしはあまり成長せず、高校2年生となった今でも小学生、よくて中学生に間違われることが殆どです。
また、皆が成長していくに連れてツインテールが子供の象徴のように感じてきていたからかもしれません。
そんな風に考えていた頃にわたくしは出会ったのです。ヒーローというものに。
当時のわたくしは何かコンプレックスを発散するものを探していたのでしょう。何かいいものは無いかと探していたのです。
その時に出会ったのが、俗にいうスーパー戦隊というものでした。
ヒーローの苦悩と成長を描いたその作品群にわたくしはすぐにのめり込んでしまいました。
普通なら、お人形などに興味を持つのが通常なのでしょうが、わたくしはそうではありませんでした。
何よりもテレビ画面の中で戦うヒーロー達の姿に憧れを抱くようになったのです。
そうして気付けば、特撮の虜になったのです。わたくしが見ていないシリーズのものもレンタルビデオで借りて放送されていたシリーズをすべて視聴して、またスーパー戦隊以外のシリーズにも手を出しました。ウルトラマン、メタルヒーロー等々、それはもう古今東西の見ることのできる特撮は全て網羅したと言っても過言ではないほどに!
流石にレンタルビデオのないものは見ることが出来ませんでしたが。
そんな風に、しかし、あまり公言もせずにわたくしの特撮熱は高まっていきました。まぁ、親しい友人は知ってはいましたが、わたくしレベルでついてこれる方はまずいませんでしたし、観ていたとしても子供の頃の物しか知らない方ばかりでしたから当然と言えば当然でした。
そんなわたくしも気付けば高校生になっていました。そうして彼と出会ったのです。
それはいつものようにジョスコへ特撮のグッズ、この日は『超重戦士グラビトス』というメタルヒーローの変身アイテムの発売日でした。尊達、メイドにも付き合ってもらい買いに行ったのですが、そこで同じものを手に取ろうとした方がいらしたのです。
それは同じクラスの観束一樹くんでした。
わたくしも驚きましたが、向こうの方がもっと驚いているようでした。まぁ、女性でしかも高校生で買うのは珍しいものかもしれませんでしたが、その反応は少しイラッときてしまったのは秘密です。
そこから、お話をして、学園でも付き合うようになったのです。
彼もとても特撮がお好きなようですぐにそれを通じて仲良くなりました。
そんな風に付き合っていると、彼の事もよくわかりました。
ご家族はお母様と弟さんの3人家族、その弟さんがツインテールが大好きな事、料理も趣味であり、実家の喫茶店を継ごうと考えていること、また優しいこともよくわかりました。
それは向こうにも言えたことではありました。それにわたくしのツインテールの家訓のことも話してしまいましたし。ここまで仲が良くなった男性は初めてでした。
そんな風に1年付き合い、新学期となり、わたくし達に後輩が出来たその日、わたくしは本物のヒーローに出会いました!
マクシーム宙果にて、学園の関係で出かけた際にわたくし達は怪人に襲われました。今思うと、あれがアルティメギルの先遣隊だったのでしょう。わたくしは自身のヒーロー達に倣い、立ち向かうことを決めたのです。まぁ、結果は火を見るよりも明らかでしたが。
その時わたくしは2人のヒーローに助けられたのです。
そのヒーロー達はわたくしよりも小さな女の子とわたくしと同じ年頃の女の子でした。
しかし、この2人は怖気づきもせず、怪人を打倒しわたくし達を守り切ったのです。
その日からわたくしの憧れとなったのです、ツインテイルズは!
その日からわたくしはツインテイルズの情報を集め、テレビのニュースは録画し、新聞の切り抜きを作りましたわ!
そうして過ごして1ヵ月が経とうとしている頃です。
何度目かの襲われた時にわたくしは、彼女達の正体を知ったのでした。
それはわたくしのよく知る人物、一樹くんとそのご家族でした。
そして、彼らの秘密基地で話を伺い、何故か、新しいテイルギアの装着者として選ばれたのでした。
この時、わたくしはとても嬉しかったのです。わたくしもヒーローになれるのではないかと!
喜び勇んで戦いに向かいました。
しかし蓋を開けてみれば、戦闘員さえ打倒できず、そのうえ敵にまで気を使われる始末でした。
しかしそれも道理だったのです。わたくしは自身のツインテールをよくは思っていなかったのですから、当然なのです。
だからこそわたくしはツインテイルズを辞退しようとしました。
ですが、そんなわたくしを慰めてくれたのは、ツインテールを好きだった頃を思い出させてくれたのは一樹くんでした。
その、優しく抱きしめてくれて、わたくしの感情を受け止めてくれたのです。
その後は一樹くんの弟さんの総二くんの考えから特訓を行ったのですが、その際にわたくしは、あ、あんな、ことになってまい………!
結果テレビで叩かれ、辛い思いをしてしまいました。そのおかげで翌日は気分が優れず、またこんなわたくしにヒーローの資格があるのかと考えてしまい、初めてズル休みをしてしまいました。
その日の放課後、一樹くんから連絡がありましたが、わたくしは返事を返すことが出来ませんでした。
しかし体は正直なものです。
気付けば尊を伴ってアドレンシェンツァに来ていました。
そこで見たものはレッドとジョーカーが締め上げられ、ピンチになっている光景でした!
しかし、わたくしは動くことが出来ませんでした。確かに使えるようにはなりました。しかし、わたくしはあの姿を晒すのが怖かったのです。
またテレビで言われるのでないか、受け入れてくれないのではないのか。また迷惑をかけてしまうのではないかと、怖かったのです。
ですが、わたくしの耳を疑うような言葉が聞こえてきたのです。
『ほう、奴と同じことをしているのは気にくわんが、まあよい。どうするテイルジョーカー。もうお前とテイルレッドは無力化されたぞ?あとは腑抜けとなっているテイルブルーのみだ』
『………ざん、ねん、だったな……』
『む?』
『オレ達にはまだ仲間がいる……!』
それはジョーカーの言葉でした。
『ふん、あの新参か?あ奴のようなものに俺達が倒されるとでも?』
『なめ、るなよ…?アイツは、イエローは、最高につえーんだからな……!』
『ふん。戦闘員すら倒せないようなものが強いなど』
その通りです。わたくしは今も動けずにいる。それなのに強いなんてことは……!
『ちげーよ……アイツはな、ここ1番で心が強いんだよ!』
ですが、ジョーカーは、一樹くんは信じてくれていました。わたくしが立ち上がるのを、きっと来てくれるのを!それはヒーローの登場を待つ子供のようでした。
この時わたくしは感じたのです。彼はどんなわたくしでも受け入れてくれるのだと。ならば、わたくしはそれに応える義務があると!!
「テイル!オン!!」
わたくしの体が繭に包まれながらわたくしは転送装置に走りこんだのでした。
待っていてくださいまし、ジョーカー!!