オレ、Jokerになります。[凍結中] 作:fateplanet
これって結構大変ですねぇ。
今、オレ達は地下秘密基地のブリーフィングルームにいた。
そしてそこには憔悴しきった様子の慧理那がいた。
どうしてこうなったのかは少し説明しようと思う。
簡単に一言で言えば、あの様子の慧理那がばっちりとカメラに捉えられたのだ。
いかに人が来ない採掘場であろうとも、極大の大岩が動いている様や、それを貫き破壊した光線は周囲の住人によって連絡されたのだろう。
その結果、最近唐突に現れることに定評のあるマスコミである。カメラやら、機材やらを持って、やってきたのである。ヘリで。
もうそうなってはどうしようもなく下着姿同然の姿をマスコミの前に晒しただけではなく、その性癖までもしっかりと映し出されてしまっていたのだった……慧理那、南無。
しかも、それはただ流されるだけでなく市民の怒りの声の追加まであるというおまけ付きで、政府を糾弾する内容なのであった。なんで、1ヒーローの事まで国会に飛び火してしまうんだろうか、理解に苦しむところである。
そんな感じですっかりブルー張りに危険人物として報道されてしまっているのだが……残念ながらオレにはフォローのしようがない。何故かって?全部事実なのだから下手な慰めなどかえって心の傷を
「あ、あれが、わたく、し………」
ほら、もうこの世の終わりとしか言いようのない顔で画面を見つめているじゃないか。この様子にどうやって声を掛けろと?人気のあるオレが?
「会長っ!」
そんな慧理那を愛香ちゃんが優しく母性あふれる様子で抱きしめた。………なんでだろう、普通は逆の方がいいのに違和感を全く感じないぞ?
「分かる……分かるわ、その気持ち!今の貴女の悲しみが痛い位に分かるわ!!あたしも同じだったから……!やっぱり、そのブレスは貴女のものよ、会長!あたし達、仲間だもの!!」
「つ、津辺さん……!わた、わたくし……」
「慧理那さん……!」
そうしてトゥアールちゃんも2人を抱きしめていくのだが、何故だろう、あまりいい予感がしないのだけれど……。
「わかります……!わかりますよ!!見ててゾクゾクしますもんね!中身が男性だとわかっているから余計に興奮するんですもんね!興奮して脱ぎたくなっちゃったんですよね!!」
………元祖痴女は言うことが違うなぁ……。ここまで清々しく変態宣言をかますとは思いもしなかったぞ……。
ほら、総二もなんだかダメな方向に向かっている君を見て、いたたまれない顔をしてしまっているぞ~。
「わ、わたくしは……ヒーローに……皆に憧れるヒーローになりたかったんです……!皆さんのおかげでようやくなれたと、思ったのに……ッ!!」
「大丈夫!会長はヒーローだから!!あたしと一緒にダークヒーローとして生きましょ!!」
いや、ダークヒーローも好きだけど、この場合は違うだろう、愛香ちゃん。ダークヒーローというのは、強いがどこか正義とは違う信念を掲げた戦士たちの事を言うのだ。慧理那なんかは、額面通りの正義の味方を目指しているのであって、そういったものとは違うと思うんだけどなぁ……。
「何で慧理那さんには優しいんですか!?だいたい愛香さんはダークヒーローではありません。正道を捨ててあえてダークヒーローにならなければならないほどに強い邪悪の化身です!!」
そうやって口を滑らすから君はいつも生死の境を
実際その全てを言い終わったころには愛香ちゃんの神速の一撃により息絶えたと錯覚するほどに攻撃されていたが。
「青春ね~」
「いや、母さん、その一言で決着つけるのはおかしいだろう?」
「あら、だって、こんなに賑やかなんですもの、青春以外の何物でもないでしょう?」
「いや、どうやったらこの阿鼻叫喚の図がそう見えるんだよ?」
1人生死の境を彷徨ってるんだからな?
「まぁ、それはそうと、一ちゃん~。いつの間に慧理那ちゃんの事を名前呼びするようになったのかしら?」
なんか急にニヤニヤとしてきたな。
「……今日だよ」
「あら、そうだったの~。で、どうして呼ぶようになったのかしら~」
……だから、そのニヤニヤ笑いを収めてくれませんかねぇ、ご母堂様!
「そんな風にいじってやろうっていう
「ふ~ん。そういうこと言っちゃうの。だったら母さんにも考えがあるわよ?」
「なんだよ?」
「一ちゃんがおねしょした時の写真を見せちゃうわよ」
「……だから?」
「え、あの、恥ずかしくないのかしら?」
「全然」
だって、それ2歳ぐらいの頃のだろう?オレがきっちりと自身の体のコントロールが出来なかった頃だからなぁ。それにその位の年齢ならそこまで恥ずかしいものでもないし。その1回だけだし。
「だいいち、そのことで
「いや、兄さん。普通はその位の頃のだったとしても恥ずかしいもんだから」
「そうか?」
総二にまで疑問顔で言われてしまった。解せぬ。
「やっぱりそうやって見せるのが気持ちいいんですよね!お兄様も分かってるじゃないですか!!」
「一樹さんとアンタを一緒にすんじゃないわよ!!」
「ま、またが!またが裂けてしましますぅぅぅぅううううううっ!!」
おおう、股裂きの刑とは恐ろしい攻撃をしてしまうもんだ。まぁ、しかし……。
「一樹くん、女性の下着を見てはいけません」
「安心しろ。一瞬しか見えてないから何なのか分からなかったから」
慧理那にしっかりと目を手で押さえつけられていた。
まぁ、そんなに離れていなかったし、座っていたから慧理那にもオレの目を塞ぐことが出来たのだろう。
「あらあら、まぁまぁ!」
……母さんの超、楽しそうな声が聞こえてくるが無視だ。
「愛香!流石のトゥアールでも死ぬぞ!!」
どうやら総二が止めに言ってくれたようだ。
それからしばらくして総二が無事に愛香ちゃんを止めることに成功したようであったので慧理那も目から手を離してくれた。
「まぁ、慧理那」
「はい?」
「少しは元気出たみたいだな」
「あ……」
まさか、いつものやり取りが元気を与えるとは思いもしなかったが。
「まだ、怖いようなら、無理はしなくてもいい」
「はい……」
「でも、もしも、オレ達がピンチで、駆けつけてくれるのなら、来てくれ。その方がかっこいいだろう?」
「あ……ふふ、それもそうですわね」
良かった、笑ってくれた。
「まだ、わたくしは自身と十分に向き合えていないのかもしれません。ですが、それを乗り越えた時、わたくしは貴方の力にきっとなることを約束いたしますわ」
「そりゃ、心強いことで」
「そうでもしないと、追いつけそうにありませんもの」
「別に追いつかなくてもいいんだぞ?」
「いいえ、追いついて見せますわ。それが後輩の義務でもありますもの」
「そっか」
「そうなんですの」
「……では、本日は、これでお
「はい、お嬢様。それと、観束、これを」
「婚姻届ならノーサンキュ―ですからね」
「……チッ!」
「図星だったんですかい!!」
「それでは、また明日。一樹くん」
華麗に今の流れはスルーですか、慧理那。
「おう、また明日な」
そうして彼女らは帰って行った。門限もあるから長居はあんまりできないんだよなぁ、慧理那達。
その辺も今後は解決していかないとなぁ、なんて考えていると、残った女性陣達がみな一様にニヨニヨと気持ち悪い笑い方をしていたので、売れ残って皆で食べようと思っていたパイを全力で顔面に投げつけてやった。
良い子は決して真似してはいけないぞ!